銀行にリスケジュールを交渉する手順とは?ポイントと準備方法を解説

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監修者 篠田 佳希

リスケジュールを金融機関へ申し出るという行為は、多くの経営者の方にとって強い心理的負担を伴いますよね。

返済が苦しくなり始めたとしても、金融機関との関係が悪化するのではないかという不安が先に立ち、行動を先送りしてしまうことが珍しくありません。

しかし、返済負担が重くなった段階で正しく交渉すれば、金融機関は「早めの相談」を評価し、事業を立て直すための時間を確保してくれる場合が多いです。

そこで重要になるのが、金融機関とリスケジュールの交渉をすべきタイミングや、経営者がどのような情報をもって臨むべきかを理解することです。

この記事では、リスケジュール交渉に踏み出すための基本的な考え方から、成功率を高める実務的な手順までを分かりやすく整理し、迷いを行動に変えるための視点を示していきます。ぜひ、ご一読ください。


目次

1.リスケジュール交渉は「資金が尽きる前」に早めに行うべきである

リスケジュール交渉で最も重要なのは、資金が枯渇する前に、早めに金融機関へ相談することです。

なぜなら、資金が尽きる直前で相談した場合、「危機管理が甘い」「改善余地が少ない」と判断され、交渉が通りにくくなる可能性もあるためです。

例えば、売上減少が続き、三か月先に資金ショートが予測された企業が、販売管理費の削減や不稼働資産の売却など、売掛金の早期回収、買掛金の支払い繰り延べ、追加融資の検討といった基本的な資金面の改善策を講じても、資金改善の見通しが立たなかったため、経営者は早期に金融機関へ相談しました。その結果、「対応が早く、改善努力も十分」という評価を受け、返済条件の変更はスムーズに承認されました。

したがって、リスケジュールは「資金が底をつきそうだから行うもの」ではなく、むしろ、内部の改善策を試みてもなお資金繰りに不安が残る段階に申し出るべきものです。リスケジュール交渉においては、早期の判断が企業を守るために重要です。


2.リスケジュール交渉の具体的な手順

リスケジュールの交渉は、書類をそろえて銀行に申し出るだけの単純な作業ではありません。実際には、事業の現状把握から経営判断、金融機関との情報共有、複数行間の調整、交渉後の実行管理まで、一連のプロセスを丁寧に積み上げる必要があります。

この章では、リスケジュールの交渉がスムーズに進む企業が実際に行っている流れに沿って、交渉のステップを具体的に解説します。

2-1.事業の現状を分析し、資金繰り対策を講じる

リスケジュールの交渉は、まず自社の状態を正確に把握し、改善策を検討したうえで進めるべきです。

金融機関は、リスケジュールの前に、返済条件を緩めても再建が期待できるかを見極めます。そのため、事業の現状を分析せずに交渉に入ってしまうと、「計画性がない」「改善の見込みが不透明」と評価され、交渉が難航しやすくなります。

実務では、まず経理・財務担当が以下の資料を整理します。

・最新の試算表
・資金繰り表(最低でも6ヶ月〜1年分)
・借入金一覧(金融機関ごとの返済条件、返済予定表を含む)

これらの資料をもとに、経営陣が「現状のどこが問題か」「どの施策なら改善が見込めるか」を話し合い、再建計画を作成します。

再建計画には、売上改善策や原価管理の見直しだけでなく、販売管理費の削減、不稼働資産の売却、売掛金回収の強化、買掛金の支払い繰延べなど、日常的な資金繰りを改善する施策も含めます。

こうした対策を講じたうえで、それでも資金繰りが改善しない場合に、金融機関へリスケジュールを依頼する流れになります。

事前の分析と改善策の検討は、リスケジュール交渉を成功させるうえで欠かせない前提条件です。

2-2.必要に応じて税理士などの専門家に相談する

専門家の関与は、交渉内容の質と金融機関からの信頼性を高める効果があります。

リスケジュール交渉では、事業の継続可能性、保証の取り扱い、複数金融機関の調整など、専門知識を要するポイントが多くあります。経営者が単独で対応しようとすると、交渉の優先順位やリスクを見誤ることがあります。

