
不動産を複数人で所有している場合、それぞれの持分を「共有持分」と呼びます。不動産の共有は、不動産の売却や管理、活用について共有者間で意見が合わず、トラブルが発生する可能性が高くなります。
自分の共有持分を売却する際に、他の共有者の同意が必要なのか、気になるところです。結論からいうと、自分の共有持分のみを売却するときには、他の共有者の同意は不要です。
本記事では、共有持分の基本知識から売却の流れ、トラブルを回避する方法まで解説します。
目次
1.共有持分とは? 民法から基本を解説
共有持分は民法で規定されている不動産の所有形態の一つです。単独で所有するケースとは異なり、複数人がそれぞれの持分を持って共同で所有している状態を指します。
1-1.共有持分の定義
共有持分とは、1つの不動産を複数人で共同して所有する場合に、それぞれの所有者が持つ所有権の割合を指します。不動産を共有することを「共有」といい、各共有者が持つ権利の割合が「共有持分」です。
例えば、兄弟二人で一つの土地を共有している場合、各人が土地全体に対して権利を持っていますが、その権利の割合が異なることもあります。兄が2分の1、弟が2分の1の割合で所有するケースもあれば、兄が3分の2、弟が3分の1といったケースも考えられます。
民法では、共有者の持分について特段の定めがない場合は「各共有者の持分は等しいものと推定する」とされています(民法250条)。ただし、実務上は出資額などを基準に持分割合を決めることが一般的です。共有持分は売却や相続などで譲渡することも可能ですが、他の共有者との関係や法律上の手続きに注意が必要です。
1-2.共有持分のメリット・デメリット
共有持分の制度にはさまざまなメリットとデメリットが存在します。これらを理解することで、不動産を適切に管理し活用するための指針にできます。
1-2-1.メリット
不動産共有の最大のメリットは、複数人で不動産を取得できる点です。マイホーム購入に際しての住宅ローン審査においては、夫婦で共有名義にすると借入可能額が増えるケースがあり、資金計画を立てやすくなります。
このケースでは、住宅ローン控除を夫婦2人分適用できるのもメリットです。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して新居を購入した際に最大13年間、各年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税額から控除する制度。夫婦で共有名義にすれば、住宅ローン控除の節税メリットを夫婦2人で享受できます。
1-2-2.デメリット
一方で、共有名義の不動産にはデメリットがある点も無視できません。最大の問題は、不動産の売却や処分に制約がある点です。共有名義の不動産全体を売却する場合は、共有者全員の同意が必要となり、合意が得られない場合は売却ができません。
また、管理や運用に関する意見が一致しない場合、トラブルの原因となることがあります。特に、共有不動産が収益物件である場合、共有者間で経営方針や収益の分配、管理費の負担について意見が分かれる事例が数多くあります。
物件の改装工事を行う場合は、内容によって必要な同意は異なります。軽微な修繕は保存行為として単独で行える場合がありますが、一般的な管理行為に該当する場合は共有者の持分価格の過半数の同意が必要となります(民法252条)。合意形成をめぐって、共有者間でトラブルが発生するケースも多くあります。
2.共有持分の売却に共有者の同意は必要か
共有持分を売却する場合、他の共有者の同意は必要なのでしょうか。ここでは、共有不動産全体の売却のケースと、自己の共有持分の売却のケースについて解説します。
2-1.共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要
不動産全体を第三者に売却する場合、全ての共有者の合意が必要です。民法251条において、共有不動産の変更・処分行為には、共有者全員の同意が必要と規定されています。
変更・処分行為には、共有不動産の売却、担保権の設定、借地借家法の適用を受ける賃貸借契約の締結、土地の造成、建物の大規模な改修・建て替えなどが該当するとされています。
例えば、複数の親族で共有している土地を売却する際には、全ての共有者が売却に同意しなければ、契約を結べません。共有者の一人でも反対すれば、売却手続きは進行できないのです。
2-2.自己の共有持分の売却は共有者の同意は不要
一方で、自分の共有持分のみを売却する場合、他の共有者の同意は不要です。これは民法上、自分の共有持分については個別の所有権として認められているためです。共有物全体を処分する場合は共有者全員の同意が必要になりますが、自分が持っている共有持分のみを売却する行為は、自分の権利を処分することに過ぎません。したがって、この場合は他の共有者の許可や承諾を得る必要はありません。
