
会社を経営していると、様々な理由によって税金を滞納せざるをえない状況は起こりうるものです。
例を挙げますと、事業拡大のための先行投資で現金が一時的に不足する、主要取引先の倒産で入金が減り納税資金を確保できないなどが考えられます。この状況を打開するために融資を受けて資金調達をしようと考えた時、
「税金滞納中でも日本政策金融公庫や銀行から融資はしてもらえるのだろうか?」
このような疑問をお持ちになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言いますと、税金を滞納している場合には融資は受けられません。
では税金を滞納している場合は融資を諦めるしかないのでしょうか。この記事では税金滞納時の対応策や融資以外の資金調達方法などを解説していきます。ぜひご一読ください。
目次
1.税金を滞納していると融資は受けられない
繰り返しになりますが、税金を滞納している場合には融資は受けられません。日本政策金融公庫の融資の場合と銀行の融資の場合をそれぞれ見ていきます。
1-1.日本政策金融公庫の融資の場合
日本政策金融公庫の融資申請では、領収印のある税金納付書の控え(口座振替の場合は記帳された通帳)の提出が求められるため、税金を滞納していると日本政策金融公庫からの融資は受けられません。日本政策金融公庫は国が100%出資する公的金融機関であり、政策的支援を目的として融資を行うため、税金を滞納している場合には経営者の信頼性に疑念をもたれ、制度上公的資金で支援するのは不適切と判断されます。
1-2.銀行の融資の場合
銀行の融資申請でも納税証明書の提出が求められるため、税金を滞納していると銀行からの融資は受けられません。銀行は営利目的で融資を行うため、税金を滞納している場合には返済能力と信用力に欠けると判断されます。
2.税金を滞納している場合の対応策
では、税金を滞納している場合は融資を諦めるしかないのでしょうか。税金を滞納している場合の対応策としては、以下の3つの方法が考えられます。
2-1.税金の滞納を解消する
融資を再検討してもらうには税金の滞納を解消するのが1番です。支払える余裕があれば、速やかに納税手続きを進めましょう。
2-2.税金の滞納額を減らしていく
税金の滞納をすぐに解消することが難しい場合は、税務署や自治体に相談し納税の猶予制度を利用することができます。納税の猶予制度を利用して税金を分割納付をすることで、税金の滞納額を減らしながら日本政策金融公庫や銀行からの信頼を回復できるよう努めます。
納税の猶予制度には徴収猶予と換価の猶予があります。どちらも誠実に納付する意思がある人を救済するための制度です。それぞれどのような制度なのか東京都主税局を例に見ていきましょう。
| 徴収猶予 | 換価の猶予 | |
| 猶予の内容 | 納期限内に納付することが難しい場合に納期限を延長する | 既に財産の差押さえが発生している場合に差押財産の売却(換価)を一時停止する |
| 猶予を受けられる条件 | ・納税者が営む事業について、著しい損失が生じた場合 | ・都税を一時に納税することによって、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある場合 |
| 猶予期間 | 最長1年 ※やむを得ない理由により最長2年まで延長できる場合あり | 最長1年 ※やむを得ない理由により最長2年まで延長できる場合あり |
| 納付方法 | 猶予期間内での分割納付 | 猶予期間内での分割納付 |
| 延滞金 | 猶予の理由により全額または一部免除 | 一部免除 |
| 申請に必要な書類 | ・徴収猶予申請書 ・財産収支に係る書類 ・猶予に該当する事実があることを証する書類 ・担保提供に必要な書類(担保提供が必要となる場合のみ) | ・換価の猶予申請書 ・財産収支に係る書類 ・担保提供に必要な書類(担保が必要となる場合のみ) |
| 申請期限 | 納期限まで | 納期限から3か月以内 |
■徴収猶予
徴収猶予は、税金の納付期限を猶予してもらう制度です。猶予を受けられる条件を満たしていれば、最長で1年間、税金の納期限を延長することができます。納期限を延長することによる延滞金も、猶予の理由により全額または一部免除してもらえます。この制度を利用することで、一時的な資金難であれば乗り切ることができます。
■換価の猶予
換価の猶予は、税金を滞納して差押えられた財産(預金・売掛金・不動産など)を、すぐに売却されないように猶予してもらう制度です。猶予を受けられる条件を満たしていれば、最長で1年間、差押え財産の売却を停止してもらうことができます。差押え財産の売却までの期間を延長することによる延滞金も、一部免除されます。この制度を利用することで、財産を維持しながら税金の分納が継続できます。
税金の分割納付中でも融資の再審査を受けることはできますが、審査は厳しくなることを覚悟しておく必要があります。可能であれば、融資の再審査前に滞納している税金をすべて完済することが融資審査を通すために最も効果的です。
2-3.融資以外の資金調達方法を考える
ここからは融資以外で考えられる資金調達方法を4つご紹介します。まずは一覧表で見ていきます。
| 概要 | 特徴 | 税金滞納中でも利用できるか | |
| ファクタリング | 企業が保有する売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に買い取ってもらうことで売掛債権が入金前に現金化できる仕組み | ・売掛先からの入金を待たずに資金が手に入れられる ・手数料がかかる ・売掛先の承諾が必要になる場合もある ・手持ちの売掛債権の金額内でしか資金調達ができない | 〇 |
