ファミリービジネスのメリット・デメリット|失敗例から学ぶ成功の鍵
監修hiratahirata
「ファミリービジネスで失敗したくない。そのためにもメリットとデメリットを理解して、上手く経営していきたい。」
ファミリービジネスと聞くと、公私混同やお家騒動など、ネガティブなイメージを連想してしまう人も多いでしょう。
実際にファミリービジネスで失敗した事例は数知れません。一方で、日本には多くの家族経営による優良企業が長きに渡り活躍しています。
ファミリービジネスを成功させるためには、まずメリット・デメリットを理解しておくことが重要でしょう
ファミリービジネスのメリット・デメリットは次の通りです。


ファミリービジネスのメリットとデメリットは表裏一体です。
ファミリービジネスには、一般企業に比べ、主に次のような特徴があります。
【一般的なファミリービジネスの特徴】
| ・家族代々受け継がれる ・経営者が一族で固められていることが多い ・経営者と所有者(株主)が同一であることが多い |
これらの特性が良い方向に働けばメリットとして表れ、悪い方向に働けばデメリットとして表れるのです。
つまり、ファミリービジネスの成功には、経営一族の姿勢や行動にかかっているとも言い換えられます。
ファミリービジネスを成功させるためには、これらの特徴を理解し、デメリットを回避・抑制した上で、メリットを活かすことが大切です。そのためには、ファミリービジネスで失敗した企業事例から対策を学び、実践していくことが必須でしょう。
本記事ではファミリービジネスのメリット・デメリットを中心に、下記ポイントをお伝えしていきます。
| 本記事で分かること |
| ・ファミリービジネスのメリット&デメリット ・ファミリービジネスのデメリット顕在化による失敗事例 ・ファミリービジネスでデメリットを回避・抑制し、永続させる方法 |
本記事を読めば、ファミリービジネスのメリット・デメリットを理解でき、経営を永続的に成功させるための方法を実践できるようになります。
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
1.ファミリービジネスのメリット4つ

ファミリービジネスは、一般的な企業と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットを4つ、紹介していきます。
【ファミリービジネスのメリット】
1-1.経営や事業の意思決定・変革をスピーディに行える
ファミリービジネスなら、経営や事業の意思決定または変革をスピーディに実行しやすくなります。
ファミリービジネスでは、経営陣が会社を所有する株主であることがほとんどだからです。
会社の経営者と所有者が同一であるため、意思決定がしやすく、スピーディに経営に反映させることができます。その結果、時流に乗ってビジネスチャンスをつかみやすくなるのです。