税理士、会計士、事業再生コンサルタントなどの専門家は、

・金融機関が確認したいポイント
・提出資料のまとめ方
・交渉すべき条件の線引き
・再生計画を「銀行が納得しやすい形」に整える方法

など、実務に沿った助言を行います。

特に、複数の金融機関から借り入れがある企業は、金融機関間の調整が複雑になるため、専門家が入った方が交渉がスムーズになります。

リスケジュールの交渉は企業単独でも行えますが、状況が複雑なほど、専門家の同席が交渉力を高めます。

2-3.金融機関と面談を行い、交渉する

金融機関との面談では、改善策と返済見込みを説明し、返済猶予や返済期間延長といった具体的な案を提示することが重要です。

金融機関は、リスケジュールを受けても事業が回復しなければ、債権回収が困難になります。そのため、企業側が合理的な改善策と現実的な返済計画を示せなければ、合意は得られません。

まずはメインバンクとなる金融機関と面談し、

・元本返済を一定期間猶予したい
・返済期間を延長したい
・元本返済を減額したい

など、自社の希望条件を説明します。

金融機関側からは、追加資料の提出を求められたり、経営者保証の見直しの可能性が問われたりすることもあります。交渉材料を整理しておくことで、面談の流れをよりスムーズに進められます。

面談では合理的な改善計画に基づく交渉という姿勢を取ることで、信用につながります。

2-4.複数の金融機関から借入がある場合、金融機関説明会(バンクミーティング)で説明する

複数行と取引がある企業は、金融機関説明会を開き、全行に同じ情報を共有することが交渉の前提になります。

リスケジュールにより、ある金融機関だけ返済条件が緩和され、別の金融機関が不利な扱いを受けることになるようでは、金融機関は納得しないことが多いです。そのため、バンクミーティングを通じて、全行が共通の状況理解と判断材料を持つことが欠かせません。

バンクミーティングでは、

・現状の資金繰りの問題点
・講じてきた改善策
・今後の再建計画
・返済猶予や返済期間延長など、求めるリスケジュール条件

などを丁寧に説明することになります。

この場では「一行だけ特別扱いしない」姿勢を明確にし、全行に同じ条件で協力をお願いすることが重要です。

複数行との借入がある場合は、バンクミーティングで公平性を確保し、協力体制を整えることが交渉成功の鍵になります。

2-5.各種資料を提出する

提出資料は、金融機関が再建の可能性を判断するうえで最も重要な材料となるため、正確で現実的な内容に整えることが不可欠です。

金融機関は、提出された資料をもとに「リスケジュール後に事業が再建する見込みがあるか」「返済可能性がどの程度あるか」を判断します。資料が不十分だったり楽観的すぎる場合、交渉の信用性が大きく損なわれます。

提出が求められる資料の典型は、次のようなものです。

・最新の試算表
資金繰り予定表
借入一覧表
・損益改善のための具体的な計画
・今後のキャッシュフロー見通し
・役員報酬や固定費の見直し状況
・不採算部門の改善・撤退方針

特にキャッシュフローの見通しは、金融機関が最も重視する資料です。「どれだけの期間、利息だけなら払えるのか」「いつ元本返済に戻せるのか」を明確にする必要があります。

資料の精度はそのまま信用力につながるため、金融機関が納得しやすい形に整理して提出することが重要です。

2-6.合意書(覚書)を締結する

合意書の締結は、リスケジュール交渉の結果を正式に文書化するプロセスであり、以後の返済条件や報告義務が明確になります。

口頭での合意だけでは、返済計画や条件の誤解が生じる可能性があります。合意書にまとめることで、双方が確認すべき内容が明確になり、金融機関側の承認手続きもスムーズに進みます。

合意書(覚書)には、通常次のような項目が記載されます。

・返済猶予期間
・返済再開の時期
・返済期間延長後のスケジュール
・利息支払いの取り扱い(利息は通常支払い継続)
・定期的な財務報告の義務
・計画未達成の場合の再協議の扱い
・必要に応じた経営者保証の見直し