| 不動産担保ローン | 所有している土地や建物などの不動産を担保にしてお金を借りるローン | ・無担保ローンと比べて金利が低く、高額な借り入れが可能 ・返済期間が長く設定できる ・返済が滞ると担保にした不動産が売却される可能性がある | 〇 |
| ビジネスローン | 法人や個人事業主が事業資金を調達するために利用できるローン | ・事業に関わる資金に利用できる ・原則無担保無保証で申込むことができる ・最短即日、遅くとも1週間~10日程度で資金が調達できる ・金利が高い ・利息を払う必要がある | △ |
| 補助金 | 国や地方自治体が事業者などの取り組みを支援する目的で給付する返済不要の資金 | ・返済不要 ・公募期間が限定されている ・後払いのため資金不足にならないように十分な自己資金を確保しておく必要がある | × |
■融資以外の資金調達方法①ファクタリング
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、売掛債権が入金前に現金化できる仕組みのことです。ファクタリング会社は、売掛債権の額面から手数料を差し引いた金額を企業に支払います。売掛先からの入金を待たずに資金を手に入れることができるため資金繰りの改善に役立ちます。ただし、手数料がかかること、売掛先の承諾が必要になる場合もあること、手持ちの売掛債権の金額内でしか資金調達ができないことに注意が必要です。
ファクタリングの審査では重要視されるポイントは売掛先の信用力になるため、税金を滞納している場合でも利用することができます。
■融資以外の資金調達方法②不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、所有している土地や建物などの不動産を担保にしてお金を借りるローンのことです。銀行や信販会社、消費者金融など様々な金融機関が提供しています。原則資金の使途に制限はないため、幅広い目的で利用できます。無担保ローンと比べて金利が低く高額な借り入れが可能で、返済期間がも長く設定できます。ただし、返済が滞ると担保にした不動産が売却される可能性があることに注意が必要です。
不動産担保ローンの審査では担保となる不動産の価値が重視されるため、税金を滞納している場合でも利用することができます。銀行系の不動産担保ローンは税金滞納があると審査は厳しくなりますが、ノンバンク系の不動産担保ローンは担保となる不動産に十分な価値があれば柔軟に対応してもらえます。
■融資以外の資金調達方法③ビジネスローン
ビジネスローンとは、法人や個人事業主が事業資金を調達するために利用できるローンのことです。銀行や信販会社、消費者金融など様々な金融機関が提供しています。新規事業の立上げ、設備投資、運転資金、取引先への支払など、事業に関わる資金に利用できます。原則無担保無保証で申込むことができ、最短で即日、遅くとも1週間~10日程度で資金が調達できます。ただし、日本政策金融公庫や銀行などに比べて金利が高く、利息を払う必要があることに注意が必要です。
ビジネスローンの審査では税金の滞納は信用リスクと見なされるため、税金を滞納している場合の利用は非常に難しくなります。先に税務署や自治体に相談し、分割払いなどの納税計画を立てて滞納状態を解消するか、審査時に納税証明書が必要ないノンバンク系のビジネスローンであれば利用できる可能性があります。
■融資以外の資金調達方法④補助金
補助金とは、国や地方自治体が特定の政策目標を達成するために事業者などの取り組みを支援する目的で給付する返済不要の資金のことです。補助金は公募期間が限定されており、応募者が提出する事業計画を審査し採択された場合にのみ受け取ることができます。ただし、後払いであることに注意が必要です。原則として、事業実施後に経費の支払いを行いその実績を報告した後に補助金が交付されるため、資金不足にならないようにあらかじめ十分な自己資金を確保しておく必要があります。
補助金は公的な資金であるため、税金を滞納している場合には補助金の申請はできません。税金を納めていることが受給資格の重要な要件となります。 先に税務署や自治体に相談し、分割払いなどの納税計画を立てて滞納状態を解消する必要があります。
以下、代表的な補助金をいくつかご紹介します。
| 補助金名 | 補助金の概要 | 補助上限額 |
| ものづくり補助金 | 新製品・新サービスの開発の設備投資、海外市場への挑戦や、インバウンド対応の強化を支援 | 最大4,000万円 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者が「自ら経営計画を策定」し、地域の商工会議所・商工会の支援を受けながら行う、販路開拓などの取組を支援 | 最大250万円 |
| IT導入補助金 | 生産性の向上や労働環境の改善のために、デジタル化・DX推進のためのITツール(業務管理システム・会計ソフトなど)の導入および活用を支援 | 最大450万円 |
| 早期経営改善計画策定支援 | 資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの経営改善に取り組む中小企業者等が、国が認定した認定経営革新等支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定する際、その費用の2/3を補助 | 最大15万円 |
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3.まとめ
税金を滞納している場合、融資は受けられません。また、税金の滞納を放置すると延滞税や財産の差し押さえなどのペナルティが課されたり、融資以外の方法での資金調達も難しくなる場合があるため、早めに対処することが重要です。 税務署や自治体に相談し、分割払いなどの納税計画を立てて滞納状態を解消するよう努めましょう。
