共有持分を現金化する6つの方法|売却する最適なタイミングと手順

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監修者 新井健一郎

不動産を複数人で所有する「共有持分」は、相続や贈与によって発生することが多く、活用が難しいケースも少なくありません。

「できるだけ早く現金化したいが、どうすればよいか分からない」「他の共有者とトラブルにならずに売却する方法を知りたい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、共有持分を現金化するための具体的な方法を分かりやすく解説します。

買取業者を利用するべきケースや第三者や共有者に売却すべきケースなど、ケースに応じた方法の選び方、また、それぞれの方法のメリット・デメリットについても詳しく紹介します。

売却時に発生する税金や注意点も解説するので、共有持分の現金化を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次


1. 共有不動産を現金化する6つの方法

不動産を複数人で共有している場合、現金化したくても簡単には進まないことがあります。

しかし、適切な方法を選択すれば、スムーズに換金することが可能です。

この章では、共有不動産を現金化する6つの方法を紹介し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

1-1. 共有者全員と合意して不動産全体を売却する

共有者全員の合意が得られれば、不動産全体を売却し、最もスムーズに現金化できます。

不動産市場では、共有持分単体よりも不動産全体として売却する方が高値がつきやすいです。また、手続きも比較的シンプルで、共有者間のトラブルも少なく済みます。

例えば、相続で兄弟3人が共有する土地を売却する場合、全員が合意すれば一括売却でき、スムーズに利益を分配できます。

メリットデメリット

市場価格で売却しやすい

共有者全員の合意が必要

手続きが比較的簡単

共有者の意見が合わないと進まない

売却後のトラブルが少ない

合意に時間がかかることがある

1-2. 他の共有者に自身の共有持分を売却する

共有者に自身の持分を買い取ってもらえれば、合意形成が比較的容易で、関係者間の調整も少なく済みます。

この方法では第三者への売却に比べ、共有者間での売買は話し合いの余地があり、売却手続きも簡単になります。

例えば、夫婦で共有していた不動産の持分を、離婚時に一方がもう一方に売却するケースがこれに該当します。

メリットデメリット
交渉が比較的スムーズ共有者に買い取る資金がない場合がある
仲介手数料がかからない交渉次第で売却価格が市場価格より低くなる可能性がある
共有状態を解消できる価格交渉が難航することがある

1-3. 他の共有者の持分をすべて買取り、単独名義にして売却する

自分が全ての持分を買い取ることで単独所有者になれば、不動産全体を自由に売却でき、市場価格での売却が可能になります。

共有状態のままだと売却の自由度が低いですが、単独名義にすれば買い手も見つかりやすくなります。

例えば、兄弟3人で共有する土地を、一人が他の二人の持分を買い取って単独名義にし、その後に市場価格で売却するケースなどがあります。

メリットデメリット
他の持分を購入後、不動産を単独で売却でき、市場価格での取引が可能他の共有者の持分を買い取る資金が必要
共有状態の解消により、自由に処分できる交渉次第で取得費用が割高になる可能性あり
売却後のトラブルがない時間と労力がかかる

1-4. 第三者に自身の共有持分だけを売却する

共有者の合意が得られない場合でも、第三者に持分だけを売却することで現金化できます。

共有者が買い取ってくれない場合でも、投資家や専門業者が共有持分を買い取ってくれるケースがあります。この場合、不動産全体の売却ではないため、市場価格よりはやや下がる可能性が高いです。

不動産買取業者が共有持分のみを買い取り、最終的に共有不動産を分割して売却するなどといったケースがあります。

メリットデメリット
共有者の同意が不要市場価格より安くなることが多い
早期に現金化できる共有者との関係が悪化する可能性がある
売却後の管理義務がなくなる買い手が見つかりにくい場合がある

1-5. 土地を分筆し、それぞれ単独名義で売却する

不動産が土地である場合に限った方法ですが、土地を分筆できれば、各自が自由に売却でき、共有状態を解消できます。

分筆とは、一筆の土地の登記を複数に分けて、法務局に登録しなおすことです。

不動産全体の売却が難しい場合でも、分筆すれば別々の登記簿が作成されることになるため、これを機に、一筆の土地ごとに共有者のうちの一人の単独所有の土地として分ける場合も多く、その後は、各人が自分の単独所有の土地を、自由に売却可能になります。