また、複数の金融機関から借入がある場合は、他行にも同じ条件で同意を得るよう調整し、返済条件がバラバラにならないようにします。

合意書は、リスケジュール後の運営方針を規定する土台となるため、内容を十分理解して締結することが大切です。

2-7.事業再生計画を実行し、必要に応じて再交渉または法的整理も検討する

リスケジュールはあくまで、資金繰りの時間をつくるための手段であり、本質は再建計画を実行し、収益とキャッシュフローを改善することにあります。

そのため、リスケジュール期間中に改善が進まなければ、元本返済の再開は難しくなり、再び資金繰りが悪化する可能性があります。また、改善が進まないまま時間だけが過ぎてしまうようでは、金融機関からの理解も得られづらくなります。

したがって、リスケジュール期間中は、

・計画に沿ったコスト削減
・不採算部門の整理
・売上・利益の改善策の実行
・固定費の最適化
・経営陣の役割や意思決定プロセスの改善

などを着実に進める必要があります。

それでも目標達成が難しい場合は、再交渉によって返済条件を見直したり、必要に応じて法的整理へ移る選択肢も生じます。

この段階でも専門家の助言が大きな支えになります。

リスケジュールはあくまでゴールではなく、事業再生のスタートです。改善の進捗を確認しながら、現実的な選択肢を柔軟に検討することが重要です。


3.リスケジュール交渉の際に準備すべき資料

金融機関とのリスケジュール交渉では、事業の現状や再建の可能性を客観的に示すために、いくつかの資料を事前にそろえておく必要があります。この資料の質が、金融機関の信頼度や交渉の進みやすさに直結します。

この章では、リスケジュールの現場で実際に求められる代表的な資料について、提出の意味と注意点を解説します。

3-1.資金繰り予定表

資金繰り予定表は、リスケジュール交渉において最も重視される資料のひとつであり、将来の返済可能性を示す根拠となります。

金融機関は、リスケジュール後に「返済が再開できるか」「利息は確実に払えるのか」を数値で確認したいと考えています。資金繰り予定表がなければ、今後のキャッシュの流れが見えず、返済条件を緩和する判断ができません。

資金繰り予定表には、最低でも6か月〜1年先までの、

・売上入金
・仕入支払
・経費の支払
・税金・社会保険料
・利息支払
・元本返済(リスケジュール後に再開予定の時期を含む)

などを記載します。

「利息は払えるが元本は難しい」「〇月以降に返済再開が可能」など、具体的な見通しが説明できる形が望まれます。

資金繰り予定表は交渉の土台であり、金融機関が最も重視する資料であるため、精度の高いものを準備することが不可欠です。

3-2.借入一覧表

借入一覧表は、自社がどの金融機関からどの条件で資金を借りているかを整理し、交渉の公平性を保つために必要です。

金融機関は、他行の返済条件や残高を見て、自社だけが不利な扱いにならないかを確認します。また、企業側としても、全体の負債構造が見えていないと、適切なリスケジュール案を作れません。

借入一覧表には、

・金融機関名
・借入残高
・金利
・返済期間
・毎月の元金返済額
・返済期日

などを整理します。

複数行との取引がある場合は、特にこの一覧が重要になります。「すべての金融機関に同じ条件で協力を求めている」ことを示す資料になるためです。

借入一覧表は、全体の負債関係を明確にし、交渉を公平かつ透明に進めるための基本資料となります。

3-3.返済猶予の依頼書

返済猶予の依頼書は、正式にリスケジュールを申し入れるための文書であり、金融機関に対して誠実な姿勢を示すうえで有効です。

口頭だけでの依頼では、担当者や支店内での共有が難しく、判断材料として不十分です。依頼書を提出することで、金融機関が社内決裁をしやすくなり、交渉が前向きに進みやすくなります。

依頼書には、

・返済猶予をお願いする理由(売上減少、コスト増、特別損失など)
・これまでに行った改善策
・今後の再建計画の概要
・希望する返済条件(元本猶予期間、支払える利息額など)

