【相続の失敗事例】納税資金を肩代わりしてもらい失敗

「不動産を相続したけれど、手元に現金がなくて相続税が払えない……」
このような場面で、現金を持っている他の家族に納税資金を立て替えて(肩代わりして)もらうケースは珍しくありません。

「家族間での金銭の貸し借り」は、「家族間だから」と放置してしまうことも多いですが立て替えた人にとっては「貸付金」という財産になるため、将来その家族が亡くなった際、未返済だった場合には、相続財産として相続税の課税対象になります。

本記事では、父の相続の際に母に立て替えてもらった納税資金の返済をうやむやにしていた結果、母が亡くなった際の相続税が想定より高くなってしまった事例をご紹介します。

「なぜ失敗したのか」「どうしたら失敗を防げたのか」「他に方法はなかったのか」など、失敗事例をご自身に置き換えて、今後の相続対策に役立てていただけますと幸いです。

1.事例の概要

さっそく、今回の事例を紹介します。

1-1.父の相続

数年前、Aさんの父が亡くなりました。
相続人はAさんの母、Aさん、Aさんの弟の3人で、遺言書が残されていたので揉めることなく相続することができました。

遺言書の内容は、金融資産1億円はAさんの母へ、長男であるAさんが自宅1億円、Aさんの弟が賃貸アパート1億円を相続する内容でした。
揉めることはなかったので、税理士に相続税の申告をお願いし、相続税を計算してもらいました。
Aさんと弟は不動産のみを相続したため、相続税の納税資金(それぞれ1,900万円)を準備できず、母に立て替えてもらい申告期限までに無事に納税をすることができました。

1-2.母の相続

その後数年が経ち、母が亡くなりました。
母も遺言書を残してくれていたので揉めることなく相続できました。
遺言書の内容は、金融資産を2分の1ずつとする内容でした。

Aさん兄弟は仕事が忙しく、「相続財産は金融資産2億円のみで税額も把握できているし問題ない」と、手続きを後回しにしていました。
母が亡くなってから8ヶ月が経ち、ようやく税理士にお願いしたところ、税理士から父の相続の際の立替金について指摘されました。

Aさん兄弟は、父の相続当時、税理士から「相続税については、お母様が2人の相続税を立て替え払いしているだけですので、以後返済してください」と言われていたのをすっかり忘れていたのです。
この立替金(3,800万円)は、未返済のため、今回の相続財産に含まれることになり、相続税は当初想定していた額を大きく上回ることとなってしまいました。

※相続財産と相続税額

相続財産と相続税額は下の通りです。

  • 金融資産:2億円
  • 立替金:3,800万円(申告時に追加)
  • 合計:【想定】2億円 ➔ 【申告】2億3,800万円
想定申告差額
課税遺産総額2億円2億3,800万円
相続税3,340万円4,480万円+1,140万円

2.今回の事例が失敗となってしまったポイント

今回の事例が失敗に終わってしまった主なポイントは以下の2つです。

2-1.【ポイント①】立替金(貸付金)が相続財産になると知らなかった

「立替金(貸付金)が相続財産になると知らなかった。」ということが最大の失敗ポイントです。

相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金(立替金)、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。

たとえ家族間の立て替えであっても、「金銭を請求できる権利」ですから「財産」として扱われるのです。

■辻・本郷相続ガイド 相続財産調査とは?自分で漏れなく行う方法・専門家に依頼する基準も紹介

2-2.【ポイント②】親族間の金銭貸し借りをうやむやにしていた

親族間での金銭の貸し借りについて、契約や返済計画を行わずうやむやにしていたことも原因です。

身内同士のやり取りは、「そのうち返せばいい」と甘く考えがちで、契約や返済がされないまま放置されてしまうことがよくあります。その結果、返済されないままの金銭が「亡くなった人の財産」として残ってしまいました。

2-3. 【ポイント③】親族間の金銭授受は税務調査で指摘されるリスクが高い

親族間の金銭授受は税務調査で指摘されるリスクが高い項目です。

今回の事例では、申告前に税理士が気づいたため税務調査での指摘は免れましたが、親族間での金銭のやり取り(立替金や貸付金)は、税務調査で確認されることが多いポイントの一つです。

税務調査で指摘を受けた場合、本来の税額に加えて過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるリスクがあるので、十分に注意が必要です。

■辻・本郷相続ガイド 相続税を申告しない場合のペナルティを解説!無申告は税務署に見つかるの?

3.解決策

今回のような失敗を防ぐための2つの解決策について解説します。

3-1.金銭の貸し借りの際は、親族間でも「金銭消費貸借契約書」を作成する

金銭の貸し借りの際は、親族間でも「金銭消費貸借契約書」を作成しましょう。

親族間の金銭の貸し借りは、税務署も目を光らせている項目のひとつです。うやむやにされたまま放置された立替金は、相続財産への計上漏れとなり、税務調査で指摘されることがあります。

このような場合は、「金銭消費貸借契約書」を作成し、かつ、具体的な返済スケジュールについて記載することをお勧めします。

3-2.立替金の返済と生前贈与を行う

立替金の返済をしつつ、生前贈与を行うのも一つの方法です。

母の財産が多く相続税率が高い場合には、金銭で返済をしてもらいつつ、返済してもらった財産を長男・二男へ生前贈与する方法も有効です。
生前贈与によって、相続財産を減らすことで将来の相続税負担を抑えることができます。
生前贈与についての詳細は下記をご覧下さい。

■辻・本郷相続ガイド 生前贈与とは?効果や流れ、効果的に行うポイントを税理士が解説

4.まとめ

本記事では、過去の納税資金の立て替え(立替金)を放置したことで、二次相続(母の相続)の税額が想定より大幅に増加してしまった事例と解決策を解説しました。

親族間のお金の貸し借りはうやむやになりがちですが、立替金は相続財産として課税対象になります。
親族間であっても金銭消費貸借契約書を作成して計画的に返済し、場合によっては生前贈与と組み合わせた対策を行うことが有効です。

不安がある場合は、早めに相続専門の税理士へ相談することをおすすめします。

本記事が、相続税における親族間の立替金の扱いについて疑問をお持ちの方の一助となれば幸いです。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
相続発生後のお客様は初回面談無料!

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
相続発生後のお客様は初回面談無料!