
「子や孫の名義でこどもNISAをはじめれば、相続税対策になるのだろうか?」
本記事をご覧の皆さまは、こんな疑問をお持ちではないでしょうか。
こどもNISAは相続税対策として有効な選択肢と言えます。
しかし、やり方を間違えると思わぬ相続税や贈与税がかかってしまうケースもあります。
本記事では、こどもNISAとはどのような制度なのか、相続税対策としてのこどもNISAの注意点やよくあるQAについてわかりやすく解説します。
本記事が、こどもNISAを活用した相続税対策や生前贈与についてのお悩み解決の一助となれば幸いです。
1.こどもNISAとは、未成年者を対象とした新しい少額投資非課税制度
こどもNISAとは、0歳から17歳の未成年者を対象とした新しい少額投資非課税制度です。
「財務省 令和8年度税制改正の大綱」で創設が示され、2027年1月から開始される予定です。
1-1.0歳〜17歳は年間60万円(最大600万円)まで非課税で投資できる
こどもNISAの対象年齢は0歳〜17歳で、年間60万円(最大600万円)まで非課税で投資できます。
これまで大人の制度であったつみたて投資枠の対象年齢が拡大され、0歳の赤ちゃんから利用可能となりました。制度の内容は以下のとおりです。
| 対象年齢 | 0〜17歳 |
|---|---|
| 年間投資上限額 | 年間60万円 |
| 非課税保有期間 | 17歳まで ※自動的に大人のNISA(つみたて投資枠)に移行 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 投資対象商品 | 積立・分散投資に適した一定の投資信託 |
1-2. 12歳以降は教育資金として引き出し可能。18歳になると通常のNISAへ自動移行する
12歳以降は教育資金として引き出し可能で、18歳になると通常のNISAへ自動移行します。
こどもNISAは年齢に応じて以下のように払い出しのルールが定められています。
| 0〜11歳 | NISA口座からの払出しは不可 (ただし、災害により居住家屋が全壊した場合等で確認を受けたものは可) |
|---|---|
| 12歳※〜17歳 | 入学金等教育費や生活費支払目的の場合、親権者(口座管理者)が子の同意を得て払出し可能 ※その年の3月31日において12歳である年以後の各年(中学1年生になる年の1月1日以降のため、中学受験の入学金等に充当可能) |
| 18歳以上 | 自動的に大人のNISA(つみたて投資枠)に移行 (12〜17歳の間に引き出さなければ、0歳からずっと非課税で投資し続けることができる) |
0〜17歳で一定の事由以外の払出については、非課税になりません。
譲渡所得を認識し、譲渡益や配当に対し20.315%の源泉徴収がおこなわれます。また、譲渡損失はなかったものとみなされ、NISA口座内配当金との相殺は不可となります。
1-3. 元本割れリスクがある
こどもNISAには、元本割れリスクがあります。
こどもNISAに元本保証はありませんから、私立中学の入学金など、資金が必要なタイミングで相場が下がっていると、元本割れして損失が出るリスクがあります。
このようなリスクも踏まえたうえで、適切な金額で計画的に活用していくことが大切です。
2.こどもNISAは正しく使えば相続税対策になる
こどもNISAは、正しく使えば相続税対策として有効です。
こどもNISAの年間投資上限額は「60万円」です。
贈与税には、受け取る人1人あたり年間110万円までの基礎控除(非課税枠)がありますから、こどもNISAのために、親や祖父母から年間60万円までの贈与を受けても、贈与税はかかりません。
幼いころから毎年この贈与を行えば、贈与税がかからずに、親や祖父母の相続財産を着実に減らすことができます。それによって将来発生する相続税の負担を軽減することができるのです。
| こどもNISAの年間投資枠 | 年間60万円 |
|---|---|
| 贈与税の非課税枠(基礎控除) | 年間110万円(受ける人1人あたり) |
| 贈与税の負担 | かからない(60万円 ≦ 110万円のため非課税) |
| 相続税の軽減効果 | 親や祖父母の資産を毎年非課税で子・孫へ移すことで、親・祖父母の相続財産が減り、将来発生する相続税を軽減できる |
しかし、この方法にはいくつかの注意点があります。正しく行わないと思わぬ相続税がかかることがあります。次章で確認していきましょう。
■辻・本郷相続ガイド 相続税対策22選|節税のためにできることを税理士が解説、生前贈与の正しいやり方|相続専門税理士監修
