ファミリーオフィスとは?資産家一族の永続的な繁栄に役立つ理由解説

監修hiratahirata

「ファミリーオフィスってどうなんだろう」

「自分たちに向いているものなのだろうか」

こんな疑問をお持ちではありませんか?

ファミリーオフィスとは、一族の永続的な繁栄・成長のために長期的な目線で資産を管理・運営し、スムーズな事業承継や最適な子供の教育など、ファミリーのために必要となる全てのことをサポートする体制のことを指します。

ファミリーオフィスとは
一族の永続的な繁栄・成長のために長期的な目線で資産を管理・運営し、スムーズな事業承継や最適な子供の教育など、ファミリーのために必要となる全てのことをサポートする体制

ファミリーオフィスでは、自分の世代やその子供のことだけではなく、親族やその子孫たちも含めてひとつの「ファミリー」として捉え、一族全体としての成長を目指します。

「プライベートバンク」や「資産管理会社」のように今ある資産を増やしたり節税したりするだけではなく、将来の繁栄のために一族の想いを盛り込んだルールを決めたり、「事業戦略・教育方針・医療体制・趣味・名声」などあらゆる面においてサポートを行ったりします。

特に、資産50億円以上の富裕層には必要なものだとして近年注目を集めているのです。

しかし「何だかよくわからないから…」とファミリーオフィスの検討を先延ばしにしていると、

「ひとりの失敗のせいで一族の資産が大幅に減ってしまった」

「創業者の死亡をきっかけに親族がバラバラになってしまった」

というような事態を引き起こしてしまうかもしれません。

そんなことにならないよう、この記事では以下のような内容をお伝えしていきます。

この記事でわかること
・ ファミリーオフィスの意義
・ ファミリーオフィスの種類
・ ファミリーオフィスを作るメリット・デメリット
・ ファミリーオフィス活用による成功事例
・ ファミリーオフィスの作り方
・ ファミリーオフィスを作り一族を永続させるためにすべきこと

最後までお読みいただくと「ファミリーオフィスを作り、どのように活用していくべきなのか」を具体的にイメージできるようになるはずです。

一族の資産を適切に守り末永く繁栄させていくためには、今の世代が行動し、仕組みを作っていかなければなりません。

ファミリーオフィスについての理解を深めることで、自分の一族にとって良いものかどうかを判断していきましょう。

1. ファミリーオフィスとは

ファミリーオフィスとは、冒頭でもお伝えしたように「一族の永続的な繁栄や成長のために、資産を管理・運営する体制のこと」をいいます。

莫大な資産を守り、孫子の代まで受け継いでいくことを目的としていることから、一定の目安として資産50億円以上の富裕層向けの仕組みだといえるでしょう。

日本では現状、あまり知られていませんが、欧米では昔から多くの富裕層が活用しているものです。

似たような役割のものとして、「プライベートバンク」や「資産管理会社」がありますが、これらとファミリーオフィスは役割が異なります。

大まかな違いは以下の通りです。

ファミリーオフィス一族の永続的な繫栄のため、金融資産に限らずあらゆる事柄をサポートする
プライベートバンク顧客本人の資産を増やすため運用や管理を行う
資産管理会社不動産や株式などの資産の所有・管理・運用を行う

具体的な違いを知ることで、ファミリーオフィスへの理解をより深めていくことができます。

早速確認していきましょう。

1-1. プライベートバンクとの違い

プライベートバンクとは、「多くの資産を持つ個人を対象に、総合的な資産管理を行う金融サービス」のことを指します。

ファミリーオフィスとプライベートバンクは、どちらも対象顧客の資産を管理し、個別対応のサポートを実施するという点では共通しています。

異なる点としては、以下の通りです。

上記の表のように、プライベートバンクは「顧客本人の短期的な資産運用」をメインで行います。

あくまでも本人の存命中、もしくは子供の代くらいまでの短期的なスパンで資産を増やすために、金融資産の運用を行うことがほとんどです。

しかしファミリーオフィスはもっと未来の子孫のことまで考えて、金融資産の運用だけではなくあらゆる面で必要なサポートを行います。

例えば、「会社を継がせるために子供に相応の教育を受けさせたい」という場合は、下記のような部分まで踏み込んで、最高のプランを提示します。

・どんな教育をすべきなのか
・理想の教育を受けられる環境はどのように整えればいいのか
・どの塾・学校へ行かせるべきなのか

一族の繁栄のためになることであれば、資産運用にとどまらず「事業戦略・教育方針・医療体制・趣味・名声」など全てを支援する点が、ファミリーオフィスとプライベートバンクの最も大きな違いです。

