
賃貸用不動産を所有している場合、建物の取得費用は「減価償却費」として毎年少しずつ経費に計上できます。
しかし、いざ計算しようとすると「どこまでが減価償却の対象になるのか」「中古物件の耐用年数はどのように計算するのか」など、迷いやすい点もあります。
この記事では、賃貸用不動産における減価償却の基本から、減価償却費を計算する流れ、計算例、仕訳の方法までわかりやすく解説します。
目次
1.賃貸用不動産における減価償却とは
減価償却とは、建物や設備など長い期間使う資産の取得費用を、数年に分けて経費にしていく手続きです。
賃貸用のアパートやマンションは、購入した年だけでなく、その後も長く家賃収入を得るために使います。
そのため、建物の取得費用を購入した年にまとめて経費にするのではなく、税法上の使用期間の目安である「耐用年数」に応じて、毎年少しずつ減価償却費として計上していきます。
具体的な計算の流れは、次の章で見ていきましょう。
2.賃貸用不動産の減価償却費を計算する流れ
賃貸用不動産の減価償却費は、取得価額の確認、耐用年数の確認、償却限度額の計算など、いくつかの手順を踏んで求めます。
全体の流れは、以下のとおりです。

順番に見ていきましょう。
2-1.取得価額に含める費用を確認する
賃貸用不動産の減価償却費を計算する際は、まず購入費用の内訳を確認し、どの費用を取得価額に含めるのか確認する必要があります。
賃貸用不動産について、購入代金のすべてを減価償却できるわけではありません。
例えば、土地は時間の経過で価値が減る資産ではないため、減価償却の対象外です。
減価償却の対象になるのは、建物や建物附属設備などの取得価額です。
取得価額には、購入代金だけでなく、取得にかかった一定の付随費用も含まれます。
まずは購入時の支払額の内訳を確認し、建物の取得価額に含めるものと含めないものを整理しましょう。
主な取り扱いをまとめたのが以下の表です。
| 取り扱い | 費用の種類 |
| 取得価額に含める | 建物の購入代金 |
| 建物の購入に伴う付随費用 (立退料・設計料など) | |
| 地鎮祭・上棟式の費用 | |
| 取得価額に按分して含める | 仲介手数料 |
| 固定資産税等精算金 | |
| 取得価額に含めない | 土地の購入代金 |
| 落成式・竣工式の費用 | |
| 不動産取得税・登録免許税・印紙税 | |
| 司法書士報酬 | |
| 借入金の利子 | |
| 火災保険料・地震保険料 |
上記のうち、建物や建物附属設備などの取得価額に含めるものが減価償却費の計算対象になります。
表中で「按分して含める」とした費用は、土地と建物の代金比率などに応じて分け、建物に対応する部分だけを減価償却の対象にします。
「含めない」としたものは、経費として処理します。
2-2.建物部分の購入代金を確認する
次に、購入代金などのうち、減価償却の対象となる建物や設備部分の金額がいくらかを確認します。

土地は減価償却の対象にならないため、土地と建物を一括で購入した場合は、購入代金のうち建物部分にあたる金額がいくらかを確認する必要があります。
確認方法は、契約書に金額や消費税額などの記載があるかどうかで異なります。
2-2-1.土地と建物の金額が分けて記載されている場合
売買契約書や譲渡対価証明書などに、土地と建物の金額が分けて記載されている場合は、契約書に記載された建物部分の金額を使います。
2-2-2.土地と建物の金額がまとめて記載されている場合
契契約書などに土地と建物の金額がまとめて記載されている場合は、建物部分の購入代金を別途計算する必要があります。
契約書に消費税額の記載があれば、その金額から建物部分の価格を逆算できます。
消費税額の記載もない場合は、固定資産税評価額などを基準に土地と建物の購入代金を按分します。
それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。
2-2-2-1.売買契約書に消費税額の記載がある場合
契約書に土地と建物の金額が分けて記載されていなくても、消費税額が分かれば、建物部分の金額を逆算できます。
