制度融資のメリット・デメリットを解説|創業時や中小に強い資金調達

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監修者 篠田 佳希

制度融資は、自治体と金融機関、信用保証協会が連携して行う公的な融資制度であり、創業や事業拡大を目指す中小企業・個人事業主にとって心強い資金調達手段です。

プロパー融資と比べて、低金利、審査のハードルが低いといったメリットがある一方で、申請手続きの煩雑さや審査期間の長さなど、見落とされがちなデメリットも存在します。

この記事では、制度融資のメリット、デメリットという観点から制度についてわかりやすく整理し、実際に利用を検討する際に押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

制度融資が自分の事業に合っているのか、他の資金調達方法と比べて本当に有利なのかを判断するための材料として、ぜひ参考にしてください。


1.制度融資の主な7つのメリット

制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して実施する公的な融資制度です。

銀行融資はプロパー融資と、保証協会付き融資の二種類に分けられます。そのうち、制度融資は保証協会付き融資のうち、自治体が斡旋しているものを指します。

この章では、制度融資の主な7つのメリットを、具体例を交えながら解説します。

制度融資とプロパー融資の比較表①

比較項目制度融資プロパー融資
① 金利の低さ低金利(年1〜2%台)やや低金利(年2〜4%台)
② 審査のハードルの低さ創業期や実績の少ない事業者でも通りやすい創業間もない企業は審査が厳しい
③ 借入期間の長さ長期返済が可能(最長10年程度)5〜7年程度が中心
④ 据置期間・無担保・無保証の可否据置期間あり(6か月〜1年程度)無担保・第三者保証なしの制度も選択可能据置期間は短め、担保や代表者保証を求められるケースが多い
⑤ 経営支援の付属経営相談・計画策定支援がセットで受けられることがある金融支援が中心で、経営アドバイスは限定的
⑥ 地域金融機関との信頼関係関係構築しやすい新規の場合、関係構築に時間がかかる

1-1.金利が非常に低い

制度融資は、プロパー融資に比べて金利が低い点が大きな魅力です。

地方自治体が利子補給を行うことで、金融機関が提示する通常金利から1〜3%ほど低く設定されるケースが多いためです。信用保証協会の保証付きであるため、金融機関側のリスクが軽減されることで金利が抑えられています。

例えば、プロパー融資の一般的な事業融資が年利3〜4%であるのに対し、制度融資では1〜2%台で借りられることがあります。特に創業支援型や地域産業振興型のメニューでは、自治体が金利を全額補助する場合もあります。

したがって、制度融資は「低コストで資金を確保したい企業」にとって、非常に有利な資金調達手段と言えます。

1-2.事業実績が少ない企業でも審査のハードルが低い

創業間もない企業や、実績が乏しい事業者でも制度融資は利用しやすいです。

制度融資の審査では、過去の業績よりも事業計画の実現性や将来性、また、地域経済への貢献度などが重視されるためです。信用保証協会がリスクを一部引き受けるため、金融機関単独で判断するよりも審査基準が柔軟になります。

例えば、開業から半年の個人事業主でも、売上見込みや販路の根拠をしっかり説明できれば融資が通ることがあります。実際、創業融資の多くは制度融資を活用しているケースが目立ちます。

過去の実績がなくても将来性で評価される点が、制度融資の大きな利点です。

1-3.長期間の借入が可能

制度融資では、長期間の返済計画を組むことが可能です。

制度融資は、自治体が地域企業の安定成長を目的としているため、返済負担を軽減するような長期融資が用意されているためです。

例えば、自治体によりますが、設備資金では最長15年、運転資金でも10年程度の返済期間を設定できる制度があります。これにより、毎月の返済負担を抑えながら安定したキャッシュフローを維持できます。