1-2. 資産管理会社との違い

資産管理会社とは、「オーナーの不動産や株式などを管理・運用するための会社」のことです。

「プライベートカンパニー」に近いものであり、役員は資産家本人や家族などが行うケースが多くなります。

ファミリーオフィスと資産管理会社の違いをまとめた表は次の通りです。

資産管理会社は、一般的な会社とは違って資産管理以外の事業は実施しません。「不動産の賃料収入」や「株式の配当収入」などが、メインの収入源となります。

また、資産家やその家族が中心となって会社という形態をとることで、節税や相続への対策を行います。

一方で「ファミリーオフィス」は一族の資産を管理・運用する「体制」のことを指すため、必ずしも会社を設立しなければならないわけではありません。

ファミリーオフィスの場合は、自分たちだけでなく専門家のサポートを受けながら「不動産や株式などの金融資産以外の部分まで含めて資産防衛していく」というのが一般的です。

「ファミリーオフィス」のほうが「プライベートバンク」や「資産管理会社」よりも目指すゴールが高く、幅広い対象・範囲へサポートを行っていくという性質があるのです。

2. ファミリーオフィスの意義

ファミリーオフィスの概要についてはお分かりいただけたと思います。

次は「なぜファミリーオフィスが必要なのか?」という点を解説していきます。

2-1. ファミリーオフィスは「一族の永続的な繁栄」に必要となる

ファミリーオフィスは「一族の永続的な繁栄」のために必要となるシステムです。

個人が事業を展開したり金融資産を守ったりするだけであれば、一般的な事業会社や資産管理会社を作り、「資産の所有」や「経営(運用)」を中心に行えば良いかもしれません。

しかし「個人」ではなく「大きな一族」として資産を所有している場合はそれだけでは不充分です。以下のように「家族」の要素も考慮する必要があります。

資産の所有と、資産の運用や事業の経営だけの場合と比べ、家族という要素が絡むことで、より複雑な問題が生じます。それに対し、

「家族が絡むことによるトラブルの予防や解決を行うことで、資産を適切に防衛できる」 

という点が、ファミリーオフィスの持つ大きな特徴であり、重要視されている理由なのです。

2-2. 資産規模の大きな一族ならとくに「家族」の要素を考慮しなければならない

なぜ資産規模の大きな一族の場合は「家族」という要素を考慮する必要があるのでしょうか。

それは、家族が絡むからこそ発生する独自の問題があり、資産家一族の場合はその資産規模から影響がが大きくなってしまうからです。

大きな一族だからこそ発生しうる問題の例としては以下のようなものがあります。

大きな一族に起こりやすい問題の例
・ 資産の大部分を所有している人の投資ミスや不十分な節税対策などによって、一族全体の資産が減ってしまう
・ 事業を行っている場合に、その方向性について親子や兄弟間でもめてしまい、経営に悪影響が出る
・ 株式の管理が不十分で、事業を他者に乗っ取られる
・ 離婚に伴う財産分与によって、多額の資産を失う

実際に、同族経営の企業として有名な星野リゾートの4代目である星野佳路氏は、インタビューの中で「親子だと、経営方針で違いがあると、互いに譲らない」というコメントを残しています。

また、一族で株の大部分を持つことで会社を所有していたのに、夫の死去で株式を相続した妻が全て売却してしまうと、一族で抱えていた株が分散してしまうことになります。

さらに、一族が受け継いでいくべき財産は、金融資産だけではありません。

ファミリーオフィスでは一般的に「資産」と捉えられやすい「有形資産」だけでなく、以下のような「無形資産」も大切な財産として捉え、次世代へ引き継いでいくことを使命としています。

【ファミリーオフィスが対象とする財産の例】

種類
有形資産1.ファミリーが営む事業
2.ファミリーが営む会社の株式
3.土地、建物などの不動産
4.預貯金、運用商品などの金融資産
5.貴金属、絵画
無形資産1.ファミリーの結束
2.創業者の理念
3.ファミリーの歴史
4.ファミリーが持つ人脈
5.ファミリーの社会的信用、名声

