小規模宅地等の特例 ~家なき子特例について~

小規模宅地を相続する場合には、要件を満たせば特例が適用できることは、これまでの相続税コラムでもお伝えしてきました。
今回は、同居をしていなかった相続人が特例を適用できるケースとして“家なき子の特例”をご紹介します。
執筆:相続センター 池袋事務所
公開:2020年9月7日
家なき子特例とは
小規模宅地等の特例のうち被相続人(亡くなられた方)と同居していた相続人がその土地を相続した時は、土地の評価額を最大330m²まで80%減額することができます。
この特例は被相続人と同居していなかった相続人も要件を満たせば使うことができます。
それが、「家なき子特例」です。
なお、この特例については、平成30年度の税制改正で適用条件が変更されていますので注意が必要です。
家なき子特例の適用条件

- 被相続人(亡くなられた方)に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
- その宅地を相続した相続人が、相続の開始3年前までに「自己または自己の配偶者」「自己の3親等内親族」「特別な関係にある法人」が所有する家屋に住んだことがないこと
- 相続開始時において居住している家屋を過去に所有したことがないこと
- 相続税の申告期限までその相続した宅地を所有していること
平成30年度税制改正前は、一人暮らしの被相続人(父または母)と別居している相続人(子)でかつ、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者所有の家屋に居住していなければ家なき子特例の対象となっていました。
しかし、税制改正後は、例えば3親等内親族に該当する父やおじ等の所有する家屋に居住している場合は特例の対象外となりました。(上記適用条件の3)
また、この特例を使うために相続人自らの子に自己所有の家屋を贈与するケースが多々見られましたが、平成30年度税制改正で適用除外となりました。(上記適用条件4)
別居をしているが(ずっと)持ち家がない子がいる場合、その子に居住用の宅地を相続させることで、その宅地を維持してもらうというのが本来の趣旨であったのですが、形式上はうまく条件を満たし、別の活用が散見されるようになったため、適用条件が変更された(厳しくなった)経緯があります。
家なき子特例の適用する際の添付書類
- 相続開始前3年以内における住所または居所を明らかにする書類(相続人がマイナンバーを提出する場合には不要)
- 相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己、自己の配偶者、3親等内の親または特別の関係にある一定の法人の所有する家屋以外の家屋であることを証明する書類
- 相続開始の時において、自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを証明する書類
※2・3については、賃貸借契約書のコピー等
まとめ
小規模宅地等の特例を使うことができれば、大幅に評価額を下げることが可能です。
一方で、使えると思って適用をしたあとに適用対象外となった場合には税額に大きく影響することになります。
小規模宅地等の適用を検討されている方は一度、税理士にご相談してみることをおすすめします。
<相続税コラム>「小規模宅地等の特例」基礎編
<YouTube動画> 小規模宅地等の特例とは