法定相続分と遺留分 ~相続人の優先順位って?~

遺産を相続する人を相続人といいますが、民法では相続する権利がある人が決められており、順番(優先順位)があります。
誰がいくら相続するか、遺言がある場合の配分はどうなるのか、ご説明します。
執筆:相続センター 渋谷事務所
公開:2020年4月6日
法定相続人とは
民法では、相続人の範囲が決められています。下記のように順番が決まっており、これを法定相続人といいます。
<法定相続人>
相続人の相続順位
第一順位:配偶者と直系卑属(子供=長男、次男、三男、長女、次女など)
第二順位:配偶者と直系尊属(父、母/祖父、祖母)
第三順位:配偶者と兄弟姉妹
配偶者は常に相続人になります。子供がいる場合は子供、子供がおらず父母がいる場合は父母、さらに子供・父母がおらず祖父母がいる場合は、祖父母というように優先順位が付されます。
子供と同時に父母が相続人になることはありません。
法定相続分とは
民法では、遺産を誰がいくら相続するかについて目安が決められています。この民法によって定められた目安を「法定相続分」といいます。
相続人の構成 | 相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
①配偶者と子供 | 配偶者 | 1/2 |
子供 | 1/2 | |
②配偶者と父母(祖父、祖母) | 配偶者 | 2/3 |
父母(祖父、祖母) | 1/3 | |
③配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 | 3/4 |
兄弟姉妹 | 1/4 |
(例)相続人が配偶者、子供3人のケース
配偶者:1/2と(子供:1/2) 子供1人あたり1/6ずつ
※遺産分割において、誰がいくら相続しなさいという決まりはありませんが、もし協議がまとまらない場合は、この「法定相続分」が目安となります
遺留分
相続においては、遺言を作成することにより財産の配分をあらかじめ決めておくことも可能です。
また、この遺言があれば相続人に限らず、孫や生前お世話になった人などに対し遺産を分配することもできます。
ただし、もし遺言により自分の財産をあかの他人に遺贈した場合は、その相続人はその後の生活に困ってしまいます。
そこで、相続人の最低限度の生活保障という観点から、本来相続できる取り分のうち一定額までは遺留分として、その相続人が取得することができます。これを遣留分といいます。遺留分の割合は、以下のようになります。
相続人の構成 | 相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|---|
①配偶者と子供 | 配偶者 | 1/2 | 1/4 |
子供 | 1/2 | 1/4 | |
②配偶者と父母(祖父、祖母) | 配偶者 | 2/3 | 1/3 |
父母(祖父、祖母) | 1/3 | 1/6 | |
③配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 | 3/4 | 1/2 |
兄弟姉妹 | 1/4 | - |
また、兄弟姉妹には遺留分の割合はありません。
(例)相続人が配偶者、兄弟2人で遺言があるケース

子供がいない夫婦で、相続人が奥さんと兄、弟という家族構成の方がいらっしゃいました。
そして、奥さんに財産全て相続させるという遺言があったとします。
兄弟は相続人ではありますが、遺留分の割合はないため、残念ながら財産をもらう権利はありません。
最後に
遺言によって、財産の配分をあらかじめ決めておくことはできますが、あまりに不公平な割合だと、他の相続人から遺留分の権利を主張されてしまう恐れがあります。
そうならないように法定相続分や遺留分を理解し、揉めない相続とすることが、何よりも大事になってきます。