これって福利厚生費?税務調査も安心の判断基準

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監修者 宇都宮健太

税務調査の知らせが突然来た!

その時に「今まで使用していた福利厚生費は、本当に福利厚生費と認められるんだろうか?」と不安に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

​「​​今まで社員に福利厚生としてやってきたものが否認されたらどうしよう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、税務調査で福利厚生費と認められない具体的ケースとそのリスク、また認められる具体的ケースについてもご紹介します

さらに、よくある間違えやすい勘定科目の解説もしています。この記事を読むことで、「本当にこれは福利厚生費なのか」判断できるようになり、安心して税務調査をすることができるようになるでしょう。


目次

1.税務調査で「福利厚生費」として認められない経費の特徴

税務調査で福利厚生費として計上しても、認められない場合があります。以下に、その特徴をわかりやすく解説します。

1-1.対象者が限定されている

福利厚生費の対象となる人が一部の人に限定されていると、福利厚生費と認められにくくなります。

福利厚生費は、あくまで「全従業員が公平に受けられる」ことが大前提です。新人だけ、上層部だけ、といった限定はその前提を崩してしまいます。例えば、役員のみが参加する高級旅館での慰安旅行などです。公平性がないと、福利厚生ではなく役員報酬などと見なされて課税対象になるリスクが高まります。

1-2.換金性が高く実質的な給与となっている

換金性が高いものを支給すると、それは給与と見なされ福利厚生費とは認められない可能性があります。

福利厚生費は、従業員の生活を支える間接的な支援であるべきものです。ところが、商品券や金券のようなものは現金とほぼ同じ扱いになるため、給与課税の対象となっていしまいます。例えば商品券一万円を毎月社員に支給していた場合、それは福利厚生費と認められず、従業員の給与とみなされる可能性があります。

1-3.高額すぎるなど経費としての妥当性に欠ける

金額があまりにも高額だと、経費としての「妥当性」が疑われ、認められない可能性があります。

税務調査では、「世間の常識からみて、普通の範囲かどうか」が重要です。従業員のためとはいえ、高額な支出は私的な利用と判断されることがあります。例えば、社内イベントで1人5万円以上かかる豪華な食事会などは、「常識の範囲を超えている」として福利厚生費としては認められないことがあります。金額が「常識ライン」を超えると、経費ではなく役員の趣味や贅沢と判断され経費として認められにくくなります。

1-4.科目名は福利厚生でも、実際は給料や個人のサポートになっている

名前が「福利厚生費」となっていても、実際は給与や、特定の社員への生活支援なら否認されます

税務署は「どんな科目名をつけているか」ではなく「実際にどう使われているか」で判断します。「福利厚生費」と科目名をつけても、実際は従業員の個人的な支援や生活費の代わりなどであれば、給与扱いとなります。例えば「生活に困っている一部社員に家賃補助として現金を支給」した場合、福利厚生費ではなく、その社員の給与として課税対象になることがほとんどです。科目名ではなく「実際にどう使われてたか」で判断されるため、注意が必要です。


2.福利厚生費として認められない具体的ケース

以下に挙げるようなケースは、税務上「福利厚生費」として扱われず、課税対象となったり、経費として否認されるリスクがあるため、特に注意が必要です。

2-1.現金や商品券、換金性が高い物品の支給

現金や商品券、換金性が高い物品の支給は福利厚生費と認められない可能性があります。

現金等の支給が「給与」と見なされるためです。例えばボーナス代わりに全社員に1万円分の商品券を配布した場合や、スーツなどの現品支給をした場合、それらは給与課税の対象となる可能性があります。特にスーツなどのようにその会社でなくても使用できるものは、福利厚生費とは認められにくくなります。換金性の高いものを支給する場合は、給与扱いとなるリスクがあるため十分注意しましょう。

2-2.企業が半分以上負担する食事支給・手当・補助

会社が食費を過剰に負担すると、福利厚生費ではなく給与とみなされます。 ​

食事補助は主に2つの条件を満たす必要があります。

1.従業員が半額以上を負担している

2.会社負担額が一人当たり月額3500円以下になる

例えば社員食堂で1食500円のところ、会社が400円負担し、従業員が100円のみ支払っている場合、税務上は給与扱いになります。食費の補助を福利厚生費として認めてもらうには「従業員が実際にいくら払っているか」が重要なポイントです。

