
M&Aのあと、PMIに着手してみたものの、チームがうまく噛み合わず、思い描いたシナジーが出てこない。
そんな悩みを抱えていませんか?
実はこうした悩みは珍しくありません。
中小企業にとって特に重要なのは、「準備」と「現場理解」、そして「人の信頼関係」です。大企業と違い、資金や人材の余裕が少ない中小企業では、この3つが欠けるだけでPMI全体が一気に崩れてしまうリスクがあります。
ただし、PMIは「うまくいけば良い」というものではなく、買収の目的を実現するために必ず成功させなければならない重要なプロセスです。
成功すればM&Aの価値を最大化できますが、
間違えば「買収そのものが無意味だった」と後悔するリスクさえあります。
なぜPMIはうまくいかないのか?
本当に足りていないのは仕組みでしょうか?それとも現場理解やマネジメント層の意識でしょうか?
実は、その前に立ち止まって考えるべき大前提があります。それは、
「いま自社に足りないものは何か?」「それをM&Aでどう補おうとしているのか?」
という視点です。

この本質を捉えないまま統合を進めてしまうと、どんなに制度や手法を導入しても、成果にはつながりません。逆にこの視点さえブレなければ、統合中に多少の混乱があっても軌道修正はしやすくなります。
この記事では中小企業が陥りがちなPMIに失敗する主な理由と、PMIを成功に導くためのポイントを紹介します。「自社も危ないかも」と感じた今だからこそ、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.中小企業でPMIが失敗する主な理由
M&Aの後の統合作業であるPMIは中小企業において特有の課題を生みやすく、失敗に至るケースも少なくありません。なぜうまくいかないのか、3つの観点に整理してご紹介します。

1-1.準備不足と戦略の甘さ
PMIが失敗する大きな要因のひとつが、「買収前・統合前の準備不足」です。M&Aにあたって、どのような統合を行うのか、何をゴールとするのかといった基本戦略が不明確なままPMIに突入してしまうと、現場は混乱し、想定外のリスクに翻弄されがちです。この章では、計画の不備や調査不足、統合を急ぎすぎるリスクなど、スタート段階でつまずきやすいポイントを整理します。
1-1-1.PMI戦略やビジネスが不明確
中小企業のM&AではPMIの全体像やゴールが曖昧なまま統合が始まることがあります。例えば具体的なKPI(重要業績指標)やシナジー効果の設計がない、あるいは「成長させる」といった抽象的な目標しかないまま統合作業に入るケースです。これでは現場がどこを目指せばいいかわからず、各所で混乱が起こります。PMI戦略や目的が不明確なことはPMI失敗の中心的要因になります。
1-1-2.財務・法務・ビジネスデューデリジェンス未実施
買収前に十分なデューデリジェンスが行われないと、買収後に「思ったより赤字部門が多かった」「主力取引先との契約が終了間近だった」など想定外のリスクや問題が発覚することがあります。この場合、PMIの計画や統合作業にも大きな修正が必要となります。特に中小企業では、リソース不足から「スピード重視」「とりあえず実行」となり、調査を省略しがちですがそれがPMI全体を狂わせるリスクになります。
1-1-3.投資回収への焦り
「早く成果を出さなければ」という焦りから、無理に統合を急いだり、短期でコスト削減を強行したりすると、かえって現場に負荷がかかり、社員の離職や品質低下を招くことがあります。短期の回収を優先しすぎると、PMI本来の目的の持続的な価値創造が実現できなくなります。
1-2.現場理解の欠如
中小企業の現場は、想像以上に「人」と「暗黙知」に支えられています。PMIを成功させるには、単に仕組みを持ち込むだけではなく、現場の空気や業務の実態、キーパーソンの存在などを丁寧に把握する必要があります。ここでは、業務や風土を把握しないまま進めることのリスクについて見ていきます。
1-2-1.中小企業特有の経営スタイルを理解していない
