
企業の株式をめぐる取引や承継の場面では、「株価算定報告書」という言葉を耳にすることが少なくありません。
しかし、多くの経営者や担当者、相続人などにとって、株価算定報告書は「専門的な書類のひとつ」という程度の理解にとどまりがちです。
いざ、株価算定報告書について、上層部や取引先に説明をする段階になったとき、あるいは株価算定報告書が必要だと顧問税理士からアドバイスを受けたときなどに、「本当に必要なのか?」、「どのような目的で作成するのか?」などと疑問に思われる方も多いでしょう。
株価算定報告書は、株式の値段を算出するだけの書類ではなく、M&Aや事業承継といった重要な局面において、取引の公正性を担保し、紛争を未然に防ぐための大きな意味を持ちます。
この記事では、株価算定報告書、ないしは株価算定自体が求められる目的を整理し、経営や資産承継などに携わる方が、安心して次のステップに進むための基礎知識を解説します。
目次
1.株価算定報告書を作る主な目的は「株価の妥当性を証明すること」にある
株価算定報告書の最大の目的は、株価が恣意的に決められたものではなく、第三者から見ても妥当であることを証明する点にあります。
つまり、株価算定報告書は、取引価格の公正性、妥当性を証明するために作成されます。
企業が自社内で独自に株価を算定しても、関係者にとっては「本当に正しいのか?」という疑念が残りやすいものです。
また、株式の取引は、買い手と売り手の利害が真っ向から対立するため、価格の根拠が不明確だと「高すぎる」「安すぎる」といった不満が必ず生まれます。これを避けるためには、理論的な算定方法に基づいた証拠が必要です。
そこで、公正な算定手法をもとに、会計事務所や税理士事務所といった第三者が作成する株価算定報告書が必要となります。
例えば、M&Aの場面で買い手が「妥当な価格で買収した」と金融機関や投資家に説明するには、専門家が作成した株価算定報告書が欠かせません。
この客観性こそが、トラブル防止や説明責任、税務リスク軽減といった実務上のメリットにつながっていくのです。
この記事では、株価算定報告書により客観性が担保されることで、どのようなメリットがもたらされるのか、株価算定報告書を作成する具体的な目的について解説していきます。
2.株価算定報告書を作るその他の目的
株価算定報告書を作る一番の目的は、1章でお伝えしたように「株価の妥当性を証明すること」にあります。しかし、株価の妥当性を証明することからさらに発展させると、株価算定報告書を作ることには、別の2つの目的が考えられます。
この章では、「株価の妥当性を証明すること」に紐づく、株価算定報告書を作るための2つの目的について解説します。
2-1.トラブルを防ぐため
株価算定報告書は、関係者間の紛争やトラブルを未然に防ぐためにも作成されます。
株価は特に、「将来の利益をどう見込むか」に左右されるため、主観的な意見が強く入り込みやすい領域です。そのため、第三者による客観的な評価を提示しておくことで、後々の「不公平だったのではないか」という疑念を封じることができます。
例えば、少数株主が会社株式を買い戻す場合などに、算定根拠のない価格で買い戻す要望を出しても取引は成立しません。改めて、株価算定報告書を提示することで、こうした不満を解消することができます。
トラブルの火種を減らす予防策として、株価算定報告書は有効です。
2-2.意思決定の根拠になるため
株価算定報告書は、経営者や役員が株価を決定する根拠となり、根拠を説明するための重要なツールでもあります。
株式の価格は会社の価値そのものであり、意思決定において利害関係者への説明責任が伴います。特に上場企業や大規模なM&Aの場面では「なぜこの価格なのか」を明確に示すことが強く求められます。
例えば、M&Aの買収価格が株価算定報告書と一致していれば、株主総会での承認もスムーズに進み、反対意見を最小限に抑えることが可能です。
社内外への説明責任を果たすための根拠、資料として、株価算定報告書は必要とされます。
3.株価算定報告書を作ることによる効果
株価算定報告書は、株式を扱う経営や取引の現場において実際的な効果をもたらします。
上層部や取引先に対する説明責任を果たすこと、税務リスクを軽減すること、M&Aにおける買い手側の納得を得ることなど、多方面において役立つのです。
この章では、株価算定報告書がもたらす具体的な効果を整理します。
3-1.上層部や取引先への説明責任を果たすことができるようになる
株価算定報告書があれば、上層部や取引先に対して「なぜその価格なのか」を明確に説明でき、説明責任を果たせます。
株価は金額の大小だけでなく、取引の正当性や透明性を示す重要な要素です。経営判断や株式取引に関して、客観的根拠のない数字では社内外の関係者を納得させることは難しく、信用を損なうリスクもあります。
例えば、事業承継の際に株式を譲渡する場合でも、第三者機関が作成した報告書を提示すれば「合理的な評価に基づいている」と取引先や金融機関に説明できます。これにより「恣意的な取引」ではないことを明確に示せます。
説明責任を果たすことは、株主や取引先の信頼を得るうえで不可欠であり、株価算定報告書はそのための強力な支えとなります。
3-2.M&Aの場面で買い手に、妥当な売買だったと理解してもらえるようになる
M&Aの現場においては、株価算定報告書があることで、買い手に「この取引は妥当だ」と理解してもらいやすくなります。
企業の売買は多額の資金が動くため、価格が適正かどうかは極めて重要です。恣意的に設定された価格では、買い手が納得せず、交渉の停滞や破談のリスクがあります。
例えば、未上場企業の株式売却では市場価格が存在しないため、DCF法や類似会社比準法などを用いた算定書を提示することが交渉の前提となります。これにより、買い手は「客観的な根拠に基づいた価格だ」と判断でき、契約に至りやすくなります。
M&Aの成功には、双方が納得できる価格の提示が不可欠であり、その裏付けとなるのが株価算定報告書です。
4.株価算定報告書の作成でお悩みの方は、辻・本郷 FAS株式会社へご相談を
株価算定や株価算定報告書の作成は、高度な専門知識と経験を要する分野です。
特に、未上場企業の株式評価では、DCF法、類似会社比準法、純資産法など複数の評価手法を状況に応じて選択・組み合わせる必要があり、経営者や相続人が独自に対応するのは困難です。
さらに、上層部への説明責任や、株主・取引先との交渉材料としても活用されるため、信頼性の高い第三者による算定が求められます。
辻・本郷 FAS株式会社では、M&Aや事業承継といった場面に応じた適切な株価算定を行い、報告書としてご提供いたします。
辻・本郷グループの総合力を活かし、税務・会計・法務の観点からも一貫したサポートが可能です。
「株価算定が本当に必要かわからない」
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「取引先や少数株主に示せる信頼性の高い報告書を作りたい」
このようなお悩みがあれば、ぜひ一度、辻・本郷 FAS株式会社へご相談ください。
5.まとめ
株価算定報告書は、主に、株価算定の内容を客観的にも正当であると証明するために作成される書類です。
株価算定報告書作成の主な目的
・公正な価格の証明のため
・トラブルの防止のため
・説明責任の履行のため
株価算定報告書の目的を理解して、取引や承継の場において、株価算定報告書の作成が必要だと感じた方にとって、次に大切なのは実際に信頼できる専門家へ相談することです。
不安なことがあれば、辻・本郷 FAS株式会社へご相談ください。