2-3.高額な飲食費

 接待や豪華な飲食は福利厚生費と認められない可能性が高くなります。

従業員全体のためではなく、特定の人のみが対象になりやすく、業務との関連性も疑われるためです。例えば、一部の役員だけでの高級レストランを利用した場合、交際費や給与とされる可能性が高くなります。飲食の場でも「全従業員対象であること」「金額が常識の範囲内である」がキーワードです

2-4.参加者が限定された研修旅行や社員旅行

 一部社員だけを対象にした旅行は福利厚生費としては認められません。

全社員に平等な機会がない場合、公私混同と判断されやすいからです。また、福利厚生費として認められるには次の2つの条件を満たす必要があります。

1.旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

2.旅行の日程が4泊5日以内であること

例えば、営業成績上位者のみの海外研修旅行などは、報酬や給与と見なされる可能性が高まります。員旅行は「全社員対象」が重要です。

2-5.家族従業員だけの支出

家族だけに対する支出は福利厚生とは認められない可能性が高くなります。

社内での公平性がなく、私的な支出と判断されやすいからです。例えば社長の家族だけに特別な慶弔金や社員旅行費用を支給した場合、それは福利厚生ではなく給与扱いとなることがあります。さらに社員が全員家族である会社であっても、それらは税務署から給与と判断される可能性が高いです。家族であっても「従業員の一員」として他の社員と同じ基準で扱うことが重要です。特別扱いは福利厚生とは認められず、税務上のリスクにつながります。

2-6.過度な通勤手当

 通勤手当の支給額が過大だと、福利厚生費としては認められません。

例えば、自宅から職場まで実際には月5,000円の定期代で済むにもかかわらず、一律2万円を支給しているような場合、超過分は福利厚生費とは認められず、給与として課税されます。また、通勤手当には非課税限度額が設けられており、この範囲を超えた分については課税対象となります。通勤手当は実費や非課税限度額に基づいた支給を心がけましょう。

2-7.高額な人間ドック

 通常の範囲を超える高額な人間ドック費用の負担は、福利厚生費になりません。

従業員の健康管理の一環としての健診は認められますが、必要以上に高額な検査は「個人の希望による医療サービス」と見なされるからです。一般的な健診の費用が1万円程度である中、会社が10万円以上の人間ドックを全額負担した場合、その費用は給与と見なされる可能性があります。健康診断の内容と費用は「常識の範囲内であるか」を意識しましょう。

2-8.費用を従業員にそのまま渡した健康診断

健康診断費用を現金で支給することは福利厚生費になりません。

実際の費用を企業が負担することは問題ありませんが、現金で渡してしまうと使途が不明確になり、給与扱いになるからです。従業員に「健康診断代として1万円を支給」した場合、そのお金が本当に診断に使われたか分からず、税務上は給与とされる可能性があります。健診費用は会社が直接医療機関に支払うか、領収書などで精算する形が必要です。

2-9.企業が半分以上負担する住宅や寮の家賃

住宅費を過大に負担すると、福利厚生費ではなく給与とされる可能性があります。

従業員の住居にかかる費用の会社負担には、税務上の厳しい基準があり、適正な家賃や負担割合を超えると、給与課税の対象になるからです。例えば社員寮で一般相場が月5万円なのに、従業員が1,000円しか負担しておらず、残りをすべて会社が支払っている場合、税務上はその差額が給与として扱われます。社宅や寮の家賃設定は、相場や課税ルールに沿った設定が大切です。

2-10.無利息や低利息での貸付金の利息

社員に無利息・低利息でお金を貸した場合、その分は給与として課税されることがあります。

本来もらえるはずの金利を会社が受け取らないのは、社員に金銭的なメリットを与えたと税務上みなされるからです。例えば市場金利が年1.5%のときに、無利息で100万円を貸した場合、利息相当の1万5,000円が給与と見なされることがあります。社員貸付を行う場合は、適正な金利をつけるか、利息相当分の徴収が必要です。


