税務調査の流れを解説!スムーズに税務調査を乗り切るポイントとは?

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監修者 宇都宮健太

「税務調査が入ることになった!」

突然連絡が来て、税務調査を行うことを告げられたら、焦ってしまう人は少なくないでしょう。

まずは、落ち着いて税務調査の流れを押さえることをおすすめします。
税務調査は、概ね以下の流れで進行します。

本記事では、税務調査の流れについて、わかりやすく解説しています。

税務調査の流れをしっかりと把握することで、準備すべきことがわかり、落ちついて税務調査に対処することができるようになるはずです。


1.税務調査には任意調査と強制調査がある

税務調査には、任意調査強制調査があります。

任意調査

納税者の協力によって行われる税務調査です。
「任意」とはいっても、税務調査には受忍義務があります。調査を拒否したり、帳簿や書類の提示を拒むなど、税務調査に応じない場合は、罰則を科されることもあります。

強制調査

国税局査察部が実施する調査で、裁判所の令状により強制的に行われます。
深刻な脱税行為が疑われている場合などに実施され、刑事事件として立件されることも少なくありません。

一般的に税務調査という場合は、任意調査を指します。不正行為や悪質な脱税が疑われている場合に行われるのが強制捜査です。


2.税務調査の流れを7つのステップで確認

まずは、税務調査の日程について確認しておきましょう。

2-1.税務調査の準備

税務調査が決まったら、4つのステップで当日に向けて準備をします。

 

STEP1:税務署から通知を調査通知を受ける

税務調査が行われる場合、最初に調査対象者、もしくは顧問税理士に対し、調査通知が行われます。

調査通知では、次の内容を伝えられます。

・税務調査(実地調査)を行うこと
・調査対象期間
・調査対象の税目

※顧問税理士がおり、税務代理権限証書を提出している場合、調査通知、事前通知ともに調査対象者ではなく、顧問税理士が通知を受けます。

税務代理権限証書とは?
税理士・税理士法人が税務手続きを代行する権限があることを証明する書類。税務官公署に提出する。

税務代理権限証書の詳細はこちら
税務調査で税理士のサポートを受けるなら!税務代理権限証書を知っておこう

STEP2:税務調査の日程を決定

調査通知受け、税務調査の日程を調整します

業務の状況や、税務調査の準備期間、顧問税理士の予定を踏まえて日程の調整をしましょう。

STEP3:税務署から事前通知を受ける

調査対象者もしくは、顧問税理士に対し事前通知が行われ、税務調査の詳細が伝えられます。

事前通知では、主に次の内容を伝えられます。

・調査を開始する日時
・調査を行う場所・調査の目的
・調査の対象となる税目
・調査の対象となる期間
・調査の対象となる帳簿書類その他の物件
・その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

税務調査が行われる時期について、詳細はこちら
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STEP4:書類を準備する

税務調査に備え、指定された事業年度の過去3年間の帳簿や書類、資料を揃えます。

事前に税務署から必要な書類や資料を指示された場合は、しっかりと準備しておきましょう。
会社規模や業界・業種、状況にもよりますが、以下の書類の提出を求められることが多いようです。

・総勘定元帳(帳簿)
・現金預金出納帳
・在庫票
・納品書
・領収書の控え
・請求書
・契約書
・稟議書
・株主総会や取締役会等の議事録
・勤怠管理表
・源泉徴収簿
給与台帳 など

上記以外の書類を求められることもあります。提出が想定される資料は、あらかじめ準備しておましょう。用意した資料に不足があった場合は、税務調査の期間が長引くことも考えられます
税務調査後、調査官が書類を預かることもあるので、業務に必要な書類は、あらかじめコピーをとっておくと安心です。

また、顧問税理士がいる場合は、想定される質問のシミュレーションをしておくことも有効です。

帳簿や書類を用意する際には、改めて申告内容を見直しておきましょう。もし、申告の不備や間違い、申告漏れが見つかった場合は、税務調査の前に修正申告や期限後申告をすることも検討します。事前に申告しておくことで、税務調査後に修正申告を行うよりもペナルティを軽減することが可能です。

