アップストリーム取引とは?実務と未実現利益の基本

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監修者 宇都宮健太

「アップストリーム取引」「未実現利益」は、連結会計の中でも特に混乱しやすいテーマです。

  • なぜ利益を消すのか
  • ダウンストリームとの違いは何か

といった点でつまずく方が多いのではないでしょうか。

本記事では、アップストリームの用語の定義から、具体例、仕訳例まで丁寧に解説していきます。ぜひご一読ください。


1.アップストリーム取引とは「子会社から親会社へのグループ内取引」

グループ会社間の取引は、「どちらからどちらへ行われたか」によって呼び方が変わります。

全体像を以下で見てみましょう。

区分取引の方向利益が発生する主体
アップストリーム子会社→親会社子会社
ダウンストリーム親会社→子会社親会社

取引の方向と、どちらに利益が発生するかを押さえておくことがポイントです。

1-1.アップストリームとは子会社から親会社への取引

アップストリーム取引とは、子会社から親会社に向けて行われる取引のことです。

例えば、

  • 子会社が商品を親会社に販売する
  • 子会社が設備や車両などの固定資産を親会社に売却する

といったケースが該当します。

この場合、利益は子会社側で計上される点が特徴です。

1-2.ダウンストリームとは親会社から子会社への取引

親会社から子会社に対して行われる取引は「ダウンストリーム取引」と呼ばれます。

例えば、

  • 親会社が商品を子会社へ販売する
  • 親会社が資産を子会社へ売却する

といったケースが該当します。

アップストリームとの違いはシンプルで、利益が親会社に発生します。


2.アップストリーム取引の具体例

アップストリーム取引は、子会社から親会社へ向けて行われる取引です。

以下に具体例を挙げていきます。

2-1.子会社が商品を親会社に販売する

例えば、子会社がお菓子を製造しており、親会社が販売を担当しているケースです。

  • 子会社がクッキーを製造
  • 親会社に10,000円で販売(原価8,000円)

この場合、子会社には2,000円の利益が発生します。

このように子会社が販売側となり利益を計上する取引がアップストリーム取引となります。

2-2.子会社が固定資産を親会社に売却する

アップストリーム取引は、商品だけでなく固定資産でも発生します。

例えば、子会社が使用していた業務用の機械を親会社へ売却するケースです。

子会社が100万円で購入した機械を親会社へ120万円で売却

この場合、子会社には20万円の利益が発生します。

資産を親会社に売却し、子会社側で利益が出る取引もアップストリーム取引に該当します。


3.アップストリーム取引では未実現利益の扱いがポイント

アップストリーム取引では、子会社側で利益が計上されます。

しかし、その利益がそのまま連結上で認められるとは限りません。

グループ内で発生した利益のうち、外部にまだ販売されていないものは「未実現利益」として扱い、連結上で調整(消去)する必要があります

ここではその考え方と処理の違いを整理します。

3-1.未実現利益はグループ内利益のため連結上で消去する

未実現利益とは、グループ内の取引で発生したものの、まだ外部に販売されていない利益のことを言います。

例えば

子会社が親会社に商品を10,000円で販売(原価8,000円)

→子会社に2,000円の利益が発生

しかし、その商品が親会社に在庫として残っている場合、この2,000円はグループ全体で見るとまだ外部に売れていないため、まだ実現していない利益がある状態となります。

この2,000円は未実現利益として扱い、連結上では取り消す(=消去)必要があります。

連結会計では、親会社と子会社をまとめて一つの会社として考えます。

そのため、グループ内で商品を売買しても、外から見れば「社内でモノが移動しただけ」とみなされます。

3-2.すでに外部に販売済みの場合消去は不要

一方で、商品がすでに外部に販売されている場合は、グループの外に出ている=利益は確定となります。

この場合は未実現利益にはならず、消去は不要です。

3-3.ダウンストリームは親会社の利益のため全額消去

ダウンストリーム取引では、利益は親会社に発生します。

例えば

  • 親会社が子会社に商品を販売し、20,000円の利益が出た
  • その商品がまだ子会社に残っている

この場合、この20,000円は未実現利益です。

この20,000円はすべて親会社が計上した利益です。

そのため処理はシンプルで、この20,000円はそのまま全額取り消します

3-4.アップストリームは子会社の利益のため割合で分けて消去

アップストリーム取引では、利益は子会社に発生します。

この場合の未実現利益はいったん全額を消去し、そのうち非支配株主(子会社の株を一部保有している親会社以外の株主)の分は残します

例えば

未実現利益:20円

持ち株比率:80% の場合⇒被支配株主の分:4円(20×20%)

つまり20円を消去したうえで、4円は非支配株主持分として残すため、結果として16円分が消去される形になります。


4.未実現利益の仕訳例

未実現利益の処理は、連結財務諸表を作る時に行う調整です。

親会社や子会社の帳簿を修正するのではなく、連結上で「なかったことにする」ための仕訳を行います。

ここでは次のケースで考えます。

子会社が親会社へ100円で販売(原価80円)→子会社に20円の利益

商品はまだ親会社に在庫として残っている

4-1.売上と仕入れの相殺

まず、グループ内の取引そのものを消します。

個別では

子会社:売上100円

親会社:仕入100円

が計上されていますが、グループ全体ではこの取引は存在しないためです。

そこで次の仕訳を行います。

借方貸方
売上高100円売上原価100円

グループ内の売買をまるごとなかったことにするという処理です。

4-2.未実現利益の消去

次に、在庫に含まれている利益を消します。

今回のケースでは、在庫100円の中に利益20円が含まれている状態です。

しかしグループ全体ではこの利益はまだ実現していないため、利益と在庫を適正な金額に戻します。

仕訳は次の通りです。

借方貸方
売上原価20円商品20円

計上されていた利益20円を取り消し、在庫も正しい金額に修正するという処理です。


5.アップストリーム取引の処理で迷った場合は、専門家に相談することで安心して進めることができます

アップストリーム取引の処理は、ケースによって対応が変わるため、実務では判断に迷うことも少なくありません。

特に

どこまで消去が必要なのか

金額をどのように計算するのか

といった点でつまずくことがあります。

少しでも迷った場合は専門家に相談することで安心して進めることができます。

辻・本郷 税理士法人では、未実現利益の整理、連結修正仕訳のチェックなど連結会計に関する実務サポートを受けることが可能です。連結会計でお困りの際は、ぜひ辻・本郷 税理士法人へご相談ください。


6.まとめ

本記事のポイントは次の通りです。

  • アップストリーム取引は「子会社⇒親会社」の取引
  • ダウンストリーム取引は「親会社⇒子会社」の取引
  • 未実現利益は「外部に売れていない利益」であり、連結上で消去が必要
  • ダウンストリームは親会社の利益のため全額消去
  • アップストリームは子会社の利益のため、非支配株主分を残して消去
  • 未実現利益の処理は、連結上の仕訳で調整する

アップストリーム取引は、取引の方向と利益の帰属を押さえることで理解しやすくなります。

日々の実務に本記事がお役立ていただければ幸いです。