亡くなった人の預金をおろす方法|銀行での相続手続きと注意点

亡くなった人の預金をおろすには、銀行で相続手続きを行う必要があります。

口座名義人の死亡の事実を知ると、銀行は預金口座を凍結します。
凍結されると、たとえ相続人であっても預金を自由に引き出すことはできません。

この記事では銀行で預金をおろすための3ステップ、無断で引き出した場合のリスク、遺産分割前の預金払戻制度を詳しく解説します。


1.亡くなった人の預金をおろすには、銀行で相続手続きが必要

亡くなった人の預金をおろすには、銀行で相続手続きを行う必要があります。

故人が亡くなると、銀行口座は死亡の事実を確認した時点で凍結されます。凍結後は、相続人であってもキャッシュカードや通帳で預金を引き出すことはできません(民法896条)。

そのため、亡くなった人の預金をおろすには、銀行で正式な相続手続きを行う必要があります。


2.亡くなった人の預金をおろすための3つのステップ

亡くなった人の預金をおろすための3つのステップを紹介します。
以下のステップに沿って手続きを行うことで、口座の凍結を解除することができます。

ステップ1必要書類を準備する
ステップ2銀行所定の書類に記入し、必要書類とともに提出する
ステップ3口座が解約され、払い戻される

※注意

こちらに記載するのは、あくまでも一般的な流れです。
銀行ごとに手続きは微妙に異なります。銀行の窓口に手続きに訪れる前に、銀行のHPも確認してください。

また、4章に主な銀行の相続手続きのページリンクをまとめています。ご活用ください。

2-1.【ステップ1】必要書類を集める

まず、必要書類を集めます

必要書類はケースごとに異なります。
フローチャートをもとに自分はどのケースに当てはまるか確認し、必要書類を準備してください。

ただし、必要書類は銀行ごとに微妙に違いがあります。銀行のHPも合わせて確認することをおすすめします

【ケース1】遺言書があり、遺言執行者が手続きする場合

遺言書があり、遺言執行者が手続きする場合の一般的な必要書類は以下の通りです。

  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、お亡くなりになった方の戸籍謄本
  • 遺言執行者の印鑑登録証明書
  • 遺言執行者の実印
  • 遺言書または遺言書情報証明書(いずれも原本)
  • 検認済証明書(原本)
  • 審判書籍謄本(原本)
  • お亡くなりになった方の通帳・証書・キャッシュカード等

【ケース2】遺言書があり、受遺者が手続きする場合

遺言書があり、受遺者が手続きする場合の一般的な必要書類は以下の通りです。
遺言執行者が指定されていない場合も、こちらのケースに該当します。

  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、お亡くなりになった方の戸籍謄本
  • 受遺者の印鑑登録証明書(原本)
  • 遺言執行者の実印(遺言執行者が指定されていない場合は不要)
  • 遺言書または遺言書情報証明書(いずれも原本)
  • 検認済証明書(原本)
  • お亡くなりになった方の通帳・証書・キャッシュカード等

【ケース3】遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合の一般的な必要書類は以下の通りです。

  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、お亡くなりになった方の戸籍謄本
  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、すべての相続人の戸籍謄本
  • すべての相続人の印鑑登録証明書(原本)
  • 手続きをする人の実印
  • 遺産分割協議書(原本)
  • お亡くなりになった方の通帳・証書・キャッシュカード等

【ケース4】遺言書と遺産分割協議書のいずれもない場合

遺言書と遺産分割協議書のいずれもない場合の一般的な必要書類は以下の通りです。

  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、お亡くなりになった方の戸籍謄本
  • 法定相続情報一覧図の写し(原本) または、すべての相続人の戸籍謄本
  • すべての相続人の印鑑登録証明書(原本)
  • すべての相続人の実印
  • お亡くなりになった方の通帳・証書・キャッシュカード等

2-2.【ステップ2】銀行所定の書類に記入し、必要書類とともに提出する

次に銀行所定の書類を記入し、必要書類とともに提出します

各銀行や信用金庫、信用組合などの窓口にある「相続届書」、または「口座解約依頼書」を記入し、ステップ1で収集した必要書類と一緒に窓口に提出します。
また、ゆうちょ銀行の貯金については、「貯金等相続手続請求書」に所定の事項を記入し、提出します。

■ゆうちょ銀行HP 貯金等相続手続請求書 (名義書換請求書兼支払請求書)より引用

2-3.【ステップ3】口座が解約され、預金が払い戻される

口座が解約され、預金が払い戻されます。

払い戻されるまでの目安は2週間~1ヶ月程度です。


3.相続手続きをせずに、亡くなった人の預金をおろすのは危険

相続手続きをせずに、亡くなった人の預金をおろすことは危険です。

キャッシュカードと暗証番号さえあれば、銀行口座を凍結せずに預金をおろすことは物理的に可能です。
そのため、「口座を凍結する前に、葬儀費用としてお金をおろそう。」「銀行の相続手続きは面倒だから、銀行に死亡の事実を伝えずに、預金の全額をおろしてしまおう。」とお考えになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、相続手続きをせずに預金をおろすことには、以下のリスクが伴うため危険です。

  • 他の相続人から不当利得返還請求や損害賠償請求を受ける可能性がある
  • 相続放棄できなくなるリスクがある(民法921条)

3-1.遺産分割前の預金払戻制度

どうしても相続手続き前におろしたい場合は、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を活用しましょう。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割前であっても被相続人の銀行口座から一定額まで引き出すことができる制度です。

一定額とは、「相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分」までの金額(上限は150万円)です。この金額までであれば、相続手続きをせずに相続人1人の手続きで預金を引き出すことができます。

【遺産分割前の相続預金の払戻し制度でおろせる金額の例】

被相続人の預金額:600万円
相続人:子が2人

→ 600万円×1/3×1/2=100万円

詳しくは一般社団法人 全国銀行協会HP『遺産分割前の 相続預金の 払戻し制度』をご覧ください。


4.【補足】主な銀行の相続手続きページのリンク集

補足として、以下に主な銀行の相続手続きページのリンクを掲載します。
リンクに沿って手続きを行えば、相続手続きを始めることができます。


5.亡くなった人の預金についてよくあるQ&A

亡くなった人の預金についてよくあるQ&Aをご紹介します。

Q.黙って被相続人の預金をおろす行為は犯罪か?

A.刑事罰を科されることはないでしょう。
親族間での窃盗・横領などのトラブルには、警察は基本的に介入しません。

しかし、他の相続人の法定相続分を侵害する金額を黙っておろした場合、民事上の責任を問われる可能性があります。

預金をおろす際は、銀行の相続手続きを行った上でおろすことを強くおすすめします。

Q.亡くなった人の預金を巡ってトラブルになった場合、誰に相談したらよいか?

A.弁護士に相談してください。

弁護士は紛争解決の専門家です。
相続人間で冷静な議論が難しい場合、弁護士が間に入ることで、解決の糸口が見えてくる可能性もあります。


6.まとめ

一般的な銀行の相続手続きのやり方をステップ形式で紹介してまいりました。

また、繰り返しにはなりますが、銀行で相続手続きをせずに亡くなった人の預金をおろすことは、リスクが伴うため危険です。

どうしても相続手続き前に亡くなった人の預金をおろしたい場合は、遺産分割前の相続預金の払い戻し制度を活用してください。

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