会社が赤字になると経営はどうなる?悪影響や改善策を解説

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監修者 宇都宮健太

赤字とは、売上よりも経費が多いために、利益がマイナスになっている状態です。

特に、最終利益(当期純利益)が赤字になると、多くの経営者は「自分の会社はこの先大丈夫なのか?」「早く何とかしなければ」と不安になりがちです。
ですが、「赤字だと会社経営にどのような問題があるのか」を具体的に理解している方は、意外と多くありません。

本記事では、赤字が会社経営に与える影響や、取るべき改善策などを解説します。


1.経営上、赤字は基本的に避けるべき

基本的に赤字決算は会社にとって望ましい状態ではなく、経営上は黒字を目指すべきです。
会社の資金繰りや財務状況など、さまざまな面で悪影響があるためです。
場合によっては、会社の成長だけでなく、存続そのものが危うくなることも少なくありません。

ただし事業への先行投資を優先する場合など、赤字でも大きな問題がないケースもあります。


2.経営が赤字になった場合の5つの悪影響

赤字になった場合、会社に対して次のような悪影響が生じる可能性があります。

赤字の悪影響内容
金融機関からの融資が難しくなる融資の際に求められる条件が厳しくなったり、融資そのものを断られたりする
債務超過(会社の全資産を使っても借金を返し切れない状態)になるリスクが上がる何年も赤字を繰り返すと利益剰余金がマイナスになり、債務超過に陥りやすくなる
仕入先との取引条件が厳しくなる仕入先からの信用を失うことで、取引代金の支払サイクルや支払方法などの条件が厳しくなる
事業活動への投資が滞る設備投資や研究開発などが停滞する
従業員のモチベーションが低下しやすくなる業務の生産性が落ちるだけでなく、従業員の退職につながるケースもある

決算が赤字でも、ただちに会社が倒産するわけではありません。
ですが、上記のような悪影響により、中長期的には経営状況の悪化につながります。

次から、それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。

2-1.金融機関からの融資が難しくなる

経営が赤字になると、金融機関から融資を受けることが難しくなりがちです。

金融機関が各企業に融資の判断を行う上で、最も重視するのが決算書の内容です。
決算書が赤字の企業は、貸倒れリスクが高いとみなされて信用力が下がり、融資の際に次のような問題が起こりやすくなります。

  • 融資そのものを断られてしまう
  • 保証人や担保を追加するよう求められる
  • 返済条件の面で不利になる(例:金利が高い、返済期間が短い)
  • 金融機関の審査に時間がかかり、資金調達が遅れる

特に、2期以上連続で赤字決算の場合、融資の審査に落ちる可能性が上がると言われています。

資金調達ができなければ日々の運転資金が不足しやすくなり、支払いが滞ることで倒産につながるおそれがあります。

2-2.債務超過のリスクが上がる

決算で赤字になると会社の純資産である利益剰余金が減るため、債務超過に陥るリスクが上がります。

債務超過とは、貸借対照表で会社の純資産が減ってマイナスになることで、資産額より負債額の方が多くなる(会社の全資産を使っても借金を返し切れない)状態のことです。
債務超過になると金融機関から「債務の返済能力がない」と見なされて信用を失い、融資を受けることが非常に難しくなるため、やがて資金繰りが悪化して倒産につながるおそれがあります。

なかでも、連続して赤字を出しており利益剰余金が減り続けている会社は、債務超過を起こす可能性が非常に高いと言えます。

2-3.仕入先との取引条件が厳しくなる

経営が赤字の場合、仕入先との取引条件が厳しくなるケースもあります。

経営状態に不安のある会社との取引は、仕入先から「売掛金が回収できなくなるのでは?」と不信感を持たれるものです。
そのため、仕入先に赤字が発覚すると、次のように不利な取引条件を求められる可能性があります。

