
国税局の査察調査はある日突然、予告なしにやってきます。
テレビのニュースなどで見る、国税局の大勢の調査員による段ボール箱での証拠の押収が思い浮かぶ方もいらっしゃると思いますが、実際に国税局の査察調査がどんなものなのか、税務調査とどうちがうのかなど、よくわかっていない方のほうが多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、国税局の査察調査とは悪質かつ重大な脱税を摘発し、刑事告発を目的とする強制調査です。裁判所の令状に基づき事前通知なしで実施され、証拠を押収して脱税の実態を解明します。
この記事では、国税局による査察調査とはどんなものなのか、査察調査に入られたらどう対応すべきか、実際の査察調査事例、税務調査との違い、査察調査の流れや査察調査を受けないための対策まで詳しく解説していきます。
ぜひご一読ください。
目次
1.国税局の査察調査とは
ではまず、国税局による査察調査とはどんなものなのか見ていきましょう。
査察調査はいつ実施されるか | 脱税の疑いが強まったタイミング |
査察調査はどこで実施されるか | 対象者の会社や自宅など、関係先すべてで一斉に実施 |
誰が査察調査をするか | 国税局の査察部門、通称「マルサ」の専門チーム |
何を査察調査するか | 重大な脱税行為があったかどうかの証拠 |
なぜ査察調査は行われるか | 悪質かつ重大な脱税を取り締まるため |
1-1.査察調査はいつ実施されるか
国税局の査察調査は、脱税の疑いが強まったタイミングで実施されます。突然やってくるのが特徴で、事前通知はありません。通常の税務調査の後や、密告・告発・情報提供などに基づいて実施されるケースもあります。
1-2.査察調査はどこで実施されるか
国税局の査察調査は、対象者の会社や自宅など関係先すべてに、証拠を隠滅されないよう一斉に入ります。また関係者の供述を得るために、国税局の取調室で事情聴取が行われることもあります。
査察調査対象となる場所 | 会社のオフィス、倉庫、自宅、関係会社など |
査察調査対象となるもの | パソコン、金庫、スマホ、クラウド上のデータなど |
1-3.誰が査察調査をするか
国税局の査察調査は、税務署ではなく、国税局の査察部、通称「マルサ」の専門チームが行います。多数の職員が同時に来ることも珍しくありません。ニュースなどで見る、国税局の大勢の調査員による段ボール箱での証拠の押収は国税局の査察調査です。
1-4.何を査察調査するか
国税局の査察調査では、重大な脱税行為があったかどうかの証拠を調査し押収します。財務・帳簿、取引先・関係者、国際取引、電子データ、そのほかの物的証拠など、以下のようなものを徹底的に調査します。
財務・帳簿の調査 |
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取引先・関係者の調査 |
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国際取引の調査 |
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電子データの調査 |
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物理的証拠の調査 |
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1-5.なぜ査察調査は行われるか
国税局の査察調査は、悪質かつ重大な脱税を取り締まるために行われます。悪質かつ重大な脱税とは、意図的かつ組織的に税金を逃れる行為を指します。脱税額が数千万円〜億単位が目安とされています。
また一般の納税者に対しては、「ルールを守らなければ厳しい処分を受ける」という警鐘を鳴らし、申告納税制度の健全性を維持する役割も果たしています。刑事告発を通じて懲役刑や罰金刑を科すことにより、脱税行為の再発防止と抑止効果を狙う役割もあります。
2.国税局の査察調査に入られた時の対応のポイント
国税局の査察調査は国税通則法第11章に基づく強制調査であり、拒否することはできません。国税局の査察調査に入られた時、多くの場合国税査察官が示す令状を見て初めて査察部による調査を知ることになり、多くの方は突然の出来事に茫然自失となってしまいます。そんな状況でも、これだけは押さえておいてほしい対応のポイントが3つあります。
・冷静に対応し、無用な発言をしない
・物理的な妨害をしない
・なるべく早く査察調査に強い税理士と弁護士を立てる
