
ある日突然、税務署から税務調査の連絡が来ると、気が重くなる経理担当者の方は少なくないのではないでしょうか。「確定申告の内容にミスが見つかって、修正申告やペナルティが発生したらどうしよう」と、税務調査の前から不安に思っている方もいるはずです。
実際、税務調査で何らかのミスが見つかり、修正申告が必要になるケースは少なくありません。
本記事では、修正申告の概要だけでなく、税務調査の流れや、調査の結果によって発生しうるペナルティのことも解説しています。
税務調査が始まる前に調査の流れを把握しておき、申告に誤りがあった場合に備えて心づもりをしておきましょう。
目次
1.修正申告とは確定申告の誤りを申告期限後に修正する手続き
修正申告とは、確定申告の内容に誤りがあり、申告した税額が足りない場合などに、納税者自身で申告内容を修正する手続きです。
具体的には、次のような手続きです。
修正申告の主体 | 確定申告を提出した法人または個人 ※税理士が代理で手続きを行うこともできる |
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修正申告を行う場合 |
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修正申告の時期 | 確定申告の期限後に、申告内容の誤りを知った時 |
修正申告の内容 | 正しい申告内容を記載した修正申告書を作成し、添付書類と併せて所轄の税務署へ提出する |
修正申告に伴い、納税額の不足や何らかのペナルティが発生する場合は、修正申告後に支払いを行う必要があります。
なお、税務調査で申告内容の誤りを指摘されたことがきっかけで修正申告をするケースだけでなく、税務調査前に自ら誤りに気づいて修正申告をするケースもあります。
2.税務調査の流れ
税務調査とは、税務署が納税者の帳簿などを確認して、確定申告の内容に誤りがあった場合や、必要な申告がされていなかった場合などに対応を促すものです。
税務調査は、大まかに次の流れで行われます。
- 税務署から事前連絡が来る
- 必要書類を準備する
- 税務調査が実施される
- 調査結果が通知される
税務調査の結果、確定申告の内容に誤りが見つかり、申告した税額が本来納めるべき額より少ないことが判明した場合は、税務署から修正申告を勧められることになります。
税務調査の連絡が来てから結果が通知されるまでのそれぞれの段階について、具体的に見ていきましょう。
2-1.税務署から事前連絡が来る
原則として、税務調査が行われる場合は、税務署から調査の日程や場所、調査対象となる税目などについて対象者にあらかじめ連絡があります。税務署から連絡が来るのは、税務調査の2、3週間ほど前が多いようです。
調査日の都合が悪い場合は、税務署に日程変更を求めることもできます。
なお、記録が残りにくい現金での取引が多い会社など、事前通知をすると税務調査に支障が生じるおそれがあるケースでは、予告なく調査が行われる場合もあります。
2-2.必要書類を準備する
法人や個人事業主の税務調査では、主に次のような書類を準備しておく必要があります。
- 帳簿書類
- 申告書類
- 請求書
- 領収書
- 預金通帳
- 契約書
書類をデータで保管している場合は、そのデータも調査の対象になる場合があります。
また、調査対象者や税目などに応じて、上記以外の書類の提出が求められるケースもあります。
2-3.税務調査が実施される
事務所や店舗に、税務署の調査官が訪問し、帳簿書類を見たり社長や経理担当者に聞き取りを行ったりします。調査対象者が個人の場合は、調査官が自宅を訪れる場合があります。
法人の場合、税務調査は2、3日程度で終わるケースが多いです。
ただし、調査の状況や対象者によっては長引く場合や、事後的に追加書類の提出やヒアリングなどを求められる場合もあります。
2-4.調査結果が通知される
調査終了の後、次章で解説するような調査結果が通知されます。
会社の規模や事業内容などによっては、早ければ2週間~3週間ほどで通知されることもありますが、脱税の疑いなど何らかの問題があるケースでは、半年以上の期間を要する場合もあります。
3.税務調査後の結果は主に3パターン
税務調査の結果は、主に次の3パターンに分かれます。
- 申告内容の誤りを納税者が自ら修正する【修正申告】
- 納税者の代わりに税務署が申告内容を修正する【更正処分】
- 申告内容に誤りがない場合は【申告是認】
税務調査の対象になると、申告内容について何らかのミスが見つかり、修正申告または更正処分が必要になることが多いです。
次から、税務調査の結果について順番に解説していきます。
3-1.申告内容の誤りを納税者が自ら修正する【修正申告】
税務調査で判明した申告内容の誤りを、納税者自らが修正するのが「修正申告」です。
税務署に申告内容に誤りがあった場合、税務署は納税者に修正申告を行うよう勧奨します。
