
会社の危機を感じながらも、どこから手を付けていいかわからない。
そう思っているとしたら、本記事を読み、早急に事業再生を検討することをおすすめします。
危機は待ってはくれません。
会社の危機は時間が経つほど傷が深くなり、取れる手立てが少なくなっていきます。そうなると、事業再生の成功の可能性にも影響してくるはずです。気が付いたときには手遅れ……という状況は、絶対に避けましょう。
事業再生には、タイムリミットがあり、スピード感を持って対応することが重要です。
本記事では、事業再生の流れを7つのステップで解説しています。
必要性を感じながらも事業再生に躊躇されている方は、ぜひご一読ください。
目次
1.事業再生の流れ7つのステップとタイムスケジュール
事業再生は、次の7つのステップで行います。
| 事業再生のステップ | 目安となる期間 |
| STEP1:現状を分析し、原因の特定・問題点の改善する | 2か月以内 |
| STEP2:専門家・金融機関に相談 | 2週間程度 |
| STEP3:デューデリジェンスの実施 | 2カ月程度 |
| STEP4:事業再生の方法を決定 | |
| STEP5:事業再生計画書の策定 | |
| STEP6:金融機関との交渉 | 数か月~ |
| STEP7:事業再生計画の実行 | 3~5年程度 |
なお、各STEPの期間は、あくまでも目安です。状況に合わせて柔軟に対応することが必要です。
STEP1:現状を分析し、原因の特定・問題点を改善する
事業再生を考えた場合、まずは事業の現状や財務など、状況を正確に把握し、根本的な原因を特定することが必要です。その結果、社内で問題点の改善が可能であれば、適切な対応をします。
| 担当者 | 経営者、財務・経理の担当者、事業部門の責任者など |
| 目的 | ・会社の現状の把握 ・問題点を見える化し、改善 |
| 内容 | ・財務状況や資金繰り ・借入金の調査 ・事業の収益性の分析 ・その他、事業に影響を与えている問題点を明確にする |
| 注意点 | ・経営状態が深刻な場合は、現状分析から専門家に相談 ・現状分析や社内の対応に時間をかけすぎない |
資金繰りなどの財務面から経営の問題を認識し、事業再生を検討する会社が少なくありません。
すでに経営状態が深刻である場合は、STEP1から事業再生の専門家に相談することをおすすめします。
なお社内での対応が難しいと判断された場合や原因が特定できない、もしくは改善の兆しがみられない場合は、早急にSTEP2に移ることをおすすめします。
現状分析の詳細は、こちらに記事をご覧ください。
事業再生の成功のカギは現状分析!押さえるべき3つのポイントは?
STEP2:専門家・金融機関に相談
社内での改善が難しいと判断された場合、早急に事業再生の専門家もしくは、金融機関に相談しましょう。
| 担当者 | 経営者 | |
| 目的 | 事業再生計画の検討・準備 | |
| 相談する内容 | 専門家 | ・現状分析や再生可能性の判断 ・事業再生全体のサポート ・金融機関との交渉支援 ・具体的な事業再生の施策立案 など |
| 金融機関 | ・リスケや追加融資、資金繰りなどの資金に関すること | |
| 注意点 | ・情報を正直に提示する ・早期に相談する ・専門家に依頼する場合は、料金や専門分野、実績を確認する | |
事業再生に取り組む場合、事業再生の専門家、もしくは金融機関に相談することが一般的です。
一次的な資金繰りなど、抱えている問題が資金面のみであり、金融機関との関係が良好であれば、金融機関に相談することで問題が解消することが考えられます。
一方で、慢性的な赤字や過剰債務など、事業そのものに問題があったり、金融機関との交渉が難しい場合は、事業再生の専門家が適しているといえるでしょう。
事業再生の専門家とは?