例えば200坪の土地を共有している場合、それを100坪ずつ分筆し、それぞれが単独名義として売却するケースなどがあります。

メリットデメリット
共有者の調整が不要になる分筆の手続きが必要で時間がかかる
市場価格で売却しやすい分筆できないケースもある
それぞれの意向で売却できる測量費用などのコストが発生する

1-6. 共有物分割請求訴訟をして共有状態を解消した後に売却する

裁判所の力を借りて強制的に共有状態を解消し、最終的に現金化する方法もあります。

他の共有者が協力しない場合でも、この方法であれば、裁判を通じて強制的に売却手続きを進めることが可能です。

例えば、相続で親族間の意見がまとまらなかったため共有物分割請求訴訟を起こして、裁判所の判断により不動産は競売にかけられたといったケースがあります。

メリットデメリット
共有者の合意がなくても解決できる裁判費用と時間がかかる
強制的に現金化できる競売になると市場価格より安くなる可能性が高い
共有者間のトラブルを法的に解決できる関係がさらに悪化するリスクがある

このように、共有不動産を現金化する方法は複数ありますが、どの方法を選ぶかは状況次第です。

最もスムーズなのは全員合意の上で売却することですが、合意が得られない場合は別の手段を検討する必要があります。

詳細な解決策については、以下のURL共有名義解消法を参考にしてみてください。

自分に最適な現金化の手段を選びましょう。

弁護士が一覧表で解説!共有名義7つの解消法と実行のハードル|辻・本郷Navi


2.ケース別に見る、おすすめの現金化の方法

共有不動産を現金化する際、状況に応じた最適な方法を選ぶことが重要です。

共有者全員が売却に前向きな場合と、意見が対立している場合では、取るべき手段が大きく異なります。また、売却のスピードを優先するのか、価格を最大化したいのかによっても最適解は変わります。

この章では、6つの代表的なケースを挙げ、それぞれに適した現金化の方法を詳しく解説します。

2-1. 共有者全員で意見が一致している場合

最適な方法:不動産全体を売却する(1-1の方法)

共有者全員が売却に同意しているなら、不動産全体を売却するのが最もスムーズで高値での現金化が期待できます。

不動産市場では、共有持分のみの売却よりも、不動産全体を売却する方が高い価格で売れる傾向があります。

買い手にとっても、単独所有できる物件の方が管理しやすく、融資も受けやすいため、需要が高いからです。また、共有者全員が同意しているため、交渉や手続きの煩雑さが軽減され、売却までの時間も短縮できます。

例えば、兄弟3人で親の家を相続し、全員が「すぐに売却して現金化したい」と合意している場合、不動産会社に依頼して市場価格で売却すれば、最も効率的に現金化できます。

2-2. 他の共有者が不動産売却を強く希望している場合

最適な方法:自身の持分を他の共有者に売却する(1-2の方法)

自身は売却にこだわらなくても、他の共有者が売却を強く望んでいるのであれば、自分の持分を他の共有者に売却することで手間なく現金化できます。

他の共有者が不動産を売却したいと考えている場合、共有者は持分を買い取ってくれる可能性が高いため、スムーズに現金化できます。

第三者に売る場合よりも交渉が容易で、相場に近い価格で売却できる可能性が高い点もメリットです。

例えば、兄弟3人で共有している不動産のうち、2人が「早く売りたい」と考えているなら、彼らに自身の持分を売却し、残った2人で自由に売却を進めてもらうことができます。

2-3. 自身が不動産に住んでいる場合

最適な方法:他の共有者の持分を買い取る(1-3の方法)