また、共有持分の売却に際して、他の共有者に通知する義務も法律上定められていないため、完全に自由に売却することが可能です。これは第三者に対しても同様であり、共有持分を個人や買取専門会社に売却することも法的に問題はありません。
ただし、現実的には他の共有者とトラブルになる可能性もあるため、事前に共有者へ説明を行うことが望ましい場合もあります。また、共有持分を売却した後、買主と他の共有者との間で使用方法や管理方法に関して意見が対立することも考えられるため、注意が必要です。
2-2-1.同意が得られないと共有者との関係が悪化する可能性がある
共有持分を第三者に売却した場合、新たにその第三者が共有者として加わります。そのことによって、トラブルが発生する可能性があります。
共有持分の取得した第三者は、買取専門会社であるケースが多くあります。買取専門会社は共有持分のみを所有していても意味がなく、他の共有者へも共有持分の売却を打診したり、購入した共有持分を他の共有者へ売却しようとしたりします。
他の共有者が共有持分売却の意思がなく、不動産を利用し続けたいと思っている場合、利害が一致せず、トラブルを引き起こすケースも少なくありません。法律上は他の共有者の同意は不要ですが、無断で共有持分を第三者へ売却すると、他の共有者との関係が悪化することが予想されます。
親族で不動産を共有している場合など、共有持分の売却後も親族としての関係が続くので、合意のないまま売却を進めてしまうと、関係の悪化が避けられなくなります。
3.共有者の同意が得られない場合の対処法
共有者の合意形成が難しい場合、不動産の共有者であり続けること自体がリスクになりえます。不動産の共有関係を解消するには、いくつかの対処方法が考えられます。
| 対処法 | 内容 | 注意点 |
| 共有持分の贈与 | 他の共有者に贈与(無償譲渡)する | 贈与税が発生することがある |
| 共有持分の放棄 | 共有持分を放棄し、他の共有者に帰属する | 「みなし贈与」となり、贈与税が発生することがある |
| 仲介会社を通じて売却 | 不動産仲介会社を通じて共有持分を第三者に売却する | 売却は難しく、売却価格も低くなる可能性が高い |
| 買取専門会社に売却 | 買取専門会社に共有持分を売却する | 買取価格は市場価格より低くなる |
3-1.他の共有者に共有持分を贈与する
共有持分を他の共有者、または第三者へ売却するのが難しい場合、他の共有者に贈与(無償譲渡)する方法があります。贈与した人は、不動産の共有状態を解消できます。
共有持分の売却と同じく、共有持分の贈与は法律上他の共有者の同意が不要ですが、実際上は共有者間の関係悪化を避けるために、事前に相談しておくのが望ましいでしょう。
贈与を行うと贈与税が発生する可能性があるため、共有持分の不動産価格を把握する必要があります。贈与税は暦年課税の場合、110万円の基礎控除があるため、共有持分の評価額が110万円以下であれば贈与税が課税されません。
3-2.共有持分を放棄する
共有持分を放棄するという方法もあります。共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。共有持分の放棄によって不動産の共有関係から解放されるという利点はありますが、同時に財産的な利益も失うため、慎重な判断が求められます。
共有者の一人が共有持分を放棄すると、他の共有者のそれぞれの共有持分の割合に応じて放棄された持分が帰属されます。共有持分の放棄は、税法上「みなし贈与」として贈与税の課税対象になります。放棄された持分が他の共有者に移転することで、実質的に贈与と同様の効果があると判断されるためです。
共有持分の放棄は単独でも可能ですが、トラブル防止のためにも、共有者同士での協議が推奨されます。また、共有持分放棄の登記手続きを行うと元に戻すことはできません。
3-3.仲介会社を通じて売却する
不動産仲介会社を通じて、共有持分を第三者に売却する方法もあります。不動産仲介会社に仲介を依頼することで、物件の査定や売却活動を専門的に行ってもらえるため、個人で買主を探すよりも効率的に売却を進められます。
ただ、不動産の共有持分は物件全体を自由に利用・処分できるわけではないため、買主にとっての利用価値が低いケースが多いといわざるをえません。その結果、通常の不動産取引と比較して売却が難しくなり、売却価格も相場より低く評価されやすい点に注意が必要です。
仲介会社によっては共有持分の売却案件を積極的に取り扱わない場合もあるため、事前に対応可能か確認する必要があります。不動産仲介会社選びは慎重に行い、共有持分の取引に慣れた会社を選ぶと良いでしょう。
