名義財産って何?

平成25年度税制改正における相続税の基礎控除の引き下げ(平成27年1月1日以降に開始する相続より適用)に伴い、他人事ではなくなってきている相続税において、書店などに並んでいる書籍を読むと「名義財産」という言葉を何かと目にします。
今回は相続税申告における「名義財産」についてご説明します。
執筆:相続センター 横浜事務所
公開:2020年7月7日
名義財産の代表例は『名義預金』
親が子供・孫のために、将来役立つようにと、子供・孫の名義で通帳を作成し預金をしている。このようなケースはどこのご家庭でもあるのではないでしょうか。
その後、親が亡くなり相続が起きた場合、相続税の対象と考えられるのは、あくまでも親名義の財産のみで、子供・孫の名義の預金は課税対象外であると考えている方も少なくないのではないかと思います。
しかし、それは違います。このような預金を『名義預金』といいます。
国税庁のHPでも誤りやすい事例⑥として例示が掲載されています。
被相続人以外の名義の財産(預貯金)

Q:私(国税一郎)は、父(国税太郎)の死亡に伴い、父の自宅の金庫を確認したところ、父名義の預金通帳のほかに、私名義の定期預金証書を見つけました。この定期預金は、父の収入から預け入れたものであり、父が管理・運用をしていました。
また、私は過去にこの定期預金について、贈与を受けたことはありません。
A:名義にかかわらず、被相続人(父)が資金を拠出しているなど、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。
その他、同事例では、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の財産と認められる預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族の名義や無記名のものなどの被相続人名義以外のものも名義財産として相続税の申告に含める必要があるとしています。
国税庁 →事例⑥被相続人以外の名義の財産(預貯金)[PDF]
実際にはどのような形で名義財産の判断がされるのか
平成20年10月17日税務訴訟資料第258号-195の判決要旨では、 被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、
- 当該財産またはその購入原資の出捐(しゅつえん)者
お金を出したのは誰か
- 当該財産の管理および運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者
管理をしていたのは誰か
- 被相続人と当該財産の名義人ならびに当該財産の管理および運用をする者との関係
誰が誰のために開設した口座なのか、実際に口座開設の手続きをとったのは誰なのか
- 当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯
名義財産と扱われないようにするための対応策
対応策の1つとしてあげられるのは、生前贈与の手続きを明確に行うということです。
前述したような名義預金がある場合でも、生前において贈与契約書を作成し、贈与を受けた子等が当該財産を管理・運用していれば、名義財産として扱われることはなくなるでしょう。
以前のコラム→「かしこい生前贈与について」
実際にこれは名義財産になってしまう可能性があるのかどうか……ご本人ではなかなか判断ができないケースもあるかと思います。
そのようなご不安があるという方は、ぜひ当センターまでお気軽にお問い合わせください。