「大きな一族に生じやすいトラブルを防いで一族を永続的に繁栄させたい」

「有形資産だけでなく無形資産まできちんと管理して、未来へ継承させたい」

という場合は、ファミリーオフィスを活用することが重要なのです。

3. ファミリーオフィスの種類4つ

ファミリーオフィスを活用する意義についてはご理解いただけたと思います。

次はファミリーオフィスの種類について解説していきます。

「ファミリーオフィス」とひとことで言っても、実は規模や目的によっていくつか種類があります。一般的には次のように分けられます。

3-1. シングル・ファミリーオフィス

ひとつめの「シングル・ファミリーオフィス」は、特定の一族が自分たちの資産を管理するために設立する組織のことを指します。

一族のためだけに優秀な専門家を多数雇わなければならない分、運営には大きなコストがかかるため、資産規模の大きな一族がこの手法を選ぶ傾向があります。

例えば、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏もシングル・ファミリーオフィスを設立していますが、その従業員は100名を超えるそうです。

さらに運用資産額は12兆円を超えるとされており、非常に多くのコストをかけて資産を増やしていることがうかがえます。

3-2. マルチ・ファミリーオフィス

「マルチ・ファミリーオフィス」とは、単独の一族ではなく、複数の一族の資産を管理する仕組みのことをいいます。

それによって管理コストを抑えることができるため、資産総額1,000億円未満の一族が選ぶことの多い、コストとパフォーマンスのバランスの良い方法です。

資産の目安は100~1,000億円とされていますが、50億円規模の資産でも活用できる「マルチ・ファミリーオフィス」もあります。

3-3. コマーシャル・ファミリーオフィス

3つ目の「コマーシャル・ファミリーオフィス」は、厳密にはファミリーオフィスではありません。

ファミリーオフィスの持つ機能の内、「資産運用」部分だけを、プライベートバンクや金融機関に担わせるものです。

「一族の永続的な繁栄を求める」というよりは、

「自分の代の資産運用をプロに任せたい」

「親族は少なくて問題も生じないので資産管理だけをしてほしい」

というようなニーズを持つ人に利用されることの多いサービスです。

3-4. エンベデッド・ファミリーオフィス

最後の「エンベデッド・ファミリーオフィス」も、厳密にはファミリーオフィスではありません。

こちらは自分たちの小規模な持株会社に、ファミリーオフィスの「資産運用」部分を担わせるものです。

エンベデッド・ファミリーオフィスは、比較的資産の少ないファミリービジネスで利用されることの多い方法です。

本業として事業を営んでいる場合に、それとは別の持株会社に資産運用を行わせることで、本業に対するリスクヘッジをしながら資産を運用できるというメリットがあります。

【有形資産のみに着目せず「家族の問題」を防止しよう】

2. ファミリーオフィスの意義 でもお伝えしたように、多額の資産を持つ一族が正しく資産防衛してくためには、金融資産のみに着目するのではなく、家族が絡むことによる問題を防止することが重要となります。
 
そのため、そういった部分もサポートしてくれる「シングル・ファミリーオフィス」か「マルチ・ファミリーオフィス」のどちらかを選ぶべきだといえるでしょう。

4. ファミリーオフィスを作る5つのメリット

ここまで、ファミリーオフィスの種類について、説明しました。

「自分の場合はマルチ・ファミリーオフィスを活用すべきかな」

「シングル・ファミリーオフィスを目指してみたい」

というようなイメージが沸いてきたと思います。

次に気になるのは「ファミリーオフィスを作った場合にはどんなメリット・デメリットがあるんだろう?」ということではないでしょうか。

まずはメリットを正しく認識することで、自分がファミリーオフィスの仕組みを取り入れた時にどのような恩恵を受けられるのかわかります。

取り入れるべきかそうでないのか、という方針を決めやすくなるでしょう。

この章でお伝えする「ファミリーオフィスを作るメリット」は以下の5つです。

ファミリーオフィスを作るメリット
・ 資産管理・運用を一元管理できる
・ 相続対策が行える
・ 資産家ならではの問題を事前に防止できる
・ 一族に合ったサービスを提供してもらえる
・ 将来を見据えた一族の繁栄をサポートしてもらえる

詳しくは以下の通りです。

4-1. 資産管理・運用を一元管理できる

ひとつめのメリットは、「資産管理のための会計・経理などを一元管理できる」という点です。

ファミリーオフィスがないと、一族の資産を個人がバラバラと管理することになります。

そうすると発生しやすいのが以下のような問題です。

資産管理を個人に任せた場合のデメリット
・ 投資の専門家ではないため投資効率が悪くなる
・ うまい投資の話に騙されて資産を減らすリスクがある
・ 誰の持ち物なのか曖昧な資産について、一族の間でトラブルになる

