迷わず処理できる! システム利用料の勘定科目と税務処理

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監修者 宇都宮健太

今日、会計や勤怠・販売管理などではクラウドサービスを利用するのが一般的になってきています。しかし悩ましいのは、クラウドサービスを利用した際に発生する「システム利用料」を、どの勘定科目で処理すべきかということでしょう。
結論から言えば、企業は自社の実態に合わせて「通信費」「支払手数料」「システム利用料」「ソフトウェア」などの勘定科目を使用することとなります(会社独自で「システム手数料」といった勘定科目を設定することも可能です)。ただし、一度決めた勘定科目は企業会計原則の「継続性の原則」に則って、継続的に利用する必要があります。

この記事では、システム利用料の勘定科目について、実務担当者が迷わずに選択できる判断手順を解説しました。

【勘定科目と税区分と処理の目安】

取引例推奨科目(例)処理の目安
SaaS(月額・国内)通信費/支払手数料期間費用(当期費用)で月次計上
SaaS(年払い・年度またぎ・国内)前払費用(または短期前払費用)原則は前払計上→月次振替。短期前払費用の「1年以内+継続適用」で支払時費用も可
買い切りソフト(10万円未満)消耗品費 等当期費用
買い切りソフト(10万円以上20万円未満)一括償却資産(またはソフトウェア)一括償却(3年均等)または通常償却(5年)
買い切りソフト(10万円以上)ソフトウェア無形固定資産として資産計上(原則5年償却)
買い切りソフト(30万円未満・中小企業等)消耗品費/減価償却費(特例)30万円特例で即時費用(同年度上限300万円)

1.システム利用料は「クラウド型」か「買い切り型」かで仕訳方法が異なる

勘定科目の処理は、企業がそのサービスに関して持っているのが「所有権」なのか、それとも「一定期間の利用権」なのかで変わってきます。ここを間違えると、会計処理も間違えることになります。

【クラウド型と買い切り型の違い】

区分内容典型例勘定科目の方向性
クラウド型(SaaS)ネット経由で利用。所有権なし。freee、マネーフォワード、kintoneなど通信費/支払手数料
買い切り型ソフトウェアを購入し自社にインストール。所有権あり。弥生会計、販売王など無形固定資産(ソフトウェア)
/消耗品

1-1.クラウド型(SaaS)→通信費、支払手数料など

クラウド型(SaaS(Software as a Service))とは、インターネットで提供事業者のサーバーにアクセスしてソフトウェアを使う仕組みです。例えば「freee」「マネーフォワード」「kintone」などの事業者向けサービスがこれにあたります。
この場合、資産ではなくサービスに対して支払いをするため、その利用期間に対応して費用計上します。

例えば、年間費用12万円を101日に年払いした場合(12月決算)、月数按分後の当期費用3万円を「通信費」「システム利用料」などの科目で処理し、残り9万円を前払費用として処理します。

借方貸方
前払費用90,000普通預金 など120,000
通信費/システム利用料 など30,000  

1-2.買い切り型→ソフトウェア

買い切り型とは、ソフトウェアを購入することで継続利用できる権利を得る、従来型の仕組みです。この場合は、無形固定資産「ソフトウェア」などの科目を使用します。

例えば、会計ソフトウェアを15万円で購入した場合、20万円未満なので、通常の減価償却で処理・一括償却資産として処理・少額減価償却資産として処理、の3つの処理方法があります。このうち、一括償却資産として処理する場合は以下のように仕訳をします。

借方貸方
一括償却資産/ 20万円未満150,000普通預金 など150,000

処理方法の判断基準は2章で扱います。


2.【クラウド型の場合】利用できる特例

契約期間が1年以内で、毎期継続して同じ処理を行っている場合には、短期前払費用の特例を適用して支払時に全額費用計上できる場合があります。

例えば、10ヶ月毎に支払を継続しているクラウド型会計サービスで、利用料12万円の場合の仕訳イメージは以下の通りです(毎期継続して同様の処理を行っている前提。また、収益の計上と対応させる必要があるものについては適用不可)。

借方貸方
通信費/システム利用料 など120,000(全額)普通預金 など120,000

3.買い切り型の場合は3つの制度が使える

実務で混乱しやすいのは、「金額の基準」に関する処理です。それぞれについて整理します。

3-1. 10万円未満当期費用(消耗品費)

少額の資産取得では、簡便的に費用処理することが認められています。

例えば、買い切り型の会計ソフトウェアを8万円で購入した場合の仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方
消耗品など/ 10万円未満80,000普通預金 など80,000

3-2. 10万円以上〜20万円未満一括償却資産(3年均等)

支払金額が10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として3年間で均等償却できます(通常の減価償却と、少額減価償却資産の特例による処理も選択できます)。記帳をする際は、購入時と決算時の2回仕訳が必要なので注意しましょう。

下表は、購入時の仕訳例です。

借方貸方
一括償却資産/20万円未満120,000普通預金など120,000

下表は3年均等償却(40,000×3年)した場合の仕訳例です。3年間同じように処理していきます。

借方貸方
減価償却費40,000一括償却資産/20万円未満 40,000

※通常の減価償却と、少額減価償却資産の特例による処理も選択できます。

少額減価償却資産で処理するよりも年間で経費計上できる金額が少なくなるため、短期的な節税効果は薄まります。その反面、一括償却資産として処理した資産は償却資産税の対象外になるため、長期的な節税効果があります。 

