
ある日突然、反面調査が来たら、どう対処すればよいのでしょうか。
税務調査で、調査対象者だけでは十分な情報が得られなかった場合、関係先にも調査が行われることがあります。これを反面調査といいます。
一般的な税務調査とは異なり、反面調査は抜き打ちで行われることが多く、調査に備えて準備することが難しいのが現状です。
本記事では、反面調査の概要や対処法について分かりやすく解説しています。
目次
1.税務調査の反面調査とは?
反面調査は税務調査の一種で、税務調査対象者ではなく、取引先などの調査対象者の関係先に対して行われます。
税務調査の際に、調査対象者から十分な情報が得られなかった場合に行われるのが反面調査です。必要な情報を持っているであろう関係先に調査官が訪問し、帳簿や領収書などの原始書類を確認したり、調査対象者との取引について聞き取り調査が行われます。
なお、反面調査は、関係先を訪問する実地調査のほか、郵送(文書)や電話による調査が行われることもあります。
2.反面調査はいつ来るのか?
反面調査は、税務調査対象者や調査される関係先に対し、事前に通知があるケースは少ないのが現状です。
一般的な税務調査は、調査前に事前通知されます。一方、反面調査は、調査対象者と反面調査される関係先が口裏を合わせたり、書類の隠ぺいなどを防ぐ狙いがあるため、基本的には事前通知されません。
反面調査が入ることを予測するのは、難しいといえるでしょう。
3.反面調査を受ける可能性がある関係先は?
反面調査を受ける可能性がある関係先は、以下の通りです。
| 反面調査の可能性がある関係先 | 調査の内容 |
| 銀行 | 銀行口座 |
| 取引先 | 取引内容や仕入れ、売上げ、支払いの状況など |
| 従業員・元従業員、その家族 | 人件費の状況 |
| 外注先 | 外注費の状況 |
反面調査が行われる場合は何かしらの不備が確認されているため、それに応じた関係先に反面調査が入ります。
4.反面調査の対象になるケース
反面調査が行われるのは、以下のようなケースが考えられます。
- 調査対象者が所得隠しや脱税を疑われている
- 調査対象者が税務調査に協力的ではなかった
- 税務調査で過去の記録が確認できなかった
4-1.調査対象者が所得隠しや脱税を疑われている
税務調査において不審な点があり、所得隠しや脱税などの不正が疑われている場合に反面調査の対象となることがあります。
脱税や所得隠しなど不正の情報を掴んではいるものの、対象者に対する税務調査だけでは裏付けがとれない場合に、関係先に対して反面調査が行われる可能性があります。
所得隠しや脱税などの不正が疑われるのは、以下のようなケースです。
- 帳簿を裏付ける領収書などの書類が残っていない
請求書や領収書などの帳簿の裏付けとなる書類が残っていないことで、架空取引などの不正経理を疑われる可能性があります。 - 現金取引が多く、資金の流れを把握しにくい
記録が残らない現金取引は不正のリスクが高いため、税務調査では厳しくチェックされます。 - 申告内容に一貫性がない
売上や利益が事業規模に合っていない場合や、年度によって申告内容が大きく変動している場合も不正が疑われる可能性があります。
4-2.調査対象者が税務調査に協力的ではなかった
調査対象者が税務調査に協力的ではなく、必要な情報を得られなかった場合に反面調査が行われることが考えられます。
調査員からの質問に答えない、求められた書類の提示を拒む、反抗的な態度をとるなどにより、適切な対応が望めない場合は調査が不十分と判断されます。そうなると、反面調査が行われる可能性が高くなるといえるでしょう。
4-3.税務調査で過去の記録が確認できなかった
税務調査に必要な期間の帳簿や領収書などの書類を確認できなかった場合、反面調査の対象となることがあります。
故意に処分したり悪意を持って隠した場合に限らず、不注意や事故によるデータの消失や書類の紛失、計上漏れなどにより過去の記録が確認できない場合にも、反面調査が行われる可能性があるので注意が必要です。
5.反面調査が来た場合の対処法 7つのポイント
突然、反面調査が来た場合は、以下の7つのポイントを押さえて冷静に対応しましょう。
- 責任者や担当者がいない場合は日を改めてもらう
- 顧問税理士に同席を依頼する
- 調査対象者である取引先に連絡する
- 調査の内容を記録しておく
- 求められた資料のみ提示する
- 聞かれたことには正確に答える
- 調査対象者の隠ぺい工作に協力しない
5-1.責任者や担当者がいない場合は日を改めてもらう
反面調査を拒否することはできません、しかし、状況によっては延期をすることが可能です。
責任者や担当者が不在で調査が難しい場合や、重要な取引や会議を予定しているなど業務に影響がある場合は、調査の日程を調整することが可能です。
調査員が来た場合は、必ず調査目的を確認し、適切な対応をとりましょう。
なお、正当な理由なく反面調査を拒否した場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。(国税通則法 第127条)
5-2.顧問税理士に同席を依頼する
延期などにより反面調査の日程が分かっている場合は、顧問税理士に同席を依頼することも検討しましょう。
調査員に対して顧問税理士から的確な対応をしてもらうことで、不安なくスムーズな調査が可能となります。
5-3.調査対象者に連絡しておく
調査対象者には反面調査が入ることを連絡し、税務調査に協力する旨を伝えておいた方がよいでしょう。
反面調査は、必ずしも不正があった場合に行われるとは限りません。あくまでも調査対象者から必要な内容が確認できなかった場合に行われる調査です。
しかし、税務調査の対象者や反面調査の内容に問題がなかった場合でも、信頼関係に影響が出る可能性も考えられます。誠意ある対応をすることで、その後の影響を最小限に抑えることにもつながります。
5-4.調査の内容を記録しておく
反面調査では、どのような調査が行われたかを記録しておきましょう。
一般的な税務調査とは異なり、反面調査ははっきりとした目的を持った調査になります。今後の取引に影響する可能性もあるので、調査された内容はしっかりと把握しておくことが大切です。書類の提出などを求められた場合は必ずコピーをとり、手元に控えを残すようにしましょう。
5-5.求められた資料のみ提示する
調査官に書類や帳簿を求められた場合は、指示されたものだけを提示します。
調査に協力するうえでは、求められたことに適切に対処することが必要です。基本的に調査官は、税務調査の対象者に関する資料だけを求めます。スムーズに調査を終えるためにも、不要な資料を提示することは避けましょう。
5-6.聞かれたことには正確に答える
調査官から聞かれたことには、誠実に正しく答えましょう。
急な調査のプレッシャーで、「早く答えなければいけない」と焦りを感じることもあるかもしれません。しかし、不確かなことを答えてしまうと、後に悪影響を及ぼす可能性もあります。確認が必要なことについては時間をもらい、落ち着いて正確に答える方がスムーズに進むはずです。
5-7.調査対象者の隠ぺい工作に協力しない
調査対象となっている取引先から「口裏を合わせてほしい」と頼まれたとしても、きっぱりと断ることが必要です。
断ることで、今後の取引への影響が気になるかもしれません。しかし、不正に協力することは良い結果にならないでしょう。
なお、調査員の質問に黙秘したり、偽装、虚偽の情報を伝えた場合は、懲役や罰金などの処罰を受ける可能性があります。
6.【税務調査対象者】反面調査を回避するためのポイントは?