3-4.買取専門会社に売却する
買取専門会社の利用も有効な方法です。買取専門会社は共有不動産を活用して利益を上げることを目的としているため、スピーディーに売却できます。
3-4-1.買取専門会社に売却するメリット
買取専門会社を利用する最大のメリットは、スムーズに売却が成立し、共有者との交渉が不要である点です。他の共有者と意見が対立している場合や、売却を急いでいる場合には大きな利点となります。
また、不動産仲介会社を通じた売却とは異なり、手続きが簡略化される点も魅力です。契約から決済までが短期間で済み、資金化を急ぎたい場合にも適しています。
3-4-2.買取専門会社に売却するデメリット
一方で、共有持分の買取価格は市場価格より低くなる傾向があります。これは、買取会社が再販売のリスクを考慮し、価格を低めに設定するためです。買取専門会社を利用する場合は、事前に相場を調査し、納得のいく条件で売却することをおすすめします。
また、先述した通り、買取専門会社は他の共有者の持分の取得を目指していたり、購入した共有持分の買取を要求したりすることが多く、他の共有者とのトラブルが発生する可能性があります。
4.共有持分売却の手続きの手順
共有持分を売却する際には、通常の不動産売却とは異なる手続きが必要となるため、各ステップを理解して進めるようにします。
4-1.共有持分の売却について共有者と交渉する
共有持分を売却する際には、まず他の共有者と話し合いを行います。法律上は自己の持分を売却する際に他の共有者の同意は不要ですが、実際上はトラブルの発生を未然に防止するために協議を行うことが推奨されます。
話し合いを円滑に進めるためには、専門家のサポートがあると心強いといえます。
4-2.共有持分の売却先を決める
共有持分の売却先としては、他の共有者、一般の第三者、買取専門会社がありえます。売却先を決める際には、それぞれのメリット・デメリットを比較し、自分にとって最も適した売却先に決めます。
また、買取専門会社を除く買主との交渉は、不動産仲介会社に依頼するケースが一般的です。
4-3.売買契約を締結する
売却先が決まったら、不動産売買契約を締結します。買主から手付金を受領し、不動産仲介会社に報酬を支払います。
契約書には、一般的な不動産売買契約で記される売主・買主の氏名・住所、目的物の住所・面積・売買代金などとともに、売却する持分の割合を明記します。
また、共有持分の売却の場合、契約不適合責任の免責を特約に付帯するケースも多くあります。
4-4.決済・引き渡しを行う
売買契約が成立した後は、おおよそ1ヶ月以内に決済・引き渡しが行われます。決済・引き渡しの大まかな流れとしては、司法書士による本人確認、所有権移転登記、残代金の授受(金融機関の融資の場合はローン実行)、領収書の授受、必要書類の引渡し、司法書士・不動産仲介会社への報酬の支払いが行われます。
通常、これらの一連の手続きは、同日に行われます。
4-5.確定申告と納税
共有持分の売却によって譲渡所得が発生した場合、確定申告を行い、必要に応じて税金を納める必要があります。
譲渡所得税は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益に対して課税されます。マイホームとして使用していた不動産の場合、3,000万円の特別控除の特例が適用される場合もあります。
土地だけを共有としている場合、適用要件となりません。(※一定の条件のもとで適用される場合もあります。)3,000万円の特別控除の特例が適用されるのは、原則として家屋の所有者のみとなります。なお、特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、共有者1人につき最高3,000万円です。
5.不動産の共有持分を放置するリスク
不動産の共有状態をそのままにしておくと、管理が難しくなったり、相続の際に問題が発生したりする可能性があります。具体的なリスクを詳しく説明します。
5-1.不動産を自由に活用できない
共有不動産を活用するためには、他の共有者の同意を得なければなりません。例えば、賃貸アパートなどの収益物件では、賃貸借契約の締結は管理行為に該当するため、共有者の持分価格の過半数の同意が必要になります。意見の対立が起こった場合、収益物件の運用が進まず、収益化の機会を失うことになりかねません。
5-2.売却価格が低くなる
共有持分の売却価格は、通常の不動産と比較して低くなります。共有持分の場合、購入者は他の共有者と共同で不動産を所有するため、自由な活用ができないというデメリットを抱えます。
