
親から相続した実家や夫婦で購入した不動産など、複数人の名義で所有する共有名義不動産、あるいはそのうち自分の共有持分のみの売却相場について、お悩みではありませんか?
いざ売却を検討しようとしても「他の共有者の合意が取れないが、持分だけを売りたい場合いくらくらいが相場なのか?」「自分の持分(取り分)はいくらになるのか?」といった疑問や不安に直面する方が多くいらっしゃいます。
特に、共有名義のまま共有持分だけを売りたい場合、取引が難航するケースも少なくなく、事前の知識と慎重な対応が求められます。
この記事では、共有名義不動産の自分の共有持分だけを売却する場合の価格の目安や、なるべく高値で自分の共有持分のみの売却を成功させるためのポイントなどをわかりやすく解説します。
共有名義の不動産やその共有持分を売却するべきか悩んでいる方にとって、現実的な判断材料をご提供します。ぜひご一読ください。
目次
1.共有名義不動産の売却相場について
共有名義の不動産を売却しようと考えたとき、多くの方が最初に直面するのが、共有名義不動産の全体を売却する(全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。)か、自分の持分のみを売却するのかという問題です。
売却相場については、単独名義の物件であれば不動産会社の査定額を基準に価格の目安が掴めますが、共有名義になると話が複雑になります。
(※なお、売却しようとしている不動産が「賃貸中」であれば、さらに相場は下がります。これは共有名義不動産かどうかに関わらず、不動産全体で一般的です)
特に、共有者全員で不動産全体を売却する場合と自分の持分だけを売る場合とでは、相場に大きな違いが生じます。
この章では、共有名義不動産の売却相場について、基本的な考え方から、部分売却・全体売却それぞれの市場価格との関係まで、具体例を交えながら解説します。
1-1. 自分の共有持分のみを売却する場合の相場は市場価格より安いことが多い
共有名義不動産の「自分の持分だけ」を売却する場合、その価格は、その持分の本来の価値・市場価格(※共有持分の市場価格は、「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で算出します)を下回るのが一般的です。
なぜなら、持分だけを買い取っても、購入者がその物件を自由に使えないため、資産価値としての魅力が大きく下がるからです。共有不動産は所有者全員、あるいは過半数の合意がなければ、賃貸物件としての利用やリフォーム、売却などの活用ができないため、第三者にとってリスクが大きく、その分価格も下がってしまいます。
例えば、市場価格が4,000万円の住宅に対して、1/2の共有持分を持っている場合、本来の持分の価値は2,000万円(市場価格4,000万円×持分割合1/2)となります。
しかし、実際に流通する際には、市場価格の30〜60%ほどで取引される(本来の持分の価値が2,000万円であっても、共有持分だけを売却しようとすると600万円~1,200万円ほどにしかならない)ということが多いようです。
持分だけを購入しても、そこに住むことも建て替えることもできないため、買い手が限定され、価格はどうしても下がってしまうのです。
つまり、持分のみを売却する際は「相場は安くなる」と認識したうえで、市場価値そのままでの売却は期待しすぎないことが大切です。
1-2. 共有名義不動産全体を売却する場合の相場は市場価格程度となる
共有名義の不動産でも、共有者全員が合意して全体をまとめて売却する場合は、市場価格と同等の金額で売れる可能性が高くなります。
不動産全体が一体で売られることで、通常の物件と同様に「完全な所有権」として扱われるためです。買い手は使用や転売の自由がある物件を手に入れることになるため、流通価格も市場相場とほぼ同等となります。
例えば、兄弟で共有している実家があり、それぞれ1/2ずつの持分を持っていたとします。もし両者の合意が得られ、物件をまるごと売却する(兄の1/2持分も弟の1/2持分もまとめて売却する)となれば、買主は通常の中古住宅(持分1/2+持分1/2=完全な所有権がある不動産)として評価するため、市場価格での取引が可能となります。固定資産税評価額などを参考にした査定の結果、4,000万円の価値があると判断されれば、実際の売却価格もそれに近い金額で成立することが期待できます。
このように、共有名義不動産でも「全員の合意を得て一括売却する」ことで、市場価格での売却を目指すことができるのです。
2. なぜ共有持分のみを売却する相場は市場価格より安くなるのか
共有名義不動産の「持分だけ」を売却しようとすると、なぜこんなにも価格が下がってしまうのでしょうか?
