
ほとんどの経営者・経理担当者は、税務調査実施後は早く事後処理を終わらせたいと思っているでしょう。しかし、税務調査(実地調査)において、追加で書類の提出が求められることは少なくありません。追加書類の準備、郵送に手間がかかると、それだけ税務調査の事後作業完了までの時間が伸びてしまいます。そういったときにe-Taxを活用することで、提出の手間と時間を短縮できるかもしれません。
税務調査では追加書類や修正申告においてe-Taxが利用可能です。ここでは特に税務調査等で提出を求められた資料(調査関係書類)をe-Taxで提出する手順と注意点をご紹介します。
目次
1.税務調査等で提出を求められた資料(調査関係書類)をe-Taxで提出する手順
税務調査の調査関係書類をe-Taxで提出することで提出までの時間を短縮可能です。ただし、税務調査の前に適切な準備をしておくことが大切です。「税務調査前の準備」と「提出時の準備」に分けてご紹介します。
1-1.税務調査の前に準備しておくこと
1-1-1.利用者識別番号の取得
これまでにe-Taxを利用したことがない会社の場合、最初に利用者識別番号を取得します。
取得方法は次の2つがあります。
- e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から利用者識別番号(法人用)を取得する
- デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」から利用者識別番号を取得
※後者は法人代表者のマイナンバーカードが必要です
なお、上記は自社で利用者識別番号を取得する場合の方法です。税理士に依頼して取得してもらうことも可能です。
1-1-2.電子証明書の取得
データ送信時の真正性を担保するために、電子証明書が必要です。e-Taxで利用できる電子証明書は複数ありますので、いくつか挙げます。
概要 | 公式サイト | |
公的個人認証サービス | 法人の代表者の電子証明書により、申告・申請データに電子署名等を行う方法 ※「公的個人認証サービス」に係るマイナンバーカード(個人番号カード)用電子証明書を取得 | マイナンバーカード総合サイト |
商業登記認証局 | 法務省が運営する「商業登記認証局」が発行する | 法務省 |
地方公共団体組織認証基盤 | 地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)が作成する電子証明書 ※地方公共団体と住民・企業等で実施する申請・届出等の手続き、あるいは地方公共団体間の電子的文書のやり取りにて活用されるしくみ | 地方公共団体組織認証基盤(LGPKI) |
株式会社帝国データバンク | TDB電子認証サービス Type Aに係る認証局が作成する電子証明書 電子委任状取扱事業者でもあります | TDB電子認証サービスTypeA|株式会社帝国データバンク |
すでに電子証明書を取得している会社も、電子証明書には有効期間があることに注意します。
1-1-3.e-Taxソフトのダウンロード
国税庁の「e-Taxソフトのダウンロードコーナー」からe-Taxソフトをダウンロードします。
すでにダウンロード済みの場合は、バージョンアップの必要性を確認します。通常は、e-Taxソフトを起動するとバージョンアップの必要性が自動的に確認されます。また、利用者ファイルの作成や利用者情報の登録といった初期登録を完了しておく必要があります。
1-2.税務調査後、提出時の準備
税務調査実施時に調査関係書類の提出を求められた場合、次の準備を行います。
1-2-1.データを作成
原則としてPDF形式かCSV形式で提出します。
提出書類が紙の書類の場合
スキャナで読み取りPDF化します。
その際、受信者が見やすいよう文字の潰れや向きのズレなどに注意します。また、複数枚の書類をPDF化するときは、ページの抜け漏れにも気をつけなければなりません。さらに、必要な時はデータをすぐに閲覧できるよう、ファイルの命名規則も統一しておきましょう。
提出書類がデータ化されている場合
CSV形式で出力、もしくはPDF形式に変換します。ファイル形式を変換する際はレイアウトの崩れや文字化けに注意します。データを送る前に内容が適切か確認しましょう。
1-2-2.提出先調査部門等番号を確認する
「提出先調査部門等番号」は調査官から直接指示があります。もしも番号を誤って入力すると担当調査官にデータが届かないため、再提出が必要になってしまいます。
※e-Tax利用に関する詳細は国税庁の「e-Tax による調査関係書類提出マニュアル(PDF)」をご覧ください。