事業再生や経営支援に関する知識や経験を持つ経営コンサルタントや弁護士、公認会計士、税理士など。
それぞれの会社に適した事業再生のアドバイスやサポートを受けることができる。
【最初の相談先・4つのパターン】
事業再生の相談先につながる方法は、概ね4つのパターンに分かれます。
なお、事業再生の専門家は、それぞれ対象となる企業規模やサポート内容などの得意分野があります。依頼する専門家の選択は、事業再生の成功の可否を左右するほか、必要な費用にも大きな差があります。慎重に判断するようにしましょう。

①債権者である金融機関に相談
事業再生が必要な状況となった場合、資金面に問題を抱えていることが多いため、最初に金融機関に相談するケースが少なくありません。
問題が資金面に限られており、金融機関で対処が可能であれば、金融機関でサポートを受けることになります。しかし、事業などの根本的な改善が必要となる場合は、金融機関から事業再生の専門家を紹介されるケースもあります。
②会社の状況をよく知る顧問税理士や顧問弁護士の紹介
会社をよく知る顧問税理士や顧問税理士に相談することで、事業再生の専門家を紹介してもらえるかもしれません。
会社の状況をよく知っている士業であれば、状況にフィットした専門家の紹介を受けられる可能性が高くなります。
③知人などの紹介
同じ経営者や取引先などの知人から紹介された専門家であれば、ある程度の実力や実績をもつ専門家である可能性が高いといえるでしょう。
ただし、会社の状況にフィットした専門性があるかは別問題です。依頼するかどうかは慎重に検討する必要があります。
④WEB検索
WEB検索により事業再生の専門家を探す場合、3つのルートが考えられます。
- 事業再生の専門家のホームページから探す
WEB検索をすると、たくさんの事業再生の専門家のホームページが存在するため、選択の幅が広がります。得意分野や実績を知ることも可能です。
一方で、「自社の状況に合っているか」という判断を自分でしなければならず、ミスマッチを起こす可能性が低くありません。慎重に検討することが必要になります。 - ポータルサイトから探す
事業再生の専門家を比較できるポータルサイトを利用すると、効率的に複数の専門家を比較・検討することができます。
それぞれの専門家に関する情報量が少ないため、ポータルサイトだけを鵜呑みにして依頼することは避けましょう。気になる専門家を見つけたら、個別に検討することをおすすめします。 - 「認定経営革新等支援機関」から検索
中小企業庁により認定された経営革新等支援機関から、専門家を探す方法があります。経営革新等支援機関とは、中小企業等経営強化法に基づき、専門性の高い支援事業を行う支援機関を認定する制度です。
参考:経営革新等支援機関検索システム|中小企業庁
株式会社 辻・本郷FASは、中小企業から中堅企業を中心に事業再生のサポートさせていただいています。
税理士や会計士、金融機関出身者など、各分野に精通したプロフェッショナルが最適な業務を担当します。
また、必要に応じて辻・本郷税理士法人をはじめとする各士業や辻・本郷グループ各社による事業の支援も可能です。
事業再生にお悩みの方は、株式会社 辻・本郷FASにご相談下さい。
STEP3:デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスにより、会社や事業の状況を詳細に調査・分析し、会社の価値やリスクなどを明確にします。これを基盤として事業再生の方法を選択し、事業再生計画を策定する重要な調査です。
| 担当者 | 専門家、経営者※ |
| 目的 | ・事業再生の可能性を判断 ・再生計画を策定するための現状把握 ・ステークホルダーに説明・交渉するための情報収集 |
| 内容 | ・財務、事業、税務、法務、人事などの各デューデリジェンス ・事業再生の可能性の評価 |
| 注意点 | ・スピード感を持ってデューデリジェンスを行う ・M&Aのデューデリジェンスとは、主旨が異なる |
※事業再生の局面では、専門家による詳細かつ、専門的なデューデリジェンスが求められます。
本来デューデリジェンスは、M&Aを前提とした投資判断の調査方法です。事業再生では、同様の調査方法を用いながら、会社の再生の可能性を探り、具体的な方法を模索していきます。