共有持分は市場での流動性が低いため、買主を見つけるのが難しく、結果的に売却価格も低く設定されます。買取専門会社の買取価格も市場価格より大幅に低い金額で取引されます。
5-3.相続が発生するとさらに複雑になる
不動産の共有が継続した状態で相続が発生すると、問題がさらに複雑化します。新たな相続人が共有者として加わり、共有者の数が増え、意思決定がより難しくなるのです。
相続によって複数の相続人が新たに共有者となった場合、物件をどう扱うかについての合意形成がさらに困難になります。相続人が遠方に住んでいる場合や、不動産に対する関心が薄い場合には、意思決定のスピードがさらに遅くなるケースがあります。
6.共有持分の売却にかかる税金・費用
共有持分の売却には、税金や手数料といったさまざまな費用がともないます。これらを把握しておかないと、思わぬ出費が発生するため、事前に理解しておく必要があります。
6-1.譲渡所得税とその計算方法
共有持分を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益に対して課税される税金です。計算方法は次の通りです。
取得費とは、不動産の共有持分を取得する際に支払った金額や購入時の手数料などを指します。譲渡費用は、不動産を売却する際にかかった仲介手数料や登記費用などです。
売却によって利益が出た場合、その金額に対して所得税と住民税が課税されます。税率は、所有期間によって異なります。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下) 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超) 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
※所得税には復興特別所得税を含む。所有期間の基準日は譲渡があった年の1月1日。
売却した共有持分が自分が居住していた住宅の場合、3,000万円の特別控除の特例を受けられます。この場合、譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得税がかかりません。
6-2.共有持分売却時にかかる諸費用
共有持分を売却する際には、税金以外にもさまざまな費用が発生します。主な費用としては、仲介手数料、登記費用、その他の税金や専門家への報酬などが挙げられます。
6-2-1.仲介手数料
不動産仲介会社を通じて共有持分を売却する場合、仲介手数料が発生します。仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限が定められており、以下の計算式で算出されます。
- 売却価格が200万円以下の場合:売却価格の5%
- 売却価格が200万円超~400万円以下の場合:売却価格の4%+2万円
- 売却価格が400万円を超える場合:売却価格の3%+6万円
例えば、不動産全体の価格が6,000万円で、共有者が3人、共有持分が1/3だった場合、共有持分の評価額は2,000万円なので、仲介手数料は次のように計算できます。
なお、この計算式で求める値はあくまでも宅建業法上の上限値であり、必ずしも実際の仲介手数料とは限らないことにご留意ください。
6-2-2.登記費用
共有持分の売却に際しては、所有権移転登記を行う必要があります。この際にかかる費用として登録免許税と司法書士への報酬がありますが、商習慣としてこれらの費用は買主が負担するケースが多いです。(※最終的には売買契約の内容によって決まります。)
登録免許税:固定資産評価額の2.0%(原則税率)、軽減措置があります。
司法書士報酬:依頼する司法書士によって異なりますが、通常は数万円程度です。
6-2-3.その他の税金・費用
その他にも、不動産の売却に際しては、売買契約書に貼付する印紙の費用である印紙税や譲渡所得税の確定申告を税理士に依頼する場合の税理士報酬などがあります。
7.共有持分は慎重に扱い、最適な方法で売却を!
共有持分の売却は、法律上、他の共有者の許可なく単独で実行可能です。しかし、通常の不動産市場での売却は難航することが多く、慎重に進めないと他の共有者との間にトラブルが生じるリスクもあります。
一方で、共有持分を所有し続けると、不動産の運用をめぐって共有者間の意見対立に巻き込まれ、相続が発生など権利関係の複雑化によるトラブルにも巻き込まれる可能性があります。
不動産の共有関係を解消する方法として、共有持分の売却がふさわしいのか、売却するとしたらどのような方法が最適なのかを見極めるためにも、不動産と法律の専門家に相談することをおすすめします。

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