土地部分には消費税がかからず、消費税額は建物部分の税抜価格に税率を掛けた金額です。
そのため、契約書に記載された消費税額を税率で割ると建物部分の税抜価格を求められます。
建物部分の税抜価格 = 契約書に記載された消費税額 ÷ 消費税率
計算例は、以下のとおりです。
【計算例】
契約書の消費税額が「400万円」、消費税率が「10%」の場合
建物の税抜価格: 400万円 ÷ 0.1= 4,000万円
建物の税込価格: 4,000万円 + 400万円 = 4,400万円
減価償却費の計算で消費税額を含めるかどうかは、採用している消費税の経理方式によって異なります。
税込経理の場合は消費税額を含めた金額を使い、税抜経理の場合は消費税額を含めない金額を使います。
免税事業者は税込経理になります。
2-2-2-2.売買契約書に消費税額の記載がない場合
契約書に土地と建物の内訳がなく、消費税額も記載されていない場合は、別の方法で建物部分の金額を求めます。
たとえば、固定資産税評価額を使って土地と建物の割合を出し、その割合で購入代金を按分する方法があります。
この場合、建物部分の取得価額は次の式で計算します。
建物部分の購入代金 = 土地・建物の一括購入代金 × 建物の固定資産税評価額 ÷ 土地と建物の固定資産税評価額の合計額
計算例は、以下のとおりです。
【計算例】
購入代金:10,000万円
土地の固定資産税評価額:4,900万円
建物の固定資産税評価額:2,100万円
固定資産税評価額の合計額:7,000万円 の場合
建物部分の購入代金
= 10,000万円 × 2,100万円 ÷ 7,000万円
= 3,000万円
このほか、建物の構造や建築年に応じた「建物の標準的な建築価額表」を使って、建物部分の金額を算定する方法などもあります。
また、建物の取得価額が、建物本体と建物附属設備に分かれている場合があります。
建物附属設備とは、電気設備、給排水設備、ガス設備、空調設備など、建物に付属する設備のことです。
建物本体と建物附属設備を合理的に区分できる場合は、それぞれの耐用年数に応じて別々に減価償却費を計算します。
別々に計算することで、初期に計上できる減価償却費が大きくなるケースがあります。
2-3.付随費用を加えて取得価額を確定する
建物や建物附属設備の金額を確認したら、取得価額に含める付随費用を反映し、減価償却費の計算に使う取得価額を確定させましょう。

仲介手数料など、土地と建物の両方に関係する費用は、土地と建物の価格割合に応じて按分します。
按分するときは、2-2で確認した土地・建物の価格割合を使います。
たとえば、建物部分の割合が40%であれば、土地と建物に共通する費用にも40%を掛けて、建物に対応する金額を求めます。
建物部分の割合が40%、仲介手数料が300万円の場合、建物の取得価額に含める仲介手数料は「300万円×40%=120万円」です。
建物本体と建物附属設備を分けて減価償却する場合は、付随費用も同様に按分したうえで、それぞれの取得価額を確認します。
2-4.法定耐用年数を耐用年数表で確認する
次に、法定耐用年数を耐用年数表で確認します。
法定耐用年数とは、建物や設備の取得価額を何年に分けて経費にしていくかについて、税法であらかじめ決められている年数です。
代表的な建物や建物附属設備の法定耐用年数は、以下のとおりです。
| 資産の種類 | 構造・設備の内容 | 法定耐用年数 |
| 建物 | 木造・合成樹脂造の住宅用建物 | 22年 |
| 建物 | 金属造の住宅用建物(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 |
| 建物 | 金属造の住宅用建物(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
| 建物 | 金属造の住宅用建物(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 |
| 建物 | 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用建物 | 47年 |
