
種類株式とは、一般的な株式(普通株式)とは異なる権利内容を定めた株式です。例えば、配当を優先的に受け取れる権利や議決権を制限する権利などを設定できます。
種類株式にはさまざまな種類があり、資金調達や事業承継、経営権の安定化など目的に応じて活用されます。適切に設計・発行することで会社経営に大きなメリットをもたらす一方、権利内容が複雑であるため、仕組みや活用方法を十分に理解することが重要です。
本記事では、種類株式の一覧やメリット、活用例、注意点、発行手続きまで幅広く解説します。種類株式の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
1.種類株式とは?
種類株式は株式の一種ですが、利益や権利について一般的な株式(普通株式)とは異なる権利内容が定められた株式です。
- 普通株式
すべての株主が平等な権利を持つ公平な株式 - 種類株式
配当や残余財産、議決権、取得や譲渡などについて、普通株式とは異なる内容が定められた株式
種類株式は種類ごとに権利内容が異なるため、得たい効果に応じた種類株式を発行することが重要です。
なお、全部で9種類ある種類株式のうち、必要な種類株式だけを発行することもできますし、種類株式を発行しないことも可能です。
種類株式を発行する主な目的は、資金調達や経営権のコントロールなどを実現することです。また中小企業は、事業承継を円滑にするための手法としてもよく用いられます。
2.種類株式の一覧
9つの種類株式の特徴は、次の通りです。
| 種類 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1.配当優先株式 | 経済的利益 (配当や残余財産の分配に関わる株式) | 剰余金の配当において普通株式より優先的な取扱いを受ける株式 |
| 2.残余財産優先株式 | 会社が解散して清算を行う際、残余財産の分配について普通株式より優先的な権利を持つ株式 | |
| 3.議決権制限株式 | 経営支配権 (議決権に関わる株式) | 株主総会における議決権について、全部または一部の事項に関して制限が設けられた株式 |
| 4.拒否権付株式 | 株主総会や取締役会で一定の事項を決議する際に、該当の種類株主の承認を必要とする株式 | |
| 5.取締役・監査役選任権付種類株式 | 取締役または監査役の選任・解任について、種類株主総会で決議する権利を持つ株式 | |
| 6.譲渡制限株式 | 流動・保有制限 (株式の譲渡や取得に関わる株式) | 株式を譲渡する際に会社の承認を必要とする株式 |
| 7.取得請求権付株式 | 株主が会社に対して、その保有する株式を取得するよう請求できる株式 | |
| 8.取得条項付株式 | 一定の事由が生じた場合に、株主の意思にかかわらず会社が株式を取得することができる株式 | |
| 9.全部取得条項付株式 | 株主総会の特別決議により、その種類株式の全部を会社が取得できる株式 |
2-1.配当優先株式
配当優先株式とは、剰余金の配当において普通株式より優先的な取扱いを受ける株式です。
大きく、優先配当を受けた後に普通株主と同様に追加配当に参加できる参加型と、優先配当のみを受け追加配当に参加しない非参加型があります。
| 参加型 | 優先配当を受けた後、残余配当(普通配当)がある場合は受け取れる |
|---|---|
| 非参加型 | 優先配当のみ受け取り、それ以上は受け取れない |
なお、「優先」とは配当を受ける順位が優先されることを意味し、金額の多寡ではありません。そのため、必ずしも普通株式より多くの配当を受けられるとは限りません。優先配当額の設定によっては、結果として普通株式より受取額が少なくなる場合もあります。
また、優先配当を受けた後、あらかじめ定めた範囲で追加配当に参加できる「制限参加型」もあります。
2-2.残余財産優先株式
残余財産優先株式とは、会社が解散して清算を行う際、残余財産の分配について普通株式より優先的な権利を持つ株式です。
ただし、会社財産はまず債権者への弁済に充てられるため、残余財産優先株主が分配を受けられるのは、債務を全て弁済した後に財産が残っている場合に限られます。
【残余財産の優先順位】

そのため、残余財産優先株式は普通株主よりも優先して分配を受ける権利を持ちますが、残余財産の受け取りを保証するものではありません。
なお、配当や残余財産の分配について普通株式より優先的な権利を持つ種類株式を総称して「優先株式」と呼ぶことがあります。
2-3.議決権制限株式
議決権制限株式とは、株主総会における議決権について、全部または一部の事項に関して制限が設けられた株式です。このうち、議決権を全く持たない株式を無議決権株式といいます。
