
「商工会からマル経融資を勧められたが、本当にお得なのか知りたい」
「マル経融資という制度を聞いたことがあるけれど実際どうなんだろう、自分にも使える?」
マル経融資という制度があることは知っていても、実際どのような融資なのか、自分が使えるものなのか、このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マル経融資とは、日本政策金融公庫が取り扱う公的な融資制度で、「小規模事業者経営改善資金融資制度」の略称です。その名の通り小規模事業者の経営改善を目的としています。無担保無保証低金利で最大2,000万円まで融資が受けられますが、融資を受けられる対象が限定されていたり、融資を受けるためには必要な条件もあります。
この記事では、マル経融資のメリットデメリット、マル経融資を受けるための条件、どんな人がマル経融資に向いているかまで詳しく解説していきます。ぜひご一読ください。
1.マル経融資のメリット4つ
マル経融資は中小企業や個人事業主などの小規模所業者の経営改善を目的とした公的な融資制度です。小規模事業者を支援するため、小規模事業者にとってメリットの多い融資制度となっています。では、マル経融資にはどのようなメリットがあるか見ていきます。
1-1.担保・保証人がいらない
マル経融資では、商工会や商工会議所による事業者への直接指導が事業者の返済能力を補完する役割を果たすため、担保や保証人の設定は不要です。法人の場合は代表者の個人保証も必要ありません。マル経融資は担保や保証人が用意できない事業者でも利用しやすい仕組みになっています。
1-2.最大2,000万円の借入れが可能
マル経融資では、国が小規模事業者の経営改善を支援することを融資の目的としているため、最大2,000万円の大きな融資を担保や保証なしで用意しています。マル経融資では、商工会や商工会議所が事業者の経営を継続支援し、貸し倒れのリスクが低くなる仕組みを支えています。
1-3.金利が低い
マル経融資では、国が利益を出すことを融資の目的としていないため、低金利で融資が受けられます。マル経融資の金利は、日本政策金融公庫の特別利率F枠年利2.0%(令和7年11月現在)で、銀行融資などと比べるとかなり金利が低く抑えられています。
またマル経融資は固定金利です。融資を受ける時点で毎月の返済額や返済総額が確定しているため、返済額がずっと変わらず資金繰りが安定します。
1-4.商工会や商工会議所のサポートを受けられる
マル経融資では、商工会や商工会議所が事業者の経営実態を把握し、指導を行い、経営改善の方向性を整えていく伴走支援型の融資であるため、融資を受けるにあたり商工会や商工会議所のサポートが受けられます。商工会や商工会議所の専門知識を有した経営指導員から、金融、税務、経営、労務など、事業に関わる様々な問題について幅広いアドバイスが得られます。
商工会や商工会議所の経営指導員からのアドバイスや指示をきちんと取り入れることで、経営改善に対して前向きに取り組んでいると判断され、融資審査が有利になる可能性も高くなります。
2.マル経融資のデメリット5つ
マル経融資は小規模事業者にメリットの多い融資制度ではありますが、デメリットもあります。マル経融資にはどのようなデメリットがあるか見ていきます。
2-1.従業員が21人以上の企業は対象にならない
マル経融資の目的は小規模事業者の支援であるため、従業員数が21人以上の場合利用できません。国が定める小規模事業者の定義は、従業員数20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)です。
2-2.創業融資としては使えない
マル経融資の目的はすでに事業を行っている事業者の経営改善であるため、創業融資としては利用できません。創業前や創業直後の事業者は、同一の商工会や商工会議所の地区内で1年以上事業を行っている、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月以上受けているなどのマル経融資の利用要件が満たせません。
日本政策金融公庫には創業者向けの融資枠が別に設けてられており、マル経融資は「創業者向けではない」という線引きが明確になっています。
2-3.融資実行までに時間がかかる
マル経融資は商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月以上受けることが前提となっているため、すぐに融資を申込むことができません。事業者は、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月以上受けたのち、商工会や商工会議所の審査・推薦をしてもらった上で日本政策金融公庫へ融資を申込み、日本政策金融公庫からも審査を受けるという流れになるため、融資が実行されるまでにかなりの時間がかかります。

2-4.商工会・商工会議所への加入と経営指導を受けることが必要
マル経融資は経営改善を前提にした伴走支援型の融資であるため、利用するには商工会や商工会議所へ加入し、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月受ける必要があります。事業者にとっては手間や時間がかかることになり、負担に感じる場合もあるでしょう。また、商工会や商工会議所の会員になるには年会費がかかることも把握しておきましょう。
2-5.資金使途が限られている