資金繰りを長期的に見通せることは、特に創業期や成長期の企業にとって大きな安心材料となります。

1-4.据置期間設定や無担保・無保証も選べる

制度融資の中には、返済据置期間や無担保・無保証で利用できるタイプもあります。

制度融資は地域経済の発展を目的としているため、創業初期の負担を軽くするための仕組みが整えられているのです。

例えば「創業支援特例」などでは、1年間の元金据置期間が設けられていたり、代表者保証なしで利用できる制度もあります。

返済が始まるまでの準備期間を確保できることで、資金繰りに余裕を持った経営が可能になります。

1-5.各種経営支援が付属する場合もある

制度融資では、資金調達だけでなく、経営相談や専門家の支援を受けられることもあります。

制度融資は自治体や商工会議所と連携して実施されるため、経営改善・販路開拓・事業計画策定などの支援プログラムが同時に提供されるケースがあるためです。

商工会議所が関与する制度融資では、経営指導員によるアドバイスや補助金申請のサポートを受けられることがあります。

「お金を借りて終わり」ではなく、事業を成長させるための伴走支援を受けられる点が、制度融資の強みです。

1-6.融資をきっかけに地域金融機関との信頼関係が作れる

制度融資を利用することで、地元の金融機関との信頼関係を築くきっかけになります。

制度融資は、地域の信用保証協会や自治体が関与するため、金融機関も、制度融資を利用した企業などを「地域貢献型の取引先」として前向きに関係を深める傾向があります。

制度融資で初めて地元銀行と取引を始め、その後の追加融資や補助金紹介など、継続的な支援を受けられるケースも多く見られます。

地域金融機関と信頼を築くことは、今後の事業拡大や緊急時の資金調達にもプラスに働きます。

1-7.社会情勢により困窮した際に使いやすい融資制度がある

社会情勢によって経営が打撃を受けた際も、制度融資には迅速な支援制度が設けられることがあります。

制度融資は、景気悪化や災害などの非常時に、地域経済の維持を目的として特別枠を設ける柔軟性があるためです。

例えば、東京都では、2022年7月1日から2023年3月31日まで「新型コロナウイルス感染症・ウクライナ情勢・円安等対応緊急融資」を実施しました。こうした緊急枠では、通常よりも金利・保証料が優遇されるケースがあります。

経済環境が不安定な時期でも、制度融資を知っておけば早期に資金繰り対策を講じることが可能になります。


2.制度融資の主な6つのデメリット

制度融資は、低金利で資金を調達できるなど大きなメリットがある一方で、申請から実行までのプロセスが複雑で時間を要する点がデメリットとして挙げられます。

特に、複数の機関を経由して審査が行われるため、スピード感を重視する企業にとっては不向きな面もあります。

この章では、制度融資を検討するうえで理解しておくべき6つのデメリットを解説します。

制度融資とプロパー融資の比較表②

比較項目制度融資プロパー融資
① 融資実行までにかかる時間の短さ3か月程度と時間がかかる2週間〜1ヶ月程度で実行可能
② 書類の準備や手間の少なさ提出書類が多く、準備負担が大きい銀行独自の審査資料のみで済むことが多く、準備負担が少ない
③ 使途や融資対象の制限自治体の制度ごとに用途(設備・運転資金など)や対象業種が制限される銀行の裁量が大きく、資金使途は比較的柔軟
④ 借入可能額の上限・地域差自治体ごとに上限金額や補助条件が異なる事業規模や返済能力に応じて柔軟に設定可能
⑤ 信用保証料・自己負担の有無保証料(年0.5〜1%前後)が発生原則として保証料なし
⑥ 制度ごとの比較検討のしやすさ各自治体で制度内容が異なるため、比較・選択が難しい審査基準は共通だが、金融機関ごとに貸し出しスタンスに差があり、比較は難しい

2-1.融資決定まで時間がかかる

制度融資は、プロパー融資よりも比較的、融資決定・実行までに時間がかかります。

制度融資は、地方自治体→金融機関→信用保証協会という3段階の手続を踏む必要があるため、単独で完結する銀行融資に比べてプロセスが長くなります。

プロパー融資の場合は申請から最短2週間〜1か月で資金が振り込まれますが、制度融資は3か月程度かかるケースも珍しくありません。

迅速な資金調達が必要な場合、制度融資は時間的リスクを伴う点を考慮する必要があります。

2-2.書類の準備や手間が多い

制度融資は、申請に必要な書類が多く、準備に時間と労力がかかります。

制度融資では、融資の可否を判断するため、経営計画書や資金繰り表など、将来の事業性を裏づける資料を細かく求められるためです。

特に創業融資では、売上予測・市場分析・経営方針などを明確に記載した事業計画書が必要になります。自治体や金融機関がサポートしてくれる場合もありますが、申請者自身の作業量は減りません。

書類作成に慣れていない中小企業や個人事業主にとっては、制度融資の申請は心理的・時間的な負担が大きい点が課題です。

2-3.制度融資によっては使途や融資対象に制限がある

制度融資は、資金の使い道や対象事業に制限がある場合があります。

制度融資は自治体の目的(創業支援・設備投資促進・経営安定化など)に沿って設計されているため、自由度の高い資金用途は認められにくい傾向があります。

運転資金専用や設備資金専用など、資金の使途が限定されているケースが一般的です。例えば、借入金を広告費や新規事業の実験的投資に充てたい場合、制度融資では対象外になることがあります。

資金の柔軟な使い方を希望する場合は、その他の融資やビジネスローンと比較検討することが必要です。

2-4.借入可能額に上限や地域差がある

制度融資には、借入可能額や条件に地域ごとの差があります。

制度融資は自治体の予算や政策目的に基づいて運営されており、地域によって融資枠・金利補助率・保証料補助額が異なるためです。

東京都では最大3,000万円までの融資枠が設けられている一方、地方都市では1,000万円前後に制限されているケースもあります。

同じ「制度融資」であっても、条件や支援内容は自治体によって異なるため、自社所在地の制度内容を必ず確認する必要があります。

2-5.信用保証料や一部自己負担が発生する可能性がある

制度融資では、信用保証料などの負担が発生する場合があります。

制度融資は保証協会が融資に対して保証を行う仕組みのため、保証料の支払いが必要になります。自治体が一部を補助してくれる場合もあり、全額免除も一部自治体ではあります。