多くの資産を保有していると、一族の資産を狙う人が自分に都合の良い投資話を持ちかけてきたり、金融機関が自分たち側に都合の良い投資商品を紹介することで利益を得ようとしたりするケースがあります。

「自分はそんなものには騙されない」と思っていても、一族の中の一部の人が了承してしまえば、その分資産が減っていくことになるでしょう。

しかしファミリーオフィスがあれば、一族の資産を専門家に一元管理してもらうことができるため、そうしたリスクから資産を守ることができます。

スケールメリットを活かした投資を行うことで資産を効率よく増やしたり、リスクの少ないポートフォリオを形成したりすることも可能になるでしょう。

個人がそれぞれ好きに資産運用や管理を行うよりも、専門家に任せてきちんと資産防衛できるという点が、ファミリーオフィスを設けることで得られるメリットのうちのひとつです。

4-2. 相続対策が行える

「相続対策が行える」というのも、ファミリーオフィスを活用することで得られるメリットです。

日本は欧米と比較しても相続税が高いため、資産や事業をどのように次世代に引き継いでいくか、という点については日々頭を悩ませている人もいるでしょう。

そういった相続・承継の問題についても、ファミリーオフィスなら優秀な税理士などの専門家に対応してもらえるため、きちんと対策することができます。

税務・法務面を考慮した上で、「現金を不動産に換える」「海外の会社を活用する」などの最適なやり方を提案してもらえるため、安心して相続を迎えることができるでしょう。

4-3. 資産家ならではの問題を事前に防止できる

前の章でもお伝えしたように、大きな一族であればあるほど、一族内での問題が生じやすくなりますが、ファミリーオフィスはそうしたトラブルを防止するという役割も担います。

通常、親子や兄弟・親戚の間で何か問題が発生すると、当事者たちだけで話をしなければなりませんが、そうするとどうしても争いごとは収束しにくいものです。

しかしファミリーオフィスがあれば、対話を引き出す専門家が間に入り、双方の言い分を聞き出した上で、最も良い結果を迎えられるよう調整してもらうことができます。

また、一族の内の誰かが結婚するときには、離婚した時に財産分与で一族の資産が過度に減ってしまうことがないよう、事前に「夫婦財産契約」「パートナーシップ契約」などを行うという対策をとることもできます。

このように、資産家だからこそ生じやすい問題を事前に防ぐことができるというのも、ファミリーオフィスの持つ重要な働きなのです。

4-4. 一族に合ったサービスを提供してもらえる

ファミリーオフィスでは、金融資産の管理に限らず、一族のためになることであればありとあらゆるサポートを行います。

提供されるサービスとしては、例えば以下のようなものがあります。

ファミリーオフィスが提供するサービスの例
・ 最先端の医療を受けられる機関の紹介や受診のサポート
・ 子供の教育方法に関するアドバイスや受験・海外留学の支援
・ セキュリティ面のサポート
・ 介護施設の紹介や入居サポート
・ 引退後のプランの提案と実行支援
・ 社会貢献のサポート(慈善団体の設立や寄付などの手配)
・ 趣味のサポート(美術品の管理・保全、コレクションの取得、旅行の手配)

このように、ファミリーオフィスから自分たちにぴったりのサービスを提供してもらうことで、一族はより豊かで最適な生活を送れるようになります。

4-5. 将来を見据えた一族の繁栄をサポートしてもらえる

ファミリーオフィスが見据えているのは、現在のみではなく将来です。

短期的な目線でしかサポートできないプライベートバンクなどと違って、次世代やその次の世代のことまで考慮して、事業や資産の繁栄を目指した施策に取り組んでいきます。

例えば、家族の伝統や価値観、事業を行っている場合は創設者の想いや成功に至るまでの道のりなどをきちんと引き継いでいくということを大切にします。

途中から一族の仲間に加わった人でも、かなり先の子孫であっても、一族の大切にしたいものを継承しながら資産を守り、その先も繁栄し続けていくことができるようになるのです。

5. ファミリーオフィスを作る3つのデメリット

ファミリーオフィスを作るメリットについてはお分かりいただけたと思います。

しかし、メリットだけでなくその裏面であるデメリットも知っておかなければ、自分たちが本当に取り入れるべきなのかを正しく判断することはできないですよね。

デメリットを知らないまま先走ってしまうと後で「こんなはずではなかった…」と悔やむことになってしまうでしょう。

そのためこの章では、ファミリーオフィスを作るデメリットとして以下の3点をお伝えしていきます。

ファミリーオフィスを作るデメリット
・ 資産規模が小さいとコストを回収できない
・ 意見が分かれると諍いのもとになる
・ 一族に合わないところに依頼するとニーズに合ったサービスを受けられない

