歯科クリニックの資金繰り対策|売上があっても注意が必要な理由とは?

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監修者 宇都宮健太

患者様は順調に増えており、医業収入も安定している。
利益は出ているはずなのに、気が付いたら資金繰りが悪化していた。

このようなお悩みを抱える歯科クリニック様はめずらしくありません。
なぜ、利益が出ているにもかかわらず、資金繰りが悪化してしまうのでしょうか。

そこには、複雑な収支の構造や固定費の負担の大きさなど、歯科クリニック特有の課題があります。資金繰りの悪化は、気付くのが遅れると黒字倒産を起こすことになりかねません。

本記事では、歯科クリニックが資金繰りに注意が必要な理由とともに、具体的な対策について解説しました。安定した歯科クリニック経営のために効果的な資金繰り対策について考えていきましょう。


1.歯科クリニックが資金繰りを考えるべき3つの理由

歯科クリニックは、資金繰りに注意しなければいけない理由として、次の3つが考えられます。

  • 現金の動きが複雑になっている
  • 設備投資や経費の負担が大きい
  • 経営が院長に依存する傾向がある

1-1.現金の動きが複雑になっている

歯科クリニックの収支は構造は複雑であり、損益計算書では現金の動きは把握しきれません。計上した経費と実際に支払う額が異なるほか、売上を計上した時期と実際に入金がある時期にずれがあるため、利益が出ていても現金が不足するということが起こります。

特に入金のタイミングがそれぞれ異なることには、注意が必要です。

①保健請求分の入金に時間がかかる
保険診療の場合、患者様の3割負担分は窓口で、残りの7割の診療報酬が入金されるのはおよそ2ヶ月後になります。高齢者の患者様が多い歯科クリニックであれば、さらに診療報酬の割合が増えるはずです。
一方で、治療に必要な経費の支払いは、診療報酬の入金よりも先に必要になるケースが多くなっています。

②自由診療は入金時期と計上時期が異なる
自由診療は、患者様から現金を受け取った時点ではなく、施術が完了した時点で利益を計上するのが原則です。特に矯正などの長期に及ぶ治療が多い場合は、資金の流れに混乱を生じることが考えられます。

③キャッシュレス決済の入金時期が会社により異なる
最近は医療機関でもクレジットカードなどのキャッシュレス決済が積極的に取り入れられるようになっています。便利な一方で、現金とは異なり、入金までに時間がかかることに注意が必要です。

④デンタルローンの利用が増えている
最近は、高額な自費診療ではデンタルローンを利用するケースが増えています。
デンタルローンを利用した場合、治療の単価が高くなるケースが多いものの、審査を受ける必要があるため、入金時期と収益計上の時期が異なります。

1-2.設備依存度が高い

歯科クリニックは、経営が設備に依存する傾向があるため、設備投資が欠かせません。
設備投資は、減価償却によって費用計上されるため、実際のに支払いのタイミングとはズレが生じます。資金繰りや納税資金に影響を与えるため、短期・長期的な視点で資金繰りを把握することが重要です。

歯科クリニックでは、ほぼすべての治療や処置に専用の医療機器を使用するほか、ユニットの数が診療できる人数の上限を決めます。さらに古くなった医療機器の入れ替えや、最新機器の導入など、一定の周期で大きな設備投資をすることが必要です。

一方で、設備投資をしてから利益が回収できるまでには時間がかかります。
大きな設備投資を行う場合は、必ず収支のシミュレーションを行い、設備投資が資金繰りに与える影響に注意しましょう。

特に注意が必要なのが、以下の2つのタイミングです。

① 歯科クリニックが成長期にあるとき
② 医療機器の入れ替えが必要な時期

歯科クリニックが成長期にあるとき
歯科クリニックの患者様が増え、規模が拡大傾向にある時期は、設備の増強を検討をすることも多いでしょう。しかし、成長期は医療機器だけでなく、人件費のほか、診療材料費、歯科技工料などの治療にかかる経費も増えます。一方で、利益が増えるには時間がかかります。
成長期にある時だからこそ、設備投資には慎重な検討が必要です。