2.税務調査等で提出を求められた資料(調査関係書類)をe-Taxで提出する際の注意点
税務調査の調査関係書類をe-Taxで提出する際の注意点は次の通りです。
2-1.個人番号がある場合は原則削除する
2-2.ファイル数と容量制限がある
2-3.送信エラーの可能性がある
2-4.利用時間の制限がある
2-1.個人番号がある場合は原則削除する
個人番号(マイナンバー)が記載されている場合は、マスキングまたは削除します。税務関連書類では、例えば次の書類に個人番号が記載されています。
- 給与所得の源泉徴収票(給与の支払を受ける者に交付するものは除く)
- 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票(退職手当等の支払を受ける者に交付するものは除く)
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
2-2.ファイル数と容量制限がある
e-Taxで提出できるファイル形式は前述の通りPDF形式とCSV形式ですが、それぞれファイル数と容量に制限があります。
- PDF形式
1送信当たりのデータ容量は最大14.0MB、ファイル数は136ファイル - CSV形式
1送信当たりのデータ容量は最大8.0MB、ファイル数は136ファイル
また、一つの添付書類送付書に対し、PDF形式とCSV形式を同時に添付することはできません。両方のファイルを提出する場合は、先にどちらか一方を送信し、追加送信で残りを送信します。
2-3.送信エラーの可能性がある
システムトラブル、通信障害、ファイル破損などの可能性があります。必ず送信後はe-Taxソフトの『調査関係書類(データ提出)の送信結果の確認』を確認します。エラーと表示された場合は、エラー原因を解消した上で再送信を試みます。
2-4.利用時間の制限がある
e-Taxのシステムはメンテナンス時間は利用できません。メンテナンスは主に土日祝日、もしくは深夜なので業務時間にかかる事は少ないかもしれませんが、事前に把握しておきます。
メンテナンス時間は国税庁のサイトで確認可能です。
国税庁「e-Taxの利用可能時間」
3.e-Taxの利用に関するよくある質問
Q.e-Taxを利用するメリットは何ですか?
A.過去のデータを引用することによる作業効率の向上や、コストの圧縮など、複数の効果が生じます。
また、送受信がほぼリアルタイムなので、郵送と比較して提出期限までに作業できる実質的な時間が長くとれます。
Q.確定申告をe-Taxで申告すると税務調査に入られやすくなりますか?
A.関係ないと考えられています。
そもそも、オンラインの利用割合は年々増えています。令和5年度の法人税申告においてはオンライン利⽤率が86.2%と9割近くに達しています。これだけオンライン利用が増えていれば、e-Taxで申告した会社や個人に税務調査が多く入るのは自然な流れでしょう。
出典 国税庁「e-Taxの利用状況等について」
Q.法人代表者でない税理士や経理担当者がe-Taxで調査関係書類を提出できますか?
A.税理士による代理送信は可能です。また、会社の役員や経理担当者も、e-Tax等で電子委任状を作成することで、代理送信が可能です。電子証明書サービスを提供している事業者は電子委任状も取り扱っていることが少なくないので、e-Tax利用時に合わせて確認するといいでしょう。
4.辻・本郷 税理士法人ならデジタル対応もスムーズです
税務調査や会計業務においてデジタル化は誤入力の防止や法令対応の迅速化などが期待できます。デジタル技術は日々進歩しているため、すでにデジタル化を進めている会社であっても、さらなる促進を目指していくことをおすすめします。
辻・本郷 税理士法人なら、DX、IT支援も充実しています。会計業務のみならず、人事労務や電子契約などより広い領域のノウハウを持ちます。サポートをご希望の方は、お気軽に辻・本郷 税理士法人へお問い合わせください。
<辻・本郷 税理士法人の強み>
5.まとめ
税務調査の調査関係書類をe-Taxで提出するためには、事前に利用者識別番号の取得や電子証明書の取得などの準備が必要です。また、税務調査の調査関係書類をe-Taxで提出する際は、次のような注意点もあります。
- 個人番号がある場合は原則削除する
- ファイル数と容量制限がある
- 送信エラーの可能性がある
- 利用時間の制限がある
税務調査の前は、帳簿の確認や必要書類のコピーなど税務調査当日の準備に追われがちです。しかし当日だけでなく、調査関係書類提出の準備も行っておくと安心です。本記事を参考にして、税務調査後の対応も迅速に行えるようにしてください。