中小企業は「社長の一声」で物事が動いたり、トップと社員が密接な関係にあったりと、独自の運営スタイルを持っています。そうした背景を無視して「ルールで統一します」「承認フローを3段階にします」といった変更を加えると、反発が起きやすくなります。
1-2-2.大企業の手法をそのまま適用してしまう
大企業で使っていた統合テンプレートやフレームワークをそのまま導入しても、中小企業には合いません。例えば、「部門長会議で意思決定」といった仕組みは、そもそも部門長がいない会社では機能しません。ただし、大企業の手法にも中小企業で活用できる要素はあります。重要なのは、自社の規模や体制に合う部分だけを選び、アレンジして使う判断です。
1-2-3.業務フローの把握不足でPDCAが回せない
現場で何がどう回っているのかを理解していないまま業務改善をしようとしても、的外れになってしまいます。PDCA(計画→実行→評価→改善)を正しく回すには、まず現状の業務プロセスを把握する必要があります。
1-2-4.業務が属人化し可視化されていない
中小企業では「この作業は◯◯さんにしかできない」といった属人的な業務運営がよくあります。ノウハウや情報の共有・可視化がされていないことは、PMI中に退職や異動があると業務が完全に止まってしまうため、非常にリスクが高いポイントです。
1-3.人・文化面の配慮不足
制度や数字以上に、PMIでカギを握るのは「人の気持ち」です。中小企業では、社内文化や信頼関係が仕事の土台になっているため、それを無視した統合は失敗につながります。この章では、コミュニケーションの不足や文化のズレがPMIに与える影響を扱います。
1-3-1.従業員とのコミュニケーション不足
中小企業は大企業と比べ、経営者と従業員の距離が近く、直接的な信頼関係や丁寧なコミュニケーションが重要視されています。PMIでの情報共有や対話が不足すると従業員の不安や抵抗が高まり、統合の障害となる事があります。情報をこまめに伝え、疑問や不満の声に丁寧に耳を傾けることで、不信感を和らげることができます。
1-3-2.組織文化の衝突
買収企業と被買収企業の組織文化が大きく異なる場合、従業員や現場が混乱し、統合によるストレスやモチベーションの低下が発生します。例えば「成果重視」の会社が「人間関係重視」の会社を買収した場合、働き方や価値観が大きく異なります。相手の文化を理解し、必要に応じてすり合わせを行うことが欠かせません。
1-3-3.自社の「常識」の押し付け
「うちはこうだから」「このやり方がベストだから」といった一方的な押し付けは、現場の反感を招きます。PMIにおいては、相手企業の良さを認め、柔軟に新しいやり方を取り入れる姿勢が重要です。成功するPMIは「どちらの会社の文化を残すか」ではなく、「両社のいいとこ取り」で新しい文化を作る意識で進められます。
1-3-4.「任せる」つもりが放任になる
PMIの現場で「なるべく自由にやらせる=任せる」が実際には経営層と現場では対応が行われず、実際は現場に何の支援もしていなかったという例もあります。これは現場から見ると「放置された」と映ります。任せるのであれば、伴走支援と情報共有はセットで必要です。
1-3-5.信頼関係の構築が不十分
PMIでは、いかに早く信頼関係を築けるかが鍵となります。買収された側の社員は「自分たちがこれからどうなるのか?」という不安を抱えています。その状態で、表面的なやりとりしかないと、信頼は築けません。統合初期から小さな成功体験を共有し、日々の対話を積み重ねていくことが、真の信頼を育てる近道です。
2.実際にあった中小企業のPMI失敗事例
PMIの失敗は、単なる「理論上の課題」ではなく、現場で本当に起きていることです。ここでは、実際に中小企業のPMI現場で起きたトラブル事例を2つ紹介します。
2-1.キーパーソンの退職による業務混乱
PMIの初期段階でよく見られるのが、「キーパーソンの急な退職」による業務崩壊です。中小企業では、特定の人物に業務が集中している「属人化」が多く、1人が抜けただけで業務全体が止まってしまうことがあります。
