
「親が亡くなったら、相続税を払わなければいけないの?」
「相続が発生したときにかかる税金って相続税以外にもあるの?」
「財産を相続すると、自分自身の住民税や所得税が上がってしまうのだろうか」
身近な方が亡くなった際、多くの方が不安に思うことの一つが「税金」のことではないでしょうか。
遺産相続にまつわる税金は、実は「相続税」だけではありません。
相続税のほかにも、不動産の名義変更の際にかかる実費のような税金もあれば、亡くなった方が支払うはずだった所得税などを相続人が「肩代わり」して納めなければならないケースもあります。
この記事を読むとわかること
- 遺産相続をした際にかかる可能性がある税金の種類一覧
- お亡くなりになった方が支払うはずだった未払い税金と、相続税の軽減につなげる方法(債務控除)
- 遺産相続にまつわる税金についてのよくあるQ&A
「相続が発生したけど、税金について何から手をつければいいか分からない」という方も、まずはこの記事で全体像を把握し、一つずつ不安を解消していきましょう。
本記事が、複雑な相続税務の不安を解消し、スムーズな手続きを進めるための一助となれば幸いです。
目次
1.遺産相続をしたらかかる可能性がある税金一覧
下の表は、遺産相続をしたらかかる可能性がある税金一覧です。
「全部かかる」わけではなく、状況によってかかる税金が決まります。
ご自身の状況(相続財産の額や、不動産の有無など)に合わせて「どの税金を、いつまでに支払う必要があるのか」をざっくりチェックしてみましょう。詳細については、次章以降で解説していきます。
| 税金の種類 | どんな時にかかる? | 支払い期限 |
|---|---|---|
| 相続税 | 相続財産総額が「基礎控除額」を超えたとき | 亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 所得税 (準確定申告) | 亡くなった方に所得があり、準確定申告が必要なとき | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 所得税 (譲渡所得) | 相続した不動産や株を売って利益が出たとき | 売却した翌年の3月15日まで |
| 固定資産税 住民税 | 亡くなった方が支払うはずだった分が残っているとき | 各自治体の納付期限どおり |
| 個人事業税 | 亡くなった方が一定規模以上の事業を行っていたとき | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 消費税 | 亡くなった方が個人事業主で、課税事業者だったとき | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 登録免許税 | 相続した不動産(家・土地)の名義を変更するとき | 相続したことを知った日から3年以内 |
| 印紙税 | 相続財産の売買契約書などの書類を作成したとき | – |
2.相続税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の1つ目は、相続税です。
| 税金の種類 | 相続税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 相続財産総額が「基礎控除額」を超えたとき |
| 支払い期限 | 亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 納付先 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 |
| 関連リンク | ■辻・本郷相続ガイド 相続税はいくらからかかる? |
相続税は、亡くなった人の財産を譲り受けた際、その財産の総額が「基礎控除額」を超える場合にかかる国税です。
計算式
基礎控除額=3,000万円 + (600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が1人であれば、基礎控除額は、3,000万円 + (600万円×1人)=3,600万円となります。
相続する財産がこの金額以内であれば相続税はかからず、申告の必要もありません。
ただし、配偶者控除などの特例を利用して税額をゼロにする場合は、申告が必要になるため注意が必要です。
相続税がかかるのかどうか知りたい場合には下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続税はいくらからかかる?判断する方法を相続専門税理士が解説
簡単に相続税のおおよその金額を知りたい場合には下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド【2025最新版】相続税計算シミュレーション14選
3.所得税(準確定申告)
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の2つ目は、所得税(準確定申告)です。
| 税金の種類 | 所得税(準確定申告) |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 亡くなった方に所得があり、準確定申告が必要なとき |
| 支払い期限 | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 納付先 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 |
| 関連リンク | ■辻・本郷相続ガイド 準確定申告とは?方法や期限、よくある質問もわかりやすく解説 |
準確定申告とは、亡くなった人が本来するはずだった確定申告と納税を、相続人が代わりに行う手続きです。
生前に確定申告が必要だった方が亡くなった場合、相続人が代わりに申告と納税をすることになります。
確定申告が必要な方の条件は国税庁ウェブサイト 確定申告が必要な方に掲載されています。
期限は、亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内と非常に短いため、該当する場合には注意が必要です。
※知っておきたい税負担軽減のポイント|債務控除
相続人がお亡くなりになった人の代わりに支払った税金は、相続税を計算する際に相続財産から差し引くことができます。
これを「債務控除」といい、これによって相続税の負担を軽減することができます。
税金を払った際の領収書は、相続税申告の際、根拠資料として添付が必要ですから、必ず保管しておきましょう。詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続財産から引いて計算できるもの「債務控除」
4.所得税(譲渡所得)
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の3つ目は、所得税(譲渡所得)です。
所得税(譲渡所得)は、相続した不動産や株式を売却して利益が出たときにかかる税金です。
| 税金の種類 | 所得税(譲渡所得) |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 相続した不動産や株を売って利益が出たとき |
| 支払い期限 | 売却した翌年の3月15日まで |
| 納付先 | 売却した相続人の住所地を管轄する税務署 |
| 関連リンク | ■国税庁 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
所得税(譲渡所得)は、売却価格から、亡くなった方がその資産を手に入れた時の代金(取得費)などを差し引いて、利益(譲渡益)が出た場合に課税されます。
もし相続税を支払った後に売却する場合、「相続税額の取得費加算の特例」という制度を使えることがあります。これは、支払った相続税の一部を「経費」として認め、所得税(譲渡所得)を軽減できる制度です。売却を検討している場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