3.こどもNISAを相続税対策に使う際の3つの注意点
こどもNISAを活用して相続税対策を行う際には、3つの注意点があります。
思わぬ相続税がかかることのないよう、注意点を確認ししっかりと対策を行いましょう。
3-1.「名義預金」と判定された場合は親・祖父母の相続財産として相続税がかかる
1つ目の注意点は、「名義預金」と判定された場合は、親や祖父母の相続財産として相続税がかかるということです。
名義預金とは、預金口座の名義人と、実際にお金を出して管理している人が異なる預金のことをいいます。口座の名義が子や孫であっても、名義人にもらった自覚がない、あるいは、資金を出した親や祖父母が通帳や印鑑を管理している、という状態であれば、実質的な持ち主は親・祖父母であり、名義預金とみなされる可能性があります。
名義預金は、生前贈与と認められず、亡くなった方の財産として相続税の課税対象となってしまいます。
以下のようなケースでは相続時に税務署から「名義預金」と判断され、思わぬ相続税がかかるリスクがあるため注意が必要です。
- 「あげた・もらった」という双方の認識や契約書等の証拠がない
- 親・祖父母が勝手に口座を作って管理している
- 口座の存在を子や孫が認識していない
名義預金と疑われないためには、「贈与契約書の作成」によって、生前贈与の証拠を残し、「名義人による適切な口座管理」を行うことが大切です。
贈与契約書の作成方法や、名義預金と判断されないための具体的な手続きや注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
■辻・本郷相続ガイド
名義預金とは?相続税の対象になってしまうケースや対策を徹底解説
生前贈与に契約書は必ず必要?贈与契約書の作成方法を解説
■国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
3-2.亡くなる前一定期間内の贈与は「生前贈与加算」により相続税がかかる
親や祖父母が亡くなる前一定期間内※に行われた贈与は、「生前贈与加算」の対象となり相続税がかかります。
相続税のルールでは、亡くなる前、3-7年間※に相続人(財産を受け継ぐ人)へ行われた生前贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算しなければなりません。
孫への贈与であれば一般的には加算の対象外ですが、孫が代襲相続人となっていたり、遺言で財産をもらったり、生命保険金の受取人になっていたりする場合は加算対象になるため注意が必要です。
なお、相続時精算課税制度を適用した生前贈与は、創設された基礎控除を超えた部分は、相続財産に持ち戻して計算します。詳しくは相続時精算課税制度とは?2024年1月以降の改正内容も含めて解説をご覧ください。
※税制改正により、令和6年1月以降の暦年贈与から、生前贈与加算に係る加算期間が「3年」から「7年」に延長されました。2024年~2030年の7年間は移行期間とし、加算期間を段階的に延長する措置が取られています。詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 生前贈与加算とは?令和6年改正による期間延長の影響と対策を解説
■国税庁 No.4161 贈与がついた財産の加算(生前贈与加算)
3-3.贈与税申告が必要になることがある
贈与税申告が必要になる可能性にも注意しておきましょう。
こどもNISAの投資資金は親や祖父母からの贈与であることが多いです。
こどもNISAの上限額である年間60万円までなら暦年贈与の非課税枠(110万円)の範囲内で、申告は不要です。
ただし、贈与税の非課税枠(110万円)は「受ける子1人が1年間に受け取った贈与の合計額」で計算されます。そのため、父・母・祖父母など「複数の人から贈与を受けた場合」などで合計110万円を超えたときは、超えた部分に対して贈与税の申告と納税が必要になりますから注意しましょう。
詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 贈与税は誰が払う?知っておくべき110万円の壁と非課税の特例も解説
4.こどもNISAの相続税対策についてよくあるQA
こどもNISAの相続税対策についてよくある質問にわかりやすく回答します。
Q1.2027年開始予定の「こどもNISA」と「ジュニアNISA」の違いは何ですか?
