
資金調達コストとは、企業が事業運営や設備投資、事業拡大などに必要な資金を外部調達する際に発生する費用のことです。代表例として、借入金の利息や株主への配当、株式・社債の発行費用、各種手数料などがあります。
資金調達コストは企業の収益性や資金繰りに影響するため、調達方法ごとの特徴やコストを理解することが重要です。本記事では、資金調達コストの概要や代表的な計算方法、コストを抑えるポイントをわかりやすく解説します。
目次
1.資金調達コストとは
資金調達コストを一言でいうと、資金調達において発生する費用です。資金調達コストは、実際に事業へ活用できる資金を減少させるため、資金調達実施前に費用を見積もっておく必要があります。
資金調達方法は大きく2種類あり、それぞれ費用の内容や金額が異なります。そのため、資金調達方法を選択する際は資金調達コストについて考慮する必要があります。本記事では、代表的な2つの資金調達方法について、内容やコストをご紹介します。
【代表的な資金調達コスト】
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 負債コスト | 金融機関からの借入や社債の発行などで発生する利息・手数料等 |
| 株主資本コスト | 株主が期待する収益率(自己資本コスト) |
なお、資金調達においては上記以外にも、臨時的なコストが発生する場合があります。例えば、次のようなコストです。
- 資金調達の専門家への相談料
- 融資のための事業計画書を作成依頼した場合の報酬
さまざまなコストを考慮することが、適切な資金調達につながるでしょう。
2.資金調達コストの種類2つ
2つの資金調達コストについて、特徴を見ていきましょう。
2-1.負債コスト
負債コストとは、金融機関からの借入や社債の発行などで発生する利息・手数料等のことです。借入も社債も負債(他人資本)であるため、負債コストと呼ばれます。
負債コストは金利に注意
金融機関からの借入であれば、審査によって金利が決定されます。借入金額や返済期間のほか、会社の信用力に応じて判断されます。社債の支払利息は自社で設定できますが、投資家にとって魅力的な金利を設定しなければなりません。想定以上の金利になると、返済や利息の支払いが厳しくなる可能性があります。
利息費用は損金算入可能
借入金の利息は損金算入が可能ですので、上手く活用すれば節税につなげられるかもしれません。ただし、「もともと利益が出ていない」「繰越欠損金があるので利益を相殺している」といった企業では、メリットとはならないでしょう。
2-2.株主資本コスト
株主資本コストとは、増資などにより株主から調達した自己資本に対して、株主が期待する収益率のことです。企業にとっては、自己資本を利用するためのコストと考えられます。株主が期待するリターンには、配当や株価の上昇による利益(キャピタルゲイン)などが含まれます。
株主資本コストは、企業の業績や財務状況、経済・市場環境などさまざまな要因によって変動します。そのため、負債コストのように金利で明確に把握できるものではなく、総合的な視点で推計していくコストと言えるでしょう。
配当を実施しないケースもある
例えば経営者が株式を100%保有している会社では、配当を実施しない選択をすることも可能です。この場合、配当金の支払いは発生しません。コストは抑えられますが、経営戦略的には利益を社内に留保した資金をどのように活用するかが重要でしょう。
【内部留保と機会費用】
利益を配当せずに内部留保とした場合、その資金を別の用途に活用できた可能性を考慮し、内部留保を「機会費用(逸失利益)」という一種のコストとして捉える考え方があります。
また、一定の要件を満たす特定同族会社では、利益を過度に留保した場合に留保金課税の対象となることがあります。
3.資金調達方法ごとの特徴
これまでコストの種類に着目していましたが、本章では資金調達方法ごとにコストの目安と特徴を確認します。
3-1.公的機関の融資
公的融資とは、国や地方自治体が提供する融資によって資金を得る方法です。日本政策金融公庫の融資、金融機関・地方自治体・信用保証協会が連携して行う制度融資などが該当します。
【コスト:金利】