②医療機器の入れ替えが必要な時期
歯科クリニックで使う医療機器には、法定耐用年数が定められており、故障をしたり、ある程度の期間を経たら入れ替えが必要です。使用可能年数とは異なるため、法定耐用年数を過ぎるとただちに使用できなくなるわけではありませんが、ひとつの目安といえるでしょう。

高額な歯科医療機器には、以下のようなものがあります。

歯科医療機器費用の目安法定耐用年数
歯科用ユニット200万~500万円7年
パノラマX線装置(デジタル)300万~800万円6年
口腔内スキャナー100万~800万円6年
歯科用レーザー治療器80万~800万円以上6年

歯科用ユニットは複数台を所有することが一般的であるため、入れ替えが必要な時期が重なります。
状況によっては、中古の医療機器の導入や入れ替えの時期をずらすなどの対策を検討しましょう。

1-3.経営が院長に依存する傾向がある

多くの場合、歯科クリニックでは、患者様の治療と経営で院長先生に大きな負担がかかります。もしトラブルが起きた場合に、乗り切るための対策を考えておくことが必要です。

特に院長先生だけで診療を行っている歯科クリニックの場合は、院長先生に対する依存度が高く、急病などのトラブルがあれば、休業せざるを得ません。そうなった場合でも、家賃や人件費、借入金の返済などの支払いは待ってくれません。

常に資金繰りを把握し、どの程度の期間持ちこたえられるか知っておくことで不測の事態に備えておきましょう。


歯科クリニックの税務顧問

2.歯科クリニックが資金ショートしないための6つの対策

歯科クリニックが資金ショートしないためには、日常的な対策が必要です。

  • 資金繰り表を作成する
  • 正確なレセプト業務を行う
  • 適切な在庫を心掛ける
  • 計画的な設備投資を行う
  • 運転資金に余裕を持つ
  • 専門家のアドバイスを受ける

2-1.資金繰り表を作成する

月次で資金繰り表を作成し、常に資金の流れを把握しておくことが基本的な資金繰り対策です。

患者様から窓口で受け取る現金のほか、後日入金される健康保険に分かれます。最近はクレジットカードの利用が増えているため、入金月にずれができることも無視できません。
支払うべき固定費や診療材料費、歯科技工料の負担が大きいことも歯科クリニックの特徴といえます。

資金繰り表を作成することで、資金が不足しそうな時期が予測できるため、あらかじめ融資を受けたり、支払いサイトを見直すなどの対策を取ることが可能です。

2-2.正確なレセプト業務を行う

レセプトによる診療報酬の入金は、概ね2か月先です。しかしミスがあって返戻があれば、請求し直すことになり、入金までさらに1~2か月かかることなります。

それぞれは少額かもしれませんが、積み重なるとその影響は無視できません。ミスが頻発している場合は、その原因を明確にし、未然に防ぐ対策を取りましょう。

レセプトを作成する場合は、次の5つのポイントに注意が必要です。

①スタッフにルールの再確認をする
返戻では、初診算定ルールの誤りや摘要欄に算定に必要な事項が記載されていないなどの基本的なミスが多く見受けられます。
基本的なルールを確認し、研修や教育を行うほか、マニュアルの作成を作成することでミスを防ぐことにつながります。

②患者様へ保険資格の確認を行う
レセプトに患者様の保険資格が正しく反映されていない場合、返戻される原因になります。
窓口での保険証の確認を定期的に行うほか、オンライン資格確認(マイナ保険証などによる確認)を利用することで、返戻を減らすことが可能です。

③チェック体制を強化する
入力ミスや記載漏れ、入力の重複による返戻を防ぐためには、チェック体制の強化が有効です。担当者一人の入力で終わらせずに、別のスタッフによるダブルチェックを行うようにしましょう。

