
自己資本比率とは、会社が保有する資産のうち「自社のもの」がどれくらいあるかを表す指標です。自己資本比率が高い会社は、借入金にあまり頼らずに経営しているため、一般的に経営が安定していると評価されます。例えば、金融機関や取引先が会社の安全性を判断する際によく使われる重要な財務指標です。
しかし、「自己資本とは何か」「何%あれば良いのか」「どのように計算するのか」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、自己資本比率の意味や計算方法、目安となる水準、改善方法まで、経理担当者向けに分かりやすく解説します。
目次
1.自己資本比率とは財務の安定性を表す指標
自己資本比率を一言でいうなら、総資本のなかで自己資本の占める割合です。それによって財務の安定性を見極めることができる指標です。
1-1.自己資本比率から分かる事
自己資本比率によって、どの程度の自己資本で事業を運営しているのかが分かります。言い換えると、借入などに頼らず(自己資本で)事業を運営しているかどうかを示します。
【自己資本比率の要素】

自己資本が多いほど自己資本比率は高くなるため、原則として自己資本比率が高いほど財務の安定性が高いと言われます。
対外的に自己資本比率が重要となるのは、融資を受けるときです。金融機関によって審査基準は異なるものの、「自己資本比率30%以上」のような条件が設けられていることもあります。
1-2.他人資本と自己資本の違い
上図の通り、総資本は他人資本と自己資本の合計です。他人資本と自己資本の違いは次の通りです。
- 他人資本とは
金融機関からの借入金、買掛金、支払手形などが該当
返済や支払いの必要がある資金のこと - 自己資本とは
自前で調達した資本
株主からの出資、利益を積み重ねた内部留保金(資本金、資本剰余金、利益剰余金など)
返済の必要がない資金のこと
他人資本は返済や支払いの必要があるため、売上減少やコスト増といった事態に、資金繰りが悪化する懸念があります。そのため返済義務のない自己資本が多い(自己資本比率が高い)ほうが財務が安定していると判断されるのです。
2.自己資本比率の目安
自己資本比率によって財務の安全性を測ることができるため、一般的な目安を確認しましょう。
2-1.自己資本比率の一般的な目安
業種によって目安は異なりますが、一般的に自己資本比率が20%を下回ると、借入金への依存度が高く、財務基盤が弱いと判断されます。
| 自己資本比率 | 一般的な評価 |
|---|---|
| 50%以上 | 良好な財務状態 |
| 50%未満~40% | 安定的な財務状態 |
| 40%未満~20% | 一般的な財務状態 |
| 20%未満 | リスクのある財務状態 |
2-2.産業ごとの自己資本比率の違い
自己資本比率の数値を、令和7年度「中小企業実態基本調査」からご紹介します。「全産業の加重平均値」と「産業ごとの平均値」は次の通りです。
【自己資本比率 全産業加重平均値】
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 41.71% | 44.4% | 44.93% |
ただし、産業ごとの差も大きいです。「全産業の加重平均値」は次の通りです。

業種によって事業の特性や資本構成が異なるため、自己資本比率の平均値にも差があります。一般的には、自己資本比率が50%以上であれば財務状態は良好とされますが、「学術研究、専門・技術サービス業」や「情報通信業」のように、業種平均が50%超と高い業種もあります。
そのため、自己資本比率を評価する際は、一般的な目安だけでなく、同業他社や業種平均と比較することも重要です。例えば、「学術研究、専門・技術サービス業」の企業が融資を受ける場合、自己資本比率が40%であっても、業種平均(66.86%)と比べると相対的に低いと判断される可能性があります。
出典 令和7年度「中小企業実態基本調査」
3.自己資本比率の計算方法と計算例
自己資本比率の計算式は決して難しくありません。
自己資本比率(%)=自己資本 ÷ 総資本(総資産) × 100
次のケースで自己資本比率を算出してみます。

