
「亡くなった親、あるいは、配偶者の個人年金を引き継いだが、相続税はかかるのだろうか」
本記事をご覧の皆さまはこんな疑問をお持ちではないでしょうか。
個人年金とは、公的年金とは別に、個人で任意で加入して準備する私的年金のことです。
交通事故や病気などで個人年金保険を受け取る予定だった方が亡くなり、遺族の方が個人年金保険を受け取る権利を取得した場合には、「被保険者(年金を受け取る予定だった方)」「保険料の負担者」「年金受給権の取得者」が誰であるかにより、かかる税金が変わります。
本記事では、契約パターンによるかかる税金の種類、年金形式の生命保険における受け取り方法によって変わる課税の仕組み、個人年金の評価の方法、よくあるQAをわかりやすく解説します。
本記事が個人年金の相続税についてのお悩み解決の一助となれば幸いです。
本記事は個人年金について記載しています。
公的年金(遺族年金・障害年金など)は、遺族の生活保障を目的としているため、非課税となり、扱いが異なりますのでご了承ください。
■辻・本郷相続ガイド 公的年金は相続財産にならない!亡くなったあとの3つの手続きも解説
また、遺族ではなく、保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金については、下記をご覧ください。
■国税庁 No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
1.亡くなった方から引き継いだ個人年金には、相続税もしくは贈与税がかかる
亡くなった方から引き継いだ個人年金保険には、「相続税」または「贈与税」がかかります。
年金を受け取る権利のことを「年金受給権」と呼び、引き継いだ年金受給権にかかる税金は、下の表のとおり「誰が契約し、誰が保険料を払い、誰が受け取るか」という契約パターンによって決まります。
なお、年金受給権に対して相続税や贈与税がかかった後、実際に毎年年金を受け取る際には、別途「所得税」の対象となります。
| 被保険者 (亡くなった方= 年金を受け取る予定だった方) | 保険料の負担者 | 年金受給権の取得者 | 税金の種類 | |
| パターン1 | A | A | B | 相続税 |
| パターン2 | A | B | C | 贈与税 |
個人年金を受け取る予定であった父が亡くなったケースを例に見てみましょう。
| 被保険者 (亡くなった方= 年金を受け取る予定だった方) | 保険料の負担者 | 年金受給権の取得者 | 税金の種類 | |
| パターン1 | ![]() | ![]() | /![]() | 相続税 |
| パターン2 | ![]() | ![]() | ![]() | 贈与税 |
【パターン1】「被保険者」=「保険料の負担者」であった場合は「相続税」
「亡くなった方」=「保険料の負担者」であった場合には、取得した年金受給権については、相続により取得したものとみなされて相続税の課税対象となります。
具体的には、父が亡くなったことによって、父が保険料を支払い、父が受け取る予定だった個人年金を、妻や子が受け取るような場合がこのパターンに該当します。
【パターン2】「被保険者」および「年金受給権の取得者」が「保険料負担者」ではない場合は「贈与税」
「亡くなった方」および「年金受給権の取得者」が保険料負担者ではない場合には、取得した年金受給権は、贈与により取得したものとみなされて贈与税の課税対象となります。
具体的には、父の死亡に備えて、子のために妻が保険料を支払っていた個人年金を子が受け取るような場合がこのパターンに該当します。
2.毎年「年金形式」で受け取る個人年金には所得税がかかる
毎年「年金形式」で受け取る個人年金には所得税がかかります。
相続等で年金受給権を取得した人がうけとる個人年金は「一括でまとめて受け取るか」「毎年年金として受け取るか」によって、かかる税金の種類やタイミングが変わります。
まずは、以下の表で受け取り方による税金の種類とタイミングの違いを確認しましょう。
| かかる税金とタイミング | |
| 一括で受け取る場合 | 初年度に「相続税もしくは贈与税」を納める |
| 年金形式で受け取る場合 | 初年度:将来年金を受け取る権利(年金受給権評価額)に対して「相続税もしくは贈与税」が課税される |
| 2年目以降:毎年受け取る年金のうち、利息にあたる運用益部分に対して「所得税(雑所得)」が課税される |
2-1.【一括で受け取る場合】初年度に相続税もしくは贈与税を納める
個人年金を一括で受け取る場合は、初年度に相続税もしくは贈与税を納めます。
年金ではなく一時金(一括)として受け取る場合、引き継いだ「年金受取権」に対して、相続が発生した初年度に相続税もしくは贈与税が課税されます。
初年度に申告と納税を済ませれば、2年目以降に新たな税金が発生することはありません。
2-2.【年金形式で毎年受け取る場合】初年度は「相続税もしくは贈与税」、2年目以降は「所得税」を収める
個人年金を年金形式で毎年受け取る場合は、初年度は「相続税もしくは贈与税」、2年目以降は「所得税」を納めます。
権利を引き継いだ初年度は、将来年金を受け取る権利(受給権評価額)に対して「相続税もしくは贈与税」が課税されます。そして、2年目以降に毎年口座へ振り込まれる年金に対しては、雑所得として「所得税」がかかります。
初年度に相続税もしくは贈与税の対象となった部分は二重課税にならないよう、全額非課税となります。
詳細は下記をご覧ください。
