
自分の会社や事務所に税務調査が来ることになり、「調査の日数はどれぐらいかかるのだろう?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
多くの場合、税務調査の実地調査(調査対象者の会社や事務所等で行われる調査)は数日で終わることが多いものです。
ですが、場合によっては日数がかかり、通常より多くの時間を拘束されるケースもあります。
本記事では、税務調査にかかる日数や、結果が出るまでの期間などについて解説しています。
調査が長引きやすいケースや早く終わらせるポイントを押さえて、業務への影響を最小限に抑えましょう。
1.税務調査の日数は通常1~3日程度
調査対象者の事務所や自宅などで税務調査が行われる日数は、法的に定められているわけではありません。
ですが、通常は1日から3日程度の日数がかかるケースが多いです。担当の調査官によっては、事前に予定日数を教えてもらえる場合もあります。
ただし、税務調査当日に何らかの問題が発生した場合などは、3. 税務調査の日数が長期化しやすいケースで解説するように、追加で日数がかかることもあります。
次から、法人の場合と個人の場合のそれぞれについて見ていきましょう。
1-1.法人の場合は平均2、3日かかる
法人の場合、税務調査の実地調査にかかる日数は平均2、3日程度です。
以下は、実地調査が3日で終わる場合のスケジュール例です。
日程 | 調査内容の例 |
---|---|
1日目 (10:00-16:00頃) | 社長などへ事業概要のヒアリング 帳簿や書類の確認 現金の残高と帳簿・通帳との突合 経理担当・顧問税理士へ疑問点のヒアリング |
2日目 (10:00-16:00頃) | 帳簿や書類の確認(1日目に終わらなかった分や追加資料など) 事務室内の金庫・書庫や商品倉庫などの確認 経理担当・顧問税理士への追加ヒアリング |
3日目 (10:00-16:00頃) | 疑問点の最終確認 指摘事項や修正申告の説明 |
1日目は、最初に、雑談を兼ねて事業概要のヒアリングが行われた後で、各種資料の確認や疑問点の確認が行われるケースが多いです。一方、2日目以降の流れは、事業内容や規模だけでなく、1日目の進捗によっても大きく異なります。
特に、本社以外に支店や倉庫などがあり、現地で在庫などの実物確認や担当者へのヒアリングなどを行ったりする必要がある場合などは、調査日数が増えたり、調査日程が分散したりする可能性が高いです。
なお、調査対象者によって、調査の進み方や内容はさまざまです。
具体的な調査範囲や調査対象の資料については、税務調査はどこまで調べる?指摘事項と対策を個人・法人別に解説!で詳しく解説しています。
1-2.個人の場合は1日で終わることが多い
個人の場合、税務調査の実地調査は朝から夕方までの1日がかりで終わるケースが大半です。
以下は、実地調査のスケジュールの例です。
タイミング | 主な内容 |
---|---|
午前(10:00-12:00頃) | 事業概要のヒアリング 帳簿・書類の確認 在庫・設備や店舗内の確認 |
昼休憩(1時間程度) | |
午後(13:00-16:00頃) | 事業主本人や顧問税理士へ疑問点のヒアリング 指摘事項や修正申告の説明 |
法人と同様に、最初に雑談を通じた事業概要の確認が行われた後で、帳簿類や資料等の本格的な調査が行われるケースが多いです。
顧問税理士がいない個人事業主の場合は、帳簿類の整理が不十分であったり、調査官へのヒアリング対応で 誤解を生んだりするケースも少なくありません。場合によっては、後日改めて税務調査が行われることもあります。
なお、税務調査はどこまで調べる?指摘事項と対策を個人・法人別に解説!では、税務調査の対象期間や調査対象となる資料などを詳しく解説しています。
2.税務調査の結果が出るまでの日数は調査対象により異なる
税務調査が終わった後、結果が出るまでの日数は調査対象により異なります。
事業の規模が小さい個人事業主であれば1ヶ月くらいで結果が出る場合もありますが、法人の場合は半年以上先になるケースもあります。
具体的には、次のような要因によって、結果通知までの日数が変わります。
税務調査の結果が出るまでの日数が決まる要因
- 税務調査実施時の持ち帰り資料や、追加提出資料の確認
- 調査対象者に対する確認事項のやりとり
- 取引先や金融機関等に対する追加調査の実施