金利は、通常は3-5%台と低いため、負債コストは低く抑えられます。
資金調達として、最初に検討されることが多い選択肢でしょう。また、長期借入がしやすい傾向もあります。
中小企業や創業者の支援、地域経済の活性化といった性質・理念が掲げられているケースも少なくありません。そのため理念に合致すれば、信頼が乏しい、創業から日が浅いといった企業でも融資を受けやすいです。
3-2.民間金融機関の融資
都市銀行や地方銀行といった民間金融機関からの融資によって資金を得る方法です。
【コスト:金利】
金利は、一般的に数%程ですが、金利水準は公的機関融資よりも高いです。
「大手の金融機関からの融資実績が欲しい」「地域密着型経営をしているので地元の信用金庫との付き合いを密にしたい」といった企業で検討の余地があるでしょう。
企業の信用力や資本・財務状況などによっても金利が変化します。審査は厳格に行われる傾向があり、審査の結果融資が通らない、もしくは金利が高めに設定される等の可能性があります。
3-3.消費者金融のビジネスローン
預金業務のない、いわゆるノンバンク系のビジネスローンを利用して資金を得る方法です。
【コスト:金利】
金利は一概には言えませんが、概ね5%~18%程度です。
銀行融資と比較すると審査基準が柔軟なので、急な資金需要に対応しやすいです。コストは高めですが、一時的な資金調達として利用しやすいかもしれません。
借入限度額は上限が500万円程度と小規模なものから、上限1億のような大口融資もあります。
ただし、借入金は貸借対照表に計上されるため、借入残高や財務状況によっては、将来金融機関から融資を受ける際の審査に影響を与える可能性があります。
3-4.ファクタリング
ファクタリングとは、自社が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して売却することで資金を得る方法です。法的には債権の売買であり、債権譲渡契約に該当します。
【コスト:手数料】
サービスの提供事業者によって差がありますが、概ね債権額の2%~15%程度です。
傾向として、消費者金融よりさらに審査・入金までのスピードが速いです。申し込みから振込までが最短当日中の事業者も少なくありません。また、将来受け取れるはずの債権を売却することで、今後の資金繰りが悪化する可能性がある点に注意が必要です。
3-5.増資
増資とは、主に新しい株式を発行することで資本を得る方法です。具体的には、投資家やベンチャーキャピタルに新株を売り、資金を調達することです。返済義務がなく、返済に伴う金利も発生しないのが大きなメリットです。
【コスト:株主資本コスト】
配当や株価上昇期待を含めた株主の期待収益率です。会社の状態によって幅があるでしょう。
配当を実施する場合は、株式数の増加に伴って配当総額が増える可能性があります。さらに、新株の発行により既存株主の持株比率が低下し、経営権や株主構成に影響を及ぼす可能性があります。
4.資金調達コストの計算方法|WACCとは
WACC(Weighted Average Cost of Capital)を用いることで、企業全体の資金調達コストを割合(資本コスト率)として把握できます。
ここまで資金調達コストの種類や方法ごとの特徴を見てきましたが、複数の資金調達方法を組み合わせることも多いです。借入にかかる金利などの負債コストと、株主が期待する収益率である株主資本コストを加味して計算するのがWACCです。
計算は顧問税理士等に任せることが一般的で、計算する機会は少ないかもしれません。ですが、経営者や経理担当者も「どんな要素(数値)で計算するのか」「計算式の意味は」といった基本は押さえておきましょう。
4-1.WACCとはお金を集めるためのコストを表す指標
借入による負債コストと株主資本コストを、資金調達額の割合に応じて加重平均したものがWACCです。
加重平均、つまりより多く資金を得ている方法のコストをより大きくカウントします。それによって、実態に沿った平均的な資金調達コスト率を算出できます。
具体的には「負債コスト」と「株主資本コスト」を別々に計算したあとで、資金調達方法の割合に応じて加重平均します。これによって、自社の資金調達コストを総合的に把握するのを助けます。
