SNSで税務調査に狙われる?安易な発信が危ない理由とその回避法

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監修者 宇都宮健太

あなたのSNS投稿が、税務署に見られている可能性を考えたことはありますか?

近年では、InstagramやX(旧Twitter)、YouTubeなどを使って副業の成果やライフスタイルを発信する人が増えています。しかし、こうした投稿がきっかけとなり、税務調査の対象になったという事例も報告されています。

「たった一つの投稿で、税務署に目をつけられるなんて」と思われるかもしれませんが、特に、副業収入を申告していない場合や、収入に見合わない浪費的な生活スタイルを公開している場合は要注意です

この記事では、SNSが税務調査のきっかけとなっている実態や、税務署が実際にチェックしているポイント、そしてリスクを最小限に抑えるための具体的な対策について詳しく解説します。

知らなかったでは済まされないSNS発信と税務調査の関連性について、この場で学んでおきましょう。


1.現在ではSNSがきっかけで税務調査での脱税が発覚することもある

税務署は、納税者の実態を確認するための手段としてSNSを活用し始めています。
何気ない投稿が、実は「課税の証拠」として扱われる可能性があるのです。

SNSはもはや、単なる私的な発信の場ではなく、公的な監視対象にもなりうる現代的リスクをはらんでいます。
特に、申告内容とSNSの投稿内容に乖離がある場合、調査のきっかけとなる可能性が高まります。

例えば、高級外車の購入や頻繁な海外旅行など、申告額からは考えられない生活が投稿されていると、その不自然さから税務署に目をつけられ、調査対象となり得ます。

投稿は本人の意思による「証言」であり、否定しがたい証拠として扱われるケースも存在します。


2.SNSが税務署の情報収集手段の1つとなっている主な3つの理由

SNSが税務署にとって有効な調査手段となっている背景には、いくつかの明確な理由があります。

この章では、3つの主な理由を示します。

2-1.SNSを利用するユーザーが非常に多いため

SNSの普及率が極めて高いことが、税務調査の情報収集手段としてSNSが用いられる理由のひとつとして挙げられます

2026年末には、日本国内におけるSNS利用者数が8,550万人に達すると見込まれており、これは人口の約7割に相当します。

(引用元:2024年度 SNS利用動向に関する調査|ICT総研)

さらに、一個人だけでなく、企業や事業主でも、業務連絡や顧客対応にSNSを用いているため、LINEの公式アカウントなどのビジネス用のSNSも含めて、調査対象となる可能性は十分にあります。

利用が一般化しているからこそ、税務署としても、当然のようにその情報を調査資料として扱うのです。

2-2.多くのユーザーがSNSに生活の様子を掲載するため

多くのユーザーが日常の出来事や生活の様子を写真付きでSNSに投稿している点も、税務調査の情報収集手段としてSNSが用いられる理由として挙げられます。

例えば、高額商品の購入、贅沢な飲食、海外旅行、引っ越しや新築の報告などの投稿は、ユーザーの生活水準や支出状況を可視化します。

申告された所得と明らかに不釣り合いな生活ぶりが見られた場合、税務署はそれらを見過ごせないギャップとして判断し、調査を開始する可能性があります。

このように、本人が自ら公開した生活の様子が、現代においては納税に関する情報として価値を有しています。

2-3.副業や事業の成果や収支報告など、納税につながる内容を発表するSNSのアカウントも存在するため

近年増加しているのが「副業報告系」などのアカウントの存在です。これらは、納税状況に直結する内容を発信しているため、税務調査の際にも注目されています。

例えば、「今月の副業収入は○万円でした」「クライアントとの契約が成立しました」などといった投稿が行われている場合、それは収入の発生を示す明確な証拠になります。こうした投稿は、税務署にとっては極めて有力な情報源です。

