弁護士が一覧表で解説!共有名義7つの解消法と実行のハードル

この記事では、相続や離婚で共有名義になった不動産で悩んでいる方に、ご自身の共有持分が


●共有名義を「解消できる」「解消できない」


についてわかりやすく解説し、


●共有名義を「解消する」「解消しない」


の意思決定のお役に立てるように弁護士がやさしく解説します。

まず「解消できる」「解消できない」ですが、以下の

7つの解消法いずれかで、ほとんどのケースの共有名義状態を解消することができます。

共有名義を解消することは可能なのです。

さて問題は「解消する」「解消しない」の意思決定を妨げる実行のハードルです。
このハードルこそが共有持分を抱えてあなたが悩んでいる根幹でしょう。
しかしこのハードルを越えない限りあなたの共有名義状態は解消されません。

7つの解消法のうちどれか1つのハードルを越えるか?
それとも8つめの選択肢「解消しない」を選び、意思決定を先延ばして、共有名義のリスクを増大させるか?

共有名義不動産の諸問題に詳しい弁護士が、7つの共有名義の解消法と実行のハードルについて詳しく解説していきます。


1.共有名義7つの解消法

それでは7つの解消法について解説していきますが、人によってベストな方法は異なります。
それは置かれている状況、優先すべきポイントがそれぞれ違うからです。
特に

  • 他の共有者との関係
  • 求める対価
  • 不動産・入居者の状況

等によって実行のハードルに大きな差があります。
ご自身の状況に照らし合わせて読み進めてください。

1-1.共有者全員で第三者に売却する

おススメ度★★★★★
他の共有者への成否の依存度★★★★★
期待できる対価★★★★★

概要

共有者全員の持ち分をまとめて第三者に売却し、その対価を持分比率に合わせて分配する方法です。
市場価格で売却した金額を分配するので、適正な対価を得ることができます。
また通常の不動産売買程度のコストしかかかりません。
共有者全員の同意を得ることができれば、公平で、メリットの大きい解消法と言えます。

実行のハードル

他の共有者全員が売却することに同意する必要があります。特に他の共有者がこの不動産を利用している(例:この不動産に住んでいる)場合、売却の説得に応じてもらうのは高いハードルとなるでしょう。

1-2.分筆してそれぞれの単独名義にする

おススメ度★★★★
他の共有者への成否の依存度★★★★★
期待できる対価★★★★★

概要

分筆とは、登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続きのことです。
「〇分の1」という共有持分の概念から、物理的な分割(現物分割)を行い、「ここからここまで」という通常の不動産に切り分けます。
共有名義になっている土地を分筆することができれば、それぞれの単独名義となり、有効に活用することができます。
また、分筆後は、単独名義になり市場価格で売却することもできるので、分筆後の土地に見合った適正な対価を得ることができます。

実行のハードル

前提として、建物を物理的に切り分けるのは困難なため、この共有名義不動産解消法の対象は土地になります。
この解消法も1-1と同様に他の共有者の同意が必要ですが、仮に他の共有者が分筆という解消法に合意したとしても、土地には方角や接道、形状や高低などの条件があり、等価に切り分けるのは非常に難しいパズルです。
どうしても残ってしまう不公平感を金銭で補填するという方法もありますが、いずれにせよ共有者間の話し合いで合理的な分割を見出すのは相当高いハードルと言えます。

また、共有者間の話し合いで分割の仕方が決まったとしても、実際に分筆の登記をするには、分筆した土地の境界がどこからどこまでなのかを示すため、境界確定測量が必要になります。
測量や分筆は、土地家屋調査士等に依頼する必要があり、依頼費用や調査にかかる時間等のコストがかかります。

1-3.他の共有者から持分をすべて買う

おススメ度★★★★
他の共有者への成否の依存度★★★★★
期待できる対価★★★★

概要

あなたが他の共有者から持分を買い取り、共有名義を解消する方法です。
一部の共有者の持ち分を買い取るだけでは共有名義状態は解消されませんので、すべての持ち分を買い取り単独名義にする必要があります。
特にあなたが不動産を利用している(例:住んでいる)場合は、できることなら実行したいとお考えになる解消法でしょう。