を明確に記載します。

書式に厳密なルールはありませんが、金融機関にとって判断しやすい内容に整理することが重要です。

返済猶予の依頼書は、交渉を公式なプロセスとして進めるための入口であり、丁寧に作成することで信頼性が高まります。

3-4.必要に応じて経営改善計画書(準備できない場合は相談する)

経営改善計画書は、リスケジュール後の再建可能性を示す中心資料ですが、時間的猶予がない場合などには無理に自力で作ろうとせず、必要に応じて専門家に相談しながら作成する方が適切です。

金融機関は、リスケジュールに応じる以上、「計画が現実的で実行可能か」を厳しく確認します。しかし、企業自身が初めて計画書をつくろうとすると、要点がずれたり、金融機関が見たい情報を十分に盛り込めないことがよくあります。

経営改善計画書には、

・事業の問題点
・市場環境や競争状況の分析
・損益改善策、コスト削減策
・不採算部門の整理方針
・資金繰りの改善プロセス
・返済再開の時期と根拠

などを書き込みます。

リスケ交渉の段階では、まだ詳細な計画をまとめきれない企業も多く、その場合は「計画書は専門家と相談しながらまとめる予定です」と伝えて交渉をすることも可能な場合があります。

経営改善計画書は交渉の最終的な判断材料となりますが、早期に無理して作る必要はありません。専門家と協力しながら、実現性の高い内容に仕上げることが重要です。


4.リスケジュール交渉で金融機関からよく聞かれる質問と答え方の例

金融機関とのリスケジュール交渉では、担当者の質問に対してどれだけ明確かつ根拠を持って回答できるかが、信頼を左右します。

この章では、実際の面談で頻繁に聞かれる質問を取り上げ、どのように回答すれば前向きな判断につながりやすいかを解説します。金融機関が知りたいポイントを外さず、事業の再建可能性を丁寧に示すことが重要です。

4-1.現状認識・資金繰りに関する質問

リスケジュール交渉の初期段階では、金融機関はまず「現状をどれだけ正確に把握しているか」を重視します。

資金繰りの悪化は数字に表れる以上に、経営者がその実態をどこまで冷静に理解し、改善のための判断を行えているかが問われます。そのため、金融機関からの質問は、将来の資金ショートの時期、返済困難に至った理由、現時点で支払可能な返済額など、資金繰りの核心部分に直接触れる内容が中心となります。

ここでは、金融機関が特に重視する現状認識に関する質問と、その効果的な答え方を示します。

Q1.今の資金繰り状況と、いつ頃資金ショートしそうか教えてください

資金ショートの時期を答える際には、曖昧にせず「資金繰り表に基づく具体的な月」を提示します。

金融機関は、企業がどれほどひっ迫しているかを客観的に把握したいと考えているため、数値を示すほど信頼性が高まります。

「直近〇か月の資金繰り表で試算すると、現行の返済スケジュールを維持した場合は〇月に手元資金がマイナスへ転じる見込みです。したがって、〇月以降の元金返済については猶予をお願いし、利息のみの支払いに切り替えたいと考えております」というように答えましょう。

「いつ・どれだけ不足するか」を明確に伝えることが、交渉を進める前提条件となります。

Q2.なぜ返済が苦しくなったのですか(原因は何ですか)

返済が苦しくなった原因を問われた場合には「外部要因」と「内部要因」を分け、さらに、一時的に返済が苦しいのか、構造的に苦しいのかについても整理して説明します。

金融機関は、返済困難の理由が経営の怠慢ではなく、合理的な背景に基づくものかを確認したいと考えています。

「主な理由は、原材料価格の高騰と売上の季節的な落ち込みによって粗利が圧迫された点です(外部要因)。また、販売チャネル拡大に伴い固定費が増加したことも影響しています(内部要因)。ただし、固定費の削減を進めており、外部要因については一時的と見込んでいます」というように答えましょう。

原因の整理が的確であればあるほど、改善可能性が伝わり、金融機関は支援しやすくなります。

Q3.今の返済額のうち、いくらなら支払えますか

可能な返済額については、営業キャッシュフローを根拠に示すことが重要です。

金融機関は、無理な返済額が提示されると再延長のリスクを感じるため、実現可能な数字であることを確認したいと考えています。

「現状のキャッシュフローでは、当面は月額〇円までが元金返済可能と試算しています。それを超える返済については猶予いただき、改善後に段階的に返済額を増やす計画です」というように答えましょう。