| 【成功企業例:DMG森精機】 工作機械を製造するDMG森精機は、3代目森雅彦社長の強力なリーダーシップで、1万2,000人を超える従業員をひとつにまとめています。次々に生産やサービス体制を刷新した後、2009年ドイツの企業と資本・業務を提携。その結果、市場シェア世界2位にのぼりつめました。 |
一般企業では、経営者と所有者(株主)が異なるため、経営者は株主の意思を汲みながら経営を進めていかなければいけません。株主と意見が一致せず、判断が遅れてしまうことも少なくないでしょう。
1-2.長期的な視点で経営を行える
ファミリービジネスの場合、10年後20年後を見据えた長期的な視点で経営を行うことができます。
ファミリービジネスは会社の長期的な繁栄が目標であるため、短期的な損益にとらわれません。
たとえ自分の代で成果が出せなくても、子どもの代、孫の代で成果が出ればよいので、長期的な経営計画を立てることが可能になるのです。目先の利益を追求せず、長い目で見て収益の柱となる事業を育てていくことができます。
| 【成功企業例:サントリー】 サントリーのビール事業が45年かけて黒字化に転じたのは有名な話です。1963年2代目社長がビール事業を始め、3代目4代目も粘り強く取り組み、ついに2008年に初の黒字を出しました。創業者の「やってみなはれ」精神で、赤字をおそれず、新しい市場に挑戦し続けた結果です。 |
一般企業だと、経営者は自分の任期中に成果を出さなければいけません。成果を出さなければ株主から厳しく追及されてしまいます。
素早い成果が求められられるので、経営者は長期的ではなく、すぐ実現可能な戦略ばかりを打ち出してしまいがちです。
1-3.経営理念に一貫性があり、浸透しやすい
経営理念に一貫性があり、社内に浸透しやすいのもファミリービジネスの特徴です。
ファミリービジネスでは、経営陣が親族であるためコミュニケーションがとりやすく、経営理念が浸透しやすくなっています。後継者にもファミリーの価値観や伝統をしっかりと教え継がれていくので、世代が変わってもブレることがありません。
一貫した経営理念は、会社のブランド力確立につながり、取引先からも信頼を得やすくなります。
| 【成功企業例:SCジョンソン】 アメリカの家庭用化成品メーカーであるジョンソンも、ファミリービジネスで5代、100年以上続く長寿企業です。創業者が「This We Believe」と銘打った理念「人々の信頼と支持のみが、企業を存続させる」は、一族だけでなく従業員にも深く浸透。ブレない経営は従業員にも評価され、毎年世界の「働きがいのある会社ランキング」で上位に選出されています。 |
一般企業だと経営者が変わるたびに理念が変わるリスクがあります。理念が頻繁に変わるようでは、社内に一体感が生まれにくく、経営も安定しません。
1-4.後継者を計画的に育成できる
後継者候補がいる場合に限りますが、後継者を計画的に育成できるのも、ファミリービジネスの大きな強みです。
ファミリービジネスでは多くの場合、経営者の子どもなど次世代の身内が会社を継ぎます。あらかじめ後継者が決まっているので、次期経営者として必要な教育や経験を若いうちから積ませることができます。
十分な準備期間ののち、自分たちのタイミングで経営交代ができ、交代後も次期経営者は先代のサポートを受けられるので、スムーズな事業承継を実現しやすいでしょう。
| 【成功企業例:オタフクソースHD社】 オタフクソースHD社は、日本でいち早くファミリーオフィス(6章で解説)を設立し、統制のとれた一族企業として有名です。6代目社長に就いた佐々木茂喜氏は、学生時代から同社工場でアルバイトし、卒業後正式に入社、13年工場勤務をつとめます。その後大阪・東京支店長、営業本部長、生産本部長と、経営者として必要な経験を着々と積んでいきました。同社長が制定した「家族憲章」では、後継者の選び方から育成方法についても定められています。 |
一般企業だと、まず後継者を選ぶところから始めなければいけません。後継者は次期経営者として育てられてきたわけではないので、先代と経営理念が異なったり、知識や経験が不十分である可能性があるでしょう。
ただし、近年ではファミリービジネスでも後継者問題で悩む経営者が増える傾向にあります。詳細は
2.ファミリービジネスのデメリット5つで解説していきます。
2.ファミリービジネスのデメリット5つ