A.2027年開始予定の「こどもNISA」と「ジュニアNISA」の違いは、投資枠、非課税期間や払い出し制限、投資上限額などの制度内容です。
両者の主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | こどもNISA | ジュニアNISA |
|---|---|---|
| 状況 | 2027年1月〜開始予定 | 2023年末で新規投資枠が終了 |
| 対象年齢 | 0〜17歳 | 0〜17歳 |
| 年間投資上限額 | 60万円 | 80万円 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 | 400万円 |
| 非課税保有期間 | 17歳まで (18歳で大人のNISAへ自動移行) | 5年間 (18歳まで継続管理勘定で保有) |
| 払い出し制限 | 12歳以降は教育費目的で払い出し可能 | 原則18歳まで払い出し不可(※) |
| 投資対象商品 | 積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託等 |
※ジュニアNISAは2024年以降、制度終了に伴い非課税での途中引き出しが可能となりました。
「こどもNISA」は、12歳以降(中学入学以降)に教育費や生活費の目的であれば引き出しが可能となり、教育資金としての利便性が大きく向上しています。
Q2.ジュニアNISAをしていた人でも、こどもNISAを使用できますか?
A. 過去にジュニアNISAを利用していた人でも、2027年開始の「こどもNISA」を利用できます。
「ジュニアNISA(2023年末で新規買い付け終了)」と、2027年開始予定の「こどもNISA」は別の制度です。
そのため、以前ジュニアNISAで口座を開設して投資していた方であっても、対象年齢(0〜17歳)であれば、2027年以降に新たにこどもNISA口座を開設して年間60万円までの投資を行うことができます。
なお、過去のジュニアNISAで買い付けた資産は、そのまま18歳になるまで非課税で運用を継続しながら、新しい「こどもNISA」での投資を並行して行うことが可能です。
Q3.こどもNISAと教育資金一括贈与、学資保険の違いは何ですか?
A.こどもNISAと他制度の比較は以下の表のとおりです。
目的やメリットデメリットを理解した上で、適切な制度を選びましょう。
| こどもNISA | 学資保険 | |
| 目的 | 長期的な資産形成の促進 | 将来の教育資金確保 |
| メリット | 非課税で投資可 | 基本、元本保証あり 親の生命保険料控除対象 |
| デメリット | 元本保証はない |
Q4.18歳になったときや引き出しの際に贈与税はかかりますか?
A.18歳になったときや引き出しの際に、贈与税がかかることはありません。
こどもNISA口座へお金を拠出した時点で、「子や孫への贈与」となります。
そのため、18歳になって自動的に大人のNISA口座へ移行する際にも、将来口座からお金を引き出す際にも、贈与税は発生しません。
Q5.こどもNISAの60万円以外にも贈与を受けると贈与税がかかりますか?
A.こどもNISA用の年間60万円以外にも贈与を受けると、金額によっては贈与税がかかります。
こどもNISAのための贈与(年間上限60万円)は、特別な非課税枠ではなく暦年贈与の基礎控除枠(年間110万円)に含まれます。
例えば、こどもNISAの資金として60万円を受け取り、同じ年にさらに60万円の贈与を受け取った場合、その年に受け取った合計額は120万円となります。この場合、基礎控除110万円を超えた10万円に対して贈与税がかかり、申告が必要となります。
複数の人から受け取った場合にはその合計額にかかることにも注意しましょう。
■辻・本郷相続ガイド 贈与税は誰が払う?知っておくべき110万円の壁と非課税の特例も解説
5.まとめ
本記事では、こどもNISAとはどのような制度なのか、こどもNISAを活用した相続税対策や注意点について解説してきました。
こどもNISAは、子や孫の将来のための資金準備と同時に相続税対策にも有効といえます。しかし、名義預金とみなされるリスクや、時期によっては生前贈与加算の対象となる、贈与税申告が必要になることがあるなど、注意点があります。
トラブルを防ぐためには、贈与契約書の作成や適切な口座管理を行い、正しく手続きを進めることが大切です。
本記事が、こどもNISAを活用して相続税対策をご検討中の皆様の一助となれば幸いです。