経営権を維持しながら資金調達ができるため、経営への関与を求めない投資家向けに発行される傾向があります。その際は、議決権の制限を補うために配当優先株式と組み合わせて設計されることもあります。
2-4.拒否権付株式
拒否権付株式とは、株主総会や取締役会で一定の事項を決議する際に、該当の種類株主の承認を必要とする株式です。強い権限を持つことから、黄金株とも呼ばれます。
仮に普通株主総会で可決された議案でも、拒否権を持つ株主のみで構成される種類株主総会で否決されると、その議案は成立しません。
例えば、会社の組織再編、事業譲渡、合併などの重要事項について承認権が付与されます。上手く使えば経営が想定外の方向に行くことを防止できるかもしれませんが、議案が成立しにくくなる側面があります。そのため、拒否権の対象事項を広く設定しすぎると会社の意思決定が停滞する恐れがあります。
2-5.取締役・監査役選任権付種類株式
取締役・監査役選任権付種類株式とは、取締役または監査役の選任・解任について、種類株主総会で決議する権利を持つ株式です。
通常、取締役や監査役の選任・解任は株主総会で行われます。しかし、この株式が発行されている場合には、定款の定めに従いその種類株式の株主のみで構成される種類株主総会で取締役または監査役の選任・解任を行うことができます。
経営陣の構成に強い影響力を持つ種類株式といえます。なお、この種類株式は公開会社では発行することができません。
【議決権に関わる株式】
権限の違いは次の通りです。
- 議決権制限株式
株主の権限は普通株主より弱い
ただし、経済的利益(配当)を重視する設計も可能 - 拒否権付株式
重要事項を拒否できる権限がある
それ以外については普通株主と同様の権限 - 取締役・監査役選任権付種類株式
役員人事に対する影響力が強い
種類株式
2-6.譲渡制限株式
譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に会社の承認を必要とする株式です。
譲渡制限のない株式は原則として自由に譲渡できますが、譲渡制限株式を譲渡する場合には株主総会や取締役会等の、定款に定められた機関の承認を受けなければなりません。
これにより、会社が望まない第三者へ株式が移転することを防ぐことができます。なお、発行する全ての株式を譲渡制限株式とすることも可能であり、中小企業では広く採用されています。
2-7.取得請求権付株式
取得請求権付株式とは、株主が会社に対して、その保有する株式を取得するよう請求できる株式です。
会社は請求を受けると、定款で定められた対価(現金・社債・他の種類株式等)を交付して当該株式を取得します。
株主にとっては、保有株式を現金や他の財産に換える手段を確保できるというメリットがあります。
また、自由に譲渡できない譲渡制限株式と組み合わせる手法もあります。両者を組み合わせることで、株主が株式を手放したいときに会社へ取得を請求する道筋ができるため、株式の換金手段を確保しやすくなります。
2-8.取得条項付株式
取得条項付株式は、一定の事由が生じた場合に、株主の意思にかかわらず会社が株式を取得することができる株式です。
一定の事由とは、例えば「一定の日の到来」や「株主の死亡」などで、定款で柔軟に定めることができます。目的に応じた事由を設定することで幅広く活用可能です。また、会社が取得する際は、定款で定めた対価(現金・社債・その他株式等)を交付します。
なお、定款で定めることにより、取得の対価を交付しないことも可能です。ただし、株主に不利益が生じる可能性もあるため、制度設計には慎重な検討が求められます。
【取得請求権付株式と取得条項付株式の違い】
- 取得請求権付株式
株主の請求により、会社が株式を取得する株式
主導は「株主」 - 取得条項付株式
特定条件で、会社が株主の意思にかかわらず株式を取得できる株式
主導は「会社」
2-9.全部取得条項付株式
全部取得条項付株式とは、株主総会の特別決議により、その種類株式の全部を会社が取得できる株式です。
取得の際には、定款で定めた対価(現金・社債・その他株式等)を交付します。なお、制度設計によっては対価を交付しないことも可能ですが、株主保護の観点から慎重な検討が必要です。
個々の株主から同意を得ることなく一括して取得できるため、少数株主の整理(スクイーズアウト)や組織再編などで用いられることがあります。
※スクイーズアウトの詳細は「スクイーズアウトとは|実務に必要な手法比較と注意点を解説」をご覧ください。
【取得条項付株式と全部取得条項付株式の違い】
- 取得条項付株式
取得には定款で定めた事由の発生が必要
対象となる株式のみ取得できる - 全部取得条項付株式
取得には株主総会の特別決議が必要
その種類株式を一括取得できる
3.種類株式のメリット
種類株式は経営にどのように役立つのでしょう。代表的なメリットを3つ挙げます。