ひとつずつ見ていきましょう。

5-1. 資産規模が小さいとコストを回収できない

ひとつめのデメリットは「資産規模が小さいと手間やコストを回収できない」というものです。

ファミリーオフィスの運営には、以下のような多くの優秀な専門家を雇ったり業務を委託したりしなければならないため、費用がかかります。

ファミリーオフィスの運営に必要な専門家の例
・ 資産運用担当者
・ 弁護士
・ 税理士
・ 会計士
・ ファイナンシャルプランナー
・ 医療コーディネーター
・ 教育コーディネーター
・ (事業を行っている場合)経営コンサルタント

実際に、前半でもお伝えしたようにアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏のシングル・ファミリーオフィスは、従業員数が100人以上であるとされています。人件費だけでも10~30億円程度かかっている可能性があります。

100人規模とまでいかなくても、上記のような専門家と、彼らの活動をコントロールする担当者を最低限の人数雇って組織を運営していく場合のコストを検討する必要があります。

一般的に、実務面の年間運用コストは資産の1%程度が適しているとされています。その場合は資産が200~400億円程度あることが目安になります。

もちろん、作る体制の規模や必要とする専門家の種類などによって実際のコストは変わってきますが、自分たちの資産の規模に合ったファミリーオフィスの仕組みを選ばなければ、「思っていたよりもコストがかさんでしまった…」と後悔する場合もあるかもしれません。

5-2. 意見が分かれると諍いのもとになる

「一族の中で意見が分かれると諍いのもとになる」というのも、デメリットだといえるでしょう。

ファミリーオフィスの仕組みは、富裕層にとって多くのメリットがあるものですが、一族の中にはそれを良いと思わない人がいる可能性もあります。

例えば以下のような意見を持つ人がいると、ファミリーオフィスをスムーズに一族の中に取り入れていくのは難しくなります。

ファミリーオフィスに対して否定的な意見の例
・ 無理に資産を増やす必要性を感じない
・ 親族間で金融資産情報を共有したくない
・ 過去の人たちの考えに縛られるようで抵抗がある
・ 外部の人間は信用できないので専門家であっても極力関わらせたくない

一族の中にこのような考えを持つ人が多い場合は、わざわざファミリーオフィスを作ろうという話にはならないでしょう。

導入前には他の親族がどのような考えを持っているのか事前に確認し、意見が異なる場合は説得を試みることが重要になります。

5-3. 一族に合わないところに依頼するとニーズに合ったサービスを受けられない

ファミリーオフィスは、日本ではまだあまり一般的ではない仕組みです。

そのため、サービスを提供している会社や専門家によって、受けられるサービスにはまだまだ大きな差があります。

そうすると、

「ファミリーオフィスと名のついているサービスだったから契約したのに、実質的には資産運用しかカバーできなかった」

「相続対策ばかりが中心で、何世代も先の未来まで見据えた建設的な提案がなされない」

という残念な事態を引き起こしてしまうかもしれません。

そんな状況に陥らないよう、依頼先を選ぶときには、自分たちのニーズをあらかじめ明確にしておくことが重要です。

その上で、「我々の希望を満たすことができるサービスなのか?」「どこまでのサポートが提供されるのか?」をきちんと確認し、納得できると感じたところと契約するようにしましょう。

6. 資産が50億円を超える場合や事業を営んでいる場合はファミリーオフィスの導入がおすすめ

ファミリーオフィスのメリットとデメリットについて詳しくお伝えしてきましたので、「前向きにファミリーオフィスの導入を検討してみようかな」という考えを持ち始めた人もいるのではないでしょうか。

しかし「専属会社を設立するとなるとコストが莫大になりそう…」という不安もあると思います。資産管理会社のような専用の会社を立ち上げなければならないように感じるかもしれません。

ですが、ファミリーオフィスとはあくまでも「一族の永続的な繁栄や成長のために資産を管理・運営する体制」のことです。法人の設立は必須ではありません。

極端な話、外部サービスに頼らなくても「親族の代表が毎年1回集合して一族の会議を行う」というだけでも構わないのです。まずは一族の間で方向性を統一することが大切です。

ただし、「それだけでは解決できない問題がある」「今のうちに次世代が困らないように手を打っておきたい」という場合は、外部の専門家のサポートを得ることができるファミリーオフィスを導入するのが有効だといえるでしょう。