- 調査結果に関する税務署内での協議・報告
- 税務署や調査官個人の業務スケジュール
調査すべき資料などが多い場合や、申告内容に不備や不正がある場合などは、結果通知まで日数がかかることが多いです。
例えば、資料が多くて税務調査の時点で確認しきれない場合や、調査で不審な点が見つかった場合などは、税務調査が実施された後に資料を持ち帰って精査されたり、後日追加で資料の提出が求められたりすることがあります。
また、事務所や店舗での税務調査が終了した後も、必要に応じて取引先や金融機関等に取引の事実や内容確認が行われたり、調査対象者に対して不明点の追加確認がなされたりする場合があります。
以上のようなケースでは、最終的な税務調査の結果が確定するまでに日数を要することになるのです。
特に、重加算税などのペナルティが課せられる可能性があるような悪質な不正行為が疑われる場合は、1、2年にわたることもあります。
なお、税務調査官は税務調査のときに何をする?税務調査の不安を減らそうでは、税務調査官が行う一連の業務内容や業務方針について解説しています。
3.税務調査の日数が長期化しやすいケース
次のようなケースでは、税務調査にかかる日数が長期化する傾向があります。
- 記帳漏れや計算ミスが多い
- 書類の整理がされていない
- 確認すべき資料が大量にある
- 調査官からのヒアリングへの回答が不十分である
- 無申告で資料が大量に残っている
- 過去の申告内容との整合が必要な項目がある
- 不正行為の疑いがある
特に、記帳漏れ・計算ミスが多い場合や書類の整理が不十分な場合は、調査の進行が滞るため、余計に日数がかかりやすくなります。
次から、順番に確認していきましょう。
3-1.記帳漏れや計算ミスが多い
申告書類の計算ミスや、記帳漏れなどが多い場合も、税務調査に日数がかかる傾向があります。
計算ミスや記帳漏れが多い場合、売上や経費などの数字の整合性を確認する作業に時間がかかるためです。
具体的には、次のような例が挙げられます。
- 売上台帳に記帳漏れがあり、レジの売上データと合わない
- 仕入帳の金額にミスがある
- 経費を誤って二重計上している
- 棚卸資産の未計上がある
3-2.書類の整理がされていない
書類の整理がされていない場合、税務調査の当日になって書類そのものを探し出す時間がかかるため、調査日数が増えることにつながります。
よくあるのは、次のようなケースです。
- 必要書類が全て揃っておらず、歯抜けになっている
- 領収書にプライベートの分が混ざっている
- パソコン内の帳簿や証憑資料のファイルが複数のフォルダに散在している
3-3.確認すべき書類が大量にある
確認すべき書類の量が多い場合は、内容にミスがなくきちんと整理されていても、税務調査の日数が長引く要因になります。
特に、次のようなケースでは日数がかさむ傾向があります。
- 事業規模が大きい・店舗数が多いために確認資料も多い
- 一般消費者が対象の業態などで、日常的に多数の取引がある
- 現金取引が多く、突合すべき資料の種類が多い
3-4.調査官からのヒアリングへの回答が不十分
調査官から質問事項があっても、担当者の不在などできちんと回答できずに不明点が残ってしまった場合は、通常より税務調査に日数がかかる可能性があります。
ヒアリングにその場で回答できなかった場合、電話や文書等で後日回答を行えば済むケースもあります。
一方で、申告内容と矛盾する回答をしてしまったり、回答の仕方によって誤解を生んでしまった場合などは、税務調査の日程が追加されたり、より細かい点まで調査されたりすることがあります。
3-5.無申告で資料が大量に残っている
調査対象者が所得を申告していない上に売上や経費等の資料が乏しい場合、税務署では限られた資料をもとに対象者の所得を推計します。
一方で、無申告でも資料が大量に残っている場合は、1つ1つの売上や経費の計上可否を判断する必要があるため、税務調査に時間がかかります。
3-6.過去の申告内容との整合が必要な項目がある
税務調査が行われる項目によっては、過去の申告内容との整合性を確認する必要があるため、調査日数がかかることがあります。
具体的には、次のような項目です。
- 繰越欠損金の処理
- 期末の在庫処理
- 過年度から行われている減価償却
3-7.不正行為の疑いがある
調査対象者が何らかの不正行為を行っている疑いがあると、税務調査の日数が長引く可能性が高いです。