事業再生におけるデューデリジェンスは、経営危機に陥っている会社が対象であるため、スピード感を持って行うことが重要です。
デューデリジェンスの詳細は、こちらに記事をご覧ください。
デューデリジェンス(DD)の目的とは?種類や手順、注意点まで
STEP4:事業再生の方法を決定
デューデリジェンスのほか、業界の環境や社会情勢などさまざまな事情を踏まえ、事業再生の方法を決定します。
| 担当者 | 専門家、経営者 |
| 目的 | 具体的な事業再生の実行方法を決定 |
| 選択肢 | ①私的整理 ②法的整理 ③再生型M&A |
| 注意点 | ・実現可能な方法であるか、厳しく検証する ・ステークホルダーが納得できるかどうか ・時間的な問題の有無 |
事業再生には、私的整理、法的整理、再生型M&Aの3つの手法があり、用いる手法は、概ね以下の流れで検討します。

多くの場合、最初に任意整理を検討します。
任意整理で解決が難しい場合は、状況に応じて任意整理以外の私的整理もしくは、再生型M&Aを考えることになります。私的整理で解決が難しい場合に、法的整理を検討することが一般的です。
なお、再生型M&Aは単独で行うとは限らず、私的整理や法的整理と併せて行われることもあります。
①私的整理
債務者である会社が、裁判所を介さずに債権者の金融機関などと直接交渉を行うのが私的整理です。私的整理には、6つの方法があります。
- 任意整理(純粋私的整理)
会社と金融機関が任意の交渉を行い、債権免除やリスケジュールなどの合意を得る方法です。
- 中小企業活性化協議会の支援を受ける
中小企業活性化協議会から事業再生支援を受けることができます。ただし、利用できるのは、中小企業基本法で定められている中小企業に限られています。 - 中小企業の事業再生等に関するガイドラインを利用
本ガイドラインを利用することで、中小企業活性化協議会を利用した場合とほぼ同様の流れで、私的整理を行うことが可能です。中小企業活性化協議会よりも利用対象者の条件が緩やかになっています。 - 事業再生ADRを利用
経済産業大臣の認定を受けた中立的な第三者により、金融機関と会社の間の調整を行い、事業再生を促す方法です。比較的、規模の大きな会社が利用する傾向があります。 - 地域経済活性化支援機構(REVIC)
有用な経営資源を持っているものの、過大な債務を負ってしまった中小企業の事業再生を行う機関です。時限的な措置であり、設置期限は2046年となっています。(2025年6月現在) - 特定調停
中小企業や小規模事業者を対象とした制度で、簡易裁判所に申し立てることにより、特定調停を行うことができます。
※特定調停は、裁判所を利用しますが調停に参加させるなどの強制力がなく、双方が合意することが前提となるため、私的整理に分類されることが一般的です。
ただし、双方の合意により特定調停が成立し、交付された調停調書には、裁判の確定判決と同じ強制執行力があります。
②法的整理
裁判所の管轄下において債務整理を行う手法です。私的整理では事業再生が難しい場合に法的整理を検討します。法的整理には、民事再生と、大企業が利用する会社更生があります。
- 民事再生
民事再生法に基づいて、裁判所の監督下で再生計画の策定を行い、事業再生を実行します。 - 会社更生
裁判所の選任した更生管財人が経営の主導を握り、会社を立て直す手続きです。大企業や上場企業を想定した制度で、株式会社のみが利用可能です。
③再生型M&A
事業譲渡や新規に会社を立ち上げるなどの方法により、再生を図るのが再生型M&Aです。再生型M&Aには、次の3つの種類があります。
- 事業譲渡方式
事業の全部、もしくは一部を他社(他者)に移転する方法です。会社間の契約に基づく売買取引になります。 - 会社分割方式
事業の全部、もしくは一部を他社(他者)に移転する方法です。会社法の組織再編に則って行われます。 - 第二会社方式
複数の事業を行っている場合に行われる手法です。新しく会社を設立し、その会社に採算性がある事業を譲渡します。
STEP5:事業再生計画書の策定
事業再生の改善計画を記した事業再生計画書を作成します。事業再生計画書には、事業再生に至った現状と問題点の分析とともに、事業再生のための具体的な施策やスケジュールなどを記します。