自分が住んでいる不動産を売却すると居住地を失うため、この場合は、他の共有者の持分を買い取って単独名義にするのが合理的です。

単独名義にすれば、不動産を自由に管理や活用することができ、将来的に好きなタイミングで売却できます。

また、共有状態のままでは、家のリフォームや賃貸への転用が制限される可能性があるため、名義を一本化することで柔軟な運用が可能になります。

例えば、両親の家を兄弟と共有しているが、自身がその家に住んでいる場合、兄弟の持分を買い取れば、今後の住まいを確保しつつ、将来的に高値で売却することもできます。

2-4. 割安でも良いから早く現金化したい場合

最適な方法:第三者に自身の持分だけを売却する(1-4の方法)

時間をかけずに現金化することを優先するなら、不動産投資家や買取業者に共有持分のみを売却するのが最速の方法です。

共有者との交渉が不要で専門業者が持分を買い取ってくれるケースも多いため、売却が早く進む可能性が高いからです。ただし、共有持分は市場価格よりも安く買い取られることが多い点には注意が必要です。

「すぐに現金が必要」という事情がある場合、不動産買取業者に持分を売却すれば、短期間でまとまったお金を手にすることができます。

2-5. 共有者間で合意が取りやすく、不動産が土地の場合

最適な方法:土地を分筆し、それぞれ単独名義で売却する(1-5の方法)

共有している不動産が土地であり、共有者全員が売却に同意している場合は、土地を分筆して、分筆後の土地を単独名義にしたうえで売却するのが最適です。

土地の場合、分筆という手続きを行うことで、土地の数を増やせば、共有者のそれぞれが、分筆後の土地を単独名義で所有する分け方もできるようになります。

これにより、共有状態が解消され、各自が自由に売却できます。

共有状態のままだと、共有者全員の合意が必要になるため、意見が分かれると売却が進まないことがありますが、分筆して土地ごとに単独所有にすればその問題を解決できます。

また、土地の立地や形状によっては、分筆することで個々の土地の価値が上がる場合があります。 例えば、広い土地を3人で共有している場合、分筆して3つの区画に分けることで、小規模な住宅用地として売却しやすくなることがあります。

また、例えば、300坪の土地を兄弟3人で共有している場合、分筆して100坪ずつの単独名義にし、兄弟のうち1人は売却し、1人はそのまま所有、もう1人は賃貸に出すという選択も可能になります。

土地が広く、分筆が可能な場合や、共有者全員が売却や単独所有に前向きな場合、分筆することで不動産の価値が上がる可能性がある場合などのケースでは特に、分筆という手段がおすすめできます。

※土地の分筆を行って売却するためには、以下の手続きが必要です。

1.    測量を実施(土地家屋調査士に依頼)

2.    共有者全員の合意を得る

3.    分筆登記を申請(法務局へ申請)

4.    単独名義の土地を売却

2-6. 共有者間の話し合いが困難な場合

最適な方法:共有物分割請求訴訟をして共有状態を解消する(1-6の方法)

共有者間の話し合いがまとまらず、売却の合意が得られない場合は、裁判を通じて共有状態を強制的に解消する必要があります。

共有不動産の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。しかし、一部の共有者が売却に反対している場合や、共有者同士の関係が悪化して話し合いがどうしても成立しないという場合などには、裁判を起こして共有状態を解消するしかありません。

共有物分割請求訴訟を起こすことで、裁判所が不動産の扱いを決定します。

通常、裁判所の判断としては以下の方法が取られます。

主な裁判所の判断例

現物分割(不動産を物理的に分ける)

可能な場合:土地の場合、分筆によって裁判所が分割を命じるケースがあります。

難しい場合:マンションや戸建て住宅などは物理的に分割できないため、この方法は困難です。

代償分割(共有者の1人が買い取る)

1人の共有者が他の共有者の持分を買い取る方法です。裁判所が適正価格を算出し、買い取りが可能かどうかを判断します。

換価分割(不動産を売却して分配)

共有者間の合意が取れない場合、裁判所が不動産を強制的に売却し、売却代金を共有者に分配します。通常は競売という形で行われます。

例えば、3人の共有者のうち1人が売却を強く拒否し、他の2人が売却を希望している場合、話し合いで解決しないなら、裁判所に共有物分割請求を申し立てることになります。最終的に裁判所が「競売をして売却し、売却代金を共有者に分配する」と判断すれば、売却が強制的に実行されます。

