信用保証協会の代位弁済で会社危機?安心の対応法も解説

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監修者 篠田 佳希

「資金繰りが厳しく、返済ができない……」

中小企業の経営では、誰にでも起こり得る悩みです。
この状況が続くと、信用保証協会付き融資では「代位弁済」が行われることがあります。

一度代位弁済になると、新たな融資が受けづらくなるなど、経営に大きな影響が生じます。
こうした事態を防ぐには、代位弁済について正しく理解することが大切です。  

本記事では、信用保証協会付き融資における代位弁済の仕組みをわかりやすく解説します。  
代位弁済になる条件、リスク、避けるための対策、万が一代位弁済になった場合の対応まで、順に見ていきましょう。
「代位弁済になったらどうなるの?」と不安を感じている方の不安が少しでも軽くなるよう、ポイントを整理してお伝えします。


1.信用保証協会付き融資の延滞が続くと「代位弁済」になります

代位弁済とは、信用保証協会付き融資で返済が困難になった場合に、信用保証協会が金融機関への返済を肩代わりする制度のことです。

ただし、借入金がなくなるわけではなく、返済先が信用保証協会に変わるだけである点に注意が必要です。

代位弁済には、経営に大きな影響を及ぼすリスクがいくつかあります。代表的なものは次のとおりです。

・今後の融資審査が厳しくなる可能性がある

・連帯保証人に返済請求が及ぶことがある

こうした事態を避けるためには、代位弁済の仕組みを正しく理解し、返済が厳しくなりそうな段階で早めに金融機関や信用保証協会へ相談することが重要です。


2.知っておきたい代位弁済の流れ

返済が遅れたからといって、すぐに代位弁済になるわけではありません。

一般的には、3ヶ月(90日)以上の延滞、または3回以上の返済遅延が続いた場合に、金融機関は代位弁済の手続きを検討します。

一刻も早い連絡を!

借入の延滞が続くと、気まずさから金融機関からの連絡をつい無視してしまう方もいるかもしれません。しかし、代位弁済前であれば取れる対応策も、手続きが行われてしまうと取れなくなってしまいます。
この後代位弁済の流れを説明しますが、その前には必ず金融機関から連絡があります。
連絡を無視していると、その間にも手続きは淡々と進んでしまいます。

繰り返しになりますが、連絡を無視せず、できるだけ早く相談することが非常に重要です。

2-1.金融機関から信用保証協会へ代位弁済の請求が行われる

金融機関が代位弁済の方針を決めると、信用保証協会へ請求が行われます。
信用保証協会が請求内容を確認・同意することで、代位弁済が確定します。

2-2.信用保証協会が金融機関に請求額を支払う

信用保証協会は借主に代わって、金融機関に借入金の一括返済を行います。
これにより借金が「なくなる」わけではなく、今後は信用保証協会宛に返済が必要となる点に注意が必要です。
代位弁済が行われると、その通知が金融機関から借主宛に届きます。

返済・相談の相手が信用保証協会に変わります

この通知が行われた時点で、借入の相手は金融機関から信用保証協会へと移ります。
以後の返済や相談は、すべて信用保証協会と行うことに注意が必要です。

2-3.信用保証協会から一括弁済の請求を受け取る

信用保証協会から、借主に対して「借入金を一括で支払ってください」という請求が届きます。
ほとんどの借主は一括で支払えないため、信用保証協会と協議し、分割返済などの弁済計画を立てることになります。

2-4.信用保証協会と協議して弁済計画を提出する

弁済計画は、信用保証協会が納得できる内容で提出する必要があります。
現状を正直に伝え、現実的に支払える返済計画を提案することが重要です。

2-5.弁済計画に基づいて弁済を開始する

合意した弁済計画に沿って返済を開始します。
この期間中は、通常の利息ではなく、遅延損害金が発生します。


3.代位弁済が行われた場合のリスク

代位弁済が実行されると、企業や連帯保証人には大きな負担が生じます。
主なリスクを確認しておきましょう。

3-1.信用情報に傷がつく 

代位弁済が行われると、信用情報機関に「延滞」や「代位弁済」の記録が登録されます
この記録は、借入を完済してからおよそ5年間残ると言われています。

登録対象は会社だけでなく、代表者や連帯保証人も含まれます
そのため、事業者本人だけでなく、家族にも影響が及ぶ可能性があります

3-2.新たな借入が難しくなる

信用情報に代位弁済の記録が残っている期間は、金融機関の融資審査が極めて厳しくなるのが一般的です。新たな資金調達はほぼ不可能と考えてよいでしょう。

また、連帯保証人自身がクレジットカードや住宅ローンを申し込んだ場合でも、審査に通りにくくなる可能性があります。

3-3.利息の代わりに高額の遅延損害金を支払う

返済が遅れると、通常の利息に代わって「遅延損害金」が発生します。
利率は年14%と高額に設定されることが多いため、通常の借入と比べて返済総額の負担も大きくなりがちです。