実行のハードル

まず、他の共有者から持分を買い取るための資金が必要です。買い取って単独名義にしたうえですぐに売却するのであれば一時的な資金にすぎませんが、そこに住み続けたい場合は長期的な資金を用意しなくてはなりません。
資金の問題をクリアできれば、あとは購入額の交渉です。もちろんできるだけ安く購入したいところですが、仮に1-1.共有者全員で第三者に売却すれば市場価格で売れるので、それが基準となるでしょう。

1-4.自分の持ち分を他の共有者に売る

おススメ度★★★
他の共有者への成否の依存度★★★★
期待できる対価★★★★

概要

他の共有者に自分の共有持分を売却します。1-3.他の共有者から持分をすべて買うと逆の立場になります。
共有者が2者の場合は売却する時点で共有名義状態は解消されますが、3者以上の場合は残りの共有者との間で共有名義が続く可能性もあるので、この解消法はあなたが共有名義状態から離脱することで、少なくともあなたの共有名義状態は解消される方法とご理解ください。

実行のハードル

単純にすべての共有者が換金したいということであれば1-1.共有者全員で第三者に売却すれば良いので、他の共有者が買い取るのは何らかの事情がある場合です。
もし他の共有者が、例えば不動産を単独名義にして住み続けたいので、あなたに提案して

売却額 = 不動産の市場価値 × 共有持分割合

で購入したいということであれば1-1.共有者全員で第三者に売却すると同様の対価を得られるので、あなたにとって好ましい共有名義の解消法と言えるでしょう。
しかし、あなたから提案して、話をまとめるとすれば

売却額 < 不動産の市場価値 × 共有持分割合

と感じる交渉のカードを用意しなくてはならないかもしれません。
1-3.他の共有者から持分をすべて買うの場合も同様ですが「より強く売買を希望するのは誰か」によってこの交渉のハードルは高くも低くもなるでしょう。

1-5.共有物分割請求訴訟をする

おススメ度★★
他の共有者への成否の依存度★★★
期待できる対価★★★★

概要

1.1~1.4の共有者同士の話し合いでの解決が困難な場合、裁判所に分割を請求することができます。
これを共有物分割請求訴訟と言います。この訴訟が提起されると裁判所は共有名義を解消する方法を決定します。他の共有者がこの決定に異議があっても、この決定は尊重されます。
裁判所の決定は1.1~1.4と同様の解消法です。
例えば「長女が長男と次男の持ち分を買い取ることで共有状態を解消しなさい」というような具体的な解消法を裁判所が決定するのです。
1.1共有者全員で第三者に売却と同様の決定の場合は入札によって買主を決める競売(下図)になってしまう可能性もあります。
また、共有物分割請求訴訟の前に裁判所で調停委員立ち合いのもと共有物分割請求調停を設けることもできます。
「今まで話し合いで解決しなかったんだから、そんなことしても同じでは?」
と思う方もいるかもしれませんが、裁判所に呼び出され、調停委員が立ち合い、法的な効力のある調書をとられるとなると、どうしても共有状態を解消したいあなたの覚悟が伝わり、話が前に進むかもしれません。

実行のハードル

この解消法の最大のハードルは、兄弟や親戚を相手に訴訟を提起するという覚悟です。仮に弁護士に依頼し交渉の大半を代わりにやってもらったとしても共有者であるあなたが訴訟の当事者であることに変わりはありません。
また、共有物分割請求訴訟には以下のようなリスクもあります。

  • 解決までに時間がかかる
    共有物分割請求訴訟は提起してすぐに決定するというようなものではありません。少なくとも半年以上、場合によっては1年以上かかることもあります。この期間兄弟や親戚を相手に訴訟を続けるストレスはかなり高いハードルになるでしょう。
  • あなたの望まない判決になる可能性もある
    裁判所の決定が必ずしもあなたにとってベストな解消法になるとは限りません。
    例)あなたは他の共有者の持ち分を買いたかったのに、逆に他の共有者に売却せよという判決になった。
  • 競売になると売却額が割安になる場合がある
    一般的に、競売になると普通の売却額より割安になる可能性があります。
  • 弁護士に頼むと費用がかかる
    もし弁護士に頼むとなると弁護士費用がかかります。
    「どのくらいの費用がかかるの?」
    お見積りをご希望の方はお気軽に以下までお問い合わせください。

