
建設業の経理や決算に関わっていると、「建設用足場材料は経費で落としていいのか、それとも資産として計上すべきなのか」という疑問を抱く方は多いでしょう。
足場材は一本あたりの単価がそれほど高くない一方で、まとめて購入すると請求金額が大きくなりやすく、少額減価償却資産に該当するのか、その他の減価償却処理が必要なのか判断に迷いやすい材料の代表例です。
自社の足場材がどのような扱いになるのかについて、ご自分で判断できるようになりたいですよね。
この記事では、建設業特有の事情を踏まえながら、足場材料の少額減価償却資産判定の考え方と、実務で迷いやすいポイントをわかりやすく整理していきます。
目次
1.建設用足場材料が「少額減価償却資産」と判定されるメリット
建設用足場材料は、「少額減価償却資産」と判定される場合があります。これによるメリットは、取得年度に一括で経費計上できることです。
通常、固定資産は複数年に分けて経費化しなければいけません。ところが、少額資産と判定されると、建設用足場材料をその年に一括で経費計上できます。減価償却費を前倒しにして損金算入することが可能となれば、建設業者の短期的な税負担を軽減できます。
例えば、24万円で1そろいの金属製足場を購入したケースを考えてみましょう。特例を使用せずに計上する場合は、3年で償却となりますが、少額減価償却資産の特例を適用できる場合は一括で償却することが可能です。
ただし、どの特例が適用できるか判定するためには、正しい知識が必要です。
次の章では特例の適用基準をわかりやすく解説していきます。
2.減価償却の5つの区分
減価償却の制度では、基本的には取得価額10万円未満・20万円未満・40万円未満でそれぞれ異なる扱いが認められています。この3つのラインを理解しておくことで、適切な固定資産の費用化方法を判定できるようになります。
少額減価償却資産・一括償却資産・特例についての比較表
区分 | 取得価額 | 制度内容 | 償却方法 | 足場材での典型例 | 留意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 10万円未満 | – | 全額を当期費用(消耗品費等) | 足場材料1本5,000円×20本(1本単位で管理) | 判定単位と管理実態が一致している必要がある |
| 20万円未満 | 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産 | 3年間均等償却(例:15万円→5万円×3年) | 足場材料1そろい15万円(ユニット単位で管理) | 節税効果は緩やかだが、将来の償却資産税の負担が軽くなる(※少額減価償却資産の特例を適用することも可能) |
| 40万円未満(中小企業者等) | 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例(年300万円まで) | 取得年度に全額損金算入 | 足場一式25万円/現場セット30万円 | 中小企業者等・青色申告が条件。貸付目的は不可(令和8年4月1日から) |
| 通常の減価償却 | 上記に該当しない資産 | 法定耐用年数に基づく償却 | 工具器具備品なら3年など | 単管パイプ(複数年使用)/大型足場セットなど | 使用可能期間1年未満なら即時償却も可能 |
| 使用可能期間が1年未満 | – | 短期利用資産として処理 | 取得年度に全額損金算入 | 短期現場のみで使い切る資材など | 使用可能期間が1年未満であることを客観的に説明できる必要あり |
2-1.取得価額10万円未満
10万円未満の減価償却資産は、原則として全額を当期の損金(経費)に算入することが認められています。そのため、1そろい10万円未満の足場材料は、原則として即時費用処理が可能ですが、使用可能期間や管理実態を踏まえた整理が求められます。
税法上、取得価額10万円未満の減価償却資産は消耗品費や諸経費としてその期の損金にできるため、耐用年数による償却を待たずに費用処理が認められています。足場材料の場合、判定単位(1本や1部材)がこの基準を満たせば適用可能ですが、「消耗品として管理している」という実態が伴う必要があります。
例えば、工具A(取得価額8万円)を購入する場合、10万円未満なので、購入年度に全額を消耗品費等として費用処理が可能になります。また、単管パイプ1本が単価5,000円で20本(合計9万円)購入した場合、「1本単位」で管理・使用するなら各本を10万円未満として全額を消耗品費に計上可能です。一方で、常にセットで使う場合、一式9万円をまとめて消耗品費として計上することになります。
したがって、10万円未満の足場材料は即時の費用計上が可能ですが、判定単位と管理実態の整合性を確保し、帳簿上で消耗品費などとして処理する必要があります。
2-2.取得価額10万円以上20万円未満
取得価額10万円以上20万円未満の減価償却資産については、ごく例外的に「一括償却資産」として3年間の均等償却が認められます(対象者の制限なし)。
例えば、機械部品B(取得価額15万円)を購入する場合、一括償却資産として、3年間均等に各5万円ずつ償却できるようになります。
※ただし、一括償却資産の特例を使った場合には、何があっても3年間で一括償却をする必要があります。