ファミリービジネスには多くのメリットがある一方で、デメリットもいくつか挙げられます。
【ファミリービジネスのデメリット】
2-1.ワンマン経営になりやすい
ファミリービジネスでは、ワンマン経営になりやすい傾向があります。
経営陣がほぼ一族で固められ、同時に株式を持つ所有者でもある場合、外部の意見が取り入れられにくくなるためです。
そのような状況だと、経営者が適切ではない意思決定をしてしまっても、誰も止める人がいません。決定がそのまま通ってしまい、経営不振に陥るおそれがあるでしょう。
また、客観的に監視する人がいないと、従業員の労働環境悪化にもつながります。
一方、一般企業では経営者と所有者が分かれています。経営陣にも様々な意見を持った人が集まり、社外取締役や監査役など外部の目も行き届きやすいので、偏りのない健全な経営体制を築けるでしょう。
2-2.公私混同が起きやすい
経営者一族による公私混同が起きやすいのも、ファミリービジネスのデメリットです。
経営者かつ所有者である家族の権限が強すぎるため、一族による企業の私物化が発生しやすくなるのです。
会社の資金を自分たちのものと混同し、プライベートで使う車を経費で購入したり、悪質であれば資金を横領したりするケースもあります。資金だけでなく従業員までも私物化する経営者も少なくありません。休日に呼びつけたり、子どもの送迎をさせたりと、従業員を使用人のように扱う会社もあります。
このように公私混同が起きている会社では、経営も労働環境も健全ではなく、ゆくゆくは企業の存続も危ぶまれます。
一般企業では、経営者と所有者は別であるため、経営者による私物化という状況は起きにくいです。もし起きたとしても、人事や労働組合、外部機関に訴えることで、改善が期待できるでしょう。
2-3.身内と一般従業員の待遇格差が起きやすい
経営者の身内が従業員として働いている場合、身内と一般の従業員の間で待遇格差があるケースも多いです。
これも経営者・所有者である家族の権限が強すぎるため起きる問題です。
同程度の経験や能力の一般従業員と比べ、身内従業員へ給料を多く支払ったり、実力がないのに役職につけたりなど、身内びいきがあっては一般の従業員に不満がつのり、モチベーション低下や離職につながりやすくなります。
こういった問題は、所有と経営が分離している一般企業では、あまり想定されない状況でしょう。
2-4.事業承継に失敗するリスクがある
ファミリービジネスだからこそ抱える事業承継のリスクもあります。
先ほどメリットで、経営者の子どもが後を継ぐ場合、順調に行けばスムーズな事業承継が実現できると述べました。
しかし、それは親子でしっかりと経営理念が共有できていることが前提です。親子で経営理念にズレがあると、世代交代と同時に急な経営の方針転換が行われ、社内には混乱が生じるでしょう。
もちろん、一般企業においても新経営者の経営方針が先代と異なるということは起こります。
しかし、ファミリービジネスで事業承継がこじれてしまうと、他人同士の対立よりも深い亀裂が生じやすくなります。最も近しい存在である親子であるがゆえに、確執が一層深くなり、社内が2つに分断されるほどの危機を招きかねません。
2-5.後継者不足に陥るリスクがある
メリットの章で「後継者を計画的に育成できる」ことを挙げましたが、それは適切な後継者がいる場合に限られます。
後継者不足に直面する経営者は、年々増えてきています。2022年に行われた帝国データバンクの調査によると、全国約27万社のうち、約6割の企業が「後継者が不在である」と回答しました。
日本ではファミリービジネスが全体の9割を占めることをふまえると、多くのファミリービジネスにおいても、後継者不在が深刻な問題になっているといえます。
その背景として、少子化や家督制度衰退、職業選択の権利の尊重など、時代の変化にともなう様々な要因が挙げられます。また、経営者の子どもに継ぐ意思があったとしても、次期経営者にふさわしい能力がないケースもあります。
小規模な企業だと、適切な後継者を確保できないのは死活問題です。現職の経営者が引退するときは、会社をたたむか譲渡するかを余儀なくされるでしょう。
もちろん一般企業でも後継者不足は起こることです。とはいえ、「代々家族で会社を守る」という縛りがない分、従業員の中からふさわしい人材を選んだり、外部から人を呼んだりしやすくなります。
3.ファミリービジネス成功の鍵は「資産所有・経営・家族」のバランスを保つこと

前章で紹介したように、ファミリービジネスにはメリットも多くありますが、デメリットも多く挙げられます。
ファミリービジネスが上手くいくためには、デメリットの要素を回避・抑制し、メリットの部分を最大限活かすことが大切です。特に、デメリットの要素が深刻化すると、経営も悪化の一途をたどり、企業存続は難しくなります。
デメリットを回避・抑制するためには、「資産所有・経営・家族」のバランスを保つことが重要です。
ファミリービジネスは、この「資産所有・経営・家族」の3つの要素で構成されており、相互に影響を及ぼし合います。この考え方を「スリーサークルモデル」と呼びます。