返済可能額を根拠とともに示すと、金融機関の安心感が高まります。

4-2.経営改善策・将来見通しに関する質問

現状の把握が確認されると、金融機関は次に「本当に立て直せるのか」という視点から、改善策と将来見通しを詳しく求めてきます。

金融機関は、返済可能性の見込みがある相手にのみ継続的な支援を行います。そのため、売上改善・コスト削減・資産売却などの具体的な対策、そしてそれらがいつからどの程度の効果をもたらすのかを、明確な数字とスケジュールで説明する必要があります。さらに、改善策の実効性だけでなく、「経営者自身が実行できる体制にあるか」「過去の反省を踏まえているか」といった姿勢も評価対象となります。

ここでは、金融機関が特に重視する改善策・将来見通しの質問と、それに対する回答例をまとめています。

Q1.今後の具体的な改善策について教えてください

改善策は「何を・いつ・どれだけ」実行するのかを数値と時期で説明することが重要です。

抽象的な改善策では実効性が見えず、金融機関が支援判断を下せないためです。

「売上改善として、既存顧客向けの価格改定を〇月に実施します。粗利改善として、仕入先の見直しにより年間〇円の削減を見込んでいます。また、固定費については不要な倉庫を〇月に解約し、年間〇円の圧縮を計画しています」というように答えましょう。

改善策は実行できる計画の案として説明すると、説得力が強まります。

Q2.いつまでに収益をどの程度まで回復させる計画ですか

収益の回復見込みについて問われた場合には、3年程度の売上・利益・キャッシュフロー見通しを、数値で示すことが理想的です。

金融機関は、リスケジュール後の再建可能性を数値で見た計画で判断するため、将来像が明確であることを求めます。

「3カ年計画では、来期に営業利益の赤字幅を半減させ、2期目に黒字化、3期目には通常返済へ復帰できる見込みです。粗利改善策と固定費削減策の効果を反映した試算です。」というように答えましょう。

将来の数値を示すことで、リスケジュールが一時的措置であることが明確になり、金融機関はリスケジュールを実行できるかどうかを判断しやすくなります。

Q3.新規融資や追加支援は必要ですか。それともリスケジュールだけで足りますか

この質問をされた場合には、原則として「まずは返済猶予のみで立て直しを図る」という回答が合理的です。

リスケジュールと同時に追加融資を求めると、金融機関は事業の立て直しに不安を抱き、支援に慎重になってしまうためです。

「まずは返済猶予によってキャッシュアウトを抑え、運転資金を確保したいと考えております。追加融資については、業績の底打ちが確認できた段階で改めてご相談させていただければと思います。今回お願いするのは返済条件の変更のみです」というように答えましょう。

今現在必要なのは返済条件の調整であり、融資は後日検討したい、という姿勢が、金融機関の安心感につながります。

4-3.リスケジュール条件そのものに関する質問

金融機関は、リスケジュールの可否を判断する際に、「どの程度の条件変更が必要なのか」をできる限り具体的に把握したいと考えます。そのため、希望する返済条件の内容や、リスケ終了後の返済可能性について詳細に質問されることが一般的です。

ここでは代表的な質問内容と、その答え方の方向性を示します。

Q1.具体的に、どのような条件変更を希望していますか?

希望する条件は、元金返済の猶予期間と返済期間の延長を明確に数字で提示することが重要です。

金融機関は、返済条件の変更が財務に与える影響を正確に把握したいと考えているため、期間・金額・支払い方法が具体的でなければ判断ができません。

「元金返済を1年間据え置き、その間は利息のみ支払いたいと考えています。また、据置期間終了後は返済期間を◯年から◯年に延長し、月々の返済額を現行の◯万円から◯万円に減額したいと考えています」というように答えましょう。

条件は必ず数値と期間を用いて明確に提示することが交渉成立の前提になります。

Q2.リスケジュール期間終了後はどのように返済していく想定ですか?

