相続手続きはいつまでに何をすればいい?必要な手続きを一覧でわかりやすく解説

「相続が発生したけれど、何から始めればいいかわからない」
多くの方が初めての相続に戸惑いながらこのような不安を抱きます。

相続では、遺言書の有無の確認、死亡届の提出、預貯金・不動産の名義変更、相続税の申告など、多岐にわたる相続手続きが必要です。手続きごとに期限や提出先が異なり、対応を後回しにすると思わぬトラブルにつながることもあります。

本記事では、相続が発生してから必要となる代表的な相続手続きの、実施すべき時期・期限・注意点などをわかりやすく整理してご紹介しております。

「誰が」「いつまでに」「どこで」「何を」するべきかを明確にし、公開しない相続の第一歩を踏み出すためにご活用ください。

目次


主な相続手続きの一覧

主な相続手続き一覧です。
代表的な手続きから日常生活に関わる細かな手続きまでを時系列に並べています。

手続き項目目安時期手続きする人提出・連絡先
1死亡診断書の受取死亡直後家族
(看取った人)
病院
2死亡届の提出7日以内親族等市区町村役場
3火葬許可証の取得7日以内親族等市区町村役場
4埋葬許可証の取得火葬時親族
(火葬立合者)
火葬場
5年金受給者死亡届の提出10日以内生計を同じくしていた親族年金事務所
6介護保険被保険者証の返却・介護保険の資格喪失届の提出14日以内親族市区町村役場
7世帯主変更届の提出14日以内世帯員市区町村役場
8国民健康保険証の返却1ヶ月以内遺族市区町村役場
9葬祭費の申請1ヶ月以内(期限は2年以内)喪主市区町村役場
10金融機関への口座凍結の連絡1ヶ月以内相続人金融機関
11公共料金の名義変更・解約1ヶ月以内相続人各契約会社
12生命保険金の請求1ヶ月以内(期限は3-5年以内)保険金受取人保険会社
13遺言書の有無の確認2ヶ月以内相続人公証役場・自宅等
14遺言書の検認2ヶ月以内相続人家庭裁判所
15相続人調査2ヶ月以内相続人市区町村役場・法務局
16故人の財産調査2ヶ月以内相続人金融機関・自宅など
17遺産分割協議の開始2ヶ月以内相続人全員
18遺産分割協議書の作成協議後すぐに相続人自宅など
19預貯金・不動産の名義変更協議書作成後すぐ取得する相続人金融機関・法務局など
20高療養費の請求2ヶ月以内相続人市区町村役場
21相続放棄・限定承認3ヶ月以内相続人家庭裁判所
22準確定申告4ヶ月以内相続人税務署
23相続税の申告・納税10ヶ月相続人税務署
24遺留分侵害額請求1年以内遺留分を持つ相続人相手方への通知または裁判所

1.死亡診断書の受け取り

死亡診断書を医師から受取りましょう。

死亡診断書とは、医師法第19条に基づき、意思が患者の死亡を確認した際に発行する正式な書類です。
戸籍上の死亡届の提出や火葬許可証の取得、保険金の請求など、あらゆる相続手続きの出発点となります。

死亡診断書は死亡の判定を行った医師があらかじめ記入して発行するため、相続人やご遺族が加筆する必要はありません。

受け取る人看取った親族や身近な家族など(通常は医師から直接手渡される)
受け取る場所お亡くなりになった病院(入院先・診療所)
料金目安約3,000〜10,000円(医療機関により異なる)
取得時の注意点コピーを5枚程度取っておくと、相続・行政・保険など各種手続きで役立つ
法的根拠医師法第19条:「死亡診断書の作成は医師の義務」
備考事故死・突然死などの場合は「死体検案書」が発行され、同等の効力を持つ