3つのグループにはそれぞれ重なり合う部分があるため、7種類の立場の人々が存在します。
ファミリービジネスが上手くいくためには、これら3つのグループそれぞれが抱える課題に取り組み、7種類の立場の人々の利害や希望を調整することが不可欠なのです。
対して、一般企業は「資産所有・経営」の2つの要素しかないため、仕組みがシンプルです。
一般企業だと資産所有と経営のことだけを考えればよいのに対し、ファミリービジネスは構成要素が複雑であるため、バランスを取るのが難しくなります。

3つの要素のうち、どれかひとつの領域が強すぎても弱すぎても、ファミリービジネスは成り立ちません。
特に重なっている部分に問題があると、全体への影響力が大きいので、事態はより深刻化しやすくなります。
その具体例については、次章で見ていきましょう。
スリーサークルモデルについては、下記の記事でも詳しく解説しています。
「スリーサークルモデルとは?考え方やファミリービジネスでの活用法 」
4.実際に起きたファミリービジネスの失敗事例3つ

スリーサークルモデルのバランスが機能せず、ファミリービジネスのデメリットが顕在化すると、経営が失敗に終わるリスクが高まります。
そこで本章では、実際にファミリービジネスで失敗してしまった企業の事例を見ていきましょう。
【ファミリービジネスの失敗事例】
4-1.【不二家】権力争いにより社員の士気とコンプライアンスが低下

洋菓子の製造販売を主とする不二家は、6代続く老舗のファミリー企業でした。
しかし2007年、期限切れの原料を使うなど、品質管理の問題が明るみになり信頼が失墜、最終的にはパンメーカーに買収されることになりました。
一連の不祥事の背景には、経営者一族による権力争いがありました。
3代目に就任した社長が自分のやり方に意見をしてくる弟とその息子を経営陣から退けました。
そして自分は社長引退後、最高顧問と名乗り、力不足と評される自分の息子たちを取締役に引き上げたのです。
従業員や顧客のことを考えない人事と経営に対し、従業員の心は離れていきました。社内の士気とコンプライアンスは低下し、不祥事につながったといわれています。
不二家の失敗は、デメリットで挙げた「ワンマン経営」や「公私混同」「後継者の力不足」により引き起こされた代表例です。
「資産所有・経営・家族」のバランスにおいて、家族(自分と息子)の利益ばかりを追求し、経営(従業員)を軽視した結果といえます。
4-2.【ビッグモーター】独裁的なリーダーシップが生んだ過剰なノルマとプレッシャー

2つ目の失敗事例は、中古車の販売・買取会社であるビッグモーターです。2022年頃から発覚した修理費の水増しや不当な保険金請求など、数々の不正は記憶に新しいでしょう。
このような一連の不正は、社長親子による強烈なリーダーシップが悪い方向に働いたことによりもたらされました。
行き過ぎた目標やノルマ設定により、従業員に過剰なプレッシャーを与え、不正が生み出されることにつながったと考えられます。また、厳しい上下関係と成果主義で、人間関係でのトラブルも頻発したようです。
このような状況でも、外部の意見を取り入れなかったためか、改善されず、今回企業風土が明るみになったのです。
ビッグモーターにおいても、社長親子によるワンマン経営が失敗の根本的な原因と考えられます。
不二家同様、こちらも「資産所有・経営・家族」の中で、家族(自分と息子)の利益ばかりを追求し、経営(従業員)をないがしろにしたことが破綻の原因と思われます。
4-3.【大塚家具】親子の確執により社内が分裂