  • 代金の支払いサイクルの短縮を求められる
  • 掛取引を断られる
  • 売掛代金の担保を求められる

仕入先のうち、自社との取引額が大きい相手との取引条件が厳しくなると、資金繰りが一気に悪化するケースもあります。

2-4.事業活動への投資が滞る

経営上の赤字は、事業活動への投資にも悪影響を及ぼします。
赤字になると利益剰余金が減り、将来的な利益増加に向けて投資を行う余裕がなくなるためです。

具体的には、次のようなケースが考えられます。

  • 商品の製造に必要な機械設備の更新を先送りする
  • 業務効率化のためのシステム導入を見送る
  • 商品の研究開発を中止する

赤字によって事業活動への投資が停滞すれば、会社の中長期的な収益低下をもたらし、ますます投資余力を失う悪循環につながります。

2-5.従業員のモチベーションが低下しやすくなる

赤字であることが従業員に知られると、会社で働く上でのモチベーションの低下につながるおそれがあります。

赤字決算に対しては、「経営がうまく行っていないのでは?」「将来の給与カットやリストラにつながらないか?」など、社内からもネガティブなイメージを持たれる場合が少なくありません。
その結果、次のような影響を及ぼすことがあります。

  • 従業員同士のコミュニケーションが減り、業務上のミスにつながる
  • 社内に閉塞感が広がり、従業員の業務に対する主体性や責任感が薄れる
  • 従業員のパフォーマンスが低下することで、社内全体の生産性が下がる
  • 従業員が退職する

優秀な従業員ほど、決算状況から会社の将来性に見切りをつけて退職などの行動を起こすのが早い傾向があるため、注意が必要です。


3.【赤字の原因別】経営改善のためにできること

赤字には、大きく分けて次の3つの原因があります。

赤字の原因
改善策
販売価格と原価のバランスが悪い(売上総利益の赤字)・商品やサービスの単価を上げる
・仕入れや製造にかかる原価を最適化する
事業に余計なコストがかかっている(営業利益の赤字)・ムダな経費をカットする
・不要な在庫を処分する
・不採算の事業を縮小・削減する
本業以外のコストが負担になっている(経常利益の赤字)・借入金の利息負担を減らす
・資産運用を見直して本業以外で収益を得る

経営を改善して赤字を脱するには、それぞれの原因に合った改善策が必要です。
以下で、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

3-1.販売価格と原価のバランスが悪い(売上総利益の赤字)

赤字の原因の一つは、販売価格と原価のバランスが悪く、売上を原価が上回ってしまうことです。
決算書上では、売上総利益が赤字になっている状態です。

この場合、商品やサービスが売れるほど赤字になってしまうケースが多く、最終的な利益を出すことが非常に難しくなります。
至急、次のような改善策を行いましょう。

改善策1:商品・サービスの単価を上げる

まずは、販売する商品やサービスの単価を上げて、売上を増やすことを考えてみましょう。

その際、ただ単価を上げるだけでなく、単価に見合った付加価値をつけることがポイントです。
具体的には、次のような方法があります。

  • 商品やサービスの内容そのものを改善する(例:商品の機能や素材を見直す)
  • 購入後のアフターサービスを充実させる(例:サービス利用中のトラブルに丁寧に対応する)
  • 商品のパッケージや名前を変え、イメージアップを図る(例:高級感のあるパッケージにする)
  • 商品やサービスのブランドイメージを高める(例:商品開発のストーリーをSNSで発信する)

商品やサービス自体の改善だけでなく、パッケージや広告などでその商品・サービスの価値を的確に発信していくことで、単価アップを売上に結びつけられるようにしましょう。

改善策2:仕入れや製造にかかる原価を最適化する

商品や材料の仕入れ・製造にかかる原価を見直して、適正な水準に近づけることも重要です。

例えば、次のような方策を検討してみましょう。

  • より好条件で仕入れができる取引先を開拓する
  • 現在仕入れている材料・部品を、より安価で仕入れられる代替品に置き換える
  • 使用期限のある材料を仕入れる場合は、ロスを出さないよう発注量やタイミングを工夫する(例:飲食店の食材)

飲食業や製造業など、売上に占める原価の割合が高い業種で黒字化を進めるには、定期的な原価の見直しが不可欠です。

3-2.事業に余計なコストがかかっている(営業利益の赤字)

販売価格と原価が適切で売上総利益が出ていても、人件費などの間接的なコストがかかっていると赤字の原因になってしまいます。
決算書上では、営業利益が赤字になっている状態です。
この場合、金融機関から「本業で利益を出せていない」と見なされるため、融資を受ける際は特に不利になりがちです。