なお、これまで数多くの税務調査を立ち会ってきた経験から、8割以上の税務調査は過去3年分の調査で済んでいるようです。しかし、状況によっては5年間、重大な事実が判明した場合は、7年間遡ることもあります。

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2-2.税務調査当日

税務調査当日は、調査官が会社や事務所など指定された場所に訪問し、税務調査が行われます。

指示に従い、資料を提出したり、質問に答えるなど、求めに応じた適切な対応が必要です。
税務調査期間の詳細は、「第3章 税務調査当日の流れ」で解説しています。

2-3.税務調査終了後

税務調査(実地調査)終了後の流れについて3つのステップで解説します。

 

STEP5:税務署の指摘に回答する

税務調査が終わっても、税務署から問い合わせがあったり、追加で資料の提出を求められることがあります。

税務調査が終わっても、調査官が持ち帰った資料により、調査・検討が続いています。結果が来るまでは、油断をせずに税務署からの指摘に適切に対処しましょう。

STEP6:調査結果の通知

税務調査から1~2週間を目安に税務調査の結果が通達されます。
なお規模が大きい会社や問題が見つかった場合は、3か月程度かかることもあります。

税務調査の結果は、3つに分かれます。

調査結果
内容
是認申告是認申告内容に修正すべき点がなかった場合。書面で申告是認通知書が届く。
否認修正申告税務調査で問題点が見つかり、調査員から、修正申告を行うことをすすめられる。修正申告は、義務ではない。
更正納税者が修正申告しなかった場合に、税務署によって問題点を修正されること。更正通知書が届くので、記載されている税額を納める。

税務調査の結果を受けて、必要に応じた対処を行います。

STEP7:結果に合わせた対応をする

税務調査の結果による対処について、くわしく解説します。

税務調査の結果は、大きく「是認(修正すべき点がない)」「否認(誤りがあった)」に区別されます。

  • 是認された場合
    対応の必要はありません。税務調査は完了です。

  • 否認された場合
    税務署から修正申告を打診されます。
    その内容が妥当であれば、修正申告書を作成・提出し、不足分の税金や必要に応じて延滞税、過少申告加算税などを納め、税務調査は完了です。

    修正申告を行わなかった場合、税務署による更正となります。
    更正通知書が届くので、記載されている税金を支払います。内容に納得できない場合は、再調査請求をしたり、不服申し立てをすることが必要です。

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3.税務調査当日の流れ

税務調査当日の流れをくわしくみていきましょう。

3-1.聞き取り調査(初日の午前中)

午前10時ごろに調査官が訪れ、聞き取り調査がはじまります。

最初は、雑談や世間話から始まるケースが多いようです。
ただし、さりげなく経営状態や業務内容、社長の私生活などについて触れてくることも少なくありません。発言の内容には注意が必要です。
何げない会話から、経営者の経済状況や不審な点などを探り、調査を行うべき内容を絞っている可能性もあります。

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3-2.帳簿や書類などの調査(初日午後~)

本格的な税務調査が開始します。

帳簿や書類だけでなく、現金の管理状況、棚卸資産のほか、金庫の中身やメールの内容、仕事の現場、会社関係者への聞き取りなど、必要に応じてさまざまな確認を行います。

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3-3.問題点や指摘事項、今後について説明(最終日)

税務調査の最終日には、調査官から今後の対応に関する説明や調査で見つかった問題点などについて話があります。


4.税理士が教えるスムーズに税務調査を乗り切る6つのポイント

税務調査を無事に乗り切るためには、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。
6つのポイントを紹介します。

  • 雑談も聞き取り調査であることを心がける
  • 調査に誠実に対応する
  • 無責任な発言をしない
  • 否定すべきことは否定する
  • ミスは、税務調査の前に対処しておく
  • 顧問税理士を持つ