例えば新規事業のために資金調達をする際に、WACCを上回る収益率が見込めるかを検討することで、投資の採算性を判断できます。
4-2.WACCの計算方法
WACCの計算式と計算方法は次の通りです。
【WACC計算式】
WACC(%)=RE×(E /(E + D))+RD(1-T)×(D /(E + D))
加重平均資本コスト=(株主資本コスト×株主資本割合)+(負債コスト×負債割合)
- RE
株主資本コスト(株主が期待する収益率) - RD
負債コスト(借入にかかるコスト) - E
株主資本(株主から提供された資本) - D
負債(借入や社債などで調達した資金) - T
法人税実効税率(企業が支払う税金の割合)
また、それぞれのステップは次の通りです。
1.RE(株主資本コスト)を計算する
上の【WACC計算式】の「RE」の部分です。
REは次のような計算式で算出します。
RE(株主資本コスト)=RF+β(RM-RF)
- RF
リスクフリーレート
ほとんどリスクのない状態で株主が期待する収益率を示すもの
一般的には、10年国債の利率を利用する - β
ベータ値
株式市場全体の変動に対する自社の株価の変動の大きさを示す - RM
市場の期待収益率
株式市場全体に投資した場合に期待される収益率 - RM−RF
マーケットリスクプレミアム
リスク資産に投資することで期待される超過収益率
2.RD(負債コスト)を計算する
上の【WACC計算式】の「RD(1-T)」の部分です。

実効税率影響後の負債コストを算出します。
実効税率影響後の負債コスト=RD(1-T)
- RD
借入利率 - T
法人税実効税率
3. WACC(加重平均資本コスト)を計算する
上のWACCの計算式に「RE(株主資本コスト)」と「RD(1-T)(実効税率影響後の負債コスト)」と、自社の「E(株主資本)」と「D(負債)」を当てはめます。

「株主資本コスト×株主資本の割合」と「負債コスト×負債の割合」をそれぞれ計算して合計することで、加重平均します。
WACCについてより詳しくは「WACCとは?わかりやすく計算方法や使い方を解説」をご覧ください。
5.資金調達コストを抑えるためのポイント
資金調達コストは工夫によって抑えることができます。具体的な方法を3つご紹介します。
5-1.不動産を担保として活用する
融資の際に不動産を担保にすることで、金利を下げることが可能です。
ただし、実際に金利等の効果が得られるかは、不動産の担保価値によります。また、不動産を担保にする場合は不動産の鑑定費用、抵当権設定登記費用、司法書士報酬といったコストがかかる点にも注意が必要です。
5-2.低金利の融資を活用する
融資を受ける際に、まず低金利な公的機関の融資を検討します。金利が低めな点は「3-1.公的機関の融資」の通りですが、融資の受けやすさも大きな特徴です。
【代表的な公的機関融資】
- 日本政策金融公庫・制度融資
政府系金融機関
小規模事業者(個人事業主含む)や中小企業向けの融資があるので、企業規模が小さくても利用しやすい - 信用保証協会の保証付融資
企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度
保証があるため融資が受けやすい
5-3.事業計画・返済計画を立てて金利交渉を行う
事業計画や返済計画を示すことで、返済の確実性や堅実性を示せれば、金利を引き下げられる可能性があります。事業計画には事業の展望や成長の根拠を、返済計画には金利も含めた返済スケジュールを記載します。その際、返済原資として利益だけでなく、実際のキャッシュフロー(手元資金)の裏付けを示すことが重要です。
なお、作成時は伝わりやすさも意識します。信頼を得るための根拠は必要ですが、あまりに細かい記述はかえって理解を妨げます。
6.まとめ
主な資金調達コストには「負債コスト」「株主資本コスト」があり、どの方法でも、基本的に資金調達コストがかかります。
せっかく資金を調達しても、かかったコストの分だけ調達資金が目減りするため、コストが大きいと非効率的です。調達方法ごとの特徴を理解したうえで、適切な資金調達につなげましょう。