その背景には、不動産としての活用しづらさや法的リスクなどが関係しています。
この章では、共有持分の相場が市場価格より安くなる理由を3つの観点から具体的に解説していきます。
2-1. 活用(リフォームや不動産全体の売却など)に他の共有者の許可が必要な不動産であるから
共有持分だけを取得しても、その不動産を自由に使えないため、買い手にとって魅力が大きく下がり、相場も自ずと安くなります。
不動産の活用、たとえばリフォームや建て替え、あるいは賃貸・売却といった処分行為、変更行為は、他の共有者の同意がなければ行えません。つまり、自分の持分を買い取っても、そこを勝手に住んだり改築したりすることはできないのです。
たとえば、築30年の戸建て住宅に対して1/2の持分を取得したとしても、相手方共有者が改築や賃貸に同意しなければ、改築もできない・賃貸もできないということになり、利活用することはできません。持分所有者にとって、実質的には利用価値が著しく限定されます。
このように、自由に活用できない不動産であることが、相場を押し下げる大きな要因となっているのです。
2-2. 他の共有者とのトラブルのリスクがある不動産だから
共有持分の売買には、他の共有者との人間関係や法的な対立が絡みやすく、トラブルのリスクが高いため、価格が大きく下がってしまいます。
共有者の一人が持分を第三者に売却することで、他の共有者との間に感情的・実務的な対立が生まれる可能性があり、それが買い手にとって大きなリスクとなるからです。
第三者が持分を取得した場合、残りの共有者がその人物と接触することを拒んだり、建物の使用に関して争いが生じたりすることがあります。また、物件の管理方針や修繕負担を巡って意見が合わず、裁判沙汰になるケースも珍しくありません。
こうした対人関係のリスクが内在しているため、買い手が警戒心を強めます。これも、売却価格が下がってしまう原因の一つです。
2-3. 共有持分だけを欲しがる買い手が市場には少ないから
そもそも「共有持分だけ」を買いたいという人が非常に限られているため、需要が少なく、共有持分だけの売却価格は下がりやすくなっています。
一般の不動産購入者は「住む」「貸す」「売る」といった目的で物件を探しているため、共有持分だけを取得してもそれらの目的を達成できない可能性が高く、対象外になるのが現実です。
不動産情報サイトや業者の流通ネットワークを見ても、共有持分のみの売買事例は圧倒的に少なく、扱っている業者も限られます。買い手の多くは専門の投資家や「共有者との交渉リスク」を理解した上で動く一部の業者に限られています。
流通性が極端に低いため、競争原理が働かず、相場も自然と市場価格より大幅に安く設定されることになるのです。
3. 共有名義不動産のうち自分の共有持分の売却相場に関わる査定ポイント
共有名義の不動産を持分のみで売却する際、その相場は「とにかく安くなる」と一括りにされがちですが、実際にはいくつかの要素が相場に影響を及ぼします。
不動産そのものの価値はもちろん、共有関係の内容や立地条件など、査定の際に重要視されるポイントがあります。
この章では、共有持分の価格査定に関係する主な要素を4つ取り上げ、どのように評価に反映されるかを具体的に説明します。
3-1. 不動産の所在地
不動産の所在地は、共有持分の評価額を左右する最も基本的な要素の一つです。
都心部や再開発エリアなど、地価が高く流動性の高い地域にある不動産は、たとえ共有持分であっても一定の価値を保ちやすくなります。逆に、過疎地域や需要の低いエリアでは、持分を買いたい人が見つかりにくく、評価は著しく下がります。
例えば、東京都内の人気エリアにあるマンションの持分と、地方の空き家地域にある戸建ての持分では、同じ1/2持分でも査定額に大きな差が出ます。場所によっては、持分自体にほとんど価格がつかないケースもあります。
共有不動産であっても「どこにあるか」は査定の出発点であり、所在地は価格の上限と下限を大きく決める要因となります。
3-2. 不動産からの交通の便
駅や主要道路へのアクセスの良さも、持分価格の査定に直接影響します。
交通利便性が高い物件は投資でも需要が高く、持分であっても流通可能性が高くなるため、査定額が比較的高くなります。逆に、公共交通機関から遠い物件やアクセスの悪い立地では、需要が低下し、評価も下がります。
最寄り駅から徒歩5分の築浅マンションと、バス便でしか行けない郊外の物件では、たとえ同じ築年数や面積でも、持分価格は大きく異なります。特に投資目的の買主にとっては、アクセスの良さは重要な判断材料です。
共有持分の価格を左右するのは不動産全体の条件であり、交通の便はその中でも買い手の関心を左右する重要な要素です。
3-3. 築年数、構造、面積、間取りなどの詳細情報
