税務調査の連絡依頼票が届いたら?放置NGな理由と初動対応の注意点

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監修者 宇都宮健太

こちらのページをご覧の方の中には、税務署から突然「連絡依頼票」という見慣れない書類が届き、戸惑っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この通知は、税務調査の前触れともいえるもので、適切に対応しなければ思わぬトラブルを招く可能性があります。

本記事では、連絡依頼票が届いた際の正しい対応方法や、税務調査官とのコミュニケーションのポイントまでわかりやすく解説します。


1.連絡依頼票とは

連絡依頼票とは、税務署が納税者に対して連絡を求めるために送付する通知書です。
この書面は、税務署が電話連絡を試みたものの連絡が取れなかった場合や、直接訪問しても不在だった場合などに送付されるもので、「税務署までご連絡ください」という内容が記載されています。

なお、最近では税務署や国税庁をかたる不審な書面が届くケースも報告されているため、届いた際にはまず差出人や内容に不自然な点がないか確認することが大切です。そして、正規の文書であることが確認できた場合には、放置してしまうと調査への協力姿勢がないと判断される可能性があるため、できるだけ早めに対応することをおすすめします。

連絡依頼票には、税務署の名称、担当部署、担当者名、連絡先電話番号などが記載されていますが、調査の具体的な内容(対象期間や税目)は明記されていないことが一般的です。

※顧問税理士がいて、税務代理権限証書を添付した確定申告書を提出している場合は、顧問税理士の方へ税務調査に関する連絡が届くこととなります。
税務代理権限証書については、下記の記事をご参照ください。

税務調査で税理士のサポートを受けるなら!税務代理権限証書を知っておこう

1-1.調査通知との違い

連絡依頼票と調査通知は明確に異なるものとなっており、連絡依頼票あくまで連絡を求める文書であるのに対し、調査通知は正式な税務調査の告知となっています。

調査通知には、税務調査の税目、対象期間が明記されています。これは法令上、税務調査を行う前に納税者へ通知することが義務付けられているためです。一方、連絡依頼票にはこうした詳細情報は含まれておらず、単に「連絡してください」という依頼のみとなっています。

流れとしては、税務署がまず電話で連絡を試み、連絡が取れない場合に連絡依頼票を送付します。その後、納税者から連絡があった時点で、調査の詳細を説明し、正式な調査通知へと進むのが一般的です。


2.連絡依頼票が届いたら放置せずに早めに税務署へ連絡しましょう

連絡依頼票を受け取ったら、税務署を装った詐欺の可能性もあるため、まず差出人や内容に不審な点がないかを確認しましょう。
そして、正規の文書と確認できた場合は、できるだけ早めに指定された税務署へ連絡することが大切です。

連絡依頼票を放置してしまうと、税務署は再度の連絡や督促を行い、それでも反応がない場合には無予告で調査に訪れることもあります。このような状況になると、あらかじめ準備する時間もなく、突然の税務調査に対応せざるを得なくなります。協力的でない納税者と見なされることで、より厳格な調査が行われるおそれもあります。

一方、速やかに対応できれば、書類の準備や自社の状況確認を行う時間的余裕が生まれます。また、申告内容に誤りがあった場合でも、自主的に修正申告を行うことで、追徴課税のペナルティの軽減も期待できます。

放置せず3章に述べるような注意点に気を付けて連絡を取ることで、調査への協力姿勢を示すことができ、調査官へ好印象を与えることにつながるでしょう。


3.税務調査官とのやり取りで注意すべきポイント

連絡依頼票を受け取った後のやり取りで押さえておきたいポイントについて、ここでは解説します。冷静かつ礼儀正しく対応し、必要な情報を的確に聞き出すことが重要です。

3-1.担当者名と連絡先を正確にメモしておく

初回連絡時は、担当者の氏名、所属部署、連絡先を正確にメモしておくことが重要です。これにより、後日の問い合わせや連絡がスムーズになります。

担当者情報を確認する理由は、単に連絡を取りやすくするためだけではありません。近年、税務署職員を装った詐欺事件も発生しているため、セキュリティ対策としても有効です。本当に税務署からの連絡なのか確認するために、公式の税務署代表番号に折り返し電話しましょう。

担当者との会話では、次のような点を確認しましょう。

  • 担当者のフルネームと役職
  • 所属部署
  • 直通電話番号または内線番号
  • 調査対象の税目(この段階では詳細を明かさないこともある)

これらの情報は、今後の連絡や準備のために必ず記録しておきましょう。

3-2.調査対象期間と提出期限を確認する

初回の電話では、調査対象となる期間(年度)と必要書類を確認することも重要です。これにより、どの年度のどの資料を準備すべきかが分かります。

税務調査の対象期間は、通常、法定申告期限から3年以内の期間ですが、重大な誤りがある場合や悪質な脱税が疑われる場合には5年、さらに悪質な場合は7年まで遡って調査されることがあります(国税通則法第70条より)。

電話の段階で対象期間を可能な限り確認しておくことで、準備すべき資料の範囲を絞り込むことができます。
また、事前に書類提出が求められた場合は、提出期限を必ず確認しましょう。例えば、総勘定元帳、現金出納帳、請求書や領収書のコピーなどが要求されることがあります。

期限に間に合わない可能性がある場合は、その場で正直に伝え、期限の延長を相談することも大切です。

3-3.調査日程の交渉の際は繁忙期を示して複数候補日を提示する

税務調査の日程は、納税者側の都合も考慮して決められます。そのため、適切に交渉することで自社の業務に支障が少ない日程を選ぶことができます。

税務調査日程を交渉する際には、決算期直後や大型プロジェクトの稼働時期など、自社の繁忙期、重要な業務イベントがある時期を避けることを考えましょう。事情を具体的に説明することで、調査官も理解を示してくれることが多いです。

また、日程調整の際には、税理士の立ち会いも考慮する必要があります。税理士の予定も確認した上で日程を提案することで、専門家のサポートを受けながら調査に臨むことができます。


4.税理士と連携して税務調査に備えよう

税務調査に適切に対応するためには、税務の専門家である税理士との連携が不可欠です。連絡依頼票を受け取ったら、まずは税理士に連絡し、今後の対応について相談しましょう。

税理士に連絡する際は、連絡依頼票の内容、税務署担当者との会話内容などの情報を正確に伝えましょう。過去の申告内容に不安がある場合は、早い段階で相談することで、必要に応じて修正申告などの対策を講じることができます。
また、税務調査前の準備段階から調査当日の対応、調査後のフォローアップまで、税理士は一貫したサポートを提供してくれます。

具体的には、以下のようなサポートを受けることができます。

  • 必要書類の洗い出しと準備のアドバイス
  • 過去の申告内容の再確認と潜在的な問題点の洗い出し
  • 調査官からの質問に対する回答の準備
  • 調査当日の立会いと専門的な質問への対応
  • 調査結果に基づく対応策の提案

多くの税理士事務所では、税務調査対応のスポット依頼も受け付けています。税理士は税務調査時に納税者の立場を適切に代弁してくれるため、税務当局と納税者の誤解や行き違いが防止され、より円滑に対応を行うことが可能となります。


5.まとめ

税務調査の連絡依頼票を受け取った際の適切な対応について解説してきました。
連絡依頼票を受け取ったら内容を確認し、放置せずに速やかに対応することが重要です。指定された税務署の担当者に連絡し、調査の目的や対象期間を確認しましょう。その上で税理士に相談し、サポートを得ながら誠実に調査に協力する姿勢を示すことで、円滑な税務調査の実現と潜在的なリスクの軽減につながります。

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