マル経融資は小規模事業者の経営改善を目的としているため、資金使途も事業の改善・維持に直結する運転資金と設備資金に限定されます。決められた使途以外に資金を使った場合は、資金使途違反として会社の信用を失い追加の融資が受けられないなど、今後の資金調達に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
3.マル経融資を受けるための条件
ここまでマル経融資のメリットデメリットについて見てきましたが、ここからはマル経融資を受けるための条件について確認しておきます。
3-1.商工会や商工会議所で6ヶ月以上の経営指導を受けている
マル経融資を受けるためには、商工会や商工会議所で6ヶ月以上の経営指導を受けなければいけません。マル経融資は商工会や商工会議所の経営指導を受けることが前提の国の政策的な融資制度です。事業者が商工会や商工会議所の経営指導を受けることで、事業者の返済能力が補完され、無担保無保証で貸付でき、貸し倒れのリスクが低くなる仕組みを支えています。
3-2.従業員数が小規模事業者の基準を満たしている
マル経融資を受けるためには、従業員数が小規模事業者の基準を満たしている必要があります。マル経融資の目的は小規模事業者の支援です。国が定める小規模事業者の基準は従業員数20人以下、宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下の法人と個人事業主です。
3-3.同一の商工会や商工会議所の地区内で1年以上事業を行っている
マル経融資を受けるためには、同一の商工会や商工会議所の地区内で1年以上事業を行っていなければいけません。マル経融資は、商工会や商工会議所が事業者の経営実態を把握し、経営指導を行い、経営改善の方向性を整えていく伴走支援型の融資です。そのため、一定期間地域で事業をしている実態が必要となります。
3-4.所得税・法人税・事業税・住民税などを完納している
マル経融資を受けるためには、所得税・法人税・事業税・住民税などを完納している必要があります。マル経融資は、商工会や商工会議所の推薦を受け日本政策金融公庫が実施する公的な融資制度です。融資資金の原資は公的な資金となるため、納税義務を果たしていることは必須となります。
4.マル経融資が向いている人、向いていない人
では、マル経融資が向いている人、向いていない人はどんな人なのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
マル経融資が向いている人
①担保や保証人を立てたくない人
②商工会や商工会議所にすでに加入している、または加入予定の人
③地域密着で事業を続けている人
④長期的に経営を安定させたい人
①担保や保証人を立てたくない人
マル経融資は担保や保証人の設定が不要なため、担保や保証人を立てたくない人や立てることが難しい人でも融資を受けることができます。
②商工会や商工会議所にすでに加入している、または加入予定の人
マル経融資を利用するには、商工会や商工会議所へ加入し商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月受ける必要があるため、すでに加入していれば、担当者との関係が構築できていたり、経営状況を把握してもらえているので融資申請までの流れがスムーズです。またこれから加入予定の人も、加入することで融資を受けるための準備がスムーズに進みます。
③地域密着で事業を続けている人
マル経融資を利用するには、商工会や商工会議所の推薦が必要になるため、地域密着で事業を行っている場合には商工会や商工会議所が事業者の実態を把握しやすく、日本政策金融公庫への推薦もしやすくなります。事業者の側も商工会や商工会議所の担当者との関係を継続的に築くことができます。
④長期的に経営を安定させたい人
マル経融資は、固定金利で返済額がずっと変わらないため、資金繰りが安定します。また商工会や商工会議所による継続的な経営サポートも経営の安定化に役立ちます。
マル経融資が向いていない人
①急ぎで資金が必要な人
②商工会または商工会議所に入りたくない、経営指導が面倒な人
③創業したばかりで実績がない人
①急ぎで資金が必要な人
マル経融資は、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月以上受けることが前提となっていてすぐに融資を申込むことができないため、急いで資金が必要な人には向いていません。
②商工会や商工会議所に入りたくない、経営指導が面倒な人
マル経融資は、商工会や商工会議所へ加入し、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月受けることが必須のため、商工や商工会議所に加入したくない人や商工や商工会議所の経営指導を負担に感じてしまう人には向いていません。
③創業したばかりで実績がない人
マル経融資の目的は、すでに事業を行っている事業者の経営改善であるため、創業したばかりで実績がない人は、同一の商工会や商工会議所の地区内で1年以上事業を行っている、商工会や商工会議所の経営指導を6ヶ月以上受けているなどのマル経融資の利用要件が満たせません。
5.まとめ
ここまで、マル経融資のメリットデメリット、マル経融資を受けるための条件、どんな人がマル経融資に向いているかまで見てきました。
マル経融資は、無担保無保証低金利で最大2,000万円まで融資が受けられる小規模事業者にとってメリットの多い融資制度です。経営にお困りの方は、まず一度商工会や商工会議所へ相談してみましょう。
