デジタル遺言(保管証書遺言)導入へ!閣議決定された民法改正案をわかりやすく解説

デジタル遺言(保管証書遺言)って何?」

遺言制度は今まで「自筆」し「押印」することで効力が発生することを要件としてきましたが、2026年4月、スマホやPCで遺言を作成できるデジタル遺言(保管証書遺言)を盛り込んだ、民法等の一部を改正する法律案を閣議決定しました。

これまでの遺言制度は、自筆で書く「自筆証書遺言」か、公証役場で専門家が作成する「公正証書遺言」の2つが主流でした。今回の改正案では、3つ目選択肢としてより手軽に安全に遺言を作成できる「デジタル遺言(保管証書遺言)」が導入されます。

この記事でわかること

  • デジタル遺言(保管証書遺言)とはどのようなものなのか
  • 【項目別比較表】従来の2つの遺言制度と比較して何がちがうのか
  • いつから運用が始まるのか

本記事が、デジタル遺言(保管証書遺言)についての理解を深め、ご自身とご家族の未来を守るための一助となれば幸いです。

■(参考)法務省HP『法制審議会第204回会議(和8年2月12日開催)

※同時に閣議決定された、「成年後見制度の改正」については、成年後見人に関する民法改正案を政府が閣議決定!後見人制度はどう変わる?で詳しく解説しています。

1.デジタル遺言(保管証書遺言)のメリット

デジタル遺言(保管証書遺言)のメリットについて、解説します。

1-1.【メリット①】手書きでなくてもOK!PCやスマホで「遺言書」が作れる

デジタル遺言(保管証書遺言)は、PCやスマートフォンでの遺言の作成が認められます。

作成方法については、電磁的記録(データ)として作成するか、プリントアウトした書面とするかを選択できます。

これにより、筆記が苦手な方でも、キーボード入力や音声入力が可能になるため、スムーズに作成できるようになります。また、手書きと違い、記載ミスをした際の修正も容易です。

自筆証書遺言では、財産目録を除いて文章を紙に自書しなければなりませんでした。長い文章を手書きで書き上げるのは、身体的な負担が大きく、また、一文字間違えただけで、二重線、訂正印、付記、署名といった決まりにしたがって訂正しなければなりませんでした。

「遺言書を書きたいけれど、手書きするのは大変……」と諦めていた方にとって、デジタル遺言(保管証書遺言)は使い勝手が良いでしょう。

1-2. 【メリット②】法務局に行かなくてOK!オンラインですべての手続きが可能

デジタル遺言(保管証書遺言)では、法務局に行かずにオンラインですべての手続きを行うことが可能となります。

デジタル遺言(保管証書遺言)では、スマホやPCがあれば、自宅からすべての手続きを進められます。「法務局が遠い」「足腰が弱くて外出が難しい」といった理由で準備を諦めていた方でも、負担なく手続きを完了できます。

また、自筆証書遺言保管制度についても、オンラインできるようになる見通しです。

公証人が作成する「公正証書遺言」については、すでに2025年10月から、作成手続きがデジタル化され、オンライン(Web会議)で公証役場へ行かずに作成・電子保存が可能になっています。
■日本公証人連合会 2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!

1-3.【メリット③】法務局にデータを「保管」されることで、効力を持つ仕組み

デジタル遺言は「保管証書遺言」という名前のとおり、法務局にデータを「保管」されることで効力を持つ仕組みです。

自筆証書遺言は、せっかく作成しても、紛失してしまったり、相続人が遺言の存在に気付かなかったりするリスクがありました。また、自筆証書遺言書を法務局に保管する「自筆証書遺言書保管制度」も2020年からスタートし、2024年には23,419件ありました。

デジタル遺言(保管証書遺言)は、法務局に保管されることで、効力を持ちます。
また、遺言者が亡くなった後、一定の場合に法務局から相続人等へ「遺言書を保管している旨」が通知される「通知制度」が設けられる予定です。

2.デジタル遺言(保管証書遺言)利用の流れ

本章では、デジタル遺言(保管証書遺言)を利用する際の流れを紹介します。

遺言の全文読み上げ

デジタル遺言(保管証書遺言)では、法務局の担当者(保管官)の前で「遺言の全文の読み上げ」を行うことが要件となっています。

これにより、遺言者が内容を正しく理解し、自身の自由な意思で作成したことを直接的に証明することがでます 最後は「人の目と声」で確認することで、デジタル遺言(保管証書遺言)の法的な信頼性を担保する仕組みです。
なお、利用者の負担軽減のため、ウェブ会議システムを利用した非対面での本人確認や全文口述も認められます 

また、病気や障害によって話すことが困難な方については、通訳人の立ち会いや筆談(ひつだん)などの代替手段が認められる見通しです。

3.【比較表】従来の遺言との違い

本章では、今回導入される「デジタル遺言(保管証書遺言)」と、従来からある「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を、項目別に比較した表を掲載しています。

※この他に『秘密証書遺言』という方式もありますが、手続きの煩雑さなどから利用者が非常に少ないため、本記事では主要な3つの制度に絞って解説しています。

比較項目デジタル遺言
(保管証書遺言)
自筆証書遺言公正証書遺言
(専門家作成)
作成方法PC・スマホで作成原則手書き公証人が作成
デジタル化未定
(※1)
2025年10月より開始されている
押印不要廃止予定(署名のみ)紙:必要(公証人の前で押印)
デジタル:不要(電子署名で完結)
裁判所での「検認」不要必要
保管制度の場合は不要)
不要
費用未定(※2)無料
(保管制度は3,900円)
数万円~
(財産額による)
安全性法務局で保管紛失・形式不備のリスクあり
(保管制度を利用した場合は法務局で保管)
公証役場で保管
内容の有効性は担保される

※1「作成」は手書きのままですが、法務局へ預ける手続きが2028年度中にオンライン化される予定です。
※2 現時点では未定ですが、現在法務局が行っている「紙の遺言の保管」が1件3,900円ですので、それと同程度の水準になる可能性があります。

4.スケジュール

本章では、閣議決定からのスケジュールについて解説します。
今回の「閣議決定」はあくまで政府としての方針が固まったという段階です。明日からすぐに制度が変わるわけではありません。

民法等の一部を改正する法律案要綱によれば、この法律は、「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で 定める日」とされています。

実際に私たちが、スマホやPCを使って自宅から遺言を準備できるようになるのは、まだ先になりそうです。

5.まとめ

ここまで、デジタル遺言(保管証書遺言)のメリット、利用の流れ、従来の制度との比較、運用スケジュールについて解説してまいりました。

これまでの遺言は、自分で作成する自筆証書遺言か、公証役場で作成する公正証書遺言の2択が主流でしたが、デジタル遺言(保管証書遺言)は、手軽さと安全さを兼ね備えた「3つ目の選択肢」となります 。スマホやPCの活用により、より手軽に、そしてより便利に将来への備えができるようになります 。

また、今回の改正案では、デジタル遺言(保管証書遺言)の導入とともに、成年後見制度についても、本人の意向をより尊重し、必要な範囲で柔軟に利用できるよう見直しが行われました 
「生きている間の安心(成年後見制度)」と「亡くなった後の安心(遺言)」の両面で柔軟な選択が可能になることで、老後の安心に向けた包括的な準備がよりスムーズに行えるようになると期待されています。

成年後見制度について詳しく知りたい方は、成年後見人に関する民法改正案を政府が閣議決定!後見人制度はどう変わる?もぜひ併せてご覧ください。

本記事が、デジタル遺言(保管証書遺言)についての疑問解消の一助となれば幸いです。

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