補足:死体検案書が発行されるケース

事故死・突然死・自殺・孤独死など、医師が直接立ち会っていないケースでは、監察医や警察医が検案を行い、「死亡診断書」ではなく死体検案書が発行されます。

死体検案書は、「死亡診断書」と同等の効力を持ちますので、相続手続きにおいて、死亡診断書の代替書類として使用可能です。

死亡診断書の発行料金はいくら?死体検案書・再発行の場合の料金も解説


2.死亡届の提出

死亡届は、死亡診断書と一体となっており、医師から受け取った死亡診断書の原本を添付して、市区町村役場に提出する必要があります。

死亡届の提出は戸籍法第86条に基づく法定の義務であり、原則として死亡後7日以内に提出する必要があります。

提出を怠ると、戸籍上の届出がなされないため、火葬許可証が発行されず火葬・埋葬ができないなど、後の手続きにも大きく影響します。

記入方法については、死亡届の様式と記載例が法務省の公式サイトに掲載されています。
ご自身で記載する場合は、以下のページを参考にしてください。

■法務省HP|死亡届の記載例・記載要領

記入方法に不安がある場合は、市区町村役場の戸籍窓口で相談するか、葬儀会社に依頼すれば代行してもらえることが多いので相談してみましょう。

提出する人

以下のいずれかの者(戸籍法第87条)

① 同居の親族
② 親族以外の同居人
③ 家主・地主・家屋管理人
④ 後見人・保佐人・補助人 など

提出する場所以下のいずれかの市区町村役場の戸籍担当
①死亡者の本籍地
②届出人の本籍地
③死亡した場所
提出期限死亡の事実を知った日から7日以内(戸籍法第86条)
必要書類

・死亡届(医師が記入した死亡診断書と一体になった様式)
・届出人の印鑑(認印で可)

費用無料
アドバイス・通常、葬儀会社が代行してくれることが多い
・死亡届を提出しないと火葬許可証が発行されないので注意
備考死亡届を提出すると、同時に火葬許可証が発行される

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3.火葬許可証の取得

火葬を行うには、市区町村から発行される「火葬許可証」が必須です。

火葬許可証は、墓地、埋葬等に関する法律第5条および戸籍法第6条に基づき、死亡届を提出した際に自治体が発行する正式な書類です。

通常は死亡届を市区町村役場に提出した際に「火葬許可申請書(火葬証明願)」を渡され、その場で必要事項を記入することで、その日のうちに火葬許可証が交付されます。

なお、死亡届や火葬許可申請書の提出は、葬儀会社が代行するケースが一般的です。
葬儀会社が手続きを行う場合、火葬証明願いの記入から火葬許可証の受け取りまでを一括で代行してくれます。

取得する人死亡届を提出した届出人(多くの場合、葬儀会社が代行)
取得する場所死亡届を提出した市区町村役場(戸籍担当窓口)
必要書類・死亡届
・火葬許可申請書(火葬証明願)
・印鑑(認印で可、自治体による)
提出期限法的期限はなし(火葬実施日までに必ず取得)
費用無料(自治体によっては書式交付料がかかる場合あり)
アドバイス・葬儀会社が代行してくることが多い
・火葬許可症は火葬後に火葬済印が押され埋葬許可証となるので大切に保管すること
備考納骨やお墓への埋葬には、火葬済印付きの火葬許可証(=埋葬許可証)が必要

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4.埋葬許可証の取得

埋葬許可証を霊園や寺院、墓地の管理者に提出することで、埋葬することができます。
これは墓地、埋葬等に関する法律第6条に定められています。

埋葬許可証とは、火葬を終えたあと、火葬許可証に「火葬済」の印が押されたものです。

取得する人火葬終了後、火葬場で火葬済印を受けて遺族に返却
(葬儀会社を通す場合が多い)
取得のタイミング火葬終了後すぐ
取得方法火葬場職員が、持参された火葬許可証に火葬済印を押し、埋葬許可証として返却
提出先墓地・霊園・納骨堂など(管理者へ提出)
費用無料

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5.年金受給者死亡届(報告書)の提出

故人が年金を受給していた場合、年金受給者死亡届(報告書)の提出が必要です。

年金受給者死亡届(報告書)の提出は、日本年金機構が年金受給権の消滅を確認するための手続きです。年金受給者が死亡した場合に年金支給が終了することは、国民年金法第25条、厚生年金保険法第43条に定められています。

もし死亡の事実が日本年金機構に伝わらず、死亡後も年金が故人の口座に振り込まれ続けた場合、それは不正受給に該当し、後日、全額返還が求められます。

年金受給者死亡届(報告書)の提出は必ず期限内におこないましょう。

【例外】マイナンバーカードが登録されている場合

故人のマイナンバー(個人番号)が日本年金機構に登録されている場合は、市区町村からの死亡情報が自動連係されるため、原則として死亡届の提出は不要です。
マイナンバーの収録状況は、以下のサイトからお近くの年金事務所へ問い合わせることで確認できます。