ある事例では、譲渡企業の財務管理を担っていた創業社長の配偶者が、PMI開始直後に突如退職。月次の支払い・資金繰り・仕入先との調整まで一手に担っていたため、代わりが効かず、支払い遅延や現場の混乱が数週間にわたり続きました。このように、キーパーソンが退職しただけで業務に大きな支障が出るのは、業務の可視化やマニュアル化が不十分だったことの表れです。
PMI実行前に「誰がどの業務をどのように担っているか」を棚卸しすることが、リスク回避につながります。
2-2.業務引継ぎのミスで一時的な業務停止
他によくあるトラブルとして「業務引継ぎの不備」による現場の機能停止があります。中小企業では、業務の多くが「口伝え」で回っており、作業手順や判断基準が文書化されていないことが少なくありません。
あるPMI現場では、営業部門の担当が異動した際、引継ぎ資料が一切なく、「どの得意先にいつ何を納品するか」「納品後のフォローはどうするか」といった情報が完全に宙に浮きました。その結果、納期遅延・クレームの急増・売上喪失と、想定外の混乱が発生。
このようなリスクは、「暗黙知を形式知にする」取り組みがなされていない場合に顕在化しやすいものです。PMIでは、業務プロセス・判断ルール・関係者のつながりを見える化し、「業務の属人リスク」を解消することが重要です。
3.中小企業がPMIで失敗しないための7つのポイント
これまでご紹介してきたように、PMIには中小企業ならではの落とし穴が数多く存在します。
しかし、あらかじめ押さえておくべきポイントを意識し、計画的に対応すれば、リスクは大きく下げることができます。
この章では、PMIを成功に導くために実務で特に重要となる7つの視点について解説します。ここを丁寧に進めることが成功の近道です。

3-1.買収前にM&A実行による効果を明確化しておく【重要度★★★】
M&Aの目的と効果を事前に明確化することは、PMI成功の出発点です。
目的やゴールがあいまいだと、統合計画や現場対応がバラバラになり、成果が出ないまま時間とコストを浪費します。例えば「事業拡大」「顧客層の拡大」「コスト削減」など、狙いを譲渡側・譲受側の双方で可視化し、KPIやシナジー効果を明文化すれば、統合後の行動指針がぶれません。明確なゴール設定は、PMI全体を迷わず進めるための羅針盤になります。
3-2.買収を行う上でのキーマン(現場の声)をしっかり拾う【重要度★★★】
現場キーパーソンの声を早期に拾うことは、PMI失敗を防ぐ重要アクションです。
中小企業では業務の属人化や暗黙知が多く、現場の知見なくしては統合の実行力が担保できません。例えば初期段階でヒアリングやワークショップを行うなど、現場の課題・リスク・不安を洗い出し、統合計画に反映することで協力体制が強化されます。キーマンの意見は、計画の実効性と現場の納得感を同時に高めます。
3-3.業務システムとITシステムの統合をする【重要度★★】
業務フローとITシステムの統合は、PMI後の混乱を防ぎ、生産性を向上させます。
統合が遅れると、二重管理や情報の食い違いが発生し、取引・顧客対応・意思決定に支障をきたすことがあります。実際、統合を後回しにした企業では顧客データの齟齬が多発し失敗することがあります。一方、早期統合で経営情報の一元化を実現した企業は生産性を大幅に向上させた例もあります。システム統合は、PMI成功に直結する「見えない土台」です。
3-4.双方向のコミュニケーション設計を設計する【重要度★★★】
双方向のコミュニケーションは、PMIの不安や誤解を最小化し、現場の協力を得る基盤になります。
情報が一方通行だと、現場は疑心暗鬼になり抵抗感が高まります。双方向で意見を交換することで信頼関係が構築されます。例えば定期的な説明会や意見交換会を開き、経営側からの説明と現場からの質問・提案の場を両方設けることなどが挙げられます。対話の設計は、PMIの「心理的摩擦」を減らす即効性のある施策です。
3-5.企業文化の違いを尊重・融合する【重要度★★】
文化の違いを尊重しつつ融合する仕組みは、PMIの長期的成功に不可欠です。