| 担当者 | 専門家、経営者 |
| 作成の目的 | ・具体的な事業再生計画を明文化 ・ステークホルダーに対する説明や資金調達などの資料となる ・社内の意識改革 |
| 策定期間 | 初期段階として、3~5年が目安 |
| 内容 | ・会社概要 |
| 注意点 | ・実行可能な事業再生計画であること ・短期計画をベースに中長期計画も視野に入れた計画を立てる ・ステークホルダーに対して配慮された計画となっている ・リスクを踏まえた対応策になっている ・事業再生が成功するという説得力がある事業再生計画書になっている |
事業再生計画書は、単に計画を策定するだけでなく、スポンサーや金融機関から融資を受けるための説得材料になるほか、取引先や株主、従業員から理解と協力を得るためにも重要な資料となります。
経営者であれば、事業再生計画書の作成は可能かもしれません。専門家の支援を受けて作成された事業再生計画書は、内容が充実しているだけでなく、専門家のお墨付きという説得力を持ちます。
STEP6:金融機関との交渉
資金の問題を解消するために、金融機関との交渉を行います。
| 担当者 | 経営者(専門家が支援) |
| 目的 | ・債務の返済負担を軽減することによる、事業の再構築や収益改善 ・事業再生に向けた合意の形成 |
| 内容 | リスケや債務放棄、つなぎ融資の依頼など |
| 注意点 | ・基本的に債務者である経営者が主体となって交渉を行う ・事業を再生することのメリットの大きさを認識してもらう ・事業再生が成功する可能性が高いと感じられる交渉をする |
事業再生を実施するにあたり、資金面の安定化を図ることは欠かせません。「STEP5:事業再生計画の策定」で作成した事業再生計画書を用いて、誠意を持った交渉を行います。
基本的に交渉を行うのは、債務者である経営者です。弁護士以外の専門家は、代理交渉ができないので、注意しましょう。
ただし、交渉の場において専門家の支援や助言を受けることは可能です。専門家の支援により、事業再生計画の実効性や信頼性など、金融機関に対する説得力が増します。
金融機関との合意が得られると、経営者以外の株主や従業員、取引先などの関係者との交渉がスムーズに運ぶ可能性が高まります。
※紛争性が高い交渉の場合は、弁護士の介入が必要です。
STEP7:事業再生計画の実行
資金面の調整やステークホルダーとの合意形成が整ったら、外部環境を鑑みつつ、事業再生計画を実行します。
| 担当者 | 経営者(専門家が支援) |
| 注意点 | ・定期的にモニタリングを行う ・短期的な再生計画を成功させるだけでなく、中長期的に事業再生を実行していく |
事業再生は、決して平坦な道のりではありませんが、専門家の支援を受けつつ強い意志を持って遂行して行くことが大切です。着実に実行していきましょう。
事業再生は、当初の短期的な再生計画を遂行してからも、長中期的に継続して実行していくことが大切です。
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辻・本郷 FAS株式会社は、再生局面にある企業に対し経営及び財務面の安定化を図り、利益最大化のための打ち手を講じます。選択と集中により経営資源を集中させ、再生計画の策定と早期再生を図るための支援を行うことが可能です。
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3.まとめ
本記事では、事業再生の流れについてまとめました。
危機状態にある会社にとって、事業再生はスピード感を持って臨むことが重要です。まずは、その流れを把握しておきましょう。
STEP1:現状を分析し、原因の特定・問題点を改善する
STEP2:専門家・金融機関に相談
STEP3:デューデリジェンスの実施
STEP4:事業再生の方法を決定?
STEP5:事業再生計画書の策定
STEP6:金融機関との交渉
STEP7:事業再生計画の実行
もし事業に危機感を持っている場合は、早急に事業再生の専門家にご相談されることをおすすめします。
以上、事業再生をご検討の方のご参考になれば幸いです。