日本年金機構HP|全国の相談・手続き窓口

提出する人亡くなった時に生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
上記以外の3親等以内の親族
提出先最寄りの年金事務所
提出期限国民年金加入者の場合は14日以内
厚生年金または共済年金加入者の場合は10日以内
必要書類・亡くなった方の年金証書
・死亡の事実を明らかにできる書類(下記のいずれかの書類)
  住民票除票
  戸籍抄本
  市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書

■手続きの詳細は日本年金機構HP|年金を受けている方が亡くなったときをご確認ください。

【補足】未支給年金・遺族年金の請求も一緒に行うことがおすすめ

未支給年金とは、お亡くなりになった方が受け取るはずであったがまだ受け取っていない年金や、亡くなった日より後に振込された年金のうち、亡くなった月分までの年金のことです。

未支給年金はその方と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。
この未支給年金受け取りの手続きも、年金事務所でできますので、同時に行うことがおすすめです。

また、遺族年金の給付対象となった方は、遺族年金の手続きも同時に行いましょう。

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6.介護保険被保険者証の返却・介護保険の資格喪失届の提出

 

お亡くなりになった方が以下のいずれかに該当する場合は、介護保険被保険者証の返却と、介護保険資格喪失届の提出が必要です。介護保険法施行規則第25条で定められています。

  • 65歳以上(第1号被保険者)
  • 40歳以上65歳未満(第2号被保険者)で要介護・要支援認定を受けていた方

手続きは、死亡日から14日以内に、故人が住民登録をしていた市区町村の介護保険担当窓口で行います。この手続きを行わないと、介護サービス費用の請求通知が継続して届いたり、介護保険料が誤って引き落とされたりする可能性があります。

期限内に必ず手続きをしましょう。

対象者・65歳以上の方
・40-64歳で要介護・要支援認定を受けていた方
提出する人故人の遺族または同居親族(介護保険料の支払い管理者)
提出先故人の住民票のある市区町村の介護保険担当窓口
提出期限死亡を知った日から14日以内
必要書類・介護保険被保険者証
・介護保険資格喪失届
・届出人の本人確認書類、印鑑(自治体により異なる)

【補足】未納保険料・納めすぎた保険料がある場合

未納保険料があれば相続人に請求されます。また、納めすぎの場合には相続人に対して還付されます。

概ね2〜3ヶ月後に手続きのための書類が「介護保険資格喪失届」に記載した住所に郵送されてくるので、書類を見て手続きを進めてください。


7.世帯主変更届の提出

故人が住民票上の世帯主であり、同一世帯に2名以上の世帯員が残された場合は、「世帯主変更届」を市区町村の戸籍・住民票担当窓口に提出しましょう。
この手続きは住民基本台帳法施行令第7条に基づき、世帯構成に変更があった場合に必要とされるものです。

提出が必要な人同一世帯の世帯員(原則として新たに世帯主となる方)
提出先故人の住民登録がある市区町村の戸籍・住民票担当窓口
提出期限明確な法定期限はなし。ただし、速やかに行うことが望ましい
(一般的には14日以内を目安)
必要書類・世帯主変更届(自治体の様式)
・本人確認書類
・印鑑(自治体によっては不要)
アドバイス世帯構成によっては自動的に変更されるケースもあるため、役所に問い合わせて必要の有無を確認するのがおすすめです。

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8.国民健康保険証の返却

故人が国民健康保険に加入していた場合は、死亡により保険の資格が自動的に喪失します。
これは、国民健康保険法施行規則第2条に基づき、死亡日をもって被保険者資格が消滅すると定められているためです。

死亡届を提出した時点で資格は喪失していますが、保険証そのものの返却手続きは別途必要です。
市区町村が被保険者のデータを正確に管理するための手続きであり、後の「埋葬料の請求」や「医療費の清算」にも関係します。

返却の際は、「故人の住所地の市区町村役場 保険年金課(国民健康保険担当)」にて手続きを行います。自治体によっては、郵送での返却や届出が可能な場合もあるようです。

対象者国民健康保険に加入していた故人
提出する人同一世帯の遺族、または届出義務者(例:喪主・配偶者など)
提出先故人の住民票のある市区町村役場の保険年金課
提出期限法的な期限はない。
できるだけ速やかに返却することが望ましい。
必要書類