| 建物附属設備 | 給排水・衛生設備、ガス設備 | 15年 |
該当する構造や設備が表にない場合は、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認しましょう。
この法定耐用年数をもとに、減価償却の計算に使用する耐用年数を求めます。
2-5.物件の耐用年数を求める
次に、物件の耐用年数を求めます。
新築か、中古で法定耐用年数の一部を経過しているか、すべて経過しているかによって、耐用年数の考え方は異なります。
| 建物の区分 | 耐用年数の考え方 |
| 新築の場合 | 法定耐用年数をそのまま使う |
| 中古で、法定耐用年数の一部を経過している場合 | 法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 20% (簡便法) |
| 中古で、法定耐用年数をすべて経過している場合 | 法定耐用年数 × 20% (簡便法) |
中古建物の耐用年数は、取得後に使用できる期間を見積もって決めるのが原則です。
ただし、使用可能期間を見積もることが難しい場合は、簡便法によって耐用年数を計算します。
経過年数に月数がある場合は、月数も含めて計算します。
たとえば「10年5カ月」の場合は、125カ月として計算します。
そのうえで、算出された耐用年数に1年未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます。
具体的な計算例は、「3-2.法定耐用年数内の中古建物の場合」で確認しましょう。
2-6.償却率を確認する
耐用年数を確認した後、その年数に対応する償却率を確認します。
償却率とは、建物部分の取得価額のうち、1年分の減価償却費として計上する割合のことです。
償却率は耐用年数ごとに決められており、国税庁の「減価償却資産の償却率等表」で確認することができます。
確認するときは、償却方法にも注意が必要です。
| 資産の種類 | 取得時期など | 償却方法 |
| 建物 | 平成19年4月1日以後に取得 | 定額法 |
| 建物附属設備 | 平成28年4月1日以後に取得 | 定額法 |
平成19年4月1日以後に取得した建物は定額法で計算しますが、平成19年3月31日以前に取得した建物は旧定額法で計算します。
なお、法人が平成19年3月31日以前に取得し、平成19年4月1日以後に事業の用に供した減価償却資産については、その事業の用に供した日に取得したものとみなされるため、注意が必要です。
償却率を確認するときは、耐用年数だけでなく、資産の種類、取得時期、事業の用に供した日、償却方法をあわせて確認しましょう。
2-7.償却限度額を計算する
取得価額、耐用年数、償却率を確認したら、最後に償却限度額を計算します。
償却限度額とは、その年に減価償却費として計上できる金額の上限です。
年の途中で賃貸用として使い始めた場合は、業務または事業の用に供した月数に応じて、減価償却費を月割りで計算します。
平成19年4月1日以後に取得した建物の場合、計算式は次のとおりです。
<計算式>
償却限度額= 建物部分の取得価額 × 定額法の償却率
具体的な計算例は、次の章で確認していきましょう。
2-8.減価償却費を計上する
償却限度額を算出したら、その金額をもとに減価償却費を計上します。
個人事業主の場合は、原則として、算出した償却限度額と同額を減価償却費として必要経費に算入します。
法人の場合は、償却限度額の範囲内で、その期に計上する減価償却費の金額を決めることができます。
3.賃貸用不動産の減価償却費の計算例
賃貸用不動産の減価償却費の計算例を、新築の場合、耐用年数内の中古建物の場合、耐用年数を超えた中古建物の場合に分けて見ていきましょう。
ここでは、計算の流れを分かりやすくするため、仲介手数料などの付随費用や建物附属設備は考慮せず、建物部分の金額のみを使って簡略化して計算します。
また、平成19年4月1日以後に取得した建物を前提に、定額法を用います。
3-1.新築の場合
以下の物件を例に見てみましょう。
・建物部分の取得価額:4,000万円
・建物の構造:鉄筋コンクリート造