リスケジュール後の返済復帰計画は、改善策の進捗とキャッシュフローの回復見込みをもとに段階的な引き上げ案として示すべきです。

金融機関は、リスケジュール後の返済可能性を最も重視するため、終了後の具体的な返済プランがなければ支援判断が難しくなるためです。

「リスケジュール期間中に粗利改善と固定費削減を進め、営業キャッシュフローを◯円まで改善させる計画です。リスケ終了後は返済額を半年ごとに段階的に引き上げ、最終的には従来水準の◯万円に戻す計画です。進捗については6〜12カ月ごとに報告し、その都度ご相談させていただきます」というように答えましょう。

返済の道筋を数値で提示することで、金融機関の安心感が大きく高まります。

Q3.他行にも同条件で依頼しますか?

リスケジュールを依頼する場合には、原則として「全行同条件で依頼する」ことを明確に伝えるべきです。

金融機関にとって、借入先間の公平性は極めて重要であり、どこか一行だけが不利になる条件には応じにくいためです。

「メインバンクでご検討いただいた条件をベースに、他行にも同条件でお願いする予定です。すべての金融機関に公平な条件で調整いたします」というように答えましょう。

金融機関間の公平性への配慮を示すことで、交渉がスムーズに進みやすくなります。

4-4. 経営者の姿勢・責任に関する質問

金融機関は、経営者の姿勢も重視します。

再生の可能性は、計画の実効性と同じくらい、経営者自身の覚悟や自助努力の有無によって評価されます。そのため、この領域の質問は厳しめに聞かれることもありますが、正面から誠実に答えることで信用は大きく高まります。

ここでは、経営者の責任姿勢に関する質問への答え方をまとめます。

Q1.経営者としてどこまで負担を負いますか?

経営者は、自助努力として具体的な負担策を明確に提示する必要があります。

金融機関は、経営者自身が痛みを引き受けているかどうかを、「支援する価値がある企業か」の判断基準とするためです。

「役員報酬を◯%削減し、個人的な支出も見直しました。不要資産の売却も進めております。金融支援はあくまでも自助努力を前提としたものとしてお願いしたいと考えています」というように答えましょう。

経営者が自ら率先して負担する姿勢を示すことで、金融機関の信用を得やすくなります。

Q2.保証人・担保の状況に変化はありますか?

担保・保証の状況は正直に説明し、変更の可能性がある場合は方針を明確に示します。

金融機関にとって担保・保証はリスクを低減させる手段であり、ここが曖昧なままでは支援判断ができないためです。

「現在の担保・保証は維持する方針です。新たな担保提供の可能性については、追加で個人資産を売却する検討もしているため、必要であればご相談のうえ対応いたします」というように答えましょう。

実情を隠さず誠実に伝えることで、金融機関との関係が安定します。

Q3.税金・社会保険の滞納はありますか?

税金や社会保険に関する滞納の有無と対処方針は明確に説明すべきです。

滞納がある企業は「資金管理が不十分」と判断されやすく、金融機関の警戒感が高まるため、滞納がないのであれば、明らかにしておくことをおすすめします。万一、滞納がある場合には、滞納解消の計画について伝えましょう。その際には、弁護士などの専門家に事前に相談しておくと良いでしょう。

「現在、滞納はありません。今後も税金と社会保険料は優先して納付いたします。仮に発生した場合は、すぐに納付計画を立てて解消します」というように答えましょう。

税金や社会保険への対応の姿勢は、経営者の健全性の判断材料として重視されます。

4-5.手続・実務面での質問

交渉が具体化すると、金融機関は提出資料や手続きのスケジュールを確認し、実務面での進行に支障がないかを確認します。ここで曖昧な回答をすると「準備不足」と判断され、交渉が慎重姿勢に転じてしまいます。回答は必ず期限と内容を明確にして伝えることがポイントです。

ここでは、資料提出やスケジュールに関する質問への答え方を整理します。

Q1.どのような資料を提出できますか?