※裁判の流れ

1.    弁護士に相談し、訴訟を提起

2.    裁判所での審理を経て判決が下る

3.    現物分割・代償分割・換価分割のいずれかの方法が決定

4.    売却・分配が実施される

共有者の意見が対立し、話し合いで解決できない場合や、他の共有者が売却を強く拒否し、交渉が不可能な場合、また、共有者の一部が行方不明で、意思確認ができない場合などのケースでもおすすめできます。

ただし、注意点として、訴訟には時間がかかり、費用もかさんでしまいます。できる限り話し合いでの解決を目指すのが望ましいと言えます。

また、競売になると、市場価格より安く売却されることが多いため、共有物分割請求訴訟を起こすことは最終手段と考えるべきでしょう。

訴訟を起こす前に、弁護士や不動産の専門家に相談し、他の解決策がないか検討することが重要です。


3.不動産の共有持分を現金化するまでの手順

不動産の共有持分を現金化するには、適切な方法を選び、必要な交渉や手続きを進める必要があります。

この章では、具体的な流れを順を追って説明し、スムーズに現金化を進めるためのポイントを解説します。

3-1. 現金化するための方法をしぼる

まず最初に、どの方法で共有持分を現金化するのかを決定する必要があります。

選択肢としては、不動産全体を売却する、他の共有者に自身の持分を売る、第三者に売却する、共有者の持分を買い取る、土地を分筆して売却する、または裁判で強制的に売却するなど、複数の方法が考えられます。

主な選択肢

  • 不動産全体を売却する(1-1
  • 他の共有者に持分を売却する(1-2)
  • 他の共有者の持分を買い取る(1-3
  • 第三者に持分のみを売却する(1-4
  • 分筆して単独名義にして売却する(1-5
  • 共有物分割請求訴訟をする(1-6

この段階では、それぞれのメリットとデメリットを整理し、自分にとって最適な選択肢を見極めることが重要です。

例えば、できるだけ高値で売りたい場合は不動産全体を売却する方法が望ましいですが、すぐに現金化したいなら第三者に持分を売る方法が現実的です。

共有者との関係が良好なら交渉による解決を目指し、話し合いが難航しそうな場合は法的手続きも視野に入れます。こうした判断を行った上で、次のステップへ進みます。

3-2. 必要であれば他の共有者と交渉する

現金化の方法を決めた後、それを実行するためには他の共有者との交渉が必要になる場合があります。

不動産全体を売却する場合は共有者全員の合意が必要であり、持分を売却する場合でも、他の共有者が買い取る意思があるかどうかを確認することが重要です。また、分筆する場合も共有者の合意が求められます

例えば、不動産全体を売却する場合は、共有者全員と話し合いを行い、売却の意向を確認します。その際、不動産会社に査定を依頼し、市場価格を共有することで、納得感のある交渉が可能になります。

一方、自分の持分だけを売却する場合は、まず他の共有者に買い取る意思があるかを尋ね、なければ第三者への売却を検討します。

また、共有者の持分を買い取る場合は、売却意思を確認し、公正な価格で交渉を進めることが重要です。

分筆を検討する場合は、測量や登記の手続きが必要になるため、そのための合意を得るプロセスが必要になります。

もし交渉がまとまらない場合は、裁判を通じて強制的に共有状態を解消する方法も考えられます。

3-3. 不動産会社や買取業者に査定・売却の依頼をする

売却することが決まったら、次に不動産会社や買取業者に査定を依頼します。

この際、複数の会社に査定を依頼し、適正な価格を把握することが重要です。

一般的に、不動産全体を売却する場合は仲介業者を通じて市場で買い手を探す方法を取ると比較的高値で売却できるため適していますが、すぐに売却したい場合は買取業者に直接売るという選択肢もあります。