2-1.冷静に対応し、無用な発言をしない
国税局の査察調査に対しては、感情的になったりせずできる限り冷静に対応します。慌てて証拠隠滅を図ったりした場合、かえって不利になる可能性も考えられます。また、軽率な回答は避け、答えるべきか迷った質問には「確認して後ほど回答する」と対応します。
2-2.物理的な妨害をしない
国税局の査察調査において、捜索や差押を妨げると法的トラブルや刑事責任に発展することがあります。国税局の査察調査は国税犯則取締法に基づいて行われるため、調査の妨害や拒否は刑罰の対象となることがあります。
2-3.なるべく早く査察調査に強い税理士と弁護士を立てる
国税局の査察調査を受けたその日の内か翌日には査察調査に強い税理士と弁護士を立てるようにします。税理士や弁護士とともに、押収された物品の一覧表である領置目録と聴取を受けた際の内容から、今後の対応方針を決定します。
国税局の査察調査は短くて数か月、場合によっては1年続くこともあります。税理士・弁護士のサポートを受けながら戦略的に準備を進める必要があります。
査察調査に強い税理士とは
査察調査に強い税理士とは、通常の税務調査を超えた、「マルサ(国税局査察部)」の厳しい調査に対応できる、特別なスキルや経験を持った税理士です。具体的には以下のような税理士を指します。
1. 国税局OB
国税局で勤務していた経験がある税理士は、査察調査の手法や考え方を熟知しています。
2. 弁護士とスムーズに連携できる
査察調査は通常、脱税の疑いがある重大な事案に対して行われます。そうした案件では、弁護士と連携して調査対応・修正申告・起訴回避などの戦略を練る必要があります。
刑事告発に発展する可能性があるため、税務だけでなく刑事弁護に強い弁護士と連携がスムーズで、ワンストップで対応できる体制を持っている税理士は安心感があります。
3. 修正申告・重加算税の交渉スキルがある
査察調査の結果、重加算税や刑事告発が検討される場面で、適切な修正申告や説明を行い、課税処分を軽減・回避できるスキルはとても重要になります。
3.査察調査が入ると告発される可能性が高い
国税局の査察調査に入られたら、7割程度の高い確率で検察に告発されます(令和5年の告発率は66.9%、令和元年から4年まで全ての年で70%を超える)。
国税局が強制で査察調査をするために必要な裁判所からの令状は、ある程度脱税の証拠を提出しないと発布が受けられません。国税局が査察調査に入る時点で、事前の内偵調査などを通じてある程度脱税の証拠は掴まれています。
国税局の査察調査が入ったら、告発後の検察官による捜査まで見通した対策が必要になると考えられます。
4.国税局の査察調査事例
ではここで、令和5年度の実際の国税局の査察事例を事案ごとに見ていきましょう。令和5年度の国税局の査察調査では、査察調査151件、検察庁に告発されたのは101件、告発された脱税総額は約89億円に上ります。
4-1.消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税事案について積極的に取り組み、27件告発されています。消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案など、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案は16件が告発されています。
【消費税事案例1】
同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした。
【消費税事案例2】
輸出物品販売場の許可を受けたコンビエンスストアにおいて、虚偽のパスポート情報を用いて免税商品を販売したと装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした。
4-2.無申告事案
納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告事案について積極的に取り組み、16件告発されています。うち、不正行為はないものの、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告逋脱(ほだつ)事案は11件が告発されています。
【無申告事案例1】
アフィリエイト事業により収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、法人税を免れていた。
【無申告事案例2】