・故人の国民健康保険証
・届出人の本人確認書類(運転免許証など)
・印鑑(自治体によっては不要)

アドバイス保険証返却後に「埋葬料(葬祭費)」の申請が可能になるため、あわせて確認・手続きを行うとスムーズです。

9.葬祭費の申請

葬祭費の申請をしましょう。

故人が国民健康保険に加入していた場合、その方が亡くなった際には、葬儀を行った方に対して「葬祭費」が支給されます。

これは、国民健康保険法第58条に基づく給付制度であり、各市区町村が葬儀の経済的負担を一部補助する目的で実施しているものです。

申請できるのは、「実際に葬儀を行った方(通常は喪主)」です。
支給額は自治体によって異なりますが、一般的には1万円〜7万円程度の範囲内で設定されています。

また、申請期限は葬儀を行った日の翌日から2年以内ですが、実際には国民健康保険証の返却と同時に手続きをするのが一般的です。

返却を忘れずに済ませたうえで、必要書類を揃えて同時に申請するとスムーズです。

申請できる人葬儀を行った方(喪主など)
提出先個人が加入していた国民健康保険の保険者(市区町村の保険年金課)
提出期限葬儀を行った日の翌日から2年以内
必要書類・葬祭費支給申請書(自治体指定様式)
・喪主の本人確認書類
・喪主名義の口座情報
・葬儀を証明する書類(会葬礼状や領収書など)
支給額1万円~7万円程度(自治体により異なる)
アドバイス葬儀後に速やかに申請しておくと、葬儀費用の一部補助を早めに受け取れるため安心です。自治体HPで詳細を確認できます。

10.金融機関へ口座凍結の連絡

金融機関へ口座凍結の連絡をしましょう。

故人が亡くなった場合、その名義の銀行口座は「相続財産」として扱われます。
しかし、著名人でない限り、金融機関が自ら死亡を把握して口座を凍結させることはありません。
通常は遺族が死亡の事実を金融機関に連絡し、金融機関が口座を凍結します。

口座の凍結は、原則として金融機関の窓口で手続きを行います。ネットバンキングや郵送で完結できるケースはまだ少なく、店舗での本人確認や戸籍書類の提出が必要なことが多いでしょう。

【補足】なぜ、早めの凍結が必要か?

口座が凍結されないと、一部の相続人による無断引き出し(使い込み)や、不正な資金移動が起こるリスクがあります。そのため、他の相続人とのトラブル防止の観点からも、死亡の事実を金融機関に連絡し、速やかに凍結手続きを行うことが重要です。

【注意】口座凍結後は入出金が一切できない

口座凍結後は入出金が一切できません、
葬儀費用・入院費用・公共料金などの支払いにその口座を使っている場合、支払いが滞る可能性もあるため、支払いの目途がついた段階(死亡後1カ月程度を目安)での凍結を検討するとよいでしょう。

【注意】相続放棄・限定承認を検討している際は、預金を引き出してはいけない

故人に多額の借金があるなどの理由で相続放棄や限定承認を検討されている場合は、故人の口座から預金を引き出してはいけません。
預金を引き出すことで、故人の相続財産を単純承認したことになってしまいます。
ご注意ください。

連絡する人原則として法定相続人またはその代理人
連絡先個人が口座を持っていた各金融機関
必要書類・死亡診断書のコピー
・除籍謄本
・故人との関係がわかる戸籍書類
・本人確認書類
連絡のタイミング葬儀費用や医療費などの支払い完了後(死亡から1か月程度を目安に)
アドバイス凍結後は相続手続きが完了するまで口座が使えなくなるため、支払予定のバランスを考慮して凍結のタイミングを調整しましょう。

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11.公共料金等の解約(名義変更)

故人が契約していた電気・ガス・水道・インターネット・携帯電話などのライフライン契約については、死亡後できるだけ早い段階で名義変更または解約の手続きを行う必要があります。