・用途:住宅用
新築の場合は、建物の構造や用途に応じた法定耐用年数を使います。
この物件は住宅用の鉄筋コンクリート造であるため、法定耐用年数は47年です。
耐用年数47年に対応する定額法の償却率は0.022です。
この場合、1年分の減価償却費は次のように計算します。
4,000万円 × 0.022 = 88万円
したがって、この例では、1年分の減価償却費として88万円を計上します。
3-2.法定耐用年数内の中古建物の場合
以下の物件を例に見てみましょう。
・建物部分の取得価額:2,000万円
・建物の構造:木造
・用途:住宅用
・築年数:10年5カ月
住宅用木造建物の法定耐用年数は、22年です。
耐用年数内の中古建物の耐用年数は、法定耐用年数 − 経過年数+ 経過年数 × 20%で求めます。
築年数10年5カ月は、月数に直すと125カ月、法定耐用年数22年は月数に直すと264カ月です。
264カ月 − 125カ月 + 125カ月 × 20%
= 264カ月 − 125カ月 + 25カ月
= 164カ月
= 13年8カ月
1年未満の端数である8カ月は切り捨てるため、耐用年数は13年となり、対応する定額法の償却率は0.077です。
そのため、1年分の減価償却費は次のように計算します。
2,000万円 × 0.077 = 154万円
この例では、1年分の減価償却費として154万円を計上します。
3-3.法定耐用年数超の中古建物の場合
以下の物件を例に見てみましょう。
・建物部分の取得価額:2,000万円
・建物の構造:木造
・用途:住宅用
・築年数:30年
住宅用木造建物の耐用年数は、22年です。
法定耐用年数をすべて経過している中古物件の耐用年数は、「法定耐用年数 × 20%」で求めます。
耐用年数 = 22年 × 20% = 4.4年
1年未満の端数は切り捨てるため、この場合の耐用年数は4年で、対応する定額法の償却率は0.250です。
そのため、1年分の減価償却費は次のように計算します。
2,000万円 × 0.250 = 500万円
この例では、1年分の減価償却費として500万円を計上します。
4.減価償却費の仕訳のやり方
減価償却費を計算したら、決算時に仕訳を行います。
減価償却費の仕訳方法には、直接法と間接法があります。
直接法は、減価償却費の分だけ建物の帳簿価額を直接減らす方法です。
間接法は、建物の取得価額はそのまま残し、「減価償却累計額」という勘定科目を使って減価償却費の累計額を管理する方法です。
ここでは、1年分の減価償却費が200万円だった場合を例に、それぞれの仕訳を見ていきましょう。
4-1.直接法の仕訳例
直接法では、減価償却費を計上するときに、建物の金額を直接減らします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 減価償却費 | 2,000,000円 | 建物 | 2,000,000円 |
直接法では、仕訳後の帳簿上の建物価額が、減価償却費の分だけ減少します。
4-2.間接法の仕訳例
間接法では、建物の金額を直接減らさず、「減価償却累計額」を使って処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 減価償却費 | 2,000,000円 | 減価償却累計額 | 2,000,000円 |
間接法では、建物の取得価額は帳簿上に残ります。
その代わり、これまでに計上した減価償却費の累計額を「減価償却累計額」として管理します。
5.よくある質問
ここでは、賃貸用不動産の減価償却で迷いやすい点を解説します。
自宅を賃貸に出した場合や、年の途中で賃貸を始めた場合など、実務で判断に迷いやすいケースを確認しておきましょう。
5-1.旧定額法とは何ですか?
「旧定額法」とは、平成19年3月31日以前に取得した建物などに使われる減価償却方法です。
<計算式>
償却限度額=建物部分の取得価額×0.9×旧定額法の償却率
旧定額法では、建物部分の取得価額に0.9をかけた金額をもとに、旧定額法の償却率を使って償却限度額を計算します。
5-2.自宅を賃貸に出した場合はどうなりますか?