必要な資料は、リスケジュールの交渉に関する初回面談時点で、極力、ほぼ揃えて提出できる状態にするべきです。

資料が揃っている企業は「管理体制が整っている」と評価され、支援の判断がしやすくなるためです。

「直近決算書、最新試算表、資金繰り表(12カ月分)、経営改善計画書の骨子、借入一覧表、売掛・買掛金明細を提出できます。初回面談時には最低限このセットをお持ちします」というように答えましょう。

資料の揃い方は、信用力の指標として金融機関が重視するポイントです。

Q2.いつまでに正式な計画書を提出できますか?

計画書の提出期限は、明確な日付を区切って約束する必要があります。

金融機関はスケジュール管理能力を重視しており、期限設定が曖昧だと「実行力に疑問がある」と判断されるためです。

計画については、大枠を説明したうえで「正式な経営改善計画書と3カ年計画は、◯月末までに提出いたします」というように答えましょう。

期限を明確にすることで、金融機関からの経営者の信頼度が高まる可能性があるため、期日管理は極めて重要です。

Q3.リスケジュール期間中の情報提供はどのように行いますか?

リスケジュール期間中は、定期的な頻度と内容の情報提供を行うべきです。

金融機関は、リスケジュール期間中のモニタリングを重視しており、情報提供の体制が整っている企業は支援しやすいためです。

「四半期ごとに試算表・資金繰り表・計画対比表を提出し、進捗をご報告いたします」というように、定期報告の頻度や内容を具体的に約束しましょう。

継続的な報告体制を明確にすることで、金融機関の不安を大幅に軽減できます。また、モニタリングに協力的な姿勢を示すことは、金融機関に「安心して支援できる企業だ」という印象を与える大切な要素です。


5.リスケジュールの交渉に関するよくある質問

リスケジュールの交渉は、企業や個人事業主にとって精神的な負担が大きいだけでなく、金融機関との信頼関係にも直結する重要な手続きです。そのため、「どのような場合に応じてもらえるのか」「具体的に何を準備すれば良いのか」「もし拒否されたらどうすべきか」など、疑問が生じやすいテーマです。

この章では、リスケジュールの交渉で特に多く寄せられる質問を取り上げ、わかりやすく整理します。

5-1.金融機関はどういう場合にリスケジュールに応じてくれる?

金融機関がリスケジュールに応じるのは、返済条件を見直すことで事業が再建し、将来的に債務の回収が見込めると判断できる場合です。

金融機関にとって最大のリスクは、債務者の倒産によって回収率が大幅に下がることです。そのため、現状の返済スケジュールを維持するよりも、一時的に返済を軽減し事業を立て直してもらったほうが、結果として回収可能性が高まると判断できれば、リスケジュールに応じる動機が生まれます。ただし、再建の見込みが曖昧なままでは、その判断ができません。

例えば、事業での売上改善に向けた取り組みが始まっており、半年後を目処にキャッシュフローが改善する見通しがある場合、金融機関は「立て直しが現実的である」と判断しやすくなります。また、経営者自身が役員報酬の削減や不採算部門の整理などといった対策に踏み切っている場合は、「本気度」が強く伝わり、リスケジュールの可否についての判断にプラスに働きやすいです。

つまり、金融機関は再建の見込みと経営者の本気度が確認できる場合にリスケジュールへ前向きになる傾向があります。

5-2.リスケジュールの交渉にはどんな準備が必要?

リスケジュールの交渉には、財務資料の整備、再建計画の作成、そして経営者の明確な意思表明といった準備が必要です。

金融機関は、返済を猶予することで将来的な回収が確保できるかどうかを判断しなければなりません。その際、最新の財務状況の把握、改善策の実現性、そして経営者が計画を実行する覚悟を持っているかが非常に重視されます。

財務資料としては、貸借対照表・損益計算書・試算表・資金繰り予定表が典型的です。再建計画では、コスト削減、販路拡大、新規事業の立ち上げなど具体策に加え、いつ・どの程度の利益改善が見込めるかを示します。さらに、経営者が「返済を免除してほしい」と考えているのではなく、「返済の時期と金額を調整して立て直す意思がある」と明確に示すことが、金融機関側の信頼につながります。

したがって、財務資料・再建計画・経営者の覚悟の三点をそろえることが、リスケジュールの交渉にあたる重要な準備となります。

5-3.リスケジュールの交渉がうまくいかないときはどうしたらいい?