【ケース①】
500÷1000×100=50
自己資本比率50%
【ケース②】
200÷1000×100=20
自己資本比率20%
どちらも総資本は同額です。しかし計算例の通り、自己資本が多い【ケース①】の自己資本比率の方が高い数値となりました。
4.自己資本比率は高ければよいわけではない
自己資本比率は高いほど財務の安全性が高いとされますが、高ければ高いほど良いとは限りません。借入を十分に活用できていない場合や、利益を効率的に生み出せていない可能性もあるためです。ここでは、その理由と、あわせて確認したい「ROE(自己資本利益率)」について解説します。
4-1.借入を活用できていない可能性がある
設備投資や事業拡大のための借入を避けすぎると、成長の機会を逃すことがあります。借入を過度に避けている場合は、設備投資や事業拡大の機会を逃し、成長性の面で課題があると見られかねません。
ただし、業種によって適正な水準が異なる点にも注意が必要です。例えば、設備投資が少ない業種は前提となる借入の必要性が低いでしょう。
自社にとっての目標値を意識することが大切です。
4-2.内部留保をため込みすぎている可能性がある
利益を内部留保として蓄積するだけでは、事業への投資や株主還元が十分に行われていない可能性があります。資本を活用できていない状態は「資本効率が悪い」と評価されかねません。
資本効率を判断する指標がROE(自己資本利益率)です。
ROE(自己資本利益率)とは
自己資本比率と対になる指標がROEで、計算式は次の通りです。
ROE(自己資本利益率)(%)=当期純利益÷自己資本×100
自己資本に対してどれだけ利益を生み出したかを示す指標で、高いほうが資本効率が良いと判断されます。このような特徴から、ROEは自己資本比率とあわせて確認したい指標です。
- 自己資本比率
会社の安全性を判断する指標 - ROE(自己資本利益率)
自己資本をどれだけ効率よく利益につなげているかを判断する指標
例えば、自己資本比率が60%と高くても利益がほとんど出ていなければ、ROEは低くなります。反対に、ROEが高くても自己資本比率が10%程度しかなければ、借入金への依存度が高く、財務リスクが大きい可能性があります。
このように、自己資本比率だけで会社の財務状況を判断することはできません。安全性を示す自己資本比率と、収益性・資本効率を示すROEをあわせて確認することで、会社の財務状況をより正確に把握できます。
また、短期的な支払い能力を確認する「流動比率」や、本業の収益力を表す「営業利益率」なども重要な財務指標です。これらを総合的に確認することで、自社の経営状況を多角的に分析できるでしょう。
5.自己資本比率を改善する方法
自己資本比率が低かった場合、次のような改善方法があります。
5-1.利益剰余金を増やす
もっともシンプルなのは、利益を増やすことでしょう。利益剰余金とは、会社が事業で得た利益のうち、配当などを行わず社内に蓄積した資金のことです。
利益剰余金は自己資本に含まれるため、利益を継続的に積み上げることで自己資本が増え、自己資本比率の向上につながります。自己資本比率を改善するには、本業の収益力を高めて安定した利益を確保すことを目指します。
また、利益を内部留保することを目的とするのではなく、将来の設備投資や事業拡大などその先も見据えた動きが重要です。
5-2.増資を行う
増資とは、株主や投資家から新たな出資を受けて資本金などを増やすことです。出資によって調達した資金は返済義務がないため、自己資本として計上されます。つまり、自己資本が増加し、自己資本比率の改善につながります。
ただし、既存株主の持株比率が変動することがあります。株主構成や持株比率をシミュレーションし、タイミングや増資額を慎重に検討することが大切です。
5-3.不要資産を売却して資産効率を向上させる
不要資産があれば売却を検討します。使用していない土地や設備を保有し続けると、固定資産税や維持管理費などの余分なコストが発生します。不要資産を売却すれば、こうした維持コストを将来にわたって削減できます。また、売却によって利益が得られれば自己資本の増加につながります。
なお、売却と同時に次のような戦略も取れます。
- 売却で得た資金を借入金の返済に充てる
- 収益性の高い設備への投資に活用する
自己資本比率の改善をきっかけに資産の適切な見直し、活用につなげていきましょう。
5-4.有利子負債を返済する
有利子負債とは、銀行借入金や社債など、利息の支払いが必要な負債のことです。借入金を返済しても自己資本は変わりませんが、負債と総資産がともに減少するので相対的に自己資本が増えるため、結果として自己資本比率が改善します。
ただし、返済に伴い手元資金を減らしすぎると資金繰りが悪化するおそれがあります。返済時は、キャッシュフローにも留意し、無理のない範囲で行いましょう。
6.まとめ
自己資本比率は財務状況を判断する重要な財務指標です。原則として自己資本比率が高いほど、財務安定性が高いとされます。しかし高ければそれで良いとは限らないため、他の指標も合わせてみていくことが重要です。また、自己資本比率の改善を目指す場合も、それ以外の要素も考慮しながら改善していくことが求められます。
状況に応じて専門家の意見も踏まえながら適切に自己資本比率を活用していきましょう。