外部の専門家のサポートを受けてファミリーオフィスを作るメリット
・ 客観的な目線でアドバイスを得られる
・ プロの視点で対応できる
・ 一族の中での争いを未然に防止できる

特に、資産総額が50億円を超える場合や、事業を営んでいる場合は、自分たちだけでなんとかしようとするのではなく、専門家によるサポートを受けるべきです。

プロのスキルや調整力によって、一族の誰かの投資ミスで財産が減ったり、親子間の経営方針の違いで事業に悪影響が及んでしまったりするのを防止できるからです。

保有資産が50~1,000億円の範囲内の場合は、資産家一族を対象にファミリーオフィスのサービスを提供する会社が出てきています。

そうしたサービス(マルチ・ファミリーオフィス)を導入するのが最も良い方法でしょう。

7. ファミリーオフィス活用による成功事例

ここまでお読みいただいたことで「資産総額が50億円を超えている場合や、一族で事業を行っている場合は特にファミリーオフィスを活用すべきである」ということはご認識いただけたと思います。

そこで次は、実際にファミリーオフィスを活用している同族企業の例を紹介していきます。

具体例を知ることによって、自分たちが導入した時の未来の姿をイメージしやすくなるでしょう。

世界や日本で、ファミリーオフィスを活用しているといわれている資産家一族には以下のような人たちがいます。

ファミリーオフィスを活用している資産家の例
・ セルゲイ・ブリン氏(Googleの共同創業者)
・ アラン・ベルテメール氏とジェラール・ベルテメール氏(シャネルの共同オーナー)
・ 山内 万丈氏(任天堂の創業家)
・ 村上 世彰氏(村上ファンドの創設者)
・ 佐々木 茂喜氏(オタフクソースの創業家)

中でも、日本でファミリーオフィスを活用して成功している事例として有名なのが「オタフクソース」です。

オタフクソースは創業100年を超える老舗企業で、現在では創業家から8家族が幹部として経営に参画しています。

第一世代から第二世代、第三世代と一族が大きくなるにつれて、通常であれば以下のような問題が発生するものです。

事業を営んでいる場合に生じやすい問題の例
・ 事業承継時の株式の分散
・ 親子や親戚間における経営方針の違いによる軋轢
・ 後継者争い
・ 創業理念の希薄化

しかし同社では、経営幹部に8人の親戚(いとこ同士)が就いているのにも関わらず、大きな揉め事を発生させることなくスムーズな経営を行っています。

さらにその状況に甘んじることなく、

・ 社員には企業理念や行動指針があるのに創業家には明文化されたものがない

・ そうすると声の大きな人が独断で方針を決めるようなことも起こり得る

・ 何か仕組みを作ることで家族としての結束を維持したい

と考え、ファミリーオフィスの仕組みを作ったといわれています。

同社の実施している取り組みや取り入れているルールには以下のようなものがあります。

オタフクソースの取り組み例
・ 「1家族につき入社できるのは1人まで」と決めることで事業に関与する家族の数を制限する
・ 家族間では持ち株比率を平等にする
・ 65歳で現役を引退し、顧問や相談役に就任する
・ 取締役の半数以上を同族以外とする
・ 決めごとは全員が納得するまで議論する
・ 後継者は既得権や相続権目当てではなく本人の興味や可能性をもとに入社するよう、教育を重視する

オタフクソースでは、6代目社長の佐々木茂喜氏が、ファミリービジネスの専門家と一緒にこうした仕組みを導入し、安定した成長を実現しています。

8. ファミリーオフィスの作り方

ファミリーオフィスを活用している国内の実例を知ることで、「やっぱりファミリーオフィスは必要だ」「早速自分たちも導入したい!」と感じた人もいると思います。

しかし、自分に合ったファミリーオフィスの作り方を知らないまま見切り発車で導入してしまうと、「スタートはできたものの、うまく運用できなかった…」という事態を招いてしまうかもしれません。