4-1.雑談も聞き取り調査であることを心がける

調査官との雑談も含め、発言のすべてが税務調査と考えましょう。

あからさまに警戒する必要はありませんが、自分が話している内容が適切かを常に意識しておくことが必要です。経営者の交友関係や家族構成、趣味など、税務調査とは関係ないように思えることでも、調査のヒントとなっている可能性があります。

4-2.調査に誠実に対応する

税務調査官には、誠実に対応し、協力する姿勢を示しましょう。

無礼な態度や非協力的な姿勢をとると、税務調査官の信頼を失うことになりかねません。その結果、隠しごとがあるのではないかと不信感を持たれ、厳しく追及されることもあります。

誠実に礼儀正しく接することは、調査官との信頼関係を築き、円滑に税務調査をすすめるためにも大切です。

4-3.無責任な発言をしない

調査官の質問には、正確に答え、無責任にその限りの回答することは避けます。

想定外のことを聞かれて慌ててしまった場合でも、確認が必要なことは時間をもらい、正確に回答することが必要です。回答に時間がかかる場合は、無理に調査期間中に回答せずに後日回答する旨を伝えましょう。

無責任な回答や曖昧な発言をすると、つじつまが合わなくなってしまう可能性もあります。その結果、不信感を持たれ、厳しく追及されることになるかもしれません。虚偽の回答は、罰則を受ける可能性もあります。

4-4.否定すべきことは否定する

調査官に言われたことが間違っている場合は、否定をすることも必要です。

調査官がかまをかけるような質問をしてくることもあります。ミスによる間違いであっても、「故意にやったのではないか」などと決めつけられると認めてしまいたくなるかもしれません。
事実ではないことには、きっぱりと否定することも大切です。

4-5.ミスは税務調査の前に対処しておく

税務調査の前に、申告の内容を見直しておきましょう。

もし、事前に申告漏れや申告ミスが見つかった場合は、税務調査前に修正申告や期限後申告をしておくことをおすすめします。
事前に修正申告をしておくことで、税務調査で指摘されてから対応するよりもペナルティを軽減することが可能です。

4-6.顧問税理士を持つ

顧問税理士がいれば、税務調査のサポートが可能です。

顧問税理士のサポートを受けることで、スムーズな税務調査のための準備ができるだけでなく、税務調査当日に立ち会ってもらうことができます。調査官に対し、的確に対応できる顧問税理士の存在は、力強い味方になるでしょう。


5.税務調査に不安をお持ちの方は、辻・本郷 税理士法人にご相談ください

辻・本郷 税理士法人は、税務調査の際、心強い味方になることをお約束します。

すべての税理士が、税務調査に関して経験や知識が豊富なわけではありません。
必要に応じて、的確な判断や対応ができなければ、多くの問題点を指摘され、多額の追徴課税を請求される可能性もあるのです。

国税庁OBが90名以上在籍する辻・本郷 税理士法人は、税務調査に対する圧倒的な強さがあります。
急な税務調査にも確固たる対処ができるので、どうぞご安心ください。

税務調査の事前通知から、税務調査が完了するまで、全力でサポートします。


6.まとめ

本記事では、税務調査の流れについてまとめました。
もう一度、振り返ってみましょう。

  • 税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。
    一般的な税務調査は、任意調査のことを指します。
     
  • 税務調査の全体の流れは、以下の通りです。
  • 税務調査を無事に乗り切るための6つのポイントを紹介します。
  • 雑談も聞き取り調査であることを心がける
  • 調査に誠実に対応する
  • 無責任な発言をしない
  • 否定すべきことは否定する
  • ミスは、税務調査の前に対処しておく
  • 顧問税理士を持つ

税務調査を受ける場合は、その流れを把握し、充分に準備することが大切です。
不安をお持ちの方のご参考になれば幸いです。