この「一括償却資産」として3年間の均等償却をする場合、将来的な償却資産税がかからなくなるため、「少額減価償却資産の特例」の場合と比較して、その期の節税効果は少ないですが、長期的に見たときメリットのある償却方法になります。
2-3.取得価額40万円未満
中小企業者等であれば、取得価額40万円未満(令和8年改正)の減価償却資産について、年間300万円を限度として取得年度に全額損金算入できる「少額減価償却資産の特例」を利用できます(※貸付を目的としている場合、この特例を適用することはできません)。これは、建設業者の足場セットなどの購入に適用しやすい特例となっています。適用期限は2029年3月31日までとなっていますが、毎年更新されているかどうかを適宜確認しましょう。
これらにより、通常の耐用年数より短期間で費用化することができ、結果として資金繰りを改善できるようになります。
例えば、設備C(取得価額25万円)を購入する場合、中小企業者等で青色申告かつ年間300万円の範囲内であれば、「少額減価償却資産の特例」により25万円全額をその年に損金算入できます。また、15万円の足場ユニットの場合、一括償却資産として年5万円×3年償却することになるなど、状況に応じて判断することになりますが、中小企業者等で特例が適用される場合には、全額即時に経費計上することもできます(年間300万円以内の場合)。
2-4.使用可能期間が1年未満
足場材料であっても、使用可能期間が1年未満と合理的に判断できる場合には、通常の減価償却ではなく、取得年度に全額を即時償却することが認められます。
法人税法や、それを前提とした耐用年数通達などでは、耐用年数が1年未満の資産は取得年度に全額を費用化できると定められており、建設業の足場材のように損耗が激しい資材では、この規定が適用されるケースがあります。
即時償却が認められる例としては、例えば、現場限定で3ヶ月使用し、その後廃棄するジャッキベースについて、使用可能期間が1年未満と合理的に説明できるため、取得年度に全額費用化できる場合があります。
即時償却の可否を判断する際の主な観点は次の3点です。
耐用年数が1年未満の資産かどうかの判断に必要な主な観点は、次の3つです。
・現場での使用期間:1現場のみで短期間使用して廃棄するか
・損耗実態:使用により著しく劣化し再利用が困難か
・入れ替え頻度:毎回新規購入が必要なほど消耗が早いか
これらを総合的に判断し、帳簿・現場記録・写真・廃棄証明などの裏付け資料を残すことが重要です。
2-5.通常の減価償却
足場材料が、少額資産(10万円未満)、一括償却資産(20万円未満)、少額減価償却資産の特例(40万円未満)に該当せず、また使用可能期間が1年未満とも判断できない場合には、原則として通常の減価償却の対象となります。
通常の減価償却では、法定耐用年数に基づいて毎期償却費を計上します。
足場材は工具器具備品に該当することが多く、耐用年数は一般に3年が用いられます。
通常償却となる典型例としては、以下が挙げられます。
- 単管パイプ(複数年使用)→ 使用可能期間が1年以上であるため、通常の減価償却が必要。
- 大型足場セットなど、繰り返し使用する資材。
足場材料は基本的に複数年使用されるため通常償却が原則ですが、実態として1年未満で使い切る資材については即時償却が可能です。
ただし、即時償却は節税効果が大きい分、税務調査では実態の裏付けが重視されるため、現場記録や消耗状況の証拠を丁寧に残しておくことが求められます。
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こうした制度などを組み合わせることで、同じ設備投資でも、通常の耐用年数による償却より早いタイミングで費用計上が可能となり、キャッシュフローや節税に大きく影響します。
このように、同じ「少額の設備投資」でも、金額帯と事業者区分によって適用できる制度が変わり、損金算入のスピードが大きく異なることがわかります。
したがって、少額減価償却資産の制度を押さえる際は、①10万円未満は即時費用化、②20万円未満は一括償却資産、③中小企業者等であれば30万円未満は年間300万円まで即時償却、という3つのラインを意識しておくことが、実務的な判断や節税策の検討に役立ちます。
3.足場材料の「判定単位」の考え方(1本・1体・セットなど)
足場材料は、使用する「単位」によって少額資産の判定が大きく変わります。そのため、「意図的に単位を細かくして少額資産にしたい」と考える方もいるかもしれませんが、判定単位は必ず利用実態に合わせて設定しなければなりません。実態とかけ離れたまとめ方をすると、税務調査で「本来まとめて償却すべきでないものをまとめた」と判断され、追徴課税のリスクが生じます。
足場材は単管・枠・ジョイントなど複数の部材が組み合わさって機能するため、「どこまでを1つの資産とみなすか」が曖昧になりやすい性質があります。
このため、税務では運搬、組立、解体、保管の実態に基づく「利用単位」を資産単位として扱うことが原則です。
実態より細かく分ければ、取得価額が小さくなり、例えば少額資産などとして扱いやすくなりますが、実態と乖離した単位設定は「形式的に細分化しただけ」と判断され、税務調査で指摘されやすくなっています。逆に、実態として常に一体で使うものをバラバラに扱うのも、やはり不自然だと指摘されやすいです。
※判定の一例としては、次のように利用実態に応じて判定単位が変わります。