修正申告は任意ですが、多くのケースでは税務署の指摘に従い、修正申告の手続きが行われています。
一方、税務署の指摘に納得できない場合は、修正申告を行わず、税務署に判断の見直しを求める「不服申立て」という制度を利用することができます。
修正申告を行った時は、不服申立てができなくなります。
税務署の判断に異論がある場合は、次で説明する「更正処分」を待って不服申立てを行うことも検討してみましょう。
3-2.納税者の代わりに税務署が申告内容を修正する【更正処分】
申告内容の誤りを指摘されても納税者が修正申告をしない場合に、税務署が職権で申告内容を修正するのが「更正処分」です。
税務署からの指摘に異議がある時は、更正処分に対して不服申立てを行い、処分の取消しや変更を求めることができます。
3-3.申告内容に誤りがない場合は【申告是認】
税務調査の結果、申告内容に誤りがない場合が「申告是認」です。
申告是認の場合は、税務調査後に「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」(是認通知書)が届きます。
この場合、納税者が行わなければならない手続きはありません。
4.税務調査後に修正申告を行う場合の手続きとポイント
税務調査後に修正申告を行う場合は、次のような流れで手続きを行います。
- 修正申告書を作成・提出する
- 最初に申告した税額との差額と延滞税を支払う
- 延滞税以外のペナルティを支払う
税務調査の結果を受けて修正申告をする場合、修正申告書の提出だけでなく、追加で納めるべき税金や、延滞税を始めとするペナルティの支払いが必要になるケースが多いです。
以下で、手続きの各段階で注意したいポイントを解説していきます。
1.修正申告書を作成・提出する
税務署からの指摘内容に従って、正しい所得額や税額などを再計算し、修正申告書に記載します。
修正申告書の作成及び提出は、次のいずれかの方法で行います。
- 紙の修正申告書を作成し、税務署に持参または郵送する
- e-Taxを使って修正申告書を作成・提出する
修正申告書を紙で作成する場合、申告書用紙を税務署の窓口か国税庁のホームページ上で入手する必要があります。
また、修正申告書と併せて、修正内容の根拠となる資料も提出しなければなりません。
なお、修正申告書には提出期限がありませんが、なるべく早めに提出した方が延滞税などのペナルティの負担が軽くなります。
2.最初に申告した税額との差額と延滞税を支払う
本来納めるべき税額と最初に確定申告した税額との差額は、修正申告書の提出と同日に支払わなければなりません。
また、上記の差額分については、本来の納期限から納付までの日数に応じて「延滞税」が発生します。延滞税についても、差額分の税金と一緒に納付しましょう。
なお、差額分の税金と延滞税は、税務署の窓口や金融機関から現金で納付できるだけでなく、口座振替やクレジットカードなどでも納付できます。
3.延滞税以外のペナルティを支払う
税務調査の結果、ペナルティとして過少申告加算税、無申告加算税または重加算税が課されることがあります。
その場合は、修正申告書を提出した後日に届く「賦課決定通知書」に基づいてペナルティを支払うことが必要です。賦課決定通知書には、ペナルティの種類や金額などが記載されています。
いずれのペナルティも、賦課決定通知書の発行日から1ヶ月以内に支払わなければなりません。
なお、ペナルティの納付方法については、賦課決定通知書に同封されている納付書を使って現金で支払うほか、口座振替やクレジットカードなどで支払う方法もあります。
4.税務調査で避けたい5種類のペナルティ
税務調査で、申告の誤りや漏れなどが見つかった場合、次の5種類のペナルティ(追徴課税)が課される可能性があります。
名称 | ペナルティを課される要件 | 税率 |
---|---|---|
延滞税 | 納税した金額に不足があった場合 | 年2.4〜8.7% |
過少申告加算税 | 税額を少なく申告していた場合 | 10〜15% |
不納付加算税 | 源泉徴収した税金を納めていなかった場合 | 10% |
無申告加算税 | 期限内に確定申告をしていなかった場合 | 15〜30% |
重加算税 | 確定申告した内容にウソや隠蔽があった場合 | 35〜50% |
税務調査の結果によっては、複数のペナルティが課される場合もあります。
以下で、それぞれのペナルティの内容を順番に解説していきます。
4-1.納税額が不足していた場合は【延滞税】
税額を誤って少なく申告していたことが判明し、結果的に納税額が不足した場合は、不足額に対して納期限の翌日から不足額を納めるまでの日数に応じた「延滞税」を支払う必要があります。
令和7年分の場合、延滞税の税率は次の通りです。
- 納期限の翌日から2ヶ月以内の日数:年2.4%
- 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日数:年8.7%