これらの契約はすべて、個人との「サービス利用契約」に基づいて提供されているものです。

そのため、契約者が死亡した場合は契約を継続するかどうかを遺族側で判断し、各事業者に申し出る必要があります。

名義変更・解約が必要な契約の例

以下のような契約は、継続利用するかどうかに応じて、名義変更または解約の手続きを行いましょう。

電気東京電力、関西電力など
ガス都市ガス(東京ガスなど)、プロパンガス会社
水道各市区町村の水道局
通信サービスインターネット回線、固定電話、携帯電話(DoCoMo・au・SoftBank等)
サブスクリプションNHK受信料、新聞、音楽配信、動画配信サービス(Netflix、Amazonなど)

契約事業者の調べ方

どの事業者と契約しているかわからない場合は、以下を確認すると把握できる可能性が高いです。お試しください。

  • 故人宛ての請求書や領収書
  • 口座引き落としの通帳記録
  • クレジットカード明細
  • 郵便物や故人のスマートフォン内のアプリ・メール履歴

12.生命保険金の請求

生命保険金の請求を行いましょう。

個人が生命保険に加入していた場合、保険金の受取人は保険会社に対して死亡保険金の請求を行うことができます。

請求の期限は保険事故の発生(=死亡)を知った時から3年です。(保険法第95条)
(ただし、かんぽ生命など一部の保険会社では独自に請求期限を5年としていることがあります。)

期限には比較的余裕がありますが、生命保険金の請求は生活資金の確保や葬儀費用の補填に活用できるため、なるべく早い段階で手続きすることをおすすめします。

また、相続税法第3条 第1項によると、生命保険契約に基づいて支払を受ける死亡保険金は、被相続人の死亡によって受け取る場合、相続税の課税対象となります。相続税の申告期限(10カ月以内)までに受取金額を把握しておきましょう。

請求できる人生命保険契約で指定された「保険金受取人」
提出先加入していた生命保険会社(電話・Web・店舗窓口)
請求期限原則:死亡を知った日から3年以内
例外:かんぽ生命等は5年など独自の定めあり
必要書類・死亡診断書の写し
・保険証券
・受取人の本人確認書類
・受取人の口座情報など
税務上の注意相続税の課税対象となる「みなし相続財産」に該当
相続税の申告期限(10カ月以内)までに受取金額を確認しておく。

生命保険金に相続税はかかる?生命保険と税金の関係について徹底解説


13.遺言書の有無の確認

遺言書の有無の確認をしましょう。

故人が亡くなった後に相続手続きを始めるうえで、最初に確認すべきことの一つが「遺言書の有無」です。なぜなら、遺言書がある場合には、その内容が遺産分割協議よりも優先される法的効力を持つからです。(民法第902条)

遺言書が存在すれば、その内容に従って不動産や預貯金の名義変更などが可能になります。一方で、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成する必要があります。したがって、手続きを進める前に、必ず遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書の主な種類と確認方法

公正証書遺言

公証役場に保管されており、遺言検索システムで確認可能。原本は公証役場に保管。相続人または代理人が請求可。

秘密証書遺言作成後、公証役場に提出・封印されている。
内容は公証人も知らないため、存在の確認は可能だが内容確認には家庭裁判所の検認が必要。
自筆証書遺言

自宅などで保管されていることが多い。2020年7月以降は法務局での保管制度あり。法務局での有無確認が可能。

遺言書確認の具体的な流れ

①公証役場で公正証書遺言があるかどうか確認をする
 全国の公証役場にある遺言検索システムを活用し、遺言書の有無を確認する。
 お近くの公証役場へ赴いてください。(日本公証人連合会HP|公証役場一覧

②法務局で自筆証書遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言がないか確認する
 (法務省HP|自筆証書遺言書保管制度

③自宅や貸金庫に秘密証書遺言・自筆証書遺言がないか確認する
 開封の際は家庭裁判所での検認が必要なため、勝手に開封しないよう注意(民法第1004条)


14.遺言書の検認

秘密証書遺言、自筆証書遺言が見つかった場合は、開封せずに、家庭裁判所へ検認の申し立てを行う必要があります。(民法第1004条 第1項)

検認の手続きを行わずに遺言書を開封すると、民法第1005条に基づき5万円以下の過料の対象となる可能性があります。

検認とは、家庭裁判所が遺言の存在・形状・日付・署名などの状態を確認し、遺言書の偽造や改ざんを防止するための手続きです。遺言の内容そのものが有効かどうかを審査するものではありません。(民法1004条第2項)