持分のみを売却する場合は、共有持分の買取を専門に行う業者を探し、査定を依頼するのが効果的です。

共有持分は流動性が低いため、市場価格よりも安くなりやすいというデメリットがあるものの、早期に現金化できるというメリットもあります。

査定を複数会社間で比較し、最も有利な条件で売却できる業者を選ぶことが成功の鍵となります。

3-4. 売買契約を締結する

買い手が決まったら、次に売買契約を締結します。

この契約では、売却価格、支払い条件、引き渡し時期などを詳細に定めます。

この際、特に、手付金の額や契約解除時の取り決め、契約不適合の場合や設備修補責任など、売買契約における重要なポイントについては慎重に確認する必要があります。

契約を締結する前に、契約内容を不動産会社や弁護士と確認し、不利な条件が含まれていないかをチェックすると良いでしょう。

また、売却する持分に抵当権が設定されている場合は、事前に金融機関と協議し、ローンの清算や抵当権の抹消手続きを行う必要があります。

3-5. 決済・引き渡しを行う

契約が成立した後、買主が売却代金を支払うと同時に、所有権を移転し、物件の引き渡しを行います

この決済の際には、司法書士が関与し、所有権移転登記の手続きを進めることになります。

決済時には、売買代金の受領のほか、固定資産税の精算や、仲介手数料の支払いなどの諸手続きも行われます。建物がある場合は、鍵の引き渡しや動産類の撤去も同時に行われ、売却手続きが完了します。

3-6. 所有権登記を行う

売却後、所有権の移転登記を行うことで、正式に不動産の所有者が変更されます。

この登記手続きは司法書士が代行するのが一般的であり、売主としては登記費用を支払う他、必要書類を準備し、手続きの進捗を確認するだけで済みます。

登記が完了すると、買主の名義に変更され、不動産の売却が正式に完了します。共有持分を売却した場合は、持分の移転が行われ、売却した側は登記簿から名前が消えることになります。

3-7. 確定申告を行う

不動産を売却した翌年には、確定申告が必要になります。

売却益が発生した場合、譲渡所得として課税対象となり、所得税と住民税を支払う必要があります。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算されます。

譲渡所得の計算式

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得金額(利益)

もし、売却価格が取得価格を下回った場合は、課税対象にはなりませんが、それでも確定申告を行うことで損失を繰り越すことができるため、申告するメリットがあります。

また、マイホームとして使用していた場合は、一定の要件を満たす場合に限り損失を控除(損益通算)できる特例があります。適用要件を確認し、必要な手続きを行いましょう。


4.共有持分を売却するときに発生する可能性のある費用と税金

共有持分を売却する際には、売却価格のほかにさまざまな費用や税金が発生します。適切な準備をしておかないと、思わぬ出費が発生し、手元に残る金額が予想よりも少なくなる可能性があります。

この章では、共有持分を売却するときに必要となる主な費用について詳しく解説します。

4-1. 持分移転登記費用

共有持分を売却すると、買主へ所有権を移転するための登記手続きが必要になります。この際にかかるのが「持分移転登記費用」です。具体的には、登録免許税と司法書士への報酬が発生します。

  • 登録免許税

    持分移転登記を行う際、売却価格の1,000分の202%が登録免許税として課税されます。例えば、売却価格が500万円の場合、登録免許税は10万円になります。

  • 司法書士への報酬

    登記手続きを司法書士に依頼する場合、報酬が発生します。相場は3万円~5万円程度ですが、依頼する司法書士や地域によって異なります。

登記を正しく行わないと、売却後に所有権の移転が完了せず、トラブルにつながる可能性があります。

特に、書類の不備や登録免許税の未納によって登記が進まないこともあるため、司法書士と相談しながら確実に手続きを進めることが重要です。

4-2. 抵当権抹消登記費用

売却する共有持分に住宅ローンの担保などとして抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消する必要があります。このときにも、登録免許税と司法書士への報酬が発生します。

  • 登録免許税

    抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。建物と土地がある場合、建物1個、土地1筆としてそれぞれに課税されるため、最低でも2,000円が必要になります。

  • 司法書士への報酬

    司法書士に依頼する場合、12万円程度の報酬が発生します。自分で手続きを行うことも可能ですが、書類作成や法務局への申請に不安がある場合は、専門家に依頼する方が確実です。

抵当権が設定されたままでは買主に所有権を移転できないため、売却前に必ず抵当権を解除しておくことが重要です。

4-3. 不動産会社への仲介手数料

不動産会社を通じて売却する場合、仲介手数料が発生します。これは宅地建物取引業法で上限が定められており、以下の計算式で算出されます。

仲介手数料の上限(税抜)