3.福利厚生費が否認された場合の2通りの扱いと発生しうるリスク

福利厚生費として処理した支出が税務署に否認された場合、その内容に応じて「給与」または「交際費」として再分類されます。どちらに振り分けられるかで発生する税務上の影響やリスクが変わるため、注意が必要です。

3-1.「給与」と再分類された場合のリスク

税務上、福利厚生費が「給与」と見なされた場合、企業には給与としての各種義務が発生します。法人税や源泉所得税、さらには社会保険料の再計算など、複数の側面で追徴や追加負担が発生するリスクがあります。

3-1-1.損金不算入となり法人税や源泉所得税などのリスクが発生

福利厚生費が「給与」と見なされると、税務上の取り扱いが大きく変わります

役員に対する支出であれば、その金額は原則として損金不算入となり、課税所得が増えるため法人税の追徴課税が発生します。例えば、本来福利厚生費として500万円を計上していたものが否認され、役員給与と再分類された場合、この500万円は経費と認められず、追加で法人税が課されることになります。

一方、従業員に対する支出であれば、否認されて給与とされた場合でも、その金額自体は会社の経費(損金)として認められます。しかしその場合、会社には源泉所得税の徴収・納付義務が生じ、従業員本人もその金額に対して所得税および住民税の課税対象となります。次の章でも詳しく解説しています。

3-1-2.源泉所得税の不足分を納付・延滞税も負担

給与と再分類されると、会社側に源泉所得税の追納義務が発生します。

本来、給与であれば支給時に源泉徴収が必要ですが、それをしていなかったため、後から不足分を納めなければならないのです。 10名の社員に対する商品券支給が給与と判定された場合、その分の源泉所得税(たとえば10万円相当)に加えて延滞税の支払いが求められます。税務署は従業員ではなく企業に納付責任を求めるため、企業側の負担が非常に大きくなります。

3-1-3.社会保険料を遡及して再計算・追加徴収される可能性

給与と見なされた分については、社会保険料の対象にもなり得ます

社会保険は給与総額に基づいて計算されるため、過去に遡って保険料の差額を精算する必要が出てくるのです。否認された福利厚生費が過去2年間にわたる給与と判断された場合、その期間分の健康保険料や厚生年金保険料を再計算し、従業員・企業ともに追加負担が生じます。 税金だけでなく、社会保険面でも影響が及ぶため、福利厚生費の処理は慎重に行う必要があります。

3-2.「交際費」と分類された場合のリスク

否認された支出が「交際費」と判定された場合には、損金算入の限度額を超える部分が経費として認められず、結果的に法人税が増える可能性があります。

3-2-1.限度額超過分が損金不算入となり追徴課税が発生

福利厚生費が交際費と判断されると、法人税が追加で発生する可能性があります

交際費は法損金として認められる金額に上限があり、それを超えた分には税金がかかるためです。例えば、会社が年間800万円を福利厚生費として計上していても、そのうち300万円が交際費にあたえると判断され、すでに交際費の上限額を使い切っている場合、この300万円は経費にできず、その分だけ法人税の負担が増えることになります。福利厚生費には交際費のような上限がないため、交際費と判断されると税の優遇がなくなり、その分だけ会社の税金が増える可能性があります。


4.税務調査で「福利厚生費」として認められる経費の特徴

税務調査で福利厚生費として認められるためには3つの特徴があります。以下に詳しく説明します。

4-1.全従業員が対象であること

経費が全従業員を対象としていることが、福利厚生費として認められる第一条件です。一部の役員や特定の従業員だけを優遇する支出は、福利厚生ではなく給与や賞与とみなされる可能性が高くなるからです。 「管理職だけの慰労旅行」や「役員のみが利用できる施設の利用料」などは、対象が限定されているため、福利厚生費とは認められません。対象はあくまでも「全従業員」であることが必要です。

4-2.現金の支給ではないこと

福利厚生費は現金ではなく、物やサービスの提供であることが基本です。現金の支給は使途が自由であり、従業員個人の所得とみなされる可能性が高いため、福利厚生費として認められにくくなります。 「親睦会費として1人5,000円を現金で支給」した場合、それは給与扱いになり、課税対象になることがあります。現金ではなく、物品提供や会社が直接支払う形式をとることが望ましいです。