検認が済んでいないと、不動産の名義変更や預金の払い戻し手続きなどが進められない場合があります。

対象となる遺言書・秘密証書遺言
・自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用しているものは除く)
申し立て先故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申立人発見者、相続人など(誰が申し出てもよい)
必要書類・遺言書原本
・申立書
・故人の戸籍謄本
・相続人全員の戸籍・住民票・関係図など
注意点検認は遺言書の有効性を判断する手続きではない

遺言書の検認とは?必要な状況・理由・流れを網羅的に解説


15.相続人調査

相続人調査を行いましょう。

相続手続きを正しく進めるためには、まず「誰が法定相続人にあたるか」を確定することが必要です。
この作業を相続人調査と呼びます。

法定相続人は民法第887条~890条で定められています。
特定の相続人が抜けていたり、法定相続人の認識が間違っていたりした場合、遺産分割協議が無効なり、すべての相続手続きやり直す必要が出てくる可能性もあります。

相続人を確定するためには、故人(被相続人)の出生から死亡までのすべての戸籍を取得し、その戸籍から法定相続人を特定していきます。

戸籍を遡ることで、婚姻歴、認知した子、養子縁組などの履歴も明らかになります。(戸籍法第10条)
前妻との子や、認知した非嫡出子などが戸籍を遡ることにより発見される可能性があります。

調査を行う人原則:相続人本人
例外:弁護士・司法書士・税理士などの専門家に依頼することも可能
調査に必要な書類被相続人の「出生から死亡までの戸籍」(改製原戸籍・除籍含む)
相続人の戸籍謄本(確認のため)
取得方法市区町村役場
アドバイス相続人に漏れがあると後々トラブルに発展する可能性があるため、不安があれば専門家(司法書士など)に依頼しましょう

相続人調査とは?正しく戸籍を揃える方法・専門家に依頼すべき基準も


16.故人の財産調査

故人の財産調査を行いましょう。

相続手続きを進めるには、まず故人の財産の全体像(プラスの財産・マイナスの財産)を把握することが大切です。なぜなら民法だ896条に相続人は被相続人の財産・債務を原則すべて承継するとあるからです。

相続財産調査とは?自分で漏れなく行う方法、専門家に依頼する基準も紹介

財産調査で得られる主なメリット

  • 遺産分割のトラブル防止
  • 相続税申告の過少申告リスク回避
  • 債務の把握による相続放棄・限定承認の判断材料

財産調査の方法

プラスの財産通帳、保険証券、固定資産税通知書、登記簿謄本。証券化者の通知など
マイナスの財産借入契約書、未払の請求書、督促状、消費者金融や病院からの郵送物
デジタル資産スマホ・PCのメール・アプリ履歴(ネット銀行・証券、仮想通貨、ポイント等)

※調査が難しい場合は、司法書士や税理士などの専門家への依頼も可能です。

相続放棄・限定承認を検討すべきケース

借金などのマイナス財産が多い場合は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」や「限定承認」の申し立てを検討しましょう(民法第915条)。

故人が所有していた預金・不動産などのプラスの財産、借金などのマイナスの財産は何があるのか調べましょう。

相続放棄とは|選択すべきケース、自分で手続きを行う時の流れを解説
相続の限定承認とは|相続放棄と限定承認どちらを選ぶべきかも解説


17.遺産分割協議の開始

遺産分割協議を開始しましょう。
相続人が確定し、財産内容も整理できたら、誰が何を相続するかを決めます。(遺産分割協議)

遺産分割協議は民法第907条 遺言がない場合、遺産は法定相続人全員の協議によって分割することが定められています。

協議のポイントと注意点

  • 遺産分割協議は、法定相続人全員の参加が必須です。
    法定相続人全員がそろわずに開催された遺産分割協議は無効となります。また、認知症の方がいる場合などは、家庭裁判所で成年後見人を選任する必要があります。
  • 遺言書がある場合は原則、その内容に従いますが、相続人全員の合意があれば異なる分割も可能です。

遺産分割協議とは、法定相続人全員が参加して行う、誰がどの財産をどのようにもらうかを決める話し合いです。参加することが難しい法定相続人がいた場合は、後見人などの代理人を立てて遺産分割協議を行う必要があります。