提出前のレセプトの点検時にとどまらず、日々の入力内容もチェックできれば理想的です。

④診療報酬改定にスムーズに対応する
2年に1度行われる診療報酬の改定に対応できていないと、返戻の原因になります。
自動更新されない電子カルテやレセコンを導入している場合は、更新の作業や依頼を行うほか、内容をスタッフに周知しましょう。

⑤チェックシステムが充実してるレセコンを導入する
記載漏れなどのレセプトの単純なミスは、チェック機能が充実しているレセコンであれば、ある程度防ぐことが可能です。

2-3.適切な在庫を心掛ける

在庫は多すぎてもよくありませんが、欠品を起こすことも問題です。しっかりと管理することで、適切な在庫を心掛けましょう。

多すぎる在庫は、資金繰りに悪影響を及ぼします。使用期限があるものは、期限が切れてしまえば、処分せざるを得ません。
一方で、欠品を起こし治療ができないということになれば、予約をしていた患者様に迷惑をかけることになります。その結果、歯科クリニックの評判に影響を与えることも考えられます。

在庫は、専用の場所にルールを決めて保管し、週に1回など、定期的に在庫状況をチェックするようにします。目視や特定のスタッフの記憶に頼ることなく、在庫管理表を作成し、在庫の数はもちろん、購入した日付や使用期限を一覧で確認できるようにしましょう。在庫量の目安を決めておき、目安を下回ったら発注するなど、過剰在庫を防ぎ、適切な量を維持することができます。

必要に応じて、在庫管理システムを利用するのもいいでしょう。

2-4.計画的な設備投資を行う

歯科クリニックには高額な医療機器が多く、資金繰りに大きな影響を与えます。

医療機器は性能も重要ですが、入れ替えとなる時期も踏まえて、新品の医療機器のほか、中古機器の導入やリースも含めた選定が必要です。
また、税理士などの専門家に相談することで、利用できる補助金や助成金についてアドバイスを受けることにもつながります。長期的な目線で、より有利に導入する方法を検討しましょう。

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2-5.運転資金に余裕を持つ

歯科クリニックの経営が安定していると感じている場合でも、運転資金に余裕を持つことは大切です。運転資金に余裕を持つことで、トラブルがあっても影響を最小限にとどめることができます。

一般的には、安定期に入っている歯科クリニックであれば3カ月、新規開業の場合は、6か月分程度の月間固定費の確保が目安とされています。ただし、経営が多様化しているため、すべての歯科クリニックに当てはまるわけではありません。

詳しくは顧問税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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2-6.専門家のアドバイスを受ける

歯科クリニックの資金繰り対策は、歯科業界にくわしい税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

歯科クリニックの資金繰りには、幅広い知識が必要です。固定費の見直しから、財務状況の把握から問題点を洗い出し、必要に応じて資金調達のアドバイスも必要になります。
歯科業界にくわしい税理士などの専門家のアドバイスを受けることで、適切な資金繰りのほか、助成金などの提案をうけることが可能です。


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歯科クリニックの税務顧問

4.まとめ

本記事では、歯科クリニックが日常的に資金繰り対策の重要性を解説しました。
もう一度、振り返ってみましょう。

  • 歯科クリニックが資金繰りを考えるべき3つの理由
  • 現金の動きが複雑になっている
  • 設備依存度が高い
  • 経営が院長に依存する傾向がある
  • 歯科クリニックが資金ショートしないための6つの対策
  • 資金繰り表を作成する
  • 正確なレセプト業務を行う
  • 適切な在庫を心掛ける
  • 計画的な設備投資を行う
  • 運転資金に余裕を持つ
  • 専門家のアドバイスを受ける

歯科クリニックでは、日常的に資金繰りを意識し、あらかじめ対策を取ることが非常に重要であることがご理解いただけたかと思います。
資金繰りに不安をお持ちの歯科クリニック様のご参考になれば幸いです。