取引先に反面調査が入ると、関係先に迷惑をかけるばかりでなく、不信感を抱かれて信頼関係にひびが入りかねません。そのような事態を避けられれば、それに越したことはないでしょう。
反面調査をされないためには、以下のポイントを押さえて税務調査に望むことをおすすめします。
- 会計データの保存期間を守る
- 税務調査に協力する
- 顧問税理士に同席してもらう
6-1.会計データの保存期間を守る
帳簿や領収書などの原始書類は、必ず法令で定められた保管期間を守りましょう。
保管期間内にもかかわらず、税務調査で求められた帳簿や書類を提示できなかった場合、内容を確認するための反面調査が行われる可能性が高くなります。
不正が疑わしいケースに限らず、故意でなくても、過去の記録が確認できなかった場合には反面調査が行われるリスクがあると考えていいでしょう。
領収書の出費を裏付ける日報や記録、特別な割引をした場合の根拠を示す資料など、その根拠となる書類を併せて保管しておくことで、より調査官を納得させやすくなります。
6-2.税務調査に協力する
税務調査には、誠実に対応するようにしましょう。
十分な調査が行われ、税務調査だけで問題が解決できていれば、反面調査が行われる可能性は低くなります。
6-3.顧問税理士に同席してもらう
税務調査には、顧問税理士に同席を依頼しましょう。
税務の専門家であり、自社のことを熟知している顧問税理士の同席により、税務調査がより円滑に進むはずです。調査官の質問や求めに適切に対応して問題なく税務調査が済めば、反面調査の可能性は低くなります。
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7.反面調査のよくあるQ&A
反面調査でよく聞かれる疑問についてまとめました。
7-1.反面調査はよく行われるのでしょうか?
はっきりとした統計はありませんが、行われた税務調査のうち、1~2割程度が反面調査の対象となっているようです。
反面調査は、「滅多にない」といえるほど稀な調査ではありません。いつ対象になっても困らないよう、知識として反面調査を知っておくことは重要でしょう。
7-2.反面調査が入った関係先に、その理由を知られるのでしょうか?
反面調査の際、調査官から詳細な理由を説明されることはありません。しかし、その理由を推測される可能性はあります。
調査官には、税務調査で知り得た内容に関して守秘義務があります。しかし、反面調査を行うにあたり、誰が調査対象者であるかは伝える必要があります。
反面調査に至った詳細な理由までを説明しなくても、提示を求められる資料や質問、それまでのいきさつから、関係先がその理由を察することも考えられます。
7-3.従業員に反面調査が行われる可能性はありますか?
人件費に問題があると判断された場合は、従業員にも反面調査が行われます。
現在、雇用している従業員ばかりでなく、従業員の家族や、問題があると判断された時期によっては、すでに退職している従業員にも反面調査が及ぶ可能性があります。
7-4.反面調査は、拒否できますか?
反面調査を拒否することはできません。
正当な理由なく反面調査を拒否した場合は、懲役や罰金などのペナルティを受ける可能性があります。
しかし、責任者や担当者が不在で調査が難しい場合や、業務上の都合で当日の実施が難しい場合など、明確な理由があれば延期することができます。
8.税務調査に不安をお持ちの方は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスをご検討ください
反面調査を含む税務調査は、日々正確な会計処理を積み重ねていれば、それほど不安に思うことはないでしょう。
まずは、信頼できる顧問税理士を持つことをおすすめします。
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9.まとめ
反面調査が行われるのは、必ずしも不正があった場合のみとは限りません。何かしらの理由により書類や会計データを失ってしまったなど、やむを得ない事情があることも考えられます。
そうは言っても、反面調査は関係先との信頼関係に影響を及ぼす可能性があることも否定できないでしょう。
いつ来るか分からない反面調査に不安を抱える人もいらっしゃるかもしれません。しかし、基本的なルールを守り、適切な会計処理を行っていれば、税務調査や反面調査の対象になった場合でも恐れる必要はありません。
いざという時に慌てないよう、まずは反面調査について知っておいていただきたいと思います。