遺言書がある場合は、一般的には故人の遺志を尊重し、遺言通りに遺産を分割することになりますが、遺言書がない場合、相続人での話し合いにより遺産の分割を決めます。

協議を行う人法定相続人全員(成年後見人や代理人の選任が必要なケースあり)
協議の実施場所場所は自由
合意に至らない場合家庭裁判所に調停を申し立てる

もめてしまったら、調停・審判へ

「遺産分割協議」で遺産の分割方法が決まらなかった場合には、家庭裁判所に「調停」を申し立てて解決に向けての話し合いをします。

調停でも遺産分割方法が決まらない場合は、自動的に審判手続きが開始され、裁判官による「審判」が行われます。裁判官が資料や証拠を調べ、必要であれば事情聴取を行い、最終的に遺産分割の方法を決定します。

遺産分割調停とは?図解を用いてわかりやすく解説


18.遺産分割協議書の作成

遺産分割協議がまとまったら、その内容を証明するために遺産分割協議書を作成します。(民法907条第2項)

遺産分割協議書とは相続人全員の合意により遺産をどう分けるか決めた内容を文書にしたものです。この書面があることで、金融機関や法務局などで名義変更等の相続手続きを進めることができます。

書式に決まりはありませんが、内容に不備があると金融機関や法務局で受理されない場合があります。心配な方は司法書士・行政書士・弁護士に文案の確認や作成代行を依頼するのもよいでしょう。

必要な記載事項相続人全員の氏名・住所・分割内容(誰が何を相続するか)など
署名・押印相続人全員の辞書と実印押印が必要です。
印鑑登録証明書(発行から3カ月以内)の添付も求められます。
必要となる場面・預貯金の名義変更・解約
・不動産の相続登記
・株式、保険、車両などの名義変更手続き

遺産分割協議書とは?雛形付き作成方法も徹底解説!


19.預貯金・不動産の名義変更

預貯金・不動産の名義変更を行いましょう。

相続財産を取得した場合は、その名義(所有者)を相続人から相続人へ変更する手続きが必要です。(民法896条)現実に財産を使ったり処分したりするためには名義変更手続きが完了している必要があります。

不動産の相続登記について

不動産の名義変更のことを「相続登記」と呼びます。

2024年4月1日より相続登記は義務化され、3年以内に登記をしないと過料(10万円以下)が課せられる可能性があります。(不動産登記法 第76条の2)

また、相続登記を行わないと、不動産を売却・担保設定できない、他の相続人とトラブルになりやすいといったデメリットも生じます。

名義変更の基本情報

財産の種類名義変更を行う場所手続きをする人
不動産(自宅・土地など)管轄の法務局(相続登記)相続人(司法書士に依頼も可)
預貯金各金融機関の店舗窓口相続人
株式・投資信託など証券会社などの取扱金融機関相続人
自転車・バイク陸運支局相続人

20.高額療養費の請求

故人が生前に入院や手術などにより高額な医療費を支払っていた場合は、高額療養費の払い戻しを受けられる可能性があります。これは公的医療保険制度において、1か月の医療費が自己負担限度額を超えた分について、後日払い戻しが受けられる制度です。(健康保険法 第115条、第116条)

診療を受けた月の約3か月後に、保険者(市区町村や健康保険組合)から「高額療養費支給申請書」が届くので、指定された申請書に必要事項を記入し、本人確認書類・振込口座などと共に提出してください。

原則、診療月の翌月初日から2年以内に申請すれば受給可能です。

相続税との関係

故人が亡くなった後に受け取る高額療養費は、相続税の対象となる「みなし相続財産」です。(相続税法基本通達3-20)

したがって、相続税の申告が必要な場合には、高額療養費の金額も含めて財産評価を行う必要があります。

対象者被相続人が健康保険加入者で、生前に高額な医療費を支払っていた場合
申請者原則として遺族(相続人)
申請期限診療月の翌月初日から2年以内(健康保険法第193条)
申請窓口市区町村の国民健康保険担当課、または健康保険組合
必要書類の一例高額療養費支給申請書、本人確認書類、故人の保険証、振込口座情報、領収書など
アドバイス相続税の申告期限(10か月以内)までに請求額を確定し、財産評価に反映させましょう