1-6.第三者に自分の持ち分だけを売る

おススメ度★★
他の共有者への成否の依存度
期待できる対価★★★

概要

共有持分は他の共有者に無断で売却することができます。
購入する側からすると単独名義ではないのでリスクの高い売買になりますが、中には共有名義の不動産ばかり購入している不動産業者やファンドがあり、ほとんどの共有持分は売却することが可能です。
購入した不動産業者はそのまま共有持分を所有していてもビジネスにならないので、あなたに代わって新たな共有者として1-1~1-5のいずれかの解消法を用いて現金化しようとします。
ただし、それらの行為はあくまでも新たな共有者である不動産業者が主体となるので、あなたは自分の持ち分を売却した時点で、この交渉の当事者ではなくなり、前項の裁判のような時間の浪費とストレスからは解放されます。
これも共有状態からの離脱による解消法です。

実行のハードル

この解消法のハードルは売却額が割安になってしまうことです。
その差額が、他の共有者との交渉の煩わしさと手間と時間が省かれる代償として妥当な金額だと納得できるかどうかがこのハードルの高低になります。
また、他の共有者から「勝手に見ず知らずの業者になんか売りやがって」と後ろ指さされるのも、心理的なハードルになるかもしれませんね。

1-7.自分の持分を放棄する

おススメ度
他の共有者への成否の依存度★★
期待できる対価無し

概要

1-1~1-5の実行のハードルを越えられず、1-6.第三者に自分の持ち分だけを売ることで後ろ指をさされるのが気になるのであれば持分を放棄して離脱するという解消法があります。
少しでも価値のある不動産であれば、他の共有者は自分の持ち分が増えて得をするので、悪く言われることは無いでしょう。

実行のハードル

この解消法のハードルは何といっても「自分の共有持分が一銭にもならない」ということです。
「お金の問題ではない。とにかく共有状態の煩わしさを解消したい。」という場合に選択する解消法です。
ただし、持分の放棄自体は単独でできますが

  • 登記には他の共有者の協力が必要
  • 持分が増えることになる他の共有者に、贈与税がかかる場合がある

という点で1-6.第三者に自分の持ち分だけを売るのように他の共有者と全く関わらないで済むというわけにはいきません。

以上7つの解消法をご紹介しました。

あなたが実行のハードルを「越えられる」と感じた解消法のうち、おススメ度の高いものを選択していただければと思います。


2.共有名義を解消しない場合のリスク

さて、前章でご紹介したどの解消法の実行のハードルも越えられず、「共有状態を解消せず放置する」という選択を続けた場合、どんなリスクがあるでしょうか?

2-1.相続により共有者が増え続けるリスク

他の共有者が死亡した場合、その共有持分は相続人に引き継がれます。
相続人は子どもだけでなく配偶者も含まれます。
離婚や再婚等で全く会ったこともない相続人が共有者になってしまうこともあるでしょう。
またご自身の相続で子孫たちに共有名義状態を引き継いでいってしまうことにもなりかねません。

2-2.共有者が認知症になるリスク

共有者が認知症になるケースも考えられます。
もちろん未来永劫共有名義状態を続けるのであれば問題ないのですが、その共有者が管理に関係していたり、やっぱり解消したいとなったときには話し合いが難しくなります。
その場合成年後見人をたてるなどして交渉を進めるのですが、より手続きが複雑になる可能性があります。

2-3.共有者が行方不明になるリスク

前述のとおり、縁遠い共有者が増えていくと、なかには共有者の所在が不明な場合も起こりえます。
令和5年4月に
「共有者(相続人を含む。)は、相続開始時から10年を経過したときに限り、持分取得・譲渡制度により、所在等不明相続人との共 有関係を解消することができる。」
https://www.moj.go.jp/content/001396638.pdf(法務省)
とする改正法が施行され、ルールが明確化されたものの、解消したいとなったときの手続きが猥雑になる可能性があります。

2-3.第三者が共有者になるリスク

他の共有者が不動産業者に持分を売ってしまう、1-6.第三者に自分の持ち分だけを売るが逆の立場になるケースです。
相手は共有名義不動産解消のプロです。
こちらがこのまま共有名義状態を続けたくても、あらゆる手段を使って共有名義を解消します。
そのプロとわたりあって交渉しなくてはならないというのはリスクかもしれません。


まとめ

共有名義のリスクを十分ご理解いただいたうえで、再度、以下の一覧表をご参照いただき、ご検討いただくことをおすすめいたします。

繰り返しますが、共有名義は解消できます問題はあなたが実行のハードルを越えられるかどうかです。

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