売買価格仲介手数料
200万円以下売買価格の5%
200万円超400万円以下売買価格の4% + 2万円
400万円超売買価格の3% + 6万円

例えば、共有持分の売却価格が600万円の場合、仲介手数料の上限

(600万円 × 3%) + 6万円 = 24万円(税抜)

となります。

不動産会社によっては、これより低い手数料で対応する場合もありますが、売却活動のサポート内容にも影響するため、手数料の安さだけでなく、サービス内容を比較して選ぶことが重要です。

4-4. 譲渡所得に関する税

売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合、所得税と住民税が課されます。

譲渡所得の計算式

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額

このときの取得費とは、不動産を購入したときの価格や、購入時の仲介手数料などを含みます譲渡費用には、売却時の仲介手数料、印紙税、測量費用などが該当します。

譲渡所得税率(所有期間による違い)

所有期間所得税住民税
5年以下(短期譲渡所得)30%9%
5年超(長期譲渡所得)15%5%

確定申告では、復興特別所得税(基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)の2.1%)も申告し、納付します。

ただし、マイホームを売却した場合には、要件を満たせば特別控除が適用されることもあるため、税理士や専門家に相談するのが賢明です。

4-5. 売却の際の契約書に必要な印紙税

不動産売買契約を締結する際には、契約書に印紙を貼付することで納税します。売買価格に応じた印紙税の額は以下の通りです。(令和9331日までの軽減税率適用)

契約金額本則税率軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの400円200円
50万円を超え 100万円以下のもの1千円500円
100万円を超え 500万円以下のもの2千円1千円
500万円を超え1千万円以下のもの1万円5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

 

不動産の譲渡に関する契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円以下のもの(契約金額の記載のないものを含む)は、軽減措置の対象となりません(税率200円)。また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。

例えば、持分の売却価格が2,000万円なら、印紙税は1万円が必要になります。契約書を2通作成する場合、双方で印紙税を負担することになるため、印紙税の負担割合も事前に確認しておくことが重要です。


5. 共有持分を現金化する際の6つの注意点

共有持分を現金化する際には、いくつかの重要な注意点が存在します。これらをしっかりと理解し、事前に対策を講じておかないと、後々トラブルに発展し、思い通りに進まない可能性があります。

この章では、6つの注意点について解説します。

5-1. 自身の持分だけを売却した場合、買取業者から他の共有者にも持分を売却するように営業がかかる可能性がある

自身の共有持分だけを売却すると、買取業者は最終的に不動産全体を取得して転売することを目的としているため、他の共有者にも持分を売却するように働きかけることがよくあります。

業者が他の共有者に対して売却を促すことで、共有者間で不信感が生まれ、関係が悪化する可能性があります。業者の営業活動が原因で、共有者同士の対立が発生することも考えられます。

この問題を避けるためには、事前に共有者に対して売却の意図をしっかりと伝え、理解を得ることが重要です。また、業者の営業方針に関しても確認し、共有者への接触を避けるよう交渉しておくことが望ましいです。

5-2. 共有者に知らせずに自身の持分だけを売却するとトラブルのもととなる

共有持分の売却は共有者との合意のもとで行うべきものであり、無断で売却を進めると後で大きなトラブルの原因になります。

共有者が売却に反対した場合、事後に対立が起きる可能性が高くなってしまいます。

特に、買取業者が関与している場合、後の交渉が難航することが考えられます。

対策として、事前に共有者全員に説明し、売却の意図をしっかりと伝え、合意を得ることが大切です。透明性を保つことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

5-3. 共有持分だけを売る場合、買い手がつかなかったり割安での売却となる可能性がある

共有持分だけを売却する場合、市場では買い手が見つかりにくいことが多いです。

共有持分は不完全な所有権であり、買い手の需要が少なく、売れたとしても売却価格が割安になる可能性があります。

対策としては、共有持分を売却する際には、事前に買取業者や不動産会社に相談し、複数の業者に査定を依頼することが挙げられます。さらに、共有者への売却を提案するなど、他の選択肢も検討することで、より良い条件で売却できる可能性が高まります。

