組織再編の仕事とは?フェーズ別に見る実務と専門家の役割をわかりやすく解説

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監修者 山田翔吾

組織再編は、財務・税務・会計・人事・ITなど多くの分野が関わる大規模なプロジェクトです。現場で実際にどのような仕事が行われているのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、「組織再編の仕事には何があるのか」「フェーズ」・「職種」ごとにわかりやすく解説します。「組織再編に関わる仕事に挑戦してみたい」という方に向けて、今後のキャリア形成の参考になれば幸いです。

実際の組織再編では、選択する手法や企業の事情によって大きく変わりますので、ここでは一般的な内容を整理しています。


1.組織再編の仕事は、フェーズごとに専門家の役割が変わる

組織再編は、大きく 1「企画・検討」2「実行」3「統合・運用」 の3つのフェーズで進みます。

また、組織再編は、多様な専門家がそれぞれの得意分野から関わり、プロジェクト全体を支えています。どの段階で、どの専門家がどのように関与するかによって、再編の進め方や成果は大きく異なります。

下図は、組織再編の「3つのフェーズ」と、それぞれで活躍する「専門家」の仕事内容を示したものです。

組織再編における3つのフェーズと専門家の仕事内容


2.組織再編の「3つのフェーズ」における仕事内容

まず、本章では3つのフェーズでどのような仕事が行われ、どのような人が関わるのかを順に見ていきます。

2-1.企画・検討フェーズ

企画・検討フェーズでは「なぜ再編を行うのか」を明確にし、実現可能なスキームを描くことから始まります。ここでの意思決定がその後の成功・失敗を左右する、最重要フェーズです。

主な仕事内容の一例

仕事内容仕事内容の例
目的整理再編の目的を明確にする
スキーム検討再編手法を比較し、最適な形を検討する
バリュエーション(企業価値算定)対象事業の価値を数値で評価する
デューデリジェンス(DD)財務・法務・事業面のリスクを洗い出す
シナジー効果の試算統合後のコスト削減・収益効果を試算する
金融機関・株主との調整借入条件の見直し、株主・投資家への説明準備を行う

このフェーズでは、経営企画部や財務部を中心に、弁護士・税理士・FASなどの専門家が協働します。  経営判断の根拠を整え、再編の方向性を固める重要な段階です。

2-2.実行フェーズ

実行フェーズでは、企画段階で描いたスキームや計画を、具体的な手続きに落とし込みます。

契約書の作成、登記、会計・税務処理、人事制度やシステムの調整など、複数の業務が同時並行で進むフェーズです。

主な仕事内容の一例

仕事内容仕事内容の例
契約書作成・登記合併契約や会社分割契約を作成し、株主総会の承認・登記を行う
税務処理繰越欠損金の引継ぎ可否や適格要件の判定、申告準備を行う
会計処理のれん・合併差益の処理、連結財務諸表の調整を行う
金融機関対応借入契約の条件変更や担保付替えなど、資金面の調整を行う
人事制度・給与体系の統一評価制度や退職金制度を統合し、公平な仕組みに整える
ITシステムの統合準備会計・人事などのシステムを統合し、データ移行計画を立てる
開示・監査対応(上場企業)財務諸表や有価証券報告書への反映、監査法人との調整を行う

法務・経理・人事など社内部門が連携し、弁護士・税理士・会計士・ITベンダーなどの専門家と協力して進めます。  

このフェーズでは、「実務を確実に動かす力」と「関係者との調整力」求められます。  全体の進行を管理し、スムーズな移行を実現することがゴールです。

2-3.統合・運用フェーズ

統合・運用フェーズは、組織再編の手続き完了後に、実際に一つの組織として機能させていく段階です。

ガバナンスや財務報告体制、人事制度やITシステムなどを整備し、シナジー効果を具体的に実現していきます。

主な仕事内容の一例

仕事内容仕事内容の例
ガバナンス体制の構築取締役会・監査役体制の整備、内部統制ルールの策定
財務報告体制の統一月次決算の標準化、連結パッケージの整備
人事・評価制度の統一昇給・昇格ルールや評価指標の一本化
ITシステムの統合会計・人事・販売管理システムを統一し、運用を安定化
ブランド戦略・広報対応社名・ロゴ変更、社内外へのメッセージ発信
コスト・収益シナジー実現拠点統合によるコスト削減や販売網共有による売上拡大
PMI進捗管理KPIモニタリングや統合プロジェクトの進行管理

このフェーズでは、経営企画部や人事部を中心に、会計士・コンサルタント・FASなどが継続的に関与します。
再編後の新しい会社を定着させる段階であり、「組織をひとつにまとめ上げる総仕上げ」と言えます。


3.組織再編に関わる専門家の仕事内容

次に、組織再編を支える代表的な専門家の仕事内容」と特徴について解説します。

3-1.弁護士:法の力で企業の挑戦を支える

組織再編では、契約書の作成・登記・株主対応など、法的な正確さが重要となります。

弁護士は、法務リスクを未然に防ぎ、企業が安心して再編を進められるよう支える「安全装置」のような存在です。

《弁護士が関与する主な仕事内容》

フェーズ主な仕事内容
企画フェーズスキームが法律的に成立するかを確認
実行フェーズ合併契約・会社分割契約の作成
株主総会での決議サポート
登記手続きの準備
統合・運用フェーズ取引先契約や労働契約の見直し・更新