物件の築年数や構造、延床面積、間取りなどの詳細情報も、査定においては必須の評価項目です。
築年数が新しく、耐震性のある構造や現代的な間取りを持つ物件は、将来的な再利用や建て替えを見越しても評価が高くなります。逆に、老朽化が進んだ木造住宅や、狭小な面積の物件では、買い手がつきづらく価格が抑えられます。
築3年の鉄筋コンクリート造マンションの持分と、築40年の木造戸建ての持分では、同じ地域にあっても評価額に倍以上の差がつくこともあります。特に修繕や解体の必要が見込まれる物件は、それだけで持分価格が低く抑えられる要因になります。
共有持分とはいえ、物件の物理的な価値はそのまま評価に反映されるため、詳細情報の精度が査定額を決める基盤になります。
3-4. 共有持分の割合
自分が保有している持分の割合も、価格に大きな影響を与える要素の一つです。
持分の割合が大きければ大きいほど、買い手にとって交渉上のメリットが増え、価格交渉においても有利になります。逆に1/10や1/20といった小さな持分しかない場合、買い手にとって利用価値が低く、評価も下がります。
同じ物件でも、1/2の持分であれば交渉力を保ちやすく、一定の価格がつきやすいですが、1/10しかない場合には「相手にされない」「値段がつかない」というケースもあります。また、共有者間の関係性にも影響を与えるため、割合は単なる数字以上の意味を持ちます。
共有持分の割合は、価格の絶対額だけでなく、売却の可能性そのものにも直結する重要な要素であることを理解しておくべきです。
4. 共有名義不動産のうち自分の共有持分を極力高値で売るための4つのポイント
共有名義不動産の持分は、通常の不動産と比べて買い手が限られ、価格も安くなるのが一般的です。しかし、工夫次第ではその売却価格を底上げすることが可能です。
この章では、実際に共有持分をより有利な条件で売却するために実践できる4つの戦略をご紹介します。
共有特有のリスクや制限を踏まえた上で、少しでも高値で取引を成立させたい方にとって、現実的かつ有効な方法です。
4-1. 共有持分を専門に買い取りをしている不動産会社に売る
共有持分の売却は、一般的な不動産会社ではなく、共有持分専門、あるいは共有持分に特化している買取業者に依頼することで高値売却の可能性が高まります。
この種の不動産会社では、共有物分割訴訟や交渉、他共有者との調整などの特殊な取引ノウハウを持っており、士業と連携していることも多く、さまざまなリスクも折り込み済みで査定をしてくれるため、相場よりも高い価格を提示してくれることがあります。
例えば、一般的な仲介会社が100万円の価値と見積もった1/4持分に対し、共有専門業者が150万円を提示するケースもあります。これは、買い取った後の収益化ルート(他共有者からの持分買い取りの後の売却など)が確立されているためです。
共有物の取扱いに慣れている専門業者なら、敬遠されがちな持分にも価値を見出してくれる可能性があります。
4-2. 複数の買取業者に査定をしてもらい、比較してから売る
持分の価格は業者ごとに大きく異なるため、必ず複数の業者に査定を依頼し、比較検討したうえで売却するのが得策です。
共有持分の査定は定型的な算出が難しく、業者によって評価方法が異なります。ある業者は現物不動産の資産価値を重視し、別の業者は訴訟コストや流動性リスクを大きく差し引くなど、査定の方向性に差が出ます。
また、最低限の物件情報を参考に、簡易的に査定額を算出する方法や、不動産鑑定士に依頼して綿密に査定を行う方法、AIを用いた査定方法など、不動産会社によって査定方法も多種多様です。
そのため、例えばA社は「将来的に全体売却可能」と判断して高値を提示する一方、B社は「他共有者との関係が悪化しそう」として低く見積もるなど、10〜30%ほどの価格差が生じることもあります。
持分売却の査定は一社だけでは不十分であり、複数社の査定額と根拠を比較することが、価格最大化の第一歩です。
4-3. 他共有者から共有持分を買い取り、売却する共有持分の割合を増やす
自分の持分割合を増やすことで、不動産全体への影響力が強まり、売却時の価値も上がります。
持分が大きくなるほど、共有者間での意思決定における交渉力が増すうえ、買い手にとっても「過半数を押さえている」「全体取得が現実的」といった安心感が生まれ、高値をつけやすくなります。
自分の持分に加えて、他の持分を買い取り、合計で過半数の持分を取得できれば、過半数をぎりぎり超える程度だとしても買取業者の評価が急に上がることもあります。持分割合で少なくとも過半数を押さえると、単独でできる行為の幅が広がるため、権利としての価値も上がるからです。
持分が小さいと市場性が低くなりますが、自ら持分を集約することで売りやすさと価格の両方を引き上げることができます。