4-3.社会通念上妥当な金額であること

支出額が社会常識の範囲内であることも重要な判断基準です。過度に高額な支出は、福利厚生ではなく私的な支出と疑われる原因になります。社員旅行の費用が1人当たり10万円を超えるような場合、全額が福利厚生費として認められず、一部は給与や交際費とされる可能性があります。常識的な水準での支出であることを意識することが大切です。


5.福利厚生費として認められる具体的ケース

全ての従業員を対象にしていたり、金額や内容が社会通念上、妥当である場合など一定の要件を満たしたしていれば福利厚生費として適切に認められるケースがあります。どのようなケースが福利厚生費として扱われるのか、その具体例を紹介します。

5-1.社員旅行

社員旅行は、条件を満たせば福利厚生費として認められる場合があります。

これは、社員のリフレッシュや職場の親睦を深めることを目的とし、全社員を対象に実施されることが基本です。例えば、年に1回、全社員が参加できる2泊3日の旅行を会社が全額負担した場合でも、以下の2つの条件をクリアしている必要があります。

  • 旅行に参加した人数が、全社員の50%以上であること
  • 旅行期間が4泊5日以内であること

このような条件を満たした上で、内容や実施状況が「福利厚生」として妥当と判断されれば、その社員旅行にかかった費用は福利厚生費として認められる可能性があります。ただし、旅行に参加しなかった社員に対して旅費相当額を現金で支給した場合には、その支給額は給与として課税対象となるため注意が必要です。

5-2.食事補助

従業員への食事補助は、条件を満たせば福利厚生費として認められる場合があります。

これは、社員の健康維持や業務効率の向上を目的とした制度であり、税務上も一定の配慮が認められています。主な条件は次の2つです。

  • 従業員が食事代の半額以上を自己負担していること
  • 会社の補助額が1人あたり月額3,500円以下であること

例えば、会社が従業員に食事を提供する際、1食あたり700円のうち半額の350円を会社が補助するようなケースであれば、上記条件を満たす可能性があります。補助額や社員の負担割合、社員全員が対象であることなどを満たせば、この食事補助は福利厚生費として認められるケースがあります。

5-3.社内イベント

忘年会や創立記念パーティー、懇親会などの社内イベントは、福利厚生費として認められる可能性があります。

これらの行事は、社員同士の親睦を深めたり、モチベーションを向上することを目的としており、支出が常識の範囲内であることが重要です。例えば、忘年会や創立記念パーティー、各部署単位の懇親会などが該当します。全体に公平に行われ、金額や内容が妥当であれば福利厚生費として認められる可能性があります。ただし、ごく少人数だけで行う私的な飲み会などは、実質的に福利厚生費として認められることは難しいため注意が必要です。イベントの目的と実態が適切であれば、社内行事も福利厚生費として扱うことが可能です。

5-4.出張手当

出張時に支給する「出張手当」は、条件を満たせば福利厚生費として処理できることがあります。

出張中は食事代や細かな雑費など、交通費以外の負担もかかります。そうした負担を補うために、会社が一律で支給する「出張手当」は、内容が明確で常識的な範囲であれば課税対象にならないとされています。例えば、出張1回につき日当として3,000円を支給する制度を導入する場合、あらかじめ「出張旅費規程」を作成し、手当の金額や対象、支給条件を明文化しておく必要があります。この規程は、税務調査の際に「手当が合理的であるか」を判断する重要な根拠になります。出張手当に明確な上限はありませんが、支給額が同業種・同規模の他社と比べて妥当かどうかが判断基準になります。一般的には、宿泊を伴う出張で2,000円前後、日帰りの場合で1,000円前後が目安とされています。このように、金額やルールを適切に整えていれば、出張手当も福利厚生費として認められやすくなります。

5-5.社宅

会社が提供する社宅は、条件を満たしていれば福利厚生費として扱えることがあります。

社宅は、従業員の住居費の負担を軽くすることで生活を支援する制度ですが、税務上で福利厚生費として認められるには、一定のルールに沿った運用が必要です。主な条件は、以下の2つです。