■国税庁 No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金「年金の課税」、No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係
3.個人年金の相続税評価額の出し方
個人年金の相続税評価額の出し方について解説します。
相続税評価額とは相続税を計算する時の財産の価額です。
個人年金の相続税評価額は、国税庁が定める「3つの基準」で計算した金額のうち、最も高い金額を採用します。比較する3つの基準は以下の通りです。
3-1.解約返戻金の額
「解約返戻金の額」とは、保険を解約した場合に払い戻される金額のことです。
亡くなった日時点の解約返戻金相当額は、保険会社に問い合わせることで確認することができます。
3-2.一時金で受け取れる給付金の額
「一時金で受け取れる給付金の額」とは、年金形式ではなく一括(一時金)で受取・清算する場合に受け取れる金額のことです。
一括支払特約などがついている契約の場合は、一括受取時の金額となります。
不明な場合には、保険会社に問い合わせましょう。
3-3.予定利率等を元に計算した「年金受取権」の評価額
「予定利率等を元に計算した『年金受取権』の評価額」とは、将来受け取る年金合計額を現在の価値に引き直して計算した金額です。
この評価額は、以下のように年金の種類(確定年金・終身年金など)によって算出ルールが異なります。
| 確定年金 (有期年金) | あらかじめ決まった支給期間(10年・15年など)の「残存期間」に応じて計算 |
|---|---|
| 終身年金 | 受取人の「平均余命」や「保証期間」に応じた複利年金現価率を用いて計算 |
基本的には「1年間の年金受取額 × 国税庁が定める計算用係数(複利年金現価率など)」で算出します。
評価額の計算や自動計算ツールについては、国税庁の公式サイトで確認できます。
詳細は下記をご覧ください。
■国税庁 定期金に関する権利の自動計算
■国税庁 No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係
なお、個人年金の評価計算は複雑になるケースも多いため、ご自身での算出が難しいと感じた場合は、早めに税理士などの専門家へご相談いただくのが安心です。
4.個人年金の相続税についてのよくあるQA
個人年金の相続税について、よくあるある質問にわかりやすく回答します。
Q1. 個人年金を相続したら相続税申告は必要ですか?
A. 個人年金を含めた遺産総額が「基礎控除額」を超える場合は、相続税の申告が必要です。
個人年金の相続税評価額を含めた遺産総額が、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合は、相続が発生した翌日から10か月以内に申告・納税をする必要があります。
遺産総額が基礎控除額以下の場合は、相続税の申告や納付は不要です。
詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続税はいくらからかかる?判断する方法を相続専門税理士が解説
Q2. 亡くなった方から引き継いだ個人年金の年金受給権に「死亡保険金の非課税枠」は使えますか?
A. 原則として、亡くなった方から引き継いだ個人年金の「年金受取権」に死亡保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)は使えません。
死亡保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)は、被相続人が亡くなったことで支払われる「生命保険金」で、受取人が相続人である場合に適用されます。
本来被相続人が受取人であった年金受給権には適用されません。
ただし、年金支払開始前の積立期間中に死亡し、遺族に「死亡給付金」として一括支給されたケースでは、生命保険金として非課税枠が使える場合があります。
■辻・本郷相続ガイド 生命保険金には相続税の非課税枠がある
Q3.個人年金を一括で受け取るのと年金形式で毎年受け取るのはどちらがよいですか?
A. 手元に残る資金や税負担、将来の生活資金計画に合わせて選択するのが望ましいです。
一括で受け取ると、初年度の相続税(または贈与税)のみで課税が完結するため、毎年の確定申告の手間がなくなります。
一方、毎年年金形式で受け取る場合は資金が少しずつ支払われるので、2年目以降は「所得税(雑所得)」の確定申告が必要になる場合があります。しかし、年金の運用を続けられるため、最終的な受取総額が一括で受け取る場合よりも高くなるのが一般的です。
税金面での損得や最適な受け取り方は個々の状況によって異なるため、迷われた際は税理士へ試算をご依頼いただくことをおすすめします。
5.まとめ
本記事では、個人年金にかかる相続税の基礎知識や、契約パターン・受け取り方による税金の違い、評価額の計算方法について解説してきました。
亡くなった方から引き継いだ個人年金には相続税もしくは贈与税がかかります。
また、一括受取か年金形式の受取かによっても課税されるタイミングや税金が異なります。
評価額の算出や申告の手続きは複雑になるケースが多いため、申告漏れや計算ミスを防ぐためにも、疑問や不安がある場合には、早めに契約内容を確認し、必要に応じて相続専門税理士へ相談しながら適切に進めることが大切です。
本記事が、個人年金の相続税についてお悩みの皆様の一助となれば幸いです。


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