4-4. 売却前に共有者や居住者との権利関係を明確にしておく
共有関係や占有状況などの権利関係を売却前に整理しておくことで、買い手の不安が軽減され、価格の下落を防ぐことができます。
買い手が最も恐れるのは、売却後に発覚するトラブルです。「他共有者が勝手に住んでいる」「使用料が未収」「共有者間で訴訟中」などのトラブルのリスクを内包していたり、事前情報が不透明だと価格は大きく下がります。
登記簿と実態が一致しない、居住者の権利が不明確、賃貸契約があるのかどうかが曖昧といった状態では、査定額が50万円以上変わるケースもあります。逆に、共有者全員の現況や意向を明確にしておけば、業者側も安心して適正価格を提示しやすくなります。
売却前の整理が「価格の安定」と「スムーズな取引」につながるため、事前準備は不可欠です。
5. 共有持分を売却する際にかかる税の割合は不動産の所有年数が5年を超えるかどうかで決まる
共有名義不動産の持分を売却する際には、「どれだけ利益が出たか」だけでなく、「いつから所有していたか」が税金の負担に大きく関係します。
不動産の譲渡益には所得税と住民税が課税されますが、その税率は所有年数によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分かれ、大きく異なります。
この章では、それぞれの税率の違いを分かりやすく解説します。
種類 | 所得税率 | 住民税率 | 計 |
短期譲渡所得(所得5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得(所得5年超) | 15% | 5% | 20% |
5-1. 短期譲渡所得の場合
所有期間が5年以下の場合、売却によって得られた譲渡益には、比較的高い税率が課されます。
不動産を短期間で売却して利益を得たとみなされるため、国税庁はその譲渡益に対して厳しい課税を行います。これにより、投機的な売買を抑制する意図も含まれています。
売却によって500万円の譲渡益が生じた場合、短期譲渡所得として課税されると、以下の税率一覧表によって、
種類 | 所得税率 | 住民税率 | 計 |
短期譲渡所得(所得5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得(所得5年超) | 15% | 5% | 20% |
- 所得税:500万円 × 30% = 150万円
- 住民税:500万円 × 9% = 45万円
合計で195万円が税金として課されます。実質的に利益の約4割が税金として引かれてしまう計算です。
5年以内に共有持分を売却すると、利益が出た場合は非常に高い税率が適用されるため、売却のタイミングには注意が必要です。
5-2. 長期譲渡所得の場合
所有期間が5年を超えると、譲渡益に対する税率は一気に下がり、節税につながります。
長期保有は投機目的ではなく資産管理・運用とみなされ、課税が緩和される仕組みになっています。そのため、売却によって得られる利益に対して低い税率が適用されます。
先ほどと同様に500万円の譲渡益があった場合でも、以下の税率一覧表により、
種類 | 所得税率 | 住民税率 | 計 |
短期譲渡所得(所得5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得(所得5年超) | 15% | 5% | 20% |
- 所得税:500万円 × 15% = 75万円
- 住民税:500万円 × 5% = 25万円
合計で100万円の税負担となり、短期譲渡に比べて95万円もの節税になります。
5年超の所有であれば、所得税・住民税の合計税率は20%と抑えられるため、可能であれば売却は「所有5年超」になってから検討するのが賢明です。
※なお、譲渡益が出ない場合には、そもそも所得税や住民税は発生しません。
また、共有名義であっても、譲渡益は持分ごとに計算され、個人単位で確定申告をすることになります。
確定申告時に経費として計上できる項目については、不動産会社への仲介手数料、売買契約書の印紙代、売却のためのリフォーム、修繕費用、建物の解体費用、土地の測量費用、賃貸運用をしていた場合には立退料、売買契約を途中で解除した際には違約金などが該当します。ご自身の場合どの項目が当てはまるか確認しながら確定申告をしましょう。