  • 従業員から家賃相当額の50%以上を受け取っていること
  • 会社が所有または会社名義で契約している住宅であること

例えば、家賃相当額が10万円の場合、従業員から5万円以上の家賃を受け取っていれば、この要件を満たすことになります。会社が一部を負担しつつ、適正な賃料設定で運用されている社宅であれば、福利厚生費として計上しやすくなります。このように、社宅は内容と運用方法によって、福利厚生費として認められる可能性が高い制度です。

5-6.慶弔見舞金

社員やその家族の慶弔時に支給する金銭も、制度が整っていれば福利厚生費として扱われます。

結婚や出産、病気や災害、不幸があった際に見舞金を支給することは、社員への支援として社会的にも認められており、税務上も福利厚生の一環とみなされやすくなっています。

例えば、結婚祝い金、出産祝い金、傷病見舞金、弔慰金、災害見舞金などが代表的な例です。これらを福利厚生費として認めてもらうには、あらかじめ「慶弔見舞金支給規程」を作成し、支給の基準や金額、対象者を明文化しておくことが必要です。また、全社員や役員にその制度内容が周知されていること、そして支給額が社会通念上妥当な範囲であることも条件になります。このように、制度として整備され、適正な金額で運用されていれば、慶弔見舞金も福利厚生費として認められる可能性が高くなります。

5-7.子育て・介護関連支援

子育てや介護に関するサポートも一定の条件を満たせば、福利厚生費になります。

共働きや高齢者介護負担が増す中、企業が社員のライフイベントを支援する目的で支援を行うことは、働きやすい環境づくりの一環でもあり福利厚生として評価されやすくなってきています。例えば、介護保険対象サービスの利用補助デイサービス・訪問介護の費用補助ベビーシッター利用補助、保育園送迎サービス代行の補助などがあります。導入の際は、制度の透明性と公平性が重要なポイントとなります。このように家庭と仕事の両立を支える取り組みは制度設計と運用の工夫次第で福利厚生費として非課税で認められる可能性が十分あります。

5-8.健康診断や健康促進

社員の健康維持を目的とした取り組みは、内容によっては福利厚生費として処理できます。

例えば、定期健康診断の実施や、インフルエンザ予防接種の費用補助、さらにはスポーツジムの優待利用制度などが挙げられます。これらはすべて、社員の心身の健康を支えるものであり、働きやすい職場づくりの一環と位置づけられます。健康診断に関しては、福利厚生費として認められるために以下のような条件があります。

  • 健康診断などは全社員を対象に受診機会を設けていること
  • 費用は全員分を会社が負担すること
  • 内容・金額ともに健康維持の目的として社会通念上妥当であること

健康支援の取り組みは、会社が費用を適切に負担していれば、福利厚生費として非課税で処理できる可能性が高まります。

5-9.資格取得支援

業務に必要な資格取得を会社が支援する場合、その費用は福利厚生費として処理できる可能性があります。

社員のスキルアップを支援することは、会社全体の業務効率や専門性の向上にもつながります。業務に直接関係する資格であれば、会社がその取得をサポートする費用が福利厚生費として認められるケースがあります。例えば、経理担当者に対する簿記検定の受験料補助や、海外取引のある部署への語学研修費の支援などが該当します。これらは、社員一人ひとりの能力を高めると同時に、会社にとっても明確なメリットがある支出とみなされます。また、福利厚生費として認められるための条件には以下のようなものがあります。

  • その資格や研修が会社の業務遂行上、必要であること
  • その資格がその社員の職務内容に直接関係していること
  • 費用が資格取得に必要な範囲内で適正な金額であること

業務との関連性が明確で、費用も適正であれば、資格取得支援も福利厚生費として処理できる可能性が高くなります。

5-10.オフィスで使用する消耗品

共通で使うオフィスの消耗品も、内容によっては福利厚生費として処理できることがあります。

業務に直接関係しない物品であっても、社員が快適に働ける環境づくりの一環として会社が用意しているものであれば、福利厚生として認められる可能性があります。例えば、休憩スペースに設置されたコーヒーやお茶お菓子類、共用で使う加湿器や空気清浄機などは、社員のリフレッシュや健康維持を目的とした支出とみなされます。社員全体の働きやすさを考慮した備品であれば、福利厚生費として計上できる可能性があります。