次から紹介する改善策を実行して、早急に黒字化を目指しましょう。

改善策1:ムダな経費をカットする

会社経営を続けるにつれて、いつの間にか経費にムダな部分が生じていることは少なくありません。

まずは、次のように比較的取り入れやすい経費削減策から着手してみましょう。

費目経費削減策
水道光熱費・エアコンの温度設定を引き上げる
・事務所の照明をLEDに切り替える
・電気やガスなどの契約プランを見直す
通信費・インターネットや電話回線の契約プランを、利用状況に合ったものに変更する
・不要なオプションサービスを解除する
旅費交通費・会議を対面からオンライン参加に切り替える
・格安航空券やホテルの早割プランなどを活用する
消耗品費・資料の共有をデータで行い、紙やプリンタートナーの使用量を減らす
・事務用品を全社で一括購入し、単価を下げる
広告宣伝費・広告の費用対効果をチェックし、効果の低いものは内容や出稿方法などを見直す
・販促手段を、SNSなどのデジタル広告中心にする
役員報酬報酬額を、各役員の成果や会社の業績に見合った水準に変更する

なお、過度な経費削減は、業務効率や商品・サービスの質に悪影響を及ぼすことがあります。
現場の従業員の意見も聞きながら、無理のない範囲でコストカットを行うようにしましょう。

改善策2:不要な在庫を処分する

商品を販売している場合、在庫を抱えすぎないようにすることも赤字改善につながります。
在庫の量が多いほど、保管場所の確保や棚卸などにかかるコストが大きくなるためです。

不要な在庫を処分するには、主に次のような手段があります。

  • セールで値下げ販売する
  • 買取業者に一括で在庫を買取ってもらう
  • 福祉団体などに寄付する
  • 廃棄処分する

値下げ販売や業者への買取依頼なら在庫を現金化できる一方で、商品が定価より安く市場に出回ることでブランドイメージが下がるリスクもあります。

在庫処分を行う際は、自社の状況に適した手段を選ぶようにしましょう。

改善策3:不採算の事業を縮小・削減する

コストが高く、不採算になっている事業がある場合は、規模を縮小したり、事業そのものを削減したりすることを検討する必要があります。

具体的には、次のような対応を考えてみましょう。

事業規模の縮小

・取り扱い商品やサービスの数を減らす
・担当する従業員の人数を減らし、他の事業に再配置する
・店舗がある場合、営業日数や時間を短縮する
・営業対象の地域を限定する

事業そのものの削減・事業を廃止する
・事業を他社に売却する

多額の初期投資が未回収の事業や、経営者の強い思い入れがある事業の場合は、不採算でも見過ごされてしまい、会社全体の利益を圧迫することが少なくありません。
会社の経営改善を進めるためには、このような不採算事業からの撤退を視野に入れることも大切です。

3-3.本業以外のコストが負担になっている(経常利益の赤字)

本業の利益より、借入金の利息など本業以外に伴うコスト(営業外費用)が大きい場合は、会社全体の赤字につながりなります。
決算書上では、経常利益が赤字になっている状態です。

以下では、本業以外のコストによる赤字の改善策を見ていきましょう。

改善策1:借入金の利息負担を減らす

多額の借入金がある場合は、利息額を減らすことが経営改善につながります。

借入金の利息負担を減らすには、次のような手段があります。

  • 借入金の元本を繰上返済する
  • より低金利の金融機関で借入金の借換えを行う
  • 日本政策金融公庫や自治体が提供している制度融資を利用する
  • 金融機関に対し、借入金の金利を下げるよう交渉する

このうち、支払利息の削減に最も効果的なのは、繰上返済によって借入金の元本を減らすことです。
利息負担が重い場合は、キャッシュに余裕がある時に積極的に繰上返済を行いましょう。

改善策2:資産運用を見直して本業以外で収益を得る

会社の資産を活用して本業以外の収益(営業外収益)を得られるようにすると、借入金利息などのコストがあっても経営を黒字化することができます。

以下は、資産運用で収益を得る主な方法です。

  • 会社が所有する土地や建物を賃貸に出す
  • 株式や債権に投資して配当金や利息収入を得る

特に、土地や建物などの不動産は、ただ保有しているだけで税金や維持管理などのコストがかかってしまいます。
事業に使われていないものはぜひ有効活用して、新たな収益源にしましょう。


4.経営の赤字に関するFAQ

ここでは、経営の赤字に関するよくある質問と回答をまとめました。

4-1.経営が赤字なら法人税の支払いは不要?