自宅を賃貸に出した場合は、賃貸開始後の期間に対応する減価償却費を、必要経費に算入できます。
ただし、自宅として使っていた期間(非業務用期間)に対応する価値の減少分(減価の額)は、賃貸開始後の減価償却費として必要経費にすることはできません。
そのため、まず非業務用期間の減価の額を計算し、賃貸転用日時点の未償却残高を求めます。
そのうえで、賃貸開始後に必要経費にできる減価償却費と、翌年以降に引き継ぐ未償却残高を計算します。
計算の流れを、新築で取得した建物と中古で取得した建物に分けて確認しましょう。
5-2-1.新築で取得した建物を賃貸用に転用する場合
それでは、新築で取得した建物を自宅として使っていたあと、賃貸用に転用する場合を見てみましょう。
以下の物件を例に確認します。
・建物の取得価額:1,000万円
・建物の構造:木造
・用途:住宅用
・新築日:平成22年6月10日
・賃貸転用日:令和5年4月1日
まずは非業務用期間の減価の額を計算します。
非業務用期間の減価の額は、法定耐用年数の1.5倍に相当する年数の旧定額法の償却率を使って計算します。
法定耐用年数22年 × 1.5 = 33年 ⇒ 旧定額法の償却率:0.031
非業務用として使っていた期間を確認します。
平成22年6月10日から令和5年3月31日まで ⇒ 12年9カ月と22日
非業務用期間に1年未満の端数がある場合、6カ月以上は1年とし、6カ月未満は切り捨てます。
この例では9カ月と22日なので、13年として計算します。
非業務用期間に対応する減価の額を、旧定額法で計算します。
10,000,000円 × 0.9 × 0.031 × 13年 = 3,627,000円
次に、賃貸転用日時点の未償却残高を計算します。
取得価額から先ほど計算した非業務用期間に対応する減価の額を差し引くと、賃貸転用日時点の未償却残高を求められます。
10,000,000円 - 3,627,000円 = 6,373,000円
したがって、賃貸転用日時点の未償却残高は6,373,000円です。
転用日時点の未償却残高を確認したら、次に令和5年分の減価償却費を計算します。
この建物は平成19年4月1日以後に取得しているため、転用後の減価償却費は定額法で計算します。
木造住宅用建物の法定耐用年数22年に対応する定額法の償却率は0.046です。
令和5年分の減価償却費は、4月1日から12月31日までの9カ月分を月割りして計算します。
10,000,000円 × 0.046 × 9/12 = 345,000円
したがって、令和5年分の減価償却費は345,000円です。
最後に、令和5年12月31日時点の未償却残高を計算します。
賃貸転用日時点の未償却残高から、令和5年分の減価償却費を差し引くことで、求められます。
6,373,000円 - 345,000円 = 6,028,000円
令和5年12月31日時点の未償却残高は、6,028,000円です。
この例では、令和5年分の必要経費に算入できる減価償却費は345,000円、翌年以降に引き継ぐ未償却残高は6,028,000円となります。
参考:国税庁 No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
5-2-2.中古で取得した建物を賃貸用に転用する場合
次に、中古で取得した建物を自宅として使っていたあと、賃貸用に転用する場合を確認しましょう。
以下の物件を例に確認します。
・建物の取得価額:1,000万円
・建物の構造:木造
・用途:住宅用
・新築日:平成21年6月10日
・中古で取得した日:平成28年1月10日
・賃貸転用日:令和5年4月1日
まずは、非業務用期間に対応する減価の額を計算します。
非業務用期間の減価の額は、法定耐用年数の1.5倍に相当する年数の旧定額法の償却率を使って計算します。
法定耐用年数22年 × 1.5 = 33年 ⇒ 旧定額法の償却率:0.031
非業務用として使っていた期間を確認します。
平成28年1月10日から令和5年3月31日まで ⇒ 7年2カ月と22日
非業務用期間に1年未満の端数がある場合、6か月以上は1年とし、6か月未満は切り捨てます。
この例では端数は2カ月と22日なので、7年として計算します。
非業務用期間に対応する減価の額は、次のとおりです。
10,000,000円 × 0.9 × 0.031 × 7年 = 1,953,000円
次に、賃貸転用日時点の未償却残高を計算します。
取得価額から、非業務用期間に対応する減価の額を差し引きます。
10,000,000円 - 1,953,000円 = 8,047,000円