5-11.保養所の利用

社員が利用できる保養施設の費用も、条件を満たせば福利厚生費として認められます。

保養施設の利用は、社員の心身のリフレッシュや健康維持を目的としており、働きやすい環境づくりの一環と位置づけられています。こうした福利の一つとして、企業が契約保養所の宿泊費を一部補助するケースがあります。

例えば、会社が提携するリゾート施設の宿泊費用を一泊あたり5,000円まで負担するといった制度がこれに該当します。ただし、このような補助が福利厚生費として認められるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

  • 全従業員が利用できる制度であること
  • 会社の補助が常識的な範囲であり、従業員の利益が過大でないこと(補助額が大きすぎると、給与と見なされ課税対象になる恐れがあります)
  • 誰がどのように利用したかを確認できる記録(利用申請書や報告書等)が残されていること

社員全体に開かれた制度であり、補助内容も適正であれば、保養施設の利用費も福利厚生費として処理することが可能です。

5-12.社内割引

自社の商品やサービスを社員向けに割引提供する制度も、条件を満たせば福利厚生費として認められます。

この制度は、社員の生活支援や会社への親しみを高めたりすることを目的としたもので、過度でなければ福利厚生の一環として評価されます。例えば、自社製品を社員価格で販売するようなケースが該当します。ただし、「通常より安く売っている」ことが給与として扱われないよう、以下のような条件を守る必要があります。

  • 会社の仕入れ値より安く販売しないこと
  • 通常販売価格の3割以内の割引にとどめること
  • 特定の社員(役員など)だけに限定しないこと
  • 転売目的と見なされるほど大量に販売しないこと

このように、適切なルールのもとで行われていれば、社員割引制度も福利厚生費として処理できる可能性があります。


6.福利厚生費と間違えやすい勘定科目

福利厚生費は、他の経費(交際費や会議費など)と性質が似ている場合が多く、何費として処理すべきか迷いやすい項目です。しかし、税務上の扱いには明確な違いがあり、誤って分類すると経費として認められないリスクがあります。以下に福利厚生費と混同しやすい「会議費」や「交際費」との違いについて、ポイントを整理して解説します。

6-1.福利厚生費と会議費の違い

社員向けの軽食や飲み物を用意したとき、福利厚生費か会議費かで処理が分かれることがあります。目的が「日常的な福利の提供」か「会議のための準備」かで勘定科目が異なります。

  • 社員の休憩用に常備するお菓子やコーヒー → 福利厚生費
  • 会議の場で提供する飲み物やお弁当 → 会議費

同じ「食べ物」でも目的によって処理が変わるため、使用目的を明確にして区分しましょう。

6-2.福利厚生費と交際費の違い

福利厚生費と交際費は似ているようで、対象や目的に大きな違いがあります。福利厚生費は社員全員のため、交際費は社外の人との関係づくりや特定の役員・社員への接待が目的です。

  • 社員全員を対象にした忘年会 → 福利厚生費
  • 取引先を招いた懇親会 → 交際費

誰のための支出か(全従業員か、一部または社外か)を基準に判断すれば、分類ミスを防げます。


7.税務調査に強い辻・本郷 税理士法人のサービス活用をおすすめします

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8.まとめ

これらの条件を満たしていれば、税務調査で福利厚生費として認められる可能性は高くなります。

  • 全従業員が対象になっている
  • 現金ではなく物やサービスの提供である
  • 社会通念上、妥当な金額である

逆に、福利厚生費として認められない主な特徴は以下のようなものがあります。

  • 特定の人だけが対象(例:役員限定の旅行)
  • 現金や商品券など換金性が高い支給
  • 高額で常識外の支出(例:1人5万円の宴会)
  • 実態が給与や個人支援になっている

こうした支出は「福利厚生費」としてみなされず、給与扱いとなって課税対象となることがあります。

福利厚生費は従業員の満足度を上げながら適正な節税にもつながる大切な制度です。この記事で紹介した基準を踏まえ、税務調査の準備を進めていきましょう。正しい運用をしていれば、税務調査も安心して迎えることができます。自信をもって、準備を整えていきましょう。