3-4.連帯保証人にも請求がおよぶ

借入時に連帯保証人を立てていた場合、代位弁済後にはその連帯保証人にも返済請求が届きます
代表取締役以外の第三者でも例外ではなく、連帯保証人が借入全額を請求されるケースも珍しくありません。
さらに、返済が滞ったり請求を無視したりすると、連帯保証人の預金や不動産などの財産が差し押さえられる可能性もあります。

 代位弁済は連帯保証人にとっても大きなリスクとなることを理解しておくことが重要です。

3-5.抵当権が実行される場合がある

担保として設定していた自宅や会社の土地・建物は、返済が滞ると差し押さえ・売却の対象となることがあります。

特に事業用資産を失えば、経営の継続が困難になりかねません。
抵当権の実行は、代位弁済後に起こり得るリスクの中でも最も深刻なもののひとつです。


4.代位弁済を回避するためにできること

代位弁済は一度実行されると、信用情報への登録や新たな融資の制限など、経営に大きな影響を及ぼします。
そのため、できる限り代位弁済に至らないように対策を講じることが重要です。

ここでは、主な回避策を3つ紹介します。

4-1.延滞を防ぐために資金繰りを見直す 

最も基本であり、かつ重要なのは返済を延滞しないことです。
日々の入出金を管理し、資金繰り表を作成して資金ショートを防ぎましょう。
資金が不足しそうな場合は、仕入れ先や取引先への支払いスケジュールを調整し、金融機関への返済を最優先にする姿勢を見せることが大切です。

4-2.金融機関に借り換えを相談する

借り換えとは、既存の融資を新しい条件の融資に切り替えることを指します。
借り換えによって金利が下がるなど、返済負担が軽くなるケースもあります。

また、不況時や情勢悪化の際には、中小企業を支援するための制度融資が新設されることも見られます。
こうした制度を利用して借り換えを行うことで、あわせて少額の追加運転資金を受けられる場合もあるため、まずは金融機関に相談してみるとよいでしょう。

4-3.金融機関に返済条件の変更の相談をする

どうしても返済が難しい場合には、リスケジュール(返済条件の変更)を金融機関に相談してみましょう。
リスケジュールとは、一時的に元金返済を据え置くなどして、毎月の返済額を減らし、資金繰りを改善する方法です。
金融機関は、返済意思を持つ誠実な借主に対しては柔軟に対応してくれることも多くあります。

返済ができなくなってから」ではなく、「返済が難しくなりそうな段階で」相談することが何より重要です。


5.代位弁済になってしまった場合に留意しておくべきこと

代位弁済はできる限り避けたいものですが、やむを得ず実行されてしまった場合でも、冷静に対応することが大切です。

ここでは、代位弁済後に注意しておくべきポイントを紹介します。

5-1.弁済計画は具体的かつ実現可能なものを立てる

信用保証協会へ提出する弁済計画は、現実的で、かつ信用保証協会が納得できる内容であることが求められます。
無理な高額返済は再び延滞を招くおそれがありますし、逆に自己都合で返済額を大幅に下げようとすれば、信用保証協会の理解を得ることは困難です。

もし売却できる資産があれば、その売却資金を内入金として充当し、可能な範囲で債務を圧縮することが望ましいでしょう。
また、人員削減などによって経費を抑えるなど、無理のない範囲で実現可能な再建計画を立てることが重要です。

5-2.遅延損害金を減額してもらえることもある

信用保証協会が遅延損害金を一部減額してくれる場合もあります
弁済計画に沿って誠実に返済を続けていけば、信用保証協会が減額の相談に応じ、通常の借入と同程度まで利率を引き下げてくれるケースも見られます。
重要なのは、最後まで誠意を持って返済を継続していく姿勢を示すことです。

5-3.時効の援用は現実的ではない

代位弁済後の債務にも時効は存在しますが、実際には時効の成立を待つのは現実的ではありません。
信用保証協会は、時効が成立しないように債権管理を厳密に行なっています。
返済を放置して延滞が続くと、信用回復の機会を失うおそれもあります。誠実に対応することが重要です。

5-4.「求償権の消滅保証制度」で、再チャレンジできることもある

信用保証協会には、「求償権の消滅保証制度」という再生支援のための制度があります。  
この制度は、

・一定期間誠実に返済を続けている

・経営改善の見込みがある

・外部組織からなる経営サポート会議などで事業再生計画が承認されている

といった条件を満たしている場合に利用可能です。  
この制度を利用すれば、代位弁済によって発生した債務を借り換えることが可能です。
借り換え後は、通常の信用保証協会付き融資へと戻るため、金融取引の正常化につながります
再起を目指す中小企業を支援する制度として、事業再建の大きなチャンスとなるでしょう。


6.まとめ 金融機関や信用保証協会にまずは相談をしよう

代位弁済はできる限り避けたいものですが、資金繰りが不安になった時点で、早めに金融機関や信用保証協会へ事情を伝えることで、回避できるケースも少なくありません。

また、たとえ代位弁済となってしまった場合でも、誠実に対応を続けることで、返済条件の見直しや支援制度の活用など、再生への道が開ける可能性があります。  

代位弁済は、企業の終わりを意味するわけではありません。  

まずは金融機関や信用保証協会などに相談し、今できる最善の一歩を踏み出しましょう。