したがって、賃貸転用日時点の未償却残高は8,047,000円です。
次に、転用後の耐用年数を求めます。
中古資産を賃貸用に転用する場合、今後の使用可能期間を合理的に見積もることができれば、その見積年数を使います。
見積もることが難しい場合は、簡便法で耐用年数を計算します。
耐用年数を簡便法で求める場合、経過年数は、建物が新築されてから中古で取得するまでの期間で計算します。
中古で取得してから賃貸用に転用するまでの期間は、経過年数には含めません。
平成21年6月10日から平成28年1月9日まで ⇒ 6年7カ月 = 79カ月
法定耐用年数22年は264か月なので、簡便法による耐用年数は次のとおりです。
(264カ月 - 79カ月)+ 79カ月 × 20% = 200.8カ月
200.8カ月= 16.7年
1年未満の端数を最後に切り捨て、転用後の耐用年数は16年です。
次に、令和5年分の減価償却費を計算します。
中古で取得した建物の場合、転用後の減価償却費は、転用後の耐用年数をもとに計算します。
この建物は平成19年4月1日以後に取得しているため、定額法を使います。
転用後の耐用年数16年に対応する定額法の償却率は0.063です。
令和5年分の減価償却費は、4月1日から12月31日までの9か月分を月割りして計算します。
10,000,000円 × 0.063 × 9/12 = 472,500円
したがって、令和5年分の減価償却費は472,500円です。
最後に、令和5年12月31日時点の未償却残高を確認します。
賃貸転用日時点の未償却残高から、令和5年分の減価償却費を差し引きます。
8,047,000円 - 472,500円 = 7,574,500円
この例では、令和5年分の必要経費に算入できる減価償却費は472,500円、翌年以降に引き継ぐ未償却残高は7,574,500円となります。
参考:国税庁 No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
5-3.賃貸用物件を自宅にした場合はどうなりますか?
賃貸用物件を自宅として使うようになった場合、自宅として使い始めた後の減価償却費は、不動産所得の必要経費にできません。
年の途中で賃貸用から自宅用に変えた場合は、賃貸に使っていた月数に応じて減価償却費を計算します。
前年まで減価償却資産の明細に記載していた物件については、備考欄などに「自宅転用」と記載しておくと、賃貸をやめたことが分かりやすくなります。
5-4.減価償却が終わったらどうなりますか?
減価償却が終わると、その建物について新たに減価償却費を計上することはできません。
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産は、原則として備忘価額の1円を残して償却します。
平成19年3月31日以前に取得した建物など、旧定額法で計算する資産は、取得価額の95%相当額まで償却した後、残りの金額を5年間で均等に償却し、最後に備忘価額として1円を残します。
5-5.リフォーム費用はすべて減価償却できますか?
リフォーム費用は、内容によって処理が異なります。
建物の使用可能期間を延ばしたり、価値を高めたりする支出は「資本的支出」となり、減価償却によって数年に分けて必要経費にします。
一方、通常の維持管理や原状回復のための支出は「修繕費」として処理します。
修繕費に該当する場合は、減価償却を行わず、支払った年に一括で経費にできます。
5-6.年の途中で賃貸を始めた場合はどうなりますか?
年の途中で賃貸を始めた場合は、1年分の減価償却費をそのまま計上するのではなく、業務または事業の用に供した月数に応じて月割りで計算します。
計算式は、次のとおりです。
<計算式>
その年の減価償却費 = 1年分の減価償却費 ÷ 12 ×業務または事業の用に供した月数
たとえば、1年分の減価償却費が144万円で、7月から賃貸を始めた場合、7月から12月までの6カ月分を計上します。
144万円 ÷ 12 × 6カ月 = 72万円
この場合、その年の減価償却費は72万円になります。
6.まとめ 賃貸用不動産の減価償却は取得価額・耐用年数・償却率を確認して進めよう
賃貸用不動産の減価償却費は、建物部分の取得価額、耐用年数、償却率を確認して計算します。
土地は減価償却の対象にならないため、購入代金のうち建物部分の取得価額を確認して計算することが大切です。
また、新築と中古では耐用年数の考え方が異なり、建物の取得時期などによって償却方法も変わります。
まずは契約書や耐用年数表、償却率表を手元に用意し、必要な項目を一つずつ押さえながら計算を進めましょう。