5-4. 土地を分筆した結果、資産価値が下がる可能性がある

土地は、分筆して単独名義に変更することが可能ですが、分筆後の土地が建築制限を受ける場合があり、その結果として土地の資産価値が下がる可能性があります。

これは、分筆を行った場合、土地の形状や接道条件などが変更されることがあるためです。

対策として、分筆を行う前に、土地の利用価値や建築基準法に基づく制限を確認することが重要です。

不動産会社や専門家に相談して、分筆後も資産価値を保てるように計画することが大切となります。

5-5. 共有物分割請求訴訟では、思い通りの結果にいかない場合がある

共有物分割請求訴訟を起こしたとしても、必ずしも希望通りに共有状態が解消されるとは限りません。

裁判所が出す判決は、共有者の利益を均等に配慮するため、予想外の結果になることもあります

訴訟により強制的に競売にかけられ、市場価格よりも大幅に低い価格で売却される可能性があります。また、訴訟費用や時間がかかり、最終的に損失が生じることも考えられます。

対策として、訴訟を避けるために、まずは共有者同士で話し合いを持つことが大切です。それでも解決しない場合は、弁護士に相談して、訴訟のリスクやコストを事前に理解してから進めるようにしましょう。

5-6. 仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶと広告活動やアフターフォローが疎かになる可能性がある

不動産会社を選ぶ際に仲介手数料の安さだけで決めると、売却活動に十分な広告活動やサポートが行われないことがあります。これが原因で、売却が長引いたり、希望通りの価格で売れなかったりすることがあります。

手数料が安い業者は、広告の範囲や売却活動に力を入れないことがあり、買い手が見つかりにくくなる可能性があります。また、アフターフォローが不足している場合、契約後の対応が遅れることもあります。

対策として、不動産会社を選ぶ際には、手数料だけでなく、過去の実績やサポート体制も考慮することが重要です。複数の会社に相談し、売却活動の内容やサポート体制を比較することで、より良い条件で売却を進めることができます。


6. 共有持分の現金化でお悩みの方はTH弁護士法人へご相談を

共有持分の現金化に関しては、現金化の方法によっては共有持分の解消が必須であることも多く、ときに共有者間の合意のための特殊事情への対応など、法律的な課題や複雑な手続きが伴います。

特に共有者間で意見が食い違ったり、問題が発生したりする場合、適切な対処をすることが非常に重要です。こうした状況で困ったときには、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが非常に効果的です。

TH弁護士法人は、不動産関連の法的問題に精通しており、共有持分の売却や分割に関するさまざまなケースに対応しています。

法律的なアドバイスや交渉の代行、訴訟が必要な場合にも迅速かつ適切に対応いたします。

個別の状況に合わせて、最適な解決策を提案し、クライアントの利益を守るために全力を尽くします。

共有持分の現金化についてお悩みの方は、TH弁護士法人にぜひ、ご相談ください。

法律面での不安を解消し、安心して取引を進めるためにも、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

辻・本郷グループの遺産分割・共有名義に詳しい弁護士が直接対応いたします。

共有名義・共有持分の有料相談(一時間¥11,000税込)受付中!

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後ほど担当者より面談日時調整の返信をさせていただきます。


7. まとめ

共有持分の現金化には、さまざまな方法や注意点が存在します。

まずは、どの方法が最も適しているかを慎重に検討し、その後は共有者との合意を得ることが基本です。

しかし、意見が食い違ったり、合意形成に問題が生じたりすることもありますので、その際には弁護士などの専門的な支援を受けることが重要です。

現金化の過程において、売却方法や契約書作成、税務面での対応についても、十分な知識と準備が求められます。

特に、共有持分のみの売却や分筆など、手続きが複雑になる場合は、予期しないリスクを避けるために事前に専門家に相談しておくと良いでしょう。

専門的なサポートを受けることで、スムーズかつ効率的に現金化を進め、トラブルを避けることができます。

TH弁護士法人や不動産の専門家に相談しながら、安心して売却手続きを進めましょう。