そこでこの章では「ファミリーオフィスの作り方」としておすすめの方法を2つ紹介していきます。

ファミリーオフィスの作り方
・ 資産管理会社にファミリーオフィスの機能を付加する
・ ファミリーオフィスのサービスを提供している企業や専門家を活用する

自分たちに合ったやり方を選ぶことで、思い通りのファミリーオフィスを実現させていきましょう。

8-1. 資産管理会社にファミリーオフィスの機能を付加する

ひとつめの方法は、「資産管理会社にファミリーオフィスの機能を付加する」というものです。

これは既に資産管理会社などを保有している人におすすめの方法です。

現在行っている資産管理・運用体制はそのまま引き継ぎながら、不足している以下のような部分を追加することで、一族へのサポートをパワーアップさせることができます。

付加する機能の例
・ 事業経営や資本政策の支援
・ 相続・事業承継対策
・ 最高の医療を受けられる環境の整備
・ 後継者に必要な教育のアレンジ
・ 社会貢献活動のサポート
・ 名声の維持や風評被害の回避対応

ただし、上記についてきちんと対応できる人材を探して雇い入れ、彼らをうまくマネジメントするのは、自分たちだけでやろうとすると大変なことです。

そのため、

「現在特に資産管理用の会社は作っていない」

「会社はあるが、満足のいく働きはなされていないと感じている」

「ファミリーオフィスの専門家に頼りたい」

という場合は、次の8-2. ファミリーオフィスのサービスを提供している企業や専門家を活用する 方法をとるのがおすすめです。

8-2. ファミリーオフィスのサービスを提供している企業や専門家を活用する

「ファミリーオフィスを作りたい」という場合に最もおすすめの方法は「ファミリーオフィスのサービスを提供している企業や専門家を活用する」という方法です。

外部の企業や専門家によるサービスでは、以下のようなサポートを受けることができます。

ファミリーオフィスのサービス内容の例
・ ファミリー内での情報収集を行なった上で最適なルール作りをサポートする
・ 資産管理・運用の適切なアドバイスをする
・ 事業経営や資本政策のアドバイスを行う
・ 相続・事業承継対策のアドバイスを行う
・ 上記以外にも、ファミリーに必要な支援(医療・教育・趣味の管理など)を行う

「資産流出の防止」や「節税」などの今目に見えているリスクだけでなく、今は発生していないが今後起こりうる問題(家族間の対立や離婚など)も、専門家が調整役として介入してルール作りなどを行うことで、適切に対処できるようになります。

「ファミリーオフィスを導入したいが、自分たち専属の会社を作るほどではない」

「信頼できる専門家に丸ごとお願いしたい」

という場合は、この方法を選ぶと良いでしょう。

ファミリーオフィスを導入するときの基礎知識について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

→ファミリーオフィスの設立方法と外部専門家の支援内容を詳しく解説!

9. ファミリーオフィスを作り一族を永続させるためにすべきこと

ファミリーオフィスの作り方について解説してきましたので、どんなふうに導入すればいいのか、イメージが湧いてきたことと思います。

しかし、ファミリーオフィスを作るというのはあくまでも通過点であり、最も大きな目的は「一族を永続的に繁栄させること」です。

そのことを認識していないと、ファミリーオフィスを作るだけで満足してしまい、その後の施策が不十分なもので終わってしまうかもしれません。

そんな事態を避けるためにこの章では、「一族を永続させるためにすべきこと」として以下の2つのことを解説していきます。

一族の永続のためにすべきこと
・ ファミリーガバナンスを構築する
・ ファミリーの決まりごとを明文化する

ファミリーオフィスを設立して一族に繁栄をもたらすためにやるべきことを、ここで全て把握していきましょう。

9-1. ファミリーガバナンスを構築する

まず重要なのは「ファミリーガバナンスを構築する」ことです。

ファミリーガバナンスとは、一族がバラバラにならないように価値観を統一したり、関係性を円滑にするための仕組みのことを指します。

ファミリーガバナンスとは
・ ファミリー内の価値観の統一や利害関係の調整・統治を行う仕組み。ルール作りや定期的な会議の開催などを行う。

もしも一族内に何のルールもないと、「自分や自分の子供だけが得をすればいいや」という考えで他の親戚を裏切る人が出てきたり、正しいと思う方針が異なることで争いごとなどが生まれやすくなったりします。

これは、同じ一族のメンバーの中でも、それぞれが様々な背景を持っているために生じやすいことだといえます。

・資産を多数保有している人
・資産は持たないが経営能力に長けている人
・最近婚姻によって外部から入ってきた人

ひとりひとりが自分の利益だけを追求すると、一族として同じ方向に進むことができなくなってしまうのです。

そんな事態を避けるために重要なのが、ファミリーガバナンスです。

具体的には以下のようなことを実施します。

ファミリーガバナンスを構築する際にやることの例
・ 一族のメンバーで話し合い、共通する価値観を見つける
・ どのような方向性に向かっていきたいのか、腹を割って議論する
・ 不公平感の生まれそうなポイントはないか見直す
・ 全員が納得しやすルールを考える
・ 定期的に方向性を見直せるよう、一族の会議の開催頻度や方法を決める