そのような場合は、不正行為の有無を特定するため、追加で調査を行う必要があるためです。
例えば次のようなケースでは、後日改めて事務所や店舗などで税務調査を行い、実態を確認する必要があります。
- 現金商売で売上除外を行っている疑いがある
- 架空経費の疑いがある支出がある
- 在庫操作の可能性がある
- 設備の減価償却に不正がある
4.税務調査を早く終わらせるためのポイント
税務調査にかかる日数を少しでも短くするためには、次のポイントを守ることが重要です。
- 資料や店舗・事務所内を整理整頓しておく
- 調査官からの質問には誠実に回答する
- 申告にミスがあれば事前に修正申告をしておく
- 顧問税理士に税務調査の対応を依頼する
税務署の職員がスムーズに税務調査を進められるように協力することが、税務調査の日数を短縮するコツです。
以下で、1つずつ解説します。
4-1.資料や店舗・事務所内を整理整頓しておく
税務調査でチェックされそうな帳簿類や資料などを整理しておき、調査官が確認しやすくしておくことも大切です。
特に、次の資料については日頃から整理しておきましょう。
- 売上帳・仕入帳・現金出納帳・預金通帳
- 請求書・領収書・契約書
- 固定資産台帳・減価償却明細
- 給与明細・源泉徴収簿
調査官に求められた資料を迅速に提示できるようにしておくことで、当初の予定より早く税務調査が終わる場合もあります。
また、税務調査では書類や資料だけでなく、現金や在庫・設備の現物確認なども行われます。
そのため、店舗や事務所内も事前に整理整頓しておき、調査に支障がないようにしましょう。
4-2.調査官からの質問には誠実に回答する
税務調査を早めに終わらせるには、調査官からの質問に対して誠実に対応することもポイントです。
特に、次のようによく聞かれる項目については、事前に回答内容を準備しておきましょう。
- 事業の概要と売上の流れ
- 現金やレジ管理の方法
- 主要な取引先と契約形態
4-3.申告にミスがあれば事前に修正申告をしておく
申告内容のミスがある場合はあらかじめ修正申告しておくと、税務調査当日にミスの対応をする必要がなくなるため、調査にかかる時間や日数を短縮できる可能性があります。
また、自主的に修正申告することで税務署側に誠実な印象が伝わりやすくなる点でも、税務調査の早期終了につながります。
なお、事前に修正申告を行うと、申告ミスや無申告の場合に生じるペナルティ(加算税)を次のように軽減できるメリットもあります。
ペナルティ | 通常の税率 | 事前に修正申告した場合の税率 |
---|---|---|
過少申告加算税 | 10~15% | 5〜10% (税務調査の事前通知前なら0%) |
無申告加算税 | 15〜30% | 10〜25% (税務調査の事前通知前なら5%) |
4-4.信頼できる顧問税理士に税務調査の対応を依頼する
信頼できる顧問税理士に対応を依頼することは、税務調査の日数を長引かせない上で非常に効果的です。
特に、次のような場面では、顧問税理士の存在が大きな力になります。
- 調査官から専門的な質問があった場合に、質問の意図を教えてもらう
- 調査官の質問に対して、依頼者が不利にならないように適切な回答をしてもらう
なお、税務調査に適切な対応を行うためには、税務署側の事情にも通じた、経験やスキルが豊富な税理士が必要です。
業界最大級の国税庁OBが在籍する辻・本郷 税理士法人では、国税庁・税務署の内部事情を踏まえた豊富なノウハウと経験で、税務調査対応をバックアップします。
このような、税務調査に強い税理士事務所と顧問契約を行うことで、税務調査当日の対応を万全に行うことができます。
5.まとめ
税務調査にかかる日数は、法人の場合で2、3日程度、個人の場合は1日程度のケースが多いです。
一方、次のようなケースでは、通常より日数がかかる傾向があります。
- 記帳漏れや計算ミスが多い
- 書類の整理がされていない
- 確認すべき資料が大量にある
- 調査官からのヒアリングへの回答が不十分である
- 無申告で資料が大量に残っている
- 過去の申告内容との整合が必要な項目がある
- 不正行為の疑いがある
税務調査を早く終わらせるためには、資料などの整理整頓だけでなく、信頼できる顧問税理士に対応を依頼することが重要です。
税務調査の日数の長期化を防ぎ、業務への影響を最小限に抑えましょう。