
起業を考えた時に重要になるのは開業資金や運転資金など資金の調達です。まずは創業融資にチャレンジしようと創業計画書の作成に取りかかると、自身の給与となる役員報酬について、
「創業融資で役員報酬も支払えるんだろうか?」
「創業融資の審査で創業計画書の役員報酬はどう書くべき?いくらだと審査に通りやすいんだろう?」
このような疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まず、創業融資は役員報酬の支払いを目的に借りることはできません。また、創業融資の審査での役員報酬は高いほうがいい低いほうがいいということはなく、会社の売上や経営者の生活とのバランスが取れているかが重要となります。
この記事では、創業融資が役員報酬の支払いを目的に借りられない理由や、創業融資の審査で役員報酬が見られるポイント、適正な役員報酬の決め方、役員報酬を決める際の注意点まで詳しく解説していきます。ぜひ、ご一読ください。
目次
1.創業融資は役員報酬の支払いを目的には借りられない
まずはじめに、創業融資に限らず、銀行や日本政策金融公庫などの金融機関からの融資は役員報酬の支払いを目的に借りることはできません。
創業融資は会社の運転資金や設備資金など事業活動に不可欠な費用にしか使えないため、実質的には経営者の生活費である役員報酬を使途として借りることは認められていません。
創業融資での役員報酬は、自己資金や会社の利益から支払う前提で計画を立てる必要があります。
2.創業融資の審査で役員報酬が見られるポイントは3つ
では創業融資の審査では役員報酬はどのような点が見られているのでしょうか。ポイントは3つあります。
2-1.売上見込みに対して固定費である役員報酬が妥当な額か
役員報酬は売上の増減に関わらず毎月必ず出ていく固定費となるため、売上見込みに対して妥当な額になっている必要があります。創業融資の審査では、役員報酬が会社の売上規模や利益計画に見合っていて利益がきちんと出せているかで返済能力が判断されます。
2-2.経営者の生活が成り立つ額になっているか
役員報酬は実質的には経営者の生活費となるため、経営者がきちんと生活できるかを判断する基準になります。創業融資の審査では、経営者の生活が成り立つ計画になっていることが重視されます。
2-3.経営者に計画性があり信頼できるか
役員報酬の設定額には重要な経営判断が必要なため、経営者の計画性や信頼性が見られています。創業融資の審査では、固定費の抑制意識、経営者の生活水準に即した現実的な金額、事業計画と連動しているかなどで、経営者の経営センスが判断されます。
3.役員報酬が高すぎる場合、低すぎる場合
ここからは、実際に役員報酬が高すぎたり低すぎたりすると創業融資の審査ではどのように判断されるのか見ていきましょう。
3-1.高すぎる場合、資金繰りが悪化しやすいと見なされる
役員報酬が高すぎる場合、創業初期の売上が不安定な時期に固定費が大きくなり資金繰りが悪化しやすくなるため、事業の継続性が低いと判断されます。
3-2.低すぎる(あるいは0)場合、経営者の生活が成り立たないと見なされる
役員報酬が低すぎる場合、経営者自身の生活が成り立たなくなってしまうため、役員報酬が高すぎる場合と同じく事業の継続性が低いと判断されます。ただし、生活費の不足分を貯金や配偶者の収入などで補えることを具体的に示すことができれば、役員報酬が低くても問題ありません。
このように、創業融資の審査では役員報酬の額は高すぎても低すぎてもマイナスの評価になります。
4.創業融資を成功させる適正な役員報酬の決め方
では、創業融資を成功させる適正な役員報酬の額はどのように決めればよいのでしょうか。ポイントは2つあります。
4-1.損益の予測を正確に立てて利益計画とのバランスを取る
創業融資の審査で評価される役員報酬の額は利益とのバランスが取れていることが重要なため、まずはしっかりと損益の予測を立てます。年間の売上、材料費や仕入れなどの変動費、家賃や水道光熱費、従業員の給料などの固定費をしっかり見積もって利益を算出します。その上で、役員報酬は利益を圧迫しないよう余裕をもった支払額にします。
4-2.経営者の生活を圧迫しすぎないようにする
創業融資の審査で評価される役員報酬の額は経営者の生活が成り立つものであることが重要なため、まずはしっかりと自身の生活費がどのくらい必要か予測を立てます。その上で、役員報酬は低すぎない支払額にします。
5.役員報酬を決める際の注意点
役員報酬の額を決める際には、他にも気を付けなければいけないポイントが2つがあります。それぞれ見ていきましょう。
5-1.税務上、損金(経費)として認められるための厳格なルールがある
役員報酬は損金(経費)に算入できますが、損金(経費)として認められるには以下いずれかの方法で役員報酬を支給する必要があります。
| 定期同額給与 | 一定期間(1か月以内)ごとに同額で支給するもの |
| 事前確定届出給与 | 事前の税務所届出により、所定の時期に確定額を支給するもの |
| 業績連動給与 | 会社の業績を示す利益や株式市場価格など、客観的な指標に連動して算定されその算定方法が適切に開示されているもの |
この3つの役員報酬の支払い方法のうち、創業期の会社では定期同額給与にすることが一般的です。定期同額給与として役員報酬を支給する場合、事業年度開始日から3ヶ月以内に役員報酬の金額を決定し、事業年度を通じて同額を支給し続ける必要があります。この規定に違反し金額や支給時期の変更があると、損金(経費)として認められません。
5-2.税金や社会保険料とのバランスを考慮する
役員報酬には、法人税、所得税、住民税、社会保険料がかかります。役員報酬の設定額で法人税、所得税、住民税、社会保険料には以下のような影響が出ます。
| 役員報酬 | 会社への影響 | 経営者への影響 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 役員報酬を高くする | 損金(経費)が増え法人税が減る | ・所得税、住民税が増える ・社会保険料が増える | 経営者の負担が重くなり、手取りが減る可能性がある |
| 役員報酬を低くする | 損金(経費)が減り法人税が増える | ・所得税、住民税が減る ・社会保険料が減る | 法人に利益は残るが、経営者の生活費が不足するリスクがある |
役員報酬の設定額は、会社負担が負担する法人税、経営者が負担する所得税と住民税、会社と経営者の両方が負担する社会保険料のバランスを取り、会社の資金繰りと経営者の生活が両立できるようにすることが重要になります。
6.まとめ
ここまで、創業融資が役員報酬の支払いを目的に借りられない理由や、創業融資の審査で役員報酬が見られるポイント、適正な役員報酬の決め方、役員報酬を決める際の注意点まで見てきました。
創業融資の審査での役員報酬を決める際には、会社の利益と経営者の生活とのバランスをとった額にし、税金と社会保険料を考慮することも忘れないようにしましょう。