3-3. 10万円以上無形固定資産として資産計上、原則5年償却

通常の減価償却処理をする場合も、購入時と決算時の2回仕訳が必要です。

例えば、会計ソフトを11日に25万円で購入した場合、仕訳例は以下のようになります。

借方貸方
ソフトウェア250,000普通預金など250,000

決算が331日、通常の無形固定資産として計上し耐用年数5年で減価償却するとした場合、まずは購入した月から年度末までの月数に応じて減価償却費を按分します。減価償却費として計上する金額は月数按分が必要なため、注意しましょう。

借方貸方
減価償却費12,500ソフトウェア償却累計額12,500

次年度からは償却限度額の5万円で毎年償却していきます。

借方貸方
減価償却費50,000ソフトウェア償却累計額50,000

耐用年数5年なので、最後の年度は残りの償却費を以下のように仕訳します。

借方貸方
減価償却費37,500ソフトウェア償却累計額37,500

3-4. 10万円以上~30万円未満(中小企業等)→即時償却可(年間上限あり)

中小企業者等には、支払金額30万円未満の減価償却資産を一括で損金処理(即時償却)できる特例制度があります(少額減価償却資産の特例を利用する場合、特例の適用額合計が300万円以内という制限に注意しましょう)。ただし、特例がいつまで適用されるかは国税庁のウェブサイトなどで確認が必要です。

例えば、特例制度を利用する中小企業で、会計ソフトウェアを27万円で購入した場合の仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方
ソフトウェア270,000普通預金 など270,000

即時償却可なので、決算時の仕訳例は以下のようになります。

借方貸方
減価償却費270,000ソフトウェア償却累計額270,000

4.その他更新料などの仕訳

ソフトを購入した際に使えるようにするための設定作業(=費用項目は「導入設定費」など)や、自社仕様に合わせた改修や自社仕様への調整(=費用項目は「カスタマイズ費」など)は、そのソフトの取得費用(資産)に含めるのが原則です。

これに対して、データの移行(=同「データ移行費」など)や、操作を覚えるためのトレーニング費用(=同「操作研修費」など)は、その時の費用として計上します。ただし、機能追加・性能向上については別途、資本的支出として資産計上されるケースもあります。

以下の表は、ソフトを購入した際に付随する主な費用に関して、ソフトの取得費用(資産)に含めるのか、費用として計上するのかの区分と主な例を一覧にしたものです。

区分費用項目内容の例
資産購入代価ソフトウェア本体の購入費用
導入設定費初期設定・環境構築・自社仕様への調整
カスタマイズ費自社業務に合わせた改修・追加開発
動作テスト・検証費システム稼働前の試験運用・エラー確認
導入支援コンサル費設定や構築を実施する支援サービス
機能追加・性能向上の改修費機能増強・処理速度改善など
自社製作ソフトの付随費用(3%以内除く)製作原価に含まれる直接費・付随費用
費用データ移行費(データコンバート)旧システムから新システムへのデータ移行
操作研修・トレーニング費従業員教育・操作講習会費
マニュアル作成費社内用手順書・操作説明書
保守・サポート契約費アップデート・バグ修正の年契約料
クラウド型(SaaS)利用料月額・年額利用料
自社製作ソフトの間接費(少額部分)製作原価の概ね3%以内

5.一度決定した勘定科目は継続して使用する

「システム利用料」をどの勘定科目(通信費、支払手数料など)で処理するかは、自社で決定して構いません。
ただし、一度決めたら毎年同じ処理を続けることが大切です。これは、国税庁が示す「継続性の原則」と呼ばれる会計の基本ルールです。

もし処理の方法を変えたい場合は、「なぜ変えたのか」をきちん税務署に説明できるようにしておきましょう。例えば、議事録やメモに「取引内容が変わったため」「税法改正に対応するため」などの理由を書き、正式な記録として残しておくことが大切です。

システム利用料の勘定科目は任意で決められますが、同種取引には毎期同じ科目・税区分・手順を適用することが必要であることを覚えておきましょう。


6.まとめ

最後に、もう一度、間違えやすいポイントをまとめておきます。

①SaaS(月額契約)は「通信費」または「支払手数料」として処理し、利用月ごとに費用計上します。

②年払い契約の場合は、支払時に前払費用とし、各月に費用へ振替。短期前払費用の特例を利用する場合は、「契約期間1年以内+継続適用」が条件です。

③買い切りソフトは10万円未満=消耗品費、1020万円未満=一括償却資産(3年)、10万円以上=無形固定資産(5年償却)となります。中小企業等は、取得価格が30万円未満であれば即時償却が可能になる特例があります。ただし、特例の適用額合計は300万円以内という制限に注意しましょう(適用期間は最新の情報の確認が必要)。

④導入設定や操作研修などの付随費用は通常、支払い時に経費計上します。機能拡張・性能向上がある場合のみ取得金額に算入します。判断が難しい場合は、支払目的・将来効果を記録しておきましょう。

なお、処理や運用に不安がある場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。相談する際には、契約書、請求書、支払記録、運用規程などを用意するとよいでしょう。