家具量販店である大塚家具のお家騒動も、不祥事ではありませんが、世間を賑わせました。
2009年の社長交代を発端に先代派と新社長派が争うようになり、ブランドイメージが大幅にダウンします。
先代から新社長への事業承継に失敗してしまったわけですが、その原因は両者のビジネスモデルの対立にあります。
先代は従来の高級家具路線を続行したかったのですが、新社長は大手家具量販店の参入に対抗して、カジュアルな路線への変更を望みました。
親子の対立は激化し、ついに社内は二分、修復不可能となってしまったのです。
大塚家具の事例は、まさに「事業承継の失敗」がこじれてしまった代表例です。
「資産所有・経営・家族」の3つ全てが重なり合う部分、特に家族の中で対立が生じたため、全体に大きな影響が及びました。
5.失敗から学ぶ!ファミリービジネスのリスク回避策5つ

前章で紹介した失敗例は、ファミリービジネスを営んでいるなら誰もが陥るかもしれない落とし穴です。
これらの失敗を避けるためには、次のようなリスク回避策に取り組む必要があります。
【ファミリービジネスのリスク回避策】
| 5-1.取締役会を機能させるために社外取締役を置く 5-2.身内に対しても明確な採用・昇格基準を適用させる 5-3.ガバナンスを構築する 5-4.事業承継を見据え後継者を育成する 5-5.後継者は企業文化や価値観を尊重する |
5-1.取締役会を機能させるために社外取締役を置く
まずは社外取締役を置き、取締役会を正常に機能させる必要があります。
取締役会が機能しないと、経営者による独裁が横行しやすくなり、ワンマン経営が止められなくなってしまいます。
取締役会は、業務執行における重要事項を決定したり、全ての取締役の職務をチェックしたりする役割があります。
しかし、経営者が内部の一族で固められ、ほぼ所有者と同一であるファミリービジネスでは、取締役会が正常に機能していないところが少なくありません。前章で紹介したビッグモーターも、取締役会が機能不全だったと指摘されています。
親族ではない第三者を社外取締役に迎えることで、取締役会は本来の機能を持ち、独裁を抑止できます。また、社外の目があることで、健全で公平な社内環境づくりを実現しやすくなるでしょう。
社外取締役を置いても、結局家族役員に丸め込まれてしまっては意味がありません。社外取締役は家族役員と同数以上の人数を置くことが望ましいでしょう。
5-2.身内に対しても明確な採用・昇格基準を適用させる
社内の採用・昇格基準を身内にも適用させ、安易な身内びいきはしないようにしましょう。
身内びいきは社員の不満を募らせるため、他の社員と公平に扱わなければならないからです。
ファミリービジネスでは、経営者の親族が、無条件で縁故入社してくるケースがよくあります。就職活動が上手くいかない姪を不憫に思い入社させてあげるなどがよくある例でしょう。
しかしそれでは、採用試験面接をクリアして入社してきた一般社員は納得しません。入社してきた親族が能力不足であればなおさらです。
昇格に関しても同様です。身内というだけで役職がついていても、社員はついていきません。
5-3.ガバナンスを構築する
ファミリービジネスの成功には、ガバナンスの構築も欠かせません。
ファミリービジネスの場合は、コーポレートガバナンスだけでなく、ファミリーガバナンスも整備する必要があります。
それぞれ分けて見ていきましょう。
5-3-1.コーポレートガバナンスの構築
コーポレートガバナンスとは、企業において透明かつ公正な経営を行える体制のことを指します。