保証協会では独自の保証料の計算方法があり、各自治体のWebサイトに記載があります。5年間分の借入を行う場合、5年分の保証料が計算され、その分を差し引いた額を借入することになります。

制度融資は低金利というメリットはあるものの、保証料でコストがかかってしまうことは、理解しておくべきでしょう。

2-6.自治体ごとに制度があるため比較検討しづらい

制度融資は自治体単位で設計されているため、比較が難しく情報収集に手間がかかります。

制度融資はそれぞれの自治体で対象業種・融資枠・利子補給制度などが異なり、同一基準で比較できないためです。

自治体のウェブサイトには制度概要が掲載されていますが、内容が複雑で、似たような名称の制度が複数存在することもあります。そのため、どの制度が自社に最も適しているのか判断しづらいのが現実です。

迷った場合は、自治体の商工担当課や金融機関に直接相談し、自社に最も合う制度を選ぶのが効率的です。


3.制度融資の活用をおすすめできる企業

制度融資は、特に創業初期や信用力が十分でない企業にとっては、将来の発展を支える重要な選択肢となり得ます。この章では、制度融資の利用を積極的に検討すべき4つの企業のタイプを紹介します。

3-1.創業間もないスタートアップ企業や新規開業の個人事業主

創業直後の企業・個人事業主にとって、制度融資は最も利用価値の高い資金調達手段です。

創業期は実績や信用が乏しいため、民間銀行のプロパー融資などでは審査が通りにくい傾向があります。一方、制度融資は事業計画の内容や将来性を重視するため、スタートアップでも柔軟に対応してもらえる点が強みです。

創業支援特化型の「創業融資制度」では、無担保・無保証での融資が可能な場合もあり、低金利でまとまった資金を確保できます。たとえば、創業資金300万円を年利1%台で借りられるケースもあります。

創業初期の企業は、制度融資を活用することで、自己資金だけでは難しい初期投資を安全に行えるようになります。

3-2.地域に根ざした中小企業

地域で長く事業を続けている中小企業にも、制度融資は有効です。

制度融資は自治体の地域経済支援策の一環であり、地元企業の雇用維持や経営安定を目的としています。金融機関や保証協会も「地域支援」という観点から前向きに審査する傾向があります。

例えば、地方自治体では「経営安定化融資」「売上減少対応融資」など、地域産業を守るための制度が用意されています。これらを活用する場合、金利補助や保証料補助がつき、実質的な借入負担を軽減できます。

地域とのつながりを大切にする中小企業にとって、制度融資は地元金融機関との信頼関係を深めるきっかけにもなります。

3-3.設備投資や運転資金でまとまった資金調達が必要な企業

制度融資は、長期返済・低金利の特徴を活かして、設備投資や運転資金に最適です。

制度融資では、返済期間を10〜15年と長く設定できるケースが多く、資金繰りに余裕をもたせながら事業拡大を図ることができます。

例えば、製造業が新たな設備導入を行う場合、プロパー融資では金利2〜3%・返済期間7年が一般的ですが、制度融資なら金利1%前後・返済期間10年で借りられる場合もあります。この違いは、年間の返済負担に大きな差を生みます。

設備更新や事業拡張を検討している企業にとって、制度融資は中長期的な経営計画を安定して進めるための重要な選択肢になります。

3-4.民間金融機関からの融資が難しい企業

他の銀行融資で断られた経験がある企業でも、制度融資なら融資実行ができる可能性があります。

プロパー融資では「過去の信用実績」や「財務内容」が重視されますが、制度融資では「事業の将来性」や「地域への貢献度」を評価の軸とするためです。

例えば、過去に赤字決算だった企業でも、明確な再建計画や新規事業の見込みが示されれば、制度融資を通じて再起を図ることが可能です。信用保証協会の保証がつくことで、金融機関側もリスクを抑えて貸し出しやすくなります。

一度民間金融機関の融資審査に落ちたとしても、制度融資であれば再チャレンジの場として利用できる余地があります。


4.まとめ

制度融資は、プロパー融資など、その他の民間の銀行融資と比べて金利が低く、返済期間が長く、創業期の企業でも利用しやすいという大きなメリットがあります。

さらに、自治体や信用保証協会による支援を受けながら、地域金融機関との信頼関係を築ける点でも、長期的な経営基盤の安定に寄与します。

一方で、申請手続きの煩雑さや審査の長期化、利用条件の制限など、実務的なデメリットも存在します。特に「今すぐ資金が必要」というケースでは、制度融資よりもスピードの早いプロパー融資のほうが適していることもあります。

したがって、制度融資は「時間をかけても、より良い条件で資金を調達したい企業」に向いています。創業初期や信用力に不安がある段階でも、事業計画や地域経済への貢献がしっかり評価されるため、長期的な経営支援の一環として活用する価値があります。

最終的に重要なのは、「自社の資金ニーズと成長段階に合った制度を選ぶこと」です。まずは自社が所在する自治体のホームページや商工会議所で制度内容を確認し、専門家や金融機関に相談しながら最適な融資制度を検討すると良いでしょう。