また、居住していた不動産を売却した際には、譲渡益から最大3,000万円を控除できる特例(3,000万円特別控除)や、所有期間が10年を超えているマイホーム(居住用住宅)を土地、建物ともに売却する場合の軽減税率に関する特例(分離課税の特例)、居住していた不動産を売却し、一定期間内に新たな住宅を購入した場合には譲渡益に対する課税を繰り延べることができる特例(居住用財産の買換えの特例)、居住していた不動産の売却で損失が出た場合には、その損失をその他の所得と損益通算したり、翌年以降への繰り越し控除ができる特例(譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)など、不動産売却時に用いることのできるいくつかの特例もあります。これらは複数の特例を併用できないものもあるため、注意が必要です。
売却を検討する際は、事前に税理士に具体的な金額と税負担の見通しを相談することをおすすめします。
6. 共有持分の売却にかかるその他の費用
共有名義不動産の持分を売却する際には、売却価格にばかり目が行きがちですが、実際にはさまざまな付随費用も発生します。
こうした費用を事前に把握しておくことで、手元に残る金額を正確に見積もることができ、後々のトラブルや誤算を防げます。
この章では、5章でお伝えした所得税、住民税以外の、売却時にかかる主な5つの費用とその注意点について整理します。
6-1. 不動産会社への仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼する場合、その対価として仲介手数料が発生します。
仲介手数料は、買主を探す活動や交渉・契約手続きなどに対する報酬であり、不動産会社にとって正当な業務対価です。金額は法律で上限が定められており、売却価、格に応じて変動します。
仲介手数料の上限額一覧
取引価格 | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下の部分 | 売買金額 × 5%+消費税 |
200万円超400万円以下の部分 | 売買金額 × 4%+2万円+消費税 |
400万円超の部分 | 売買金額 × 3%+6万円+消費税 |
※2024年7月1日改正より、800万円以下は一律上限33万円(税込)となっています。
例えば、売却価格が200万円超〜400万円以下の場合、仲介手数料の上限は「売却価格 × 4% + 2万円(税別)」です。たとえば300万円で売却した場合、手数料は約14万円程度となります(税抜)。
売却額に対して一定割合で発生する仲介手数料は、利益の実質的な目減り要因になるため、必ず見積もり段階で考慮しましょう。
6-2. 測量費
土地を含む共有不動産では、測量が必要となる場合があり、その費用は売主負担になることがあります。
特に売却対象が土地を含む場合、境界の不明瞭さが売却に支障をきたすため、事前に測量を行い、境界確定をする必要が出てきます。これによりトラブルを防ぎ、買い手の安心感も高まります。
測量の内容や立会いの有無にもよりますが、簡易測量で10万〜20万円、確定測量であれば30万〜60万円程度かかるケースもあります。
特に土地付き不動産の場合は、事前に「測量が必要か」「その費用は共有者のうち誰が負担するか」などを明確にしておくことが大切です。
6-3. 登記費用や司法書士への報酬
住宅ローンによる抵当権抹消登記などを行う際には、登録免許税と司法書士への報酬が発生します。大抵の場合、売主側が負担するのは抵当権抹消の登記費用のみです。
不動産売買では、法務局への登記変更が不可欠であり、これには登録免許税が課されるほか、実務を代行してもらう司法書士への依頼料も発生します。
登録免許税は、「固定資産税評価額 × 2%(売買による移転の場合)」で算出され、加えて司法書士報酬が5万〜10万円程度かかるのが一般的です。
登記は法律的にも手続き的にも不可欠な要素であるため、登記費用と専門家への報酬も、売却に関わるコストとして考慮すべきです。
6-4.売買契約の際の印紙代
不動産売買契約書には、契約金額に応じた印紙を貼付する必要があります。
これは「印紙税法」に基づくもので、契約書に記載された金額に応じて印紙代が定められています。売買契約を締結する際に当事者が取り交わす契約書は「課税文書」に該当するため、印紙を貼ることで納税しなければなりません。
印紙代(印紙税額)の一覧
契約書に記載された金額(売買価格) | 印紙税額(2027年3月31日までの軽減措置後) | 通常の印紙税額 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 200円 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 500円 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 | 40万円 |
50億円超 | 48万円 | 60万円 |