タトゥースタジオを経営するとともに、自らタトゥーの施術を行うことで収入を得ていたにもかかわらず、知人や親族名義の預金口座を使用して所得を隠匿した上で、所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、所得税を免れていた。
4-3.国際事案
経済社会のグローバル化の進展に伴い、国際取引を利用した脱税への対応が求められる中で、外国法人を利用して不正を行っていた事案や海外に不正資金を隠していた事案などの国際事案に積極的に取り組み、23件告発されています。
【国際事案例1】
虚偽の株式譲渡契約書を作成して、自己が所有する未公開株式を自らが主宰する海外法人へ譲渡したと装い、未公開株式の譲渡収入の一部を海外法人の収入であるとして、所得税を免れていた。
【国際事案例2】
実質経営する法人において、架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れ、得た資金の大半を海外における生活費やギャンブルに充てていた。
4-4.社会的波及効果の高い事案
消費税事案、無申告事案、国際事案のほかにも、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組まれています。
【社会的波及効果の高い事案例1】
脱税請負人が、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者を勧誘し、納税者らが当該スキームを利用して法人税及び消費税を免れていた。
【社会的波及効果の高い事案例2】
インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた。
5.税務調査と査察調査はどう違うのか
国税局の査察調査がどんなものなのか、さらに実際の査察事例まで見てきましたが、国税局の査察調査は税務調査とはどうちがうのかあいまいな方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、税務調査と査察調査の違いについても見ていきましょう。
税務調査と査察調査の大きな違いは、税務調査は行政的な確認手続きであるのに対し、査察調査は刑事事件としての側面を持つ点です。
税務調査 | 査察調査 | |
管轄 | 税務署 | 国税局査察部 |
調査実施の根拠となる法律 | 国税通則法 | 国税犯則取締法 |
調査の目的 | 納税者が行った申告内容が正しいか確認するため | 「脱税行為」を摘発し刑事責任を追及するため |
調査の事前通知 | あり | なし |
調査の強制力 | 任意 | 強制 |
ペナルティ | 過少申告加算税 無申告加算税 重加算税 延滞税など | 過少申告加算税 無申告加算税 重加算税 延滞税など +刑事罰 |
5-1.査察調査と税務調査では管轄が違う
税務調査と査察調査では、そもそも管轄が異なります。税務調査は各税務署の職員が行うのに対し、査察調査は国税局査察部(マルサ)の調査官が調査を行います。
5-2.調査実施の根拠となる法律が違う
税務調査と査察調査では、調査実施の根拠となる法律も異なります。税務調査は国税通則法、 査察調査は国税犯則取締法に基づき実施されます。
5-3.調査の目的が違う
税務調査の目的は、納税者が行った申告内容が正しいかを確認し、申告内容に誤りや漏れがあればそれを是正することにあります。
それに対して査察調査の目的は、悪質かつ故意に納税義務を免れようとする「脱税行為」を摘発し、刑事責任を追及することにあります。これは刑事手続きの一環として行われる強制調査であり、そのため、裁判所の令状に基づいて家宅捜索や証拠の差し押さえなどが実施されます。
5-4.事前通知の有無が違う
税務調査は事前通知があり、事前通知が入った後、税務署と調査実施日を調整していきます。税務調査の実施日は、法人や個人事業主にとって都合の良い日程に合わせてもらうことができます。
それに対して査察調査は事前通知がなく突然やってきます。任意調査のように事前通知を行うと逃亡や証拠隠滅のおそれがあるためで、日程調整などは認めてもらえません。
5-5.強制力が違う
税務調査と査察調査では、強制力も異なります。税務調査は国税通則法に基づいた任意調査です。税務署の職員が帳簿や書類の提示を求めることができますが、同意なしに強制的に押収することはできません。
それに対して査察調査は国税犯則取締法に基づいた強制調査です。裁判所の令状を取得した上で、査察官が企業や関係者の自宅・取引先などに臨場し、帳簿や書類、電子データなどを押収することが可能です。