3-1.経営権をコントロールしやすくなる
種類株式を活用して議決権や役員の選任権などを調整できるため、経営権をコントロールしやすくなります。
例えば、譲渡制限株式や取得条項付株式で株式の分散を防止することが可能です。また、事業承継においては、後継者に議決権のある株式を集中させることで、経営交代の安定化につなげることができます。
3-2.資金調達の円滑化につながる
種類株式は投資家のニーズに応じた権利を付与できるため、資金調達の選択肢を広げることができます。
例えば、配当や残余財産の分配を優先する権利を付与することで、経営への関与よりも経済的な利益を重視する投資家から出資を受けやすくなります。会社は経営権への影響を抑えながら資金を調達できるため、成長資金の確保や財務基盤の強化に役立ちます。
3-3.柔軟な権利設計ができる
種類株式では、配当、残余財産の分配、議決権、株式の譲渡や取得に関する権利などを柔軟に設計できます。さらに、複数の権利を組み合わせた株式を発行することも可能です。
株主ごとに異なるニーズに目を向けつつ、会社の経営方針や資本政策に合わせた制度設計を行うことができます。複雑で難しい経営局面を乗り切る戦略の一つとして有効です。
3-4.中小企業の事業承継においてさまざまな活用ができる
中小企業の事業承継において種類株式は、事前準備や相続発生時などさまざまなシーンで活用可能です。
議決権や配当などの権利内容を柔軟に設計できるため、後継者に経営権を集中させるだけでなく、他の相続人には経済的利益を確保する利害調整が可能です。また、事前に事業承継のリスクを抑える、徐々に経営権を移転するといった活用法もあります。
4.事業承継における種類株式の具体例
中小企業の事業承継を想定して、種類株式の活用例を4つご紹介します。
4-1.【相続時】 承継人の権利を強くする
相続人でもある承継人に経営権を集中させるために、種類株式を活用する手法です。
親子間承継において子どもが複数いるケースにおいて有効です。事業に関する財産が承継人に引き継がれるよう、相続財産を次のように配分します。
- 後継者
議決権のある普通株式や拒否権付株式(黄金株)を承継 - 他の相続人
現金や別の財産を承継
普通株式を優先的に取得するだけでも、後継者は株主総会において安定的に議決権を行使しやすくなり、経営に関する意思決定を主導しやすくなります。これはさらに、拒否権付株式(黄金株)を活用することで、合併や事業譲渡などの重要事項について後継者に特別な権限を持たせる手法です。
経営に関する権限を後継者へ集中させることで、円滑な事業承継につなげることができます。
4-2. 【相続時】事業承継で承継人以外の権利を弱くする
複数の種類株式を活用することで、相続人間の利害調整を行う手法です。
相続人が複数いるケースで、株の相続を承継人のみにするのが難しいときや相続人間の人間関係に配慮した事業承継を行いたいときに有効です。
複数の相続人に対し、種類の違う種類株式を次のように配分します。
- 承継人には議決権のある普通株式を承継
- 他の相続人には議決権制限株式かつ配当優先株式を承継
経営権を後継者に集中させながら、他の相続人には一定の利益を還元できるため、経営の安定化と相続人間の利害調整の両立を図れる点が、この手法の大きな特徴です。
4-3. 【相続準備時】株式の分散を防止して事業承継に備える
取得条項付株式を活用し、将来の株式分散を防止する手法です。
現状で承継人候補が若く事業承継までは間があるが、将来のリスクを抑えたい場合に有効です。
いわゆる親族会社で、承継人以外の親族が一定数の株式を持っているケースで有効です。実際に、創業者の兄弟や親族が一定の株式を保有していることは少なくありません。株主が亡くなるたびに株式が相続人へ承継されると株主数が増加し、意思決定が複雑になるおそれがあります。
また、株式の承継が繰り返されることで、会社と関係の薄い第三者へ渡る可能性もあります。
そこで、あらかじめ取得条項付株式を活用し、「株主が死亡した場合には会社が当該株式を取得できる」と定款で定めておくのです。
取得条項付株式を利用すれば、相続が発生した際に会社が株式を取得できるため、株式の分散を抑制しやすくなります。その結果、後継者を中心とした安定的な株主構成を維持しやすくなり、円滑な事業承継につながります。
4-4.【事業承継時】経営権を段階的に移転する
段階的に経営権移転するために、拒否権付株式等を活用する手法です。
すでに次期後継者として子どもが経営に携わっているものの、全ての権利を任せるのは時期尚早であるケースで有効です。次期後継者に株式を取得させる一方で、拒否権付株式や取締役・監査役選任権付種類株式といった強い権利をもつ株式は現経営者が保有しておきます。
次期後継者の成長や周囲の理解など、環境が整うのを確認しながらそれらの種類株式を後継者に取得させていくことで、現場の状態に合わせた経営権の意向が叶います。