もしもこうした収入が確定申告で報告されていなければ、その不一致から、更なる調査に発展する可能性は高くなります。


3.税務調査を招く「危ないSNS投稿」4つの典型パターン

SNSの投稿が税務調査の直接的なきっかけになることは、すでに複数の実例によって証明されています。

過去の事例を分析することで、どのようなSNS活動が不適切と見なされ、調査対象になりうるかを具体的に把握することができます。

SNSにおける不適切な活動の特徴は、主に「収入や資産のアピール」と「申告内容との矛盾」にあります。

税務署は、SNS上で本人が自発的に開示した情報を証拠として評価し、申告された内容と照合して調査を行います。

この章では、過去実際に調査対象となった4つの代表的事例と、その不適切なSNS活動の特徴を示します。

3-1.青汁王子:高級資産を自慢 → 申告額と矛盾し脱税発覚

青汁販売などの健康食品会社の運営を手がけていた実業家がSNS上で高級マンション、高級外車、高額な腕時計、さらには競走馬の購入報告まで投稿していた事例では、投稿に具体的な金額やブランド名も記載されており、「高額な支出」が誰の目にも明らかであったにも関わらず、実際の申告内容にはその支出を裏付ける十分な収入が記載されていなかった点が問題です。

税務署はSNSの内容をもとに収入過少申告の可能性を把握し、脱税として摘発に至りました。

この事例は、収入や資産をアピールした投稿がそのまま調査の導火線になり得るという典型例です。

3-2.美容インフルエンサー:PR収入を公開 → 広告料の申告漏れ

美容系インフルエンサーとして活動していた9人が、SNS上で企業案件やPR活動を行っている傍らで適正な確定申告を行っていなかった事例では、申告漏れがあるにも関わらず、SNSにおける投稿内容から高額の広告収入や企業案件の存在が明らかであった点が問題です。

税務署は投稿履歴や企業との関係性を調査し、申告漏れを確認しました。

このように、特にフォロワー数が数十万人規模のアカウントでは、単発のPR投稿であっても高額な報酬が発生していると推察されます。

影響力のあるアカウントほど、SNSの投稿が商取引の証拠となるリスクが高まるのです。

3-3.同人作家:コミケ売上を報告 → 収入未申告が露呈

同人活動に関する事例では、クリエイターが有名コミックマーケット等で頒布した自作イラスト集の売上について、売上の申告漏れがあるにも関わらず、SNSで「○○冊完売」「○○万円の売上」など、具体的な数値について報告していたことが問題です。

こうした投稿はファンに対する報告の意図で行われたものですが、同時に税務署にとっては売上の裏付け情報でもあります。

特に、こうした定期的な同人活動を行っている場合には営利性が認められ、事業所得としての申告義務が生じます。

このように、申告されていない売上報告がSNS上で公然と行われていたことで、申告漏れが発覚しました。

3-4.会社経営者:私的旅行を経費計上 → SNS投稿で不正が判明

会社経営者として運用しているSNSのアカウントにプライベートな旅行に関する投稿をした事例では、SNSがきっかけで税務調査で問題視されてしまいました。

税務署は、帳簿上の「出張費」や「接待費」などの経費計上と、SNSで公開される私的行動との整合性に注目しています。

この事例では、会社経営者はFacebookに旅行の様子を投稿し、同じ月の帳簿にその費用を「出張の旅費交通費」や「接待交際費」として多額に計上していたため、税務職員が投稿を見て経費内容に不自然さを感じ、税務調査の際に領収証や旅程表の提示、旅行の目的や同行者の説明を求めました。

投稿内容が高額かつ派手な印象を与えるものであったため、調査対象として事前に目をつけられてしまったことがきっかけであったようです。

経営者としてのSNSへの投稿は特に、帳簿との整合性に細心の注意を払う必要があります。プライベートな内容を不用意に公開すると、税務調査のリスクを自ら高めることになります。SNSは公的な監視の目にも晒されているという認識が重要です。


