
「未支給年金とはどのような年金なのだろうか」「誰が受け取れるものなのだろうか」
「受け取るためにはどのような手続きが必要なのだろうか」
この記事をお読みの皆様はそんな疑問をお持ちではないでしょうか。
未支給年金とは、年金を受け取っている方が亡くなったときに、本来もらえるはずだったのに、まだ振り込まれていなかった年金のことをいいます。
本記事では、未支給年金とはどのような年金なのか、受け取れる人は誰なのか、その請求手続き、未支給年金の税務上の扱いについても、分かりやすく解説していきます。
本記事が、未支給年金について疑問をお持ちの皆様のご参考となれば幸いです。
本記事は「公的年金(国民年金、厚生年金)」について記載しています。
年金の方法で受け取る「個人年金」「企業年金」「退職金」「損害保険」等については、扱いが異なりますのでご了承ください。
目次
1.未支給年金とは、亡くなった時点で、もらえるはずなのに、まだ振り込まれていない年金のこと
「未支給年金」とは、年金を受け取っている方が亡くなったときに、本来もらえるはずだったのに、まだ振り込まれていなかった年金のことをいいます。
まずは、年金の支払いの仕組みからみていきましょう。年金は、偶数月の15日に、支給月の前月と前々月の支給額の合計が振り込まれる後払いです。たとえば、6月15日には、4月分と5月分の年金がまとめて振り込まれるということです。
ですから、下の図のように、受給者が亡くなった場合には、亡くなられた時点で、もらえるはずなのに支給されてない年金が存在することになるのです。
例えば、下の図で、7月20日に亡くなった場合の例を見てみましょう。6月分と7月分を8月15日に受け取るはずでしたが、支給前に亡くなってしまったので、受け取れていません。この年金を未支給年金といいます。
※年金は、亡くなった月の分まで受け取れます。日割り計算は行われず、1日に亡くなっても1ヵ月分が支給されます。
2. 未支給年金を受け取れる人は、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等内の親族
未支給年金を受け取れる人は、年金を受け取っていた方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた3親等内の親族です。未支給年金を受け取れる順位も決まっており、(1)配偶者(2)子(3)父母 (4)孫(5)祖父母(6)兄弟姉妹(7)その他(1)~(6)以外の3親等内の親族となります。詳しくは2-2をご覧ください。
2-1.「生計を同じくしていた」とは
「生計を同じくしていた」とは、「いっしょに暮らしていたり、生活を支え合っていた」ということです。具体的には、次のいずれかに該当すると生計を同じくしていたと認定されます。
- 住民票上、同一世帯に属していたとき
- 住民票では別の世帯になっていても、同じ住所に住んでいた場合
- 住民票では別の世帯になっていても、次のいずれかに該当していたとき
①生活費などを同じお財布でまかなっていたとき
②亡くなった方に、経済的な援助をしていた、または、亡くなった方から経済的な援助を受けていたとき
■ご参考:厚生労働省 未支給年金お手続きガイド
2-2. 3親等内の親族とは
3親等内の親族とは、配偶者・子ども・お孫さん・兄弟姉妹などを指します。
下の表は、3親等内の親族と、受け取れる順位です。同順位の遺族がいる場合には、1人が代表して申請します。遺族の年齢制限はありません。該当する遺族がいない場合は、受け取ることができませんので、年金受給権者死亡届(報告書)のみを提出することになります。※
※年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されていれば届出をする必要はありません。
順位 | 3親等内の親族 |
---|---|
1 | 配偶者 |
2 | 子 |
3 | 父母 |
4 | 孫 |
5 | 祖父母 |
6 | 兄弟姉妹 |
7 | 上記以外の3親等内の親族 (ひ孫、甥・姪、叔父・叔母、曽祖父母など) |
なお、相続放棄をしても、亡くなった人の未支給年金は受け取ることができます。未支給年金は相続財産ではなく、遺族の固有財産とみなされるためです。
■辻・本郷相続ガイド 相続放棄とは|選択すべきケース、自分で手続きを行う時の流れを解説
3.未支給年金の請求方法
受け取れる遺族であると分かったら、未支給年金の請求手続きをしましょう。
3-1. 未支給年金の請求書を提出する
請求手続きの詳細は下の表のとおりです。
全員必要な書類 | ・未支給【年金・保険給付】請求書 ・亡くなった方の年金手帳、基礎年金番号通知書または年金証書(写真は年金手帳です) ![]()
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亡くなった方と別居等の場合に必要な書類 |
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その他、状況によって必要な書類 |
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提出先 亡くなった方が受け取られていた年金の種類により、窓口が異なります。 |
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請求期限 | 5年以内 |
※1 コピー可。請求書に金融機関の証明を受けた場合、公金受取口座として登録済の口座を指定する場合は不要
※2 世帯全員の住民票で亡くなった方が確認できない場合のみ、亡くなった方の住民票の除票
※3 亡くなった方と別居等されている請求書の場合で、第三者の証明もしくは第三者の証明に代わる書類の添付が必要。詳細は厚生労働省 未支給年金お手続きガイド 生計同一関係の書類をご覧下さい。
3-2. 未支給年金を受け取れるのは請求から5-6か月後
未支給年金を受け取れるのは請求から5-6か月後となります。請求の手続きが終わると、約3から4か月後に、「未支給【年金・保険給付】決定通知書」が送付され、受け取れる金額を確認することができます。実際に未支給年金を受け取れるのは、さらに50日程度かかりますので、 受取までにはかなり時間がかかるということを覚えておきましょう。なお、受給要件に該当しなかった場合には「不該当通知書」が送付されます。
未支給【年金・保険給付】決定通知書
厚生労働省 未支給年金お手続きガイド
4.未支給年金に相続税はかからないが確定申告が必要な場合がある
未支給年金は、相続財産になりません。すなわち、相続税の課税対象ではありません。未支給年金を請求する権利は、「遺族固有の権利」として保障されているためです。遺産分割協議の対象ではありませんので、相続人で分ける必要もありません。
しかし、受け取った遺族の一時所得に該当し、確定申告が必要になる場合があります。その場合を下の表で確認しておきましょう。
未支給年金を受け取った年の未支給年金を含む一時所得の合計 | 確定申告 |
---|---|
50万円以下 | 不要 |
50万円より多い | 必要 |
詳細については、下記をご覧ください。
■国税庁 No.1490 一時所得
5.まとめ
ここまで、未支給年金とはどのような年金なのか、受け取れる人は誰なのか、その請求手続き、未支給年金の税務上の扱いについて解説してまいりました。
年金受給者が亡くなった場合には、年金の振り込み先となっていた金融機関へのお手続きも必要となりますので忘れずに行いましょう。
本記事が、未支給年金について疑問をお持ちの皆様の一助となれば幸いです。