リスケジュールに応じてもらえない場合は、早めに専門家に相談し、私的整理や法的整理も含めた再建策を検討する必要があります。

リスケジュールが拒否されたまま返済が滞ると、一括返済請求や差押え、担保の実行といった厳しい手続きに進む可能性が高まるためです。金融機関が難色を示すのは、再建計画に実現性が乏しい場合や、すでに資金繰りが限界近くにある場合が多く、こうした状況では別の枠組みを使った再建が必要となります。

例えば、金融機関との個別交渉が行き詰まった場合、他の債権者も含めて条件を調整する「私的整理」(事業再生ADRなど)を検討することがあります。あるいは、債務圧縮や返済期間の大幅調整を行う「民事再生」などの法的整理に進むという選択肢もあります。これらはいずれも手続きが複雑なため、弁護士などの専門家に早期に相談することが不可欠です。

リスケジュールの交渉が難航した場合にも、放置するのではなく、専門家と連携し別の再建ルートを検討することで、会社を守る道を開くことができます。

5-4.個人事業主でもリスケジュールの交渉はできる?

個人事業主でも、事業性の融資であれば銀行や日本政策金融公庫に対してリスケジュールの交渉が可能です。

中小企業や個人事業者向けには、返済負担を一時的に軽減し事業の継続を支援する制度が整備されており、金融機関も事業再建を前提とした条件変更には柔軟に対応しやすい立場にあります。特に公庫では、売上減少や体調悪化などの事情があれば、返済条件の見直しに応じられる仕組みが明示されています。

ただし、個人事業主の場合、事業資金と生活費が混在していることが多いため、資金繰り表を作成し、事業収支と家計の支出を明確に分けて説明することが重要です。また、税金や社会保険料の滞納がある場合は、改善計画と合わせて状況を開示する必要があります。相談窓口としては、まず既存の取引金融機関や公庫の支店が入口となり、必要に応じて自治体や商工会の支援制度、中小企業診断士による計画書作成支援が案内されるケースもあります。

このように、個人事業主でも事業性融資であれば十分にリスケジュールの交渉が可能であり、適切な資料と説明を用意すれば前向きに応じてもらえることが多いといえます。


6.まとめ

本記事では、金融機関とのリスケジュール交渉を成功させるために必要な考え方と準備について整理してきました。

事業継続のための時間をつくり、経営再建の足場を固めるには、正しい手順と誠実な姿勢が不可欠です。

記事の要点

・リスケジュールの交渉前の初動として、経営者自身が現状を正確に把握し、金融機関への相談を早い段階で行うことが重要となる。

・リスケジュールの交渉にあたっては、資金繰り予定表・借入一覧表・返済猶予依頼書などの資料を準備し、事実を隠さずに透明性のある情報開示を行う必要がある。

・リスケジュールの交渉では、コスト削減や売上回復策など、実行可能な再建案の提示が求められ、曖昧な希望的観測では交渉は進まない。

・債務不履行寸前の相談では交渉の余地が狭まり、金融機関も対応が困難になるため、資金が尽きる前の対応が重要である。

・複数の金融機関が関係する場合は、同時並行で調整し、条件を揃えることが必須であり、必要に応じて事業再生ADRなどの第三者による制度を活用すると合意形成がスムーズになる。

・リスケジュールの交渉を成功させるには、金融機関と対立するのではなく、事業再建という共通目的に向けた協働関係を築く視点が重要である。

リスケジュールは、経営の再生に向けて事業を立て直すための最終的な手段です。適切な時期に、正しい資料と明確な再建方針を準備し、誠実な姿勢で金融機関と向き合えば、事業に必要な立て直しの時間は必ず確保できます。

これまでの内容を踏まえ、事業再建に向けて今、できることを始めていきましょう。

必要に応じて、専門家へのご相談もご検討ください。