21.相続放棄・限定承認の申し立て

相続放棄・限定承認の申し立てを検討しましょう。

被相続人(故人)に多額の借金や債務がある場合、相続人は相続放棄または限定承認を家庭裁判所に申し立てることで借金を負わずに済む場合があります。

相続放棄とはプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないとする手続きです。
家庭裁判所に申述書を提出し、認められることで、最初から相続人でなかったものとみなされます。
限定承認とは相続によって得たプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を返済うるという方法です。被相続人に借金があるか不明なときなどに選択されます。

相続放棄・限定承認は相続が発生したことを知った日から3か月以内(民法第915条)に申請しなければなりません。期限を過ぎてしまうと、単純承認(すべてを相続する)とみなされ、借金の返済義務もすべて引き継ぐことになります。

手続きをする人原則として各相続人本人
(未成年者や成年被後見人の場合は法定代理人)
申し立て先被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申し立て期限相続開始を知った日から3か月以内
必要書類の例・申述書(裁判所所定様式)
・戸籍謄本
・住民票
・収入印紙・切手など
注意点期限をすぎると自動的に単純承認扱いになる
専門家の関与書類の作成や裁判所対応を司法書士や弁護士に依頼可能

相続放棄とは|選択すべきケース、自分で手続きを行う時の流れを解説
相続の限定承認とは|相続放棄と限定承認どちらを選ぶべきかも解説


22.準確定申告

準確定申告を行いましょう。

被相続人が生前に事業所得や不動産所得、株式譲渡などの所得を得ていた場合、相続人はその年の1月1日から死亡日までの所得について準確定申告を行う必要があります。

これは所得税法で定められた制度であり、故人の代りに申告・納税を完了させる手続きです。

期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。(所得税法第124条)
自分で行うことが難しいと感じた場合は、税理士に依頼すると代行してくれます。

申告が必要な人生前に事業・不動産・譲渡などの所得があった相続人
手続きをする人相続人(複数人いる場合、連名で提出)
申告先被相続人の住所地を管轄する税務署
申告期限相続の開始を知った日の翌日から4か月以内(所得税法第124条)
相続税申告との関係相続税申告とは別の手続き。
両方必要な場合は減甲して準備をする必要がある。

準確定申告とは「亡くなった方の確定申告」


23.相続税の申告・納税

相続税の申告・納付を行いましょう。

相続により取得した財産が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。
相続税の申告は相続開始(=死亡)を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。(相続税法第27条)

相続税の申告では、不動産の評価や特例の適用判断など高度な専門知識が求められます。
「誰にどの財産を渡すか」によって納税額が大きく変わるケースも多いため、できるだけ早く税理士に相談し、財産評価。分割案・納税方法の検討を進めることが大切です。

申告が必要な人相続財産の課税価額が基礎控除額を超える相続人等
申告先被相続人の住所地を管轄する税務署
申告期限相続開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法第27条)
納税方法原則現金一括納付
注意点遺産分割協議が終わらない場合でも申告期限は延びない。未分割でも申告は必要。

相続税申告の入門書|相続税申告の全体像を理解するための7ステップ


24.遺留分侵害額請求の手続き

遺留分を侵害されたときは遺留分侵害額請求を行いましょう。

遺留分とは民法で保障された最低限の相続分です。
配偶者や子供(直系卑属)、直系尊属(父母など)には、それぞれ遺留分が認められています。

遺言や生前贈与などによって、本来相続できるはずの財産の割合(=遺留分)が侵害された相続人は、遺留分侵害額請求によって金銭での保障を求めることができます。(民法1046条)

ただし、遺留分侵害額請求には、消滅時効があります。(民法第1048条)
以下のいずれか早い方までに請求しなければ権利が消滅するのでご注意ください。

  • 相続開始及び侵害を知った時から1年以内
  • 相続開始から10年以内
請求できる人配偶者、子ども、直系尊属(父母など)
請求できない人兄弟姉妹(遺留分の権利はありません)
請求先贈与または遺贈によって財産を受け取った人
請求方法内容証明郵便などで金銭
請求期限相続開始および侵害を知った時から1年以内/相続開始から10年以内
請求できる内容原則として金銭での支払い

まとめ

本記事では、相続が発生してから必要となる代表的な相続手続きの、実施すべき時期・期限・注意点などをわかりやすく整理してご紹介してまいりました。

「誰が」「いつまでに」「どこで」「何を」するべきかを明確にし、公開しない相続の第一歩を踏み出すためにご活用いただければ幸いです。

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