
企業は所得に対して法人税や法人事業税等の税金を納めます。法人税等を考えるとき「実効税率」と「表面税率」があり、それぞれの意味を理解する必要があります。
ここでは、企業の実効税率について、表面税率との違いや企業の所得にかかる税金の種類を確認するとともに、計算式を解説します。
1.法人税等の実効税率とは
ここで扱う法定実効税率とは、法人税や地方税について、法人事業税等の損金算入を考慮した税負担率のことです。税負担の目安を把握するために利用できます。実効税率を使用することで、納税額を予め予測できます。そして結論から言うと、地方税等を含めた法定実効税率は約30〜34%が目安です。
実効税率に対して、各税率を所得に対する割合に換算して合計し、法人事業税等の損金算入を考慮しないものが表面税率です。
表面税率
事業税の損金算入を考慮せず、各税率を所得に対する割合に直して合計した税率のこと
実効税率
事業税の損金算入も考慮した、実質的な税負担率のこと
企業は法人税のほか、法人住民税や法人事業税などを負担します。それぞれ税率が決まっていますが、事業税は損金算入が可能です。そのため、損金算入等を考慮した実効税率を用いるほうが、実際の納税額に近い金額を予測できます。
2.企業が負担する税金
企業が負担する税金についてご紹介します。なお、税率等は2026年8月時点のものです。
| 税金の種類 | 特徴 | |
| 法人税 | 国税 | 軽減税率あり |
| 地方法人税 | 国税 | 法人税額が基準 |
| 法人住民税(都道府県民税・市町村民税) | 地方税 | 「均等割」と「法人税割」がある |
| 法人事業税 | 地方税 | 軽減税率あり 損金算入あり |
| 特別法人事業税 | 国税 | 法人事業税と合わせて申告 |
| 防衛特別法人税 | 国税 | 基礎控除500万円あり |
2-1.法人税
法人税は、所得にかかる国税です。所得金額に所定の税率をかけます。ただし、資本金等の額によって税率が異なります。普通法人の主な税率は次の通りです。
| 税率 | ||||
| 普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15%(※2) |
| 適用除外事業者(※1) | 19% | |||
| 年800万円超の部分 | 23.20% | |||
| それ以外の普通法人 | 23.20% | |||
※1 その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等
※2 所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17%
参照 国税庁「No.5759 法人税の税率」
2-2.地方法人税
地方法人税は、法人税額にかかる国税で、税率は10.3%です。
【計算式】
課税標準法人税額×10.3%
地方法人税は、地域間の税収の格差を埋めるための税金です。国税であるため、納付先は国です。そして国は各自治体に交付します。国が財源を調整し、地域間の経済格差をなくすようにしています。
2-3.法人住民税
法人住民税とは、法人が事務所等を置く都道府県や市区町村に対して納める地方税です。法人も地域における構成員であるという考えに基づいて課されます。
法人住民税は、所定の基準で定額が課される「均等割」と、法人税額に所定の税率をかける「法人税割」があります。
| 均等割 | 資本金等の額、従業者数に応じて定額が課されます |
| 法人税割 | 法人税額に応じて課されます |
均等割
資本金等の額、従業者数に応じて定額が課されます。標準税率は次の通りです。
- 都道府県民税 2~80万円(制限税率無し)
- 市町村民税 5~300万円(制限税率は標準税率の1.2倍)
法人税割
法人税額に応じて課されます。標準税率と制限税率は次の通りです
- 都道府県民税
標準税率 法人税額の1%(課税所得の0.23%相当)
制限税率 2% - 市町村民税
標準税率 法人税額の6%(法人所得の1.39%相当)
制限税率 8.4%
参照 総務省「法人住民税・法人事業税」
2-4.法人事業税
法人事業税は、事業そのものに課される地方税です。都道府県に納める税金で、業種や資本金の額(出資金の額)によって納税額が決定します。また、既述の通り損金算入が可能な税金です。
法人事業税の種類
代表的な法人事業税の種類は付加価値割・資本割・所得割・収入割の4種類です。業種や資本金によって適用される種類が異なりますし、種類ごとに税率も異なります。
【法人区分ごとの適用種類(抜粋)】
| 法人区分 | 課税標準 | 税率 |
| 資本金1億円超の普通法人(例外あり) | 付加価値割 | 付加価値割 1.2% |
| 資本金等の額 | 資本割 0.5% | |
| 所得 | 所得割 1.0% | |
資本金1億円以下の | 所得 | (軽減税率あり) |
次の法人 | 収入金額 | 収入割 1.0% |
- 付加価値割
各事業年度の付加価値額が課税標準となる
付加価値額とは「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」「単年度損益」の合計 - 資本割
資本金等の額が課税標準となる - 所得割
各事業年度の所得が課税標準となる - 収入割
各事業年度の収入が課税標準となる
電気供給業者やガス供給会社、保険会社など所得額を課税標準にするのは適当でない法人が対象
参照 総務省「法人事業税」
上図のとおり、資本金1億円以下の普通法人は、原則として所得割のみが課されます。ただし、一定の減資法人や100%子法人等は外形標準課税の対象となり、所得割に加えて付加価値割・資本割も課されます。
2-5.特別法人事業税とは
2019年の税制改正により法人事業税から分離される形で創設されたのが特別法人事業税です。国税ですが、地方税である法人事業税と合わせて申告・納税します。
【基本の計算式】
基準法人所得割額(または基準法人収入割額) × 税率
税率は法人の種類によって異なり、外形標準課税法人・特別法人以外の普通法人では原則37%、外形標準課税法人では260%です。
2-6.【2026年4月適用開始】防衛特別法人税の影響
2026年4月1日以後に開始する事業年度から課される税金です。課税計算の基礎となるのは法人税額ですが、基礎控除額500万円があります。
【基本の計算式】
(基準法人税額ー基礎控除500万円)×4%
※基礎控除について、特定同族会社の特別税率により加算された金額がある場合は異なる
法人税および地方法人税において引き切れない外国税控除がある場合は、ここでの控除が可能です。また、基準法人税額が基礎控除額以下の場合、原則として防衛特別法人税額は発生しませんが、申告は必要です。
3.法人税実効税率の計算方法
事業税の損金算入を加味した実効税率の計算式は次の通りです。
実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率+防衛特別法人税率)+事業税率)÷(1+事業税率)
※事業税には特別法人事業税率を含む
例えば東京都23区内の外形標準課税法人に超過税率が適用される場合、以下の税率で計算した法定実効税率は31.52%です。
- 法人税率 23.2%
- 地方法人税 10.3%
- 法人住民税 10.4%
- 法人事業税所得割・特別法人事業税の合計 3.78%(1.18%+2.60%)
- 防衛特別法人税 4%
防衛特別法人税を含めていますが、既述の通り防衛特別法人税の基準法人税額には基礎控除500万円があります。基礎控除で引き切れる場合(防衛特別法人税がかからない場合)の実効税率は30.62%です。
4.まとめ
法人税等の税負担を比較するときは、「実効税率」と「表面税率」の違いを意識しましょう。計算式はありますが、税率や税金の種類は変わることがあります。
最新情報の把握が欠かせないため、必要に応じて顧問税理士等のサポートを受けながら実効税率を活用していきましょう。