延滞税は、税金の納付が遅れたことへのペナルティです。税金の支払いが遅れれば、その分延滞税の金額も大きくなります。
4-2.税額を少なく申告していた場合は【過少申告加算税】
最初に申告していた税額が、本来の税額より少なかった場合は「過少申告加算税」を課されます。
過少申告加算税として納めるのは、次の2つを足した金額です。
- 本来納めるべき税額の10%
- 本来納めるべき税額のうち、当初の税額と50万円のどちらか多い方の金額を超えた部分の15%
ただし、税務調査の前に正しい税額を修正申告すれば、過少申告加算税を免れたり、税率を軽くしたりすることができます。
4-3.源泉徴収した税金を納めていなかった場合は【不納付加算税】
所得税など、源泉徴収した税金を納期限までに支払っていなかった場合は「不納付加算税」を納める必要があります。
不納付加算税の税率は、原則として次の通りです。
源泉徴収した税額の10%
ただし、税務調査の前に税金を納付すれば、不納付加算税の税率は5%に下がります。
また、税金の納付が遅れたことに正当な理由があるなど、例外的に不納付加算税を支払う必要がない場合もあります。
4-4.期限内に確定申告していなかった場合は【無申告加算税】
確定申告義務があるのに、法律で定められた期限までに申告をしていなかった場合は「無申告加算税」を納めなければなりません。
税務調査で無申告を指摘された場合は、原則として次の3つを足した金額を無申告加算税として支払います。
- 本来納めるべき税額のうち、50万円までの部分の15%
- 本来納めるべき税額のうち、50万円を超える部分の20%
- 本来納めるべき税額のうち、300万円を超える部分の30%
ただし、税務調査前に自ら申告をした場合は、税率を下げることができます。
4-5.確定申告の内容にウソや隠蔽があった場合は【重加算税】
確定申告の内容や帳簿書類などを故意に改ざんしたり、本来申告すべき売上を隠したりするなど悪質な不正行為があった場合は、次の税率で「重加算税」を課されることがあります。
- 確定申告をしていた場合:過少申告加算税および不納付加算税に代えて35%
- 無申告の場合:無申告加算税に代えて40%
なお、過去にも重加算税を課されたことがあるなど、不正行為に常習性があると認められる場合は、上記それぞれの場合で10%の税率が加算されます。
5.税務調査前に修正申告をするとペナルティを避けられる場合がある
税務調査の前に自主的に修正申告を行えば、ペナルティを避けたり、軽減したりできる場合があります。
修正申告のタイミングによって、ペナルティへの影響は次のように異なります。
税務調査の事前連絡前に修正申告 | 事前連絡後から税務調査までに修正申告 |
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税務調査の事前連絡が来る前に修正申告を行う方が、ペナルティを軽減できるメリットが大きいです。
一方、税務調査の事前連絡後の修正申告では、例え税務調査までに申告したとしても、ペナルティの割合を大きく下げることはできません。
なお、税務調査の事前連絡後に修正申告を行うことは、税務署にマイナスの心証を与え、より厳しい調査が行われうるデメリットも伴います。税務署側としては、当初の申告内容をもとに指摘事項を想定した上で税務調査を行うためです。
申告内容の誤りに心当たりがあり、税務調査に先立って修正申告を検討している場合は、専門家のアドバイスを求めるのが確実です。
6.税務調査の対応に自信がない場合は辻・本郷 税理士法人に相談を
突然の税務調査への対応に、不安を感じている経理担当者の方は少なくないはずです。
辻・本郷 税理士法人では、国税庁のOBが90名以上在籍し、信頼性の高い税務調査対応体制を構築しています。また、税務調査への立会い実績も年間200件を超えており、事前準備や調査当日に見られるポイントなどのノウハウも豊富です。
税務調査の事前準備や当日対応だけでなく、指摘事項があった際の対応などのアドバイスが必要な場合は、辻・本郷 税理士法人にご相談ください。
7.まとめ
税務調査への対応や、その後の修正申告については、次のようなポイントに留意する必要があります。
- 修正申告とは、確定申告の誤りを申告期限後に修正する手続きのこと
- 税務調査では、多くの場合何らかの指摘事項があり、修正申告を行うことになる
- 税務調査の結果によっては、ペナルティとして追徴課税をされる可能性も
- 税務調査前に修正申告をすれば、ペナルティを回避したり軽減したりできる場合がある
税務調査で申告内容のミスが見つかった時に修正申告を行うべきかどうかや、ミスに心当たりがある場合に税務調査前に修正申告を行うかどうかは、専門家のサポートなしに適切な判断をすることが難しい場合が多々あります。
税務調査への対応に少しでも不安がある場合は、辻・本郷 税理士法人など、信頼できるプロフェッショナルに相談することをおすすめします。