例えば、売買価格が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、必要な印紙代は1万円です。契約書の記載金額が増えれば印紙代も高くなり、1億円を超える場合には6万円となります。
なお、契約書を2通作成する場合は、通常、双方が1通ずつ保有するため、それぞれに印紙が必要です。
印紙税には法的義務が伴います。不動産売買の実務においては専門家や不動産会社と連携し、正確な金額を確認した上で契約書を作成するようにしましょう。
6-5. 自分の共有持分を他の共有者に売却する場合に、適正な価格帯で売却しないと贈与税が発生
身内や他の共有者に、自分の持分を大幅に安い価格で売却した場合、売却ではなく「贈与」と見なされ、贈与税が課されるリスクがあります。
税務署は、著しく安い価格での売買を「形式だけの売却」と判断し、経済的利益の無償譲渡と見なすことがあります。この場合、受け取った側に贈与税が発生します。売主側には税負担はありませんが、適正価格で売却しないと、結果として他の共有者に思わぬ負担を与えてしまう可能性があることは、覚えておくことをおすすめします。
例えば、本来500万円の価値がある共有持分を、他の共有者に100万円で売却した場合、差額400万円分が贈与と判断される可能性があり、贈与税率が適用されます。
相手が親族や他の共有者であっても、「相場から大きく逸脱した価格」での売却はリスクがあるため、必ず適正な評価額に基づいて取引すべきです。
7.売却は共有持分に特化した不動産会社に相談するのがおすすめ
共有名義不動産や持分の売却を成功させるには、共有名義に関する専門知識と実績を持つ不動産会社への相談が最も確実です。
共有状態の不動産は、通常の不動産売却よりも法的、実務的に複雑です。例えば、他の共有者との交渉、権利関係の整理、トラブルリスクの事前回避などが求められます。一般的な不動産会社では対応できないケースも多く、専門性が問われる分野です。
実績を持ち、士業との連携があり、共有持分に特化した不動産会社であれば、以下のような対応が可能です。
- 共有者間の関係性に配慮した売却戦略の提案
- 税理士・弁護士・司法書士などの士業との連携によるワンストップな対応
- 特殊な持分でも市場価格に近い条件での買取交渉や流通ルートの活用
「誰に相談するか」で売却結果は大きく変わります。高値・スムーズな売却を実現するには、共有不動産に特化し、士業とも連携している実績豊富な不動産会社を選ぶべきです。
8. 共有名義不動産や共有持分の売却でお悩みの方は、TH弁護士法人へご相談を
共有名義不動産や共有持分の売却、あるいは共有状態の解消でお困りの方は、TH弁護士法人に相談することをおすすめします。
TH弁護士法人は、不動産の共有に関する法律問題を数多く扱ってきた専門家の集団であり、共有状態の解消、持分売却、共有者間の調整などに精通しています。
また、必要に応じて不動産会社や司法書士と連携を取りながら、法的な整理と経済的合理性を両立した解決をサポートします。
- 共有持分の売却先が見つからない
- 共有者が売却に反対している
- 他の共有者から買い取りの提案を受けたが価格が妥当かわからない
- 名義や登記の整理が済んでいない
こうした悩みがある方に対し、法的・実務的な見地から最適な方法を提示できます。
「共有状態から抜け出したい」「できるだけ損せずに持分を売却したい」と考えている方は、TH弁護士法人へのご相談をぜひご検討ください。
辻・本郷グループの遺産分割・共有名義に詳しい弁護士が直接対応いたします。
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後ほど担当者より面談日時調整の返信をさせていただきます。
9. まとめ
共有名義不動産や共有持分の売却は、通常の不動産売買とは違い、いくつかの法的、経済的なハードルがあります。
特に自分の共有持分だけの売却では、共有持分の性質上、自分だけでの活用が困難である点、共有者間の関係性が価格に影響する点、税務、登記など複雑な手続きが絡む点から、持分だけを売却する場合は、売却額が市場価格よりも低くなる傾向があり、できるだけ損をしないようにするための工夫が求められます。
売却時に損をしないための工夫の例
- 査定は複数社に依頼する
- 専門業者に絞って交渉する
- 税金や贈与のリスクも加味する
- できれば長期譲渡所得のタイミングで売却する
こうしたポイントを抑えることで、共有不動産のうち、自分の共有持分の売却を有利に進めることができます。
複雑な共有不動産の問題に直面したときには、専門性と実績を兼ね備えたプロに相談することが最も有効な手段です。
不要なトラブルや損失を回避し、納得のいく形で資産整理を進めましょう。