コーポレートガバナンスを整えることにより、社内の不正や不祥事を予防する効果が期待でき、企業に関わる全ての人々(従業員・取引先・顧客も含む)の利益を守ることにつながります。
コーポレートガバナンスを強化するためには、具体的には次の内容に取り組むようにしましょう。
【コーポレートガバナンスを強化する方法】
| ・内部統制の強化(情報の開示や財務状況の報告、コンプライアンス遵守など) ・コンサルティングなど第三者による監視体制の整備 ・社内におけるルールの明確化と周知徹底 ・CEO不参加の取締役会の開催 ・執行役員制度の導入 |
5-3-2.ファミリーガバナンスの構築
ファミリーガバナンスとは、経営者一族の価値観の統一や利害関係を調整する仕組みです。一族の財産を守り、一族が同じ方向を向かって発展していくことを目的として取り組みます。
ファミリービジネスが成功するためには、ファミリーガバナンスも構築する必要があります。3章で述べたとおり、ファミリービジネスの成功には「資産所有・経営・家族」の3つが正常に機能していることが不可欠だからです。
ファミリーガバナンスを強化するためには、具体的には次の内容に取り組むようにしましょう。
【ファミリーガバナンスを強化する方法】
| ・ファミリー憲章(一族が最も重視するルール)をつくる ・一族会議を定期的に開く ・ファミリーオフィスを設立する(次章で詳しく解説) |
5-4.事業承継を見据え後継者を育成する
事業承継を見据え、後継者は早めに候補を決めておくようにしましょう。そして後継者を選出したなら、しっかりと育成に力を入れるべきです。
デメリットの章で述べたように、後継者不在は企業存続の危機に直結します。そして後継者と経営理念を共有しておかないと、事業承継のときにトラブルが起こることも大塚家具の失敗例で紹介しました。
後継者育成について、企業や業種によって異なりますが、後継者には一般的に次のような能力が求められます。
【後継者に求められる能力】
| ・リーダーシップ性 ・コミュニケーション能力 ・時代の変化に対応できる柔軟性とスピード感覚 ・あらゆる苦境に耐えられる忍耐力 ・周囲の状況を素早く把握できる洞察力 |
上記の能力をつちかうためには、次のような方法で経験を積ませるようにしましょう。
【後継者の育成方法】
| ・ジョブローテーション ・現職経営者からの直接指導 ・他社での経験 ・関連会社や子会社への出向 ・社外セミナーへの参加 |
上記の実務に加え、現職経営者としっかり話し合う時間をとり、経営理念や価値観を共有しておくようことも大切です。
後継者育成については下記の記事で詳しく紹介しています。ぜひ合わせてご一読ください。
「親族内承継の後継者育成法|後継者の選択から段階別のポイントを網羅」
5-5.後継者は企業文化や価値観を尊重する
後継者は企業文化や価値観を尊重し、従業員からの支持と信頼を得る努力をすべきです。
若い後継者が従業員になかなか認めてもらえない、というケースはよくあります。従業員に認めてもらえないと、リーダーシップを発揮できず、思うように企業を動かせません。
従業員に認めてもらうためには、積み上げられてきた企業文化や価値観を尊重し、自分もそれにならうことが大切です。
たとえばトヨタでは、4代目の豊田章男氏は「現場第一」を掲げる企業文化に従い、入社時は現場からスタートしています。
反対に、失敗例で紹介した大塚家具では、新社長の先代の価値観や企業の歴史への敬意が不十分であったため、従業員から反発された側面もあります。
ときには企業文化が前時代的であることもあるでしょう。しかしまずはその文化を尊重し、自身も馴染むことが大切です。変革はその後に行うようにしましょう。
6.ファミリービジネスの永続にはファミリーオフィスを検討しよう