・単管をバラで使い回す運用をしている→「単管1本」「ジャッキベース1個」など部材単位で資産認識しやすい→1本あたりの価額で少額資産判定が可能になる
・毎回同じ構成で「枠組足場ユニット」として運搬・組立する運用をしている→ユニット一式を「1体」として扱う方が実態に合う→ユニット単位の価額で少額資産・一括償却資産などを判定できる
・現場ごとに足場一式を固定して使う運用をしている→「1現場分セット」を1資産とみなす→取得価額が高額になりやすく、通常の減価償却が自然となる
さらに、税務調査では、現場ごとの使用実態を示す台帳・写真・使用期間の記録や、「常に一体として利用している」ことを説明できるか、単位設定が恣意的でないかといった点が注目されます。
そのため、足場材料の判定単位は、現場での運用実態を基準に「1スパン」「1ユニット」「1現場分」などを明確に定義し、その単位ごとの取得価額で少額資産判定を行うことをおすすめします。また、取得価格が高額な場合や、判定基準に不安がある場合は、税務署と事前相談することによって追徴課税のリスクを抑えることができます。
4.足場材料の勘定科目(工具器具備品か、消耗品費か、一括償却資産か)
足場材料の勘定科目の選択は、取得価額と適用した特例で決まります。選択の整合性が保たれているほど申告の信頼性を高めることとなるため、正しい勘定科目を用いて計上していきましょう。
・原則は、取得価額10万円未満・使用期間1年未満の足場材料は消耗品費
・一括償却資産の特例を使用した場合は一括償却資産で計上
・それ以外は器具備品や工具器具備品として固定資産計上する
少額減価償却資産特例の適用時には、「少額減価償却資産」として注記を付けて処理することをおすすめします。
消耗品費は即時損金処理向きで小口部材に適しますが、10万円未満の備品を計上する際に使うため、税務上は「減価償却対象外資産」に限られます。
一方で、器具備品(耐用年数5年)・工具器具備品(耐用年数7年)は10万円以上の備品を計上するときに使います。少額減価償却資産の特例を利用した際には、業務の用に供した年分の必要経費として、全額費用化することができます。
また、一括償却資産の特例を利用した際は一括償却資産という勘定科目を利用して処理します。少額特例時には、これらは取得年度に全額償却します。
勘定科目は「消耗品費→即時・小口」「器具備品・工具器具→償却対象」と使い分け、実態の根拠を明確にすることで、会計・税務の整合性を取ることができるようになります。
5.処理方法の検討や材料の管理にお悩みの方にはレンタル足場材のご活用がおすすめ
足場材の判定単位や勘定科目に悩む場合は、「そもそも自社で資産計上しない」という選択肢として、レンタル足場材の活用が有効です。
レンタル足場材であれば、レンタルしている一式をそのまま「1単位」として扱えるため、「1本単位か、1セット単位か」といった判定に悩む必要がありませんし、業者も多く、必要な期間・数量だけ柔軟に利用できます。税務上も、レンタル料として支払った金額を原則として期間対応で経費計上すればよいため、減価償却や少額資産判定・耐用年数の検討が不要となり、処理が非常にシンプルになります。
一方で、レンタルにはデメリットもあります。自社保有と比較すると、長期・多頻度で利用する場合にはトータルコストが割高になりやすく、繁忙期には予約が取りにくい・希望仕様が揃わないといった実務上の制約が生じることもあります。
したがって、「税務処理の簡便さ」や「調達の柔軟さ」と「長期コスト」を比較し、自社の現場数・使用頻度・資金繰りなどを踏まえて、足場材の購入やレンタルを組み合わせていく方針を検討するとよいでしょう。
6.建設用足場材料の少額資産判定にお悩みの方は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスをご検討ください
建設用足場材料の少額減価償却資産の判定は、事業者ごとにケースバイケースとなっており、複雑であるため、誤れば修正申告や追徴課税のリスクが生じる内容となっています。不安がある際には、専門家である税理士にご相談することをおすすめします。
辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスを活用して、現場の実態に即した最適な処理と税務リスク対策を実現しましょう。
辻・本郷 税理士法人では、建設業特化の税務ノウハウを活かし、台帳管理から特例適用まで総合的にサポートします。顧問契約により日常的な相談が可能で、資金繰り改善や節税策の提案も受けられます。
足場材料の少額資産判定についても代行・アドバイスし、事業者の負担を軽減します。
お悩みの際には、ご検討ください。
7.まとめ
建設用足場材料の少額資産判定を正しく行うことで、建設業者は税務上有利な処理を実現できます。
足場材料は取得価額・判定単位・耐用年数などを基に、10万円未満は即時費用化、20万円未満は一括償却、40万円未満で中小企業等の場合には少額減価償却資産特例を活用し、早期の費用化を図りましょう。
税法で定められている少額減価償却資産制度は、建設業者の設備投資を支援しています。
正しい単位の設定により、適用範囲が広がります。現場の実態に基づく勘定科目の選択と、根拠となる記録の整備を欠かさないようにしましょう。これにより、納税の負担を軽減でき、資金繰りを改善できる可能性があります。
必要に応じて税理士へのご相談をおすすめします。