5-6.ペナルティが違う
税務調査では、調査の結果申告漏れや誤りが判明した場合、修正申告を求められ追徴課税が発生します。具体的には、過少申告加算税や無申告加算税、延滞税が課されるほか、悪質な場合には重加算税が適用されることがあります。
それに対して、査察調査では、調査の結果脱税の証拠が揃えば検察庁に告発され、刑事罰が科される可能性があります。刑事罰には罰金刑や懲役刑が含まれ、特に悪質なケースでは実刑判決が下されることもあります。
6.国税局の査察調査の流れ
では、国税局の査察調査はどのように行われていくのでしょうか。実際の査察調査の流れを見ていきましょう。
①税務署による税務調査から国税局査察部の査察調査への引継ぎ
②国税局査察部による調査
③裁判所の令状に基づく国税局査察部による査察調査
④査察部による取調べ、調書作成
⑤検察への告発
⑥検察による捜査
⑦検察官面前調書の作成
⑧検察による起訴・不起訴
⑨地方裁判所(一審)の刑事裁判
①税務署の税務調査から国税局査察部の査察調査への引継ぎ
税務署による通常の税務調査で重大な脱税の疑いが認められる場合、国税局査察部による査察調査に案件が引き継がれます。情報提供や内部告発なども査察調査につながることがあります。
②国税局査察部による調査
国税局査察部は対象者の財務状況、過去の税務申告内容、取引先の情報などを水面下で収集し、捜査の準備を進めます。この段階では対象者には通知されません。
③裁判所の令状に基づく国税局査察部による査察調査
裁判所の令状を取得し、国税局査察部が企業・関係者の自宅・事務所・取引先などへ一斉に臨場調査を実施します。帳簿、契約書、電子データなどの証拠品を押収します。
④査察部による取調べ、調書作成
関係者に対する事情聴取を実施し供述調書を作成します。対象者は黙秘権を持ちますがどのように対応するかは弁護士と相談することが重要です。
⑤検察への告発
査察結果を精査し、脱税の証拠が十分に揃った場合、国税局査察部は検察庁に告発を行います。告発率は約70%と高い水準にあります。
⑥検察による捜査
検察官がさらに証拠を分析し、関係者に対して追加の事情聴取を実施します。脱税額や悪質性などを総合的に判断し、起訴の可否を決定します。
⑦検察官面前調書の作成
検察官が関係者と直接面談し、供述内容を記録した「検察官面前調書」を作成します。これは裁判で重要な証拠となります。
⑧検察による起訴・不起訴
証拠が十分である場合は起訴され、裁判に進みます。不起訴となる場合は証拠不十分または情状酌量が考慮されたケースです。
⑨地方裁判所(一審)の刑事裁判
裁判で検察が証拠を提示し、弁護側と攻防を繰り広げます。有罪となった場合、罰金・懲役刑が科されることがあります。判決に不服がある場合は控訴が可能です。
7.国税局の査察調査を受けないためには
国税局の査察調査の対象とならないようにするためには、日頃から対策を立てておくことが重要です。どのようなことに気をつけるべきなのか、7つ見ていきます。
・適正な申告・納税を行う
・帳簿や領収書の保存をしっかり行う
・現金取引を減らし、透明性を高める
・交際費や外注費の使い方に気を付ける
・複数の名義・口座の使用を避ける
・急激な利益変動や不自然な資産増加を避ける
・定期的に税理士に相談し、第三者チェックを受ける
7-1.適正な申告・納税を行う
国税局の査察調査を受けないためには、一番大事なことは適正な申告と納税を行うことです。売上や経費を適切に計上する、架空取引や過少申告は行わない、消費税や源泉所得税の納付は遅延しないなど、普段からきちんと税務処理を行うことが大切です。
7-2.帳簿や領収書の保存をしっかり行う
国税局の査察調査を受けないためには、帳簿や領収書の適切な保存も不可欠です。帳簿や領収書の管理を徹底することで、税務調査の際に疑念を持たれないようにします。
帳簿や書類の保存期間は、原則として7年間です。また、領収書が不自然に多かったり、日付がずれていることがないように心がけましょう。また、会計ソフトなどを活用し、電子データで管理することで、誤りの防止と証拠の保存を強化することにつながります。
7-3.現金取引を減らし、透明性を高める
現金取引を減らし透明性を高めることで、国税局の査察調査の対象となる不審な取引と疑われるリスクが減らせます。
銀行振込や電子決済を活用して取引履歴が残るようにする、不正な資金移動と疑われやすい現金での大口取引を避けるなど、取引の透明性を確保するようにしましょう。
7-4.交際費や外注費の使い方に気を付ける