5.種類株式活用時の3つの注意点
種類株式は種類や効果が複雑であるため、次の点に注意します。
5-1.管理が難しい
種類株式は経営課題に応じて柔軟に活用できる一方で、管理コストや運用負担が増加します。
まず、種類株式を発行するには、定款変更や株主総会決議など所定の手続きが必要です。また、発行後は種類ごとの権利内容や発行済株式数を正確に管理しなければなりません。
さらに、種類株式は権利内容を自由に設計できる反面、制度設計が複雑になりやすいです。権利の設定方法によっては、想定した効果が得られないことや、株主間の利害関係が複雑化する可能性があります。
また、導入前に十分にシミュレーションすることも重要です。例えば、全部取得条項付株式を活用して少数株主の整理(スクイーズアウト)を行いたい場合。例え種類株式を発行したとしても、取得の対価を交付するための財務的な準備が整っていなければ目的の達成は困難です。
5-2.株主全体の公平性が損なわれる可能性がある
種類株式を発行すると株式ごとに異なる権利が設定されるため、株主間の公平性に配慮する必要があります。
例えば、議決権や配当、役員選任権などに特別な権利を付与することで、株主ごとに保有する権利の内容や範囲に差が生じます。その結果、一部の株主が不公平感を抱いたり、株主間で利害が対立したりする可能性があります。特に親族が株主となっている会社では、相続人間の不満につながるおそれもあります。
そのため、種類株式を導入する際は目的や必要性を明確にし、株主総会や説明会などを通じて十分な説明を行い、株主の理解を得ることが重要です。
5-3.強い権利を持つ種類株式は経営に深刻な影響を与えることがある
拒否権付株式や取締役・監査役選任解任権付株式など、経営に大きな影響を及ぼす種類株式の発行は慎重に行わなければなりません。
例えば、拒否権付株式を保有する株主は、定款で定められた重要事項について決議を拒否できるため、会社の意思決定に大きな影響を与えます。また、取締役・監査役選任解任権付株式を保有する株主は、役員人事に対して強い影響力を持つことになります。
さらに、これらの種類株式が第三者へ移転するリスクにも注意が必要です。例えば、当該株式を保有する株主が死亡した場合、その株式と権利は相続人に承継されます。相続人が現経営陣と異なる考えを持っている場合、会社の意思決定や経営方針に大きな影響を及ぼす可能性があります。
このような事態を防ぐためには、譲渡制限や取得条項などを組み合わせ、将来の株主構成まで見据えた制度設計を行うことが必要です。
6.種類株式の発行手続き
種類株式の発行手続きを、2のケースでご紹介します。
6-1.新たに種類株式制度を導入する場合
新たに種類株式を導入する場合、主に次の手続きが必要です。
- 定款で種類株式の内容や発行可能種類株式総数を定める
定款変更に該当するため、原則として株主総会の特別決議が必要です。 - 商業登記を行う
種類株式発行会社である旨や種類株式の内容等は登記事項であるため、法務局への登記申請が必要です。
なお、種類株式を導入済みの会社が種類株式を追加する場合や、発行済種類株式の内容を変更する場合も定款変更の必要があるため、株主総会の特別決議を行います。ただし、種類株式の内容によっては株主総会特別決議に加えて、種類株主総会決議が必要となる場合があります。
6-2.既存の普通株式を種類株式に転換する場合
次に、既存の普通株式を種類株式へ変更することで、種類株式を導入する場合です。定款変更のための株主総会特別決議や商業登記が必要となる点は、上述の「新たに種類株式制度を導入する場合」と同様です。
実は、会社法に普通株式から種類株式への転換手続きに関する明確な規定はありません。そのため、実務上は総株主の同意を得たり、種類株主総会の決議を行ったりすることがあります。
こうした厳しい手続きが求められるのは、既存株主の権利内容に影響を与えるためです。それまで普通株式のみが発行されていた会社では、原則としてすべての株主が同一の権利を有していました。しかし、種類株式を導入すると、議決権や配当などの権利内容に差が生じ、既存株主の利益に影響を及ぼす可能性があります。
ただし、必要となる手続きは導入方法や会社の状況によって異なります。実際に種類株式を導入する際は、専門家へ相談しながら進めることが重要です。
7.まとめ
種類株式とは普通株式と権限の異なる株式で、9つの種類があります。
配当や議決権について優先される、もしくは逆に制限を付与することができ、複数の局面で活用可能です。
一方で、制度設計の難易度は低くありません。種類株式をどう活用するか慎重に検討し、制度設計していくことが求められます。必要に応じて顧問税理士等に実務的な相談をしながら、活用していきましょう。