ファミリービジネスが末永く発展していくためには、ファミリーオフィスも検討してみましょう。
ファミリーオフィスとは、「一族の永続的な繁栄や成長のために、資産を管理・運用する体制のこと」
を指します。具体的には、一族を対象に、経営や資産運用だけでなく教育・医療・趣味などあらゆる分野においてワンストップでサポートします。
ファミリーオフィスを作ることは、5-3-2.ファミリーガバナンスの構築で紹介した、ファミリーガバナンスを構築するためにも効果的です。
ファミリーオフィスを作ると、具体的に次のようなことも任せることができます。
【ファミリーオフィスのサポート内容(一例)】
| 資産所有 | ・相続対策を行い税負担を軽減する ・遺言書の作成をサポートする ・海外資産の運用をサポートする など |
| 経営 | ・経営について相談に乗り、アドバイスをする(組織再編やM&Aの提案など) ・事業承継をサポートする ・キャッシュフローの見直しをサポートする など |
| 家族 | ・夫婦間トラブルにそなえて婚前契約作成のサポートをする ・子女に最適な教育機関や留学先を探し、手続きをサポートする ・医療機関や介護施設を探し、手続きをサポートする ・旅行プランを組み立て、旅行プランの組立て、手配などの趣味のサポートを行う ・海外移住をサポートする など |
上記の内容はいずれも一族の繁栄のために必要不可欠です。とはいえ忙しい経営者一族が自分たちで行うのは難しく、客観視できないため適切に行えない可能性もあります。
ファミリーオフィスなら、多方面で各分野の専門家と協力して上記の内容を遂行でき、「資産所有・経営・家族」の3つのバランスを最適化をはかることが期待できるでしょう。
ファミリーオフィスについては下記記事で詳しく解説しています。ファミリーオフィスのメリットや作り方についても紹介しているので、気になる場合はぜひあわせて読んでみてください。
「ファミリーオフィスとは?資産家一族の永続的な繁栄に役立つ理由解説 」
| ファミリーオフィスをご検討なら、辻・本郷 ファミリーオフィスへご相談 |
| 当法人は、国内最大手の税理士法人である辻・本郷グループの一員です。税理士として培った知識とノウハウを最大限に活かし、一族に最適な税務・財務戦略をご提供いたします。 たとえば、日本の相続税の最高税率は55%です。資産をできる限り減少させず次の世代へ引き継いでいくためには、長期的なタックス・プランニングが欠かせません。当法人は様々な税負担のシミュレーションをした上で、資産を守る方法を提案いたします。 また、会計士や弁護士など各専門家とも連携しているので、財産形成以外のサポートについても安心してお任せいただけます。 |
7.まとめ
ここまでファミリービジネスのメリット・デメリットについて解説してきました。
最後に本文のポイントをおさらいしましょう。
まずはファミリービジネスのメリットを4つ、デメリットを5つお伝えしました。
【ファミリービジネスのメリット】
| ・経営や事業の決定・変革をスピーディに行える ・長期的な視点で経営を行える ・経営理念に一貫性があり、浸透しやすい ・後継者を計画的に育成できる |
【ファミリービジネスのデメリット】
| ・ワンマン経営になりやすい ・公私混同が起きやすい ・身内と一般従業員の待遇格差が起きやすい ・事業承継に失敗するリスクがある ・後継者不足に陥るリスクがある |
ファミリービジネスの成功のためには、「資本所有・経営・家族」の3つのバランスをとることが大切です。このバランスが崩れてしまうと、デメリットが顕在化し、経営が悪化するおそれがあります。
デメリットが深刻化してしまった結果、失敗してしまったファミリービジネスの事例を3つ紹介しました。
【ファミリービジネスの失敗事例】
| ・【不二家】権力争いにより社員の士気とコンプライアンスが低下 ・【ビッグモーター】独裁的なリーダーシップが生んだ過剰なノルマとプレッシャー ・【大塚家具】親子の確執により社内が分裂 |
最後に、上記の企業の失敗をふまえて、ファミリービジネスのリスク回避策を5つ挙げました。
【ファミリービジネスのリスク回避策】
| ・取締役会を機能させるために社外取締役を置く ・身内に対しても明確な採用・昇格基準を適用させる ・ガバナンスを構築する ・事業承継を見据え後継者を育成する ・後継者は企業文化や価値観を尊重する |
以上、本記事を参考に、ファミリービジネスのメリット・デメリットを理解し、リスク回避策を実行することで、ファミリービジネスが永続的に発展していくことを願っております。
記事の監修
hiratahirata