国税局の査察調査を受けないためには、交際費や外注費の使い方に注意することも重要です。これらの費用は税務調査で重点的にチェックされる項目であり、不適切な処理があると査察調査の対象となる可能性があります。
親族や関係者への外注費は架空請求・名義貸しと疑われやすく、接待交際費の私的利用は領収書をチェックされてすぐにバレます。交際費や外注費の適正な管理を徹底するようにしましょう。
7-5.複数の名義・口座の使用を避ける
複数の名義や口座を使用すると、資金の流れが不透明になり、国税局の査察調査の対象となるリスクが高まります。特に、家族や他人名義の口座利用すると隠蔽と見なされやすいです。資金管理を明確にし、透明性を高めることが重要です。
7-6.急激な利益変動や資産増加は理由を明確にする
急激な利益変動や資産増加も、国税局の査察調査の対象となるリスクを高める要因の一つです。高級車・不動産の購入などがきっかけで調査対象になるケースもあります。
急激な利益変動がある場合はその理由を明確に説明できるよう準備する、不動産や高額な設備投資を行う際は購入資金の出所を明確にすることを心掛けましょう。
7-7.定期的に税理士に相談し、第三者チェックを受ける
国税局の査察調査を避けるためには、定期的に税理士と相談し、第三者チェックを受けることが非常に重要です。専門家の視点で税務処理の適正性を確認し、問題を未然に防ぐことができます。自己判断でグレーゾーンの処理をすることはやめましょう。
8.お困りの際は辻・本郷 税理士法人にご相談を
ここまで、国税局による査察調査とはどんなものなのか、査察調査に入られたらどう対応すべきか、実際の査察調査事例、税務調査との違い、査察調査の流れや査察調査を受けないための対策まで見てきました。
国税局の査察調査は悪質かつ重大な脱税を摘発し、刑事告発を目的とする強制調査です。査察調査に入られた場合には、7割程度の高い確率で検察に告発されます。査察調査は短くて数か月、場合によっては1年続くこともあります。税理士や弁護士のサポートを受けながら戦略的に準備を進める必要があります。
国税局の査察調査を不安に思われた方はぜひ一度、辻・本郷 税理士法人にご相談ください。多くの国税庁OBが在籍する辻・本郷の税務顧問サービスなら、グループ会社であるTH弁護士法人と協力・連携し、より迅速に適切なアドバイスとサポート提供を提供できる体制を整えております。
9.まとめ
ではここまでの内容をもう一度まとめます。
国税局の査察調査とはどんなものか?
査察調査はいつ実施されるか | 脱税の疑いが強まったタイミング |
査察調査はどこで実施されるか | 対象者の会社や自宅など、関係先すべてで一斉に実施 |
誰が査察調査をするか | 国税局の査察部門、通称「マルサ」の専門チーム |
何を査察調査するか | 重大な脱税行為があったかどうかの証拠 |
なぜ査察調査は行われるか | 悪質かつ重大な脱税を取り締まるため |
国税局の査察調査に入られた時の対応のポイントは?
・冷静に対応し、無用な発言をしない
・物理的な妨害をしない
・なるべく早く査察調査に強い税理士と弁護士を立てる
税務調査と査察調査はどう違うのか?
税務調査 | 査察調査 | |
管轄 | 税務署 | 国税局査察部 |
調査実施の根拠となる法律 | 国税通則法 | 国税犯則取締法 |
調査の目的 | 納税者がおこなった申告内容が正しいか確認するため | 「脱税行為」を摘発し刑事責任を追及するため |
調査の事前通知 | あり | なし |
調査の強制力 | 任意 | 強制 |
ペナルティ | 過少申告加算税 無申告加算税 重加算税 延滞税など | 過少申告加算税 無申告加算税 重加算税 延滞税など +刑事罰 |
国税局の査察調査の流れは?
①税務署による税務調査から国税局査察部の査察調査への引継ぎ
②国税局査察部による調査
③裁判所の令状に基づく国税局査察部による査察調査
④査察部による取調べ、調書作成
⑤検察への告発
⑥検察による捜査
⑦検察官面前調書の作成
⑧検察による起訴・不起訴
⑨地方裁判所(一審)の刑事裁判
国税局の査察調査を受けないためには?
・適正な申告・納税を行う
・帳簿や領収書の保存をしっかり行う
・現金取引を減らし、透明性を高める
・交際費や外注費の使い方に気を付ける
・複数の名義・口座の使用を避ける
・急激な利益変動や不自然な資産増加を避ける
・定期的に税理士に相談し、第三者チェックを受ける
国税局の査察調査を不安に思わないために、一番大事なことは適正な申告と納税を行うことです。普段からきちんとした税務処理を心がけましょう。