文化の衝突はモチベーション低下や離職につながり、統合効果を損ないます。例えば両社混合の小チームで業務改善案を出したり、合同研修や交流会を設けたりし、相互理解を深め良い慣習は双方から残すことができると良いでしょう。文化融合は「どちらかに寄せる」のではなく、「新しい文化をつくる」発想が大切です。
3-6.業務プロセスと情報を可視化する【重要度★★】
業務と情報を可視化することは、PMIの計画・評価・改善を正しく行う前提となります。
現状が見えないままでは改善が的外れになり、統合後の効率化が進みません。例えば業務フロー図やRACI図(役割分担表)を作り、担当者・手順・使用データを明確化するなどが良いでしょう。「見える化」は、全員が同じ地図を見て進むための必須ツールです。
3-7.スピード感を持って進歩を管理する【重要度★】
スピード感を持ちつつ進捗を管理することは、統合の停滞や混乱を防ぎます。
遅延が続くと現場のモチベーションが下がり、統合効果が薄れてしまいます。例えば統合作業ごとに期限・担当・成果物を設定し、週次で進捗を共有・修正するなどが大切です。「早く・正確に進める」仕組みが、PMIの勢いと一体感を保ちます。
4.PMIについて悩まれている方はぜひ辻・本郷 FAS株式会社をご利用ください
PMIの現場では、財務・人事・法務・税務・不動産など、様々な分野の課題が同時に発生します。しかもそれが密接に関わっており、一つでも対応を誤れば、統合の流れ全体が崩れることもあります。そうした複雑なPMIプロセスにおいて「その分野は別の専門家に」「うちはそこまで見ません」という対応では、企業の成長スピードにブレーキがかかってしまいます。
辻・本郷グループならそれらに対応することができます。
| 項目 | 一般的なFAS・PMI支援会社 | 辻・本郷グループ |
| 財務デューデリ対応 | ✅ | ✅ |
| 税務顧問への移行支援 | ❌(別の税理士へ) | ✅(社内で継続) |
| 労務・人事支援(社労士) | ❌(外注か別依頼) | ✅(社内対応) |
| 法務対応(契約・労働問題) | ❌or 外部弁護士紹介 | ✅(弁護士在籍) |
| 不動産関連の見直し支援 | ❌ | ✅ |
| 長期的な経営パートナー関係 | ❌(単発で終わることが多い) | ✅(伴走支援) |
辻・本郷グループは、税理士・社労士・弁護士・不動産の専門家が一つのチームとして働くことでPMIに必要な全ての支援をワンストップで提供できます。
財務・税務の統合支援はもちろん、人事労務の課題には社労士が即対応、契約・リスク対応は弁護士がサポートし、不動産の見直し・活用提案まで含めて「どこに何を相談すればいいのか分からない」というPMIの不安を、一括で引き受ける体制が整っています。
また、M&Aの一時的な支援で終わる関係ではなく、PMI後の税務顧問として長期的に寄り添うことを前提としたかかわり方を大切にしています。
短期的な成果を追い求めるのではなく、「この会社の未来を一緒に作る」パートナーとして地に足のついた支援を行っています。「PMIでトラブルが起きている」「買収した会社とうまく馴染めていない」「税務や労務、法務など何から相談していいか分からない」といった時こそ、ぜひ辻・本郷グループにご相談ください。
5.まとめ
M&A後のPMI(統合プロセス)は、準備不足や現場理解の欠如、人・文化への配慮不足が原因で失敗しやすいもの。特に中小企業では属人化や暗黙知の壁が大きく、表面的な仕組みだけでは機能しません。
失敗を防ぐには、以下の7点が重要です。
①M&Aの目的を事前に明確にする(KPI・シナジー設計)
②現場のキーマンの声を聞き、課題を洗い出す
③業務・ITシステムの統合を早期に進める
④双方向のコミュニケーション設計を設計する
⑤企業文化の違いを尊重・融合する
⑥業務プロセスと情報を可視化する
⑦スピード感を持って進歩を管理する
「自社に足りないものは何か?」「M&Aで何を補いたいのか?」この視点を持つことが、PMI成功の土台になります。PMIを通じてM&Aの価値を最大化するためにこの記事をぜひご活用ください。