経営が赤字で最終利益(当期純利益)が出ていないなら、原則として法人税の支払いは不要です。
法人税の金額は、利益に税率を掛けて計算するためです。

ただし、企業の決算と法人税の計算とでは、利益を計算する際のルールが次のように異なります。

【利益の計算ルールの主な違い】

  • 企業会計では「収益ー費用」で利益を計算するのに対して、法人税の場合は「益金ー損金」で利益(課税所得)の計算を行う
  • 決算書では費用に計上できても、法人税の計算では損金の計上が制限されるものがある(例:役員報酬、交際費など)
  • 決算書では売上に計上していても、法人税の計算では益金に計上されない場合がある(例:受取配当金、保有資産の評価益)

そのため、決算上は赤字でも、税法上のルールで再度利益を計算すると赤字にならず、結果として法人税が発生するケースがあります。

なお、赤字で法人税がかからない場合であっても、法人住民税は最低でも約7万円(従業員数や資本金に応じた均等割分)を支払わなければなりません。

4-2.赤字決算と資金ショート、債務超過の違いは?

赤字決算と資金ショート、債務超過の違いは次の通りです。

  • 赤字決算:ある期間の決算で収益より費用の金額が多くなり、最終利益がマイナスになること
  • 資金ショート:手元資金が不足し、期日までの支払ができなくなること
  • 債務超過:負債が資産の金額を上回った結果、純資産がマイナスになること

赤字決算や債務超過でも、手元資金があって当面の支払いを滞りなく続けることができれば会社は存続できます。
一方、資金ショートの状態が続いて借入金や経費の支払いができなくなると、決算が黒字でも会社は倒産します。

4-3.赤字には経営上のメリットもある?

赤字には、次のような節税面でのメリットもあります。

赤字のメリット内容
税法上の赤字を繰越欠損金にできる
※青色申告を行っている法人のみ
今期の赤字で、次の事業年度から10年分の黒字を相殺できる
欠損金の繰戻し還付を受けられる前年の法人税の還付を受けられる
全額または一部を免除される税金がある法人税、法人事業税など

赤字にはデメリットが多く、会社にとって基本的に好ましいものではありませんが、現在の資金繰りに問題がなければただちに会社の倒産につながるわけではありません。
そのため、赤字決算の機会を節税に利用することで、上手に会社経営を続けていくことも大切です。

4-4.現金収支が赤字になった場合の影響は?

現金収支(キャッシュフロー)が赤字になると、代金の支払いに行き詰まって倒産のリスクが高くなります。

特に、売上を伸ばしている会社の場合、運転資金の需要も増えることが多いため、経営そのものは黒字でも日々の資金繰りに苦しみ、黒字倒産に至るケースが少なくありません。


5.まとめ

赤字は次のように経営上さまざまな悪影響があるため、基本的には避けるべきです。

赤字の悪影響内容
金融機関からの融資が難しくなる融資の際に求められる条件が厳しくなったり、融資そのものを断られたりする
債務超過(会社の全資産を使っても借金を返し切れない状態)になるリスクが上がる何年も赤字を繰り返すと利益剰余金がマイナスになり、債務超過に陥りやすくなる
仕入先との取引条件が厳しくなる仕入先からの信用を失うことで、取引代金の支払サイクルや支払方法などの条件が厳しくなる
事業活動への投資が滞る設備投資や研究開発などが停滞する
従業員のモチベーションが低下しやすくなる業務の生産性が落ちるだけでなく、従業員の退職につながるケースもある

赤字経営を改善するためには、赤字の原因に合った対策が必要です。

自社の状況に合わせた経営改善策を一つ一つ行い、黒字化を目指しましょう。