企業の再編を「法の安全網」で支え、経営の重大な意思決定に直接関わることができます。

経営陣や他の専門家と協働しながら企業の再スタートを後押しできるため、法律知識を実務で活かしたい人に最適な仕事です。

3-2.税理士:税務戦略で再編を支える

税理士は、組織再編に伴って生じる税務上の影響を整理し、最適な形で申告・処理ができるように支援する役割を担います。税制を踏まえてシミュレーションを行い、節税や再編後のグループ通算制度にも対応します。

《税理士が関与する主な仕事内容》

フェーズ主な仕事内容
企画フェーズ税務影響の試算
(繰越欠損金の利用、適格要件の確認など)
実行フェーズ税務申告の準備
法人税等・消費税・グループ通算制度
統合・運用フェーズ税務上の制度運用サポート

税制の専門知識を活かして、組織再編における最適な税務設計を行い、企業価値の最大化に貢献できます。

複雑な税務判断を通じて経営戦略を支援できるため、数字と論理で課題を解決することが好きな人に向いている仕事です。

3-3.公認会計士:数字の正確性で経営を支える

公認会計士は、組織再編に伴う会計処理や財務報告の正確性を担保し、ステークホルダーへの開示を適切に行う役割を担います。

組織再編では、合併差益やのれんの計上、連結財務諸表の調整など、専門的な会計処理が求められます。さらに、上場企業であれば有価証券報告書などへの開示義務があり、監査法人によるチェックも必須です。

《公認会計士が関与する主な場面》

フェーズ主な仕事内容
企画フェーズ会計処理の影響シミュレーション(のれん・合併差益など)
実行フェーズ会計仕訳
連結財務諸表の調整
有価証券報告書の作成支援
統合・運用フェーズ監査対応
財務報告体制の統一支援

再編に伴う会計処理や開示を通じて、経営の意思決定を「数字の正確さ」で支えることができます。

財務の透明性を守り、企業の信頼を築く重要な役割を担うため、緻密な分析や正確性を重視する人に適した仕事です。

3-4.FAS:財務の視点で全体をつなぐ

FAS(Financial Advisory Services)は、組織再編において財務の専門家として全体を横断的に支援する役割を担います。

再編では、バリュエーションや財務デューデリジェンスが必要となり、再編を実施するかどうかの経営判断やスキーム選定の基盤となります。さらに、実行後のPMIフェーズではキャッシュフロー管理や統合効果のモニタリングなど、財務面での伴走支援を行います。

《FASが関与する主な場面》

フェーズ主な仕事内容
企画フェーズバリュエーション
財務デューデリジェンスの実施
実行フェーズ金融機関向け資料作成
財務シミュレーション
統合・運用フェーズPMIにおける財務モニタリング

財務データをもとに企業価値を分析し、経営判断の根拠をつくる中心的な役割を担います。企画から統合まで、全体を見渡しながら数字で経営を支えたい人に最適な仕事です。

3-5.その他の専門家

組織再編は多面的な領域にまたがるため、状況に応じてさまざまな専門家が関与します。たとえば、以下のような専門家がフェーズごとに支援を行います。

《組織再編においてその他の専門家が関与する仕事内容の一例》

専門家主な仕事内容関与するフェーズ
社労士人事制度・就業規則の統一、従業員対応実行〜統合
司法書士登記手続き、会社法上の申請・登録実行
行政書士許認可・届出関連の書類作成実行
不動産鑑定士拠点統合や遊休資産の評価企画〜統合
ITベンダー/システムインテグレーターシステム統合、データ移行、セキュリティ整備実行〜統合
コンサルタント(経営・人事・IT・ブランドなど)統合計画、制度設計、PMI推進など実務支援企画〜統合
PR会社・広告代理店社名変更、ブランド戦略、広報・発信支援統合

こうした専門家が互いに連携しながら、組織再編を計画から定着まで一貫してサポートします。


4.辻・本郷 FAS株式会社ではグループの専門性を組み合わせて組織再編をサポートできる

3-4で触れましたが、FASは組織再編における仕事の中で、「財務を軸に組織再編を支える存在」です。

辻・本郷 FAS株式会社は、グループ全体の専門性を組み合わせて顧客を支援できる点に強みがあります。

単独の専門家では対応しきれない領域でも、グループ連携により包括的な解決策を提示できる仕事です。


5.まとめ

本記事では、組織再編における仕事内容について、「3つのフェーズ(企画・実行・統合)」「専門家」の両面から整理して紹介しました。

組織再編は、法務・税務・会計・人事・システムなど多くの分野が関わる複雑なプロジェクトであり、社内外の専門家との緊密な連携をしながら、計画立案から実行、統合・定着までを一体で進めていきます。

辻・本郷 FAS株式会社では、こうしたプロジェクトを支える仲間を募集しています。

組織再編やM&Aの現場で経験を積み、財務を通じて企業の変革に貢献したい方は、ぜひ一度FASの仕事を覗いてみてください。