このような方法で価値観を確認し、方向性を同じにすることができたら、次は具体的なルールを明文化するステップに進みます。

9-2. ファミリーの決まり事を明文化する

ファミリーガバナンスを構築した後は、そこで決まったルールを具体化し、「ファミリー憲章」「ファミリー規則」として文書にしていきます。

これらは一族全員が守るべき指針・行動規範として定められるもので、概要は以下の通りです。

ファミリー憲章とは: ファミリーにおける最上位の規範を文書化したものです。不用意な修正は避け、最初に定めたものを永く浸透させていきます。
 
ファミリー規則とは: ファミリー憲章の内容をより具体的に示す、行動レベルの規則のことです。 時代や環境の変化に応じて見直し、より適切なものに変えていきます。

上記のように「ファミリー憲章」は、一族の理念や価値観、行動規範、運営や資産承継の指針、トラブル発生時の対処法、婚姻や教育の方針等を定めて文書にしたものを指します。

さらに一族で会社を経営しているケースでは、家族と事業の関係を明確にしたルールも盛り込む必要があるでしょう。

一族の方針を示した大方針であるため、頻繁に内容を変えるようなことはしません。

一方「ファミリー規則」のほうは、ファミリー憲章で決めた方針を、より具体的な行動レベルに落とし込んだ規則のことを指します。

例えば以下のようなイメージです。

ファミリー憲章とファミリー規則の関係
・ ファミリー憲章
 「一族は能力や性別などに関わらず各家族が全て平等であるものとする」
     ↓
・ ファミリー規則
 「自社株式は5家族が同じ比率で保有する」

このように、ファミリー憲章の方針に従って、その世代が実行すべき行動ルールを定めたものがファミリー規則となります。

これらを制定する際のポイントは、必ず第三者の外部専門家を関らせるということです。

身内だけで作ろうとすると、どうしても年長者や自身の意見を押し通そうとする人に有利な内容になってしまったり、文書として効力を持たない形式にしてしまったりすることがあるため、必ず専門家と一緒に作りましょう。

税理士法人が提供するファミリーオフィスサービス
辻・本郷 税理士法人では、富裕層の方々が安定した将来を享受できるようにするためのファミリーオフィスサービスを提供しています。
 
税理士といっても、会社の税務処理や相続税対策だけを行うのではなく、ファミリーガバナンスの制定から、ファミリー憲章、ファミリー規則の作成までお手伝いし、弁護士などの他の専門家とも連携して、総合的に支援を行います。
  
当税理士法人は、大正時代に創業し、長く富裕層のお客様の信頼を得てきました。多くの富裕層の世代を超えた承継をお手伝いしてきた実績があります。

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10. まとめ

ファミリーオフィスとは「一族の永続的な繁栄や成長のために資産を管理・運営する体制」をいいます。

そのため「親族の代表が毎年1回集合して一族の会議を行う」というだけでも構わないものです。

この記事では、ファミリーオフィスの基礎知識として、まずはその意義を以下のようにお伝えしました。

ファミリーオフィスを作る意義
・ 大きな一族に生じやすいトラブルを防いで一族を永続的に繁栄させることができる
・ 有形資産だけでなく無形資産まできちんと管理して、一族を発展させることができる

さらに、メリットとデメリットとして以下の内容を解説しました。

ファミリーオフィスを作るメリット
・ 資産管理・運用を一元管理できる
・ 相続税対策が行える
・ 資産家ならではの問題を事前に防止できる
・ 一族に合ったサービスを提供してもらえる
・ 将来を見据えた一族の繁栄をサポートしてもらえる
ファミリーオフィスを作るデメリット
・ 資産規模が小さいとコストを回収できない
・ 意見が分かれると諍いのもとになる
・ 一族に合わないところに依頼するとニーズに合ったサービスを受けられない

さらに活用の具体的な例や作り方もお伝えした上で、永続的な一族の繁栄を目指すためには以下を実施すべきであるということもお話ししました。

一族の永続のためにすべきこと
・ ファミリーガバナンスを構築する
・ ファミリーの決まりごとを明文化する

最後までお読みいただいたことで、ファミリーオフィスについてよく知ることができたのではないでしょうか。

一族の末永い発展のために、ぜひともファミリーオフィスの導入を進めていきましょう。

記事の監修

hiratahirata