4.安心してSNS発信を続けるための4つのポイント

SNSは情報発信の場であると同時に、公的な「証拠」にもなりうるという事実を踏まえた上で、日々の投稿内容には一定の配慮が必要です。

しかし、慎重になりすぎて発信の自由さを失ってしまうのは本末転倒です。

適切な注意点さえ押さえれば、安心してSNSを活用し続けることは可能です。

SNSを安全に使い続けるためには、見せるべきでない情報を見極め、トラブルの火種を自ら避けることが大切です。

この章では、特に注意すべき4つの具体的なポイントを示します。

4-1.売上、報酬などの数字を投稿しないこと

売上金額や月収などの数値をSNSへ投稿することは、達成感や信頼のアピールにつながる一方で、税務調査のリスクを高める行為でもあります。

具体的な売上などの金額は収入の根拠と見なされるため、申告内容と矛盾が生じた場合、ユーザーが更なる調査対象となる根拠になり得ます。

具体的な数字を必要以上に出さないかたちで成果を伝える工夫が、投稿の自由と安全性を両立させます。

4-2.フォロワー数が多い場合はタレコミの危険性が高いため、投稿内容に特に注意すること

影響力が増すほど、発信者はいわゆる公人に近い存在として見られます。

SNSにおけるいわゆる「フォロワー」が多ければ多いほど、ユーザーの持つ影響力は増します。すると、妬みや敵意、また、脱税を疑う気持ちによる匿名の通報リスクも高まります。実際に、税務署に寄せられる情報提供の中には、SNS投稿を根拠とする通報も含まれています。

影響力がある人ほど、一層慎重な投稿姿勢が求められると言えるでしょう。

4-3.恨みや妬みなどのトラブルにつながる投稿もタレコミのきっかけとなりやすいため、しないこと

成功や裕福さを強調する投稿は、他人の感情を逆なでする原因となります。SNSは不特定多数が閲覧する場であり、些細な投稿が第三者の通報の対象になることもあります。
そして、SNSに関する税務署への通報がきっかけになった税務調査は多数存在しています。

場合によっては、恨みや妬みが原因で、過剰に自分に不利な情報をタレコミされてしまうこともあります。
したがって、特に事業運営に関わるアカウントでは、常に「誰かが見ている」「誰かが記録している」という認識を持って誠実にSNS運用をすることで、不要なトラブルを未然に防ぐことができます。

4-4.悩む投稿内容は税理士に相談すること

収入に関連する内容を投稿したい場合や、自身の発信が申告にどう影響するか不安な場合は、税理士に相談することが最も安全策です。専門家の判断を仰ぐことで、リスクを最小限に抑えつつ、表現の自由を保つことができます。

特にフリーランスや副業を行っている人にとっては、投稿前の税理士による確認が事業の安全性につながります。

また、税理士によっては事業経営に関わるSNS運用に関するアドバイスをもらうことも可能になります。お悩みの際は、積極的に税理士に相談しましょう。


5.SNSの内容による税務調査での指摘を避けたい場合は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスのご活用を

SNS発信がビジネスと深く関わっている場合、自身で判断しきれない投稿内容に悩む方も多くいらっしゃることでしょう。

お悩みの方は、辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスのご活用をぜひ、ご検討ください。

全国規模で対応可能かつ、税務調査に強みを持つ辻・本郷 税理士法人では、個人事業主から企業経営者まで、幅広い税務リスクに対して的確なアドバイスを提供しています。
特に、SNS発信を積極的に行うクリエイター、フリーランス、インフルエンサーにとって、「何を発信すべきで、何を控えるべきか」についての専門的見解は、今後の安心を左右する重要な判断材料になります。SNS発信の自由さと税務調査のリスクのバランスを取るためにも、税務顧問の活用は非常に有効と言えます。

国税庁OBが90名以上在籍し、税務調査に強みを持つプロのサポートを受けることで、不安を軽減し、適切な対応が可能になります。

税務調査対策として、安心と正確な申告を両立させるために、ぜひ辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスをご活用ください。


6.まとめ

SNSは、日常やビジネスの成果を発信する有力な手段である一方で、その投稿内容が税務調査の引き金になるリスクも秘めています。

特に売上や資産に関する情報、自慢に見えるような投稿は周囲に影響を与え、結果として税務調査対象としてマークされる要因になり得ます。

そのため、SNS利用者は「見せ方」に十分な注意を払い、自己表現の自由と税務調査のリスクのバランスを取る姿勢が求められます。

税務面の不安がある場合には、辻・本郷 税理士法人などを活用し、専門家である税理士の助言を受けることが最も確実です。

SNSが自分を守る手段となるのか、自分を危険にさらす証拠となるのかは、日々の投稿一つひとつにかかっているのです。