■国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
また、古い実家の売却を検討しているなら「相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」も確認しておきましょう。
■国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
ただし、上記の「相続税額の取得費加算の特例」と「相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」は選択制です。併用はできませんので、ご注意ください。
5.固定資産税、住民税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の4つ目は、固定資産税、住民税です。
| 税金の種類 | 固定資産税 住民税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 亡くなった方が支払うはずだった分が残っているとき |
| 支払い期限 | 各自治体の納付期限どおり |
| 納付先 | 市区町村役場 |
| 関連リンク |
固定資産税、住民税は、1月1日時点の所有者・居住者に対して課税される税金です。亡くなった後に届いた納税通知書や、まだ支払っていない税金は、相続人が支払わなければなりません。
※知っておきたい税負担軽減のポイント|債務控除
相続人がお亡くなりになった人の代わりに支払った税金は、相続税を計算する際に相続財産から差し引くことができます。
これを「債務控除」といい、これによって相続税の負担を軽減することができます。
税金を払った際の領収書は、相続税申告の際、根拠資料として添付が必要ですから、必ず保管しておきましょう。詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続財産から引いて計算できるもの「債務控除」
6.個人事業税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の5つ目は、個人事業税です。
| 税金の種類 | 個人事業税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 亡くなった方が一定規模以上の事業を行っていたとき |
| 支払い期限 | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 納付先 | 被相続人が事業を行っていた場所(事務所や店舗)を管轄する都道府県税事務所 |
| 関連リンク | ■東京都主税局 個人事業税 |
お亡くなりになった方が、一定規模以上の事業を行っていた場合には、所得税の「準確定申告」とあわせて、個人事業税の申告・納税も相続人が代わりに行う必要があります。
なお、この個人事業税の必要経費としての取り扱いは、事業を相続人が「承継」するか、被相続人の死亡をもって「廃止」するかによって異なります。
- 事業を承継する場合
被相続人の亡くなった年分の所得に対する事業税は、事業を継承した相続人の翌年分の経費になります。 - 事業を廃止する場合
被相続人の死亡をもって事業を廃止した場合、その年分の所得に対する事業税の「課税見込額」を計算し、被相続人の所得税の準確定申告において、必要経費として計上することができます。
※見込額の計算が準確定申告に間に合わなかった場合でも、一定の要件を満たせば「更正の請求(準確定申告のやり直し)」を行うことが可能です。
※知っておきたい税負担軽減のポイント|債務控除
相続人がお亡くなりになった人の代わりに支払った税金は、相続税を計算する際に相続財産から差し引くことができます。
これを「債務控除」といい、これによって相続税の負担を軽減することができます。
相続税の申告期限までに納税通知書(請求書)が届いていない場合でも、準確定申告で算出した『課税見込額』をそのまま債務控除として差し引くことができます。
税金を払った際の領収書は、相続税申告の際、根拠資料として添付が必要ですから、必ず保管しておきましょう。詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続財産から引いて計算できるもの「債務控除」
■国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
また、課税事業者だった場合は、次章の消費税についてもご確認ください。
7.消費税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の6つ目は、消費税です。
| 税金の種類 | 消費税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 亡くなった方が個人事業主で、課税事業者だったとき |
| 支払い期限 | 亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 納付先 | 被相続人の納税地を管轄する税務署 |
| 関連リンク | ■国税庁 個人事業者の死亡届出手続 |
お亡くなりになった方が課税事業者だった場合には、消費税の申告・納税も相続人が代わりに行う必要があります。
消費税は、前々年の売上高などによって納税義務があるかどうかが決まるため、過去の確定申告書をさかのぼって確認する必要があります。
※知っておきたい税負担軽減のポイント|債務控除
相続人がお亡くなりになった人の代わりに支払った税金は、相続税を計算する際に相続財産から差し引くことができます。
これを「債務控除」といい、これによって相続税の負担を軽減することができます。
税金を払った際の領収書は、相続税申告の際、根拠資料として添付が必要ですから、必ず保管しておきましょう。詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続財産から引いて計算できるもの「債務控除」
8.登録免許税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の7つ目は、登録免許税です。
| 税金の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 相続した不動産(家・土地)の名義を変更するとき |
| 税率 | 固定資産税評価額※の0.4% |
| 支払い期限 | 相続したことを知った日から3年以内 |
| 納付先 | 対象となる不動産(土地・建物)の所在地を管轄する法務局・地方法務局(またはその支局・出張所) |
| 関連リンク | ■国税庁 登録免許税の税額表 ■辻・本郷相続ガイド 相続した土地にかかる登録免許税はいくら?分かりやすく解説しました |
※「不動産の価額」とは、市町村が管理する固定資産課税台帳の価格(固定資産税評価額)を指します。
不動産を相続した場合、名義を相続した人に変更する「相続登記」を行う必要があります。その際に納めるのが登録免許税です。
2024年4月から、相続登記が義務化されました。不動産の取得を知った日から3年以内に登記をしないと、ペナルティが科される可能性があります。
なお、所有者不明化問題を解決するため、以下の免税処置が実施されていますので、確認しておきましょう。
【令和9年3月31日まで】相続登記の免税措置
相続による土地の所有権移転登記等について、以下の場合は登録免許税が課されません。
- 100万円以下の土地の相続
個人が土地の相続登記を受ける際、その土地の価額が100万円以下であるときは、登録免許税は免除されます。 - 相続人が登記前に亡くなった場合
土地を相続した人が名義変更をしないまま亡くなった場合、その亡くなった人を名義人とするための登記については、登録免許税は免除されます。
■法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について
9.印紙税
遺産相続をしたらかかる可能性がある税金の8つ目は、印紙税です。
| 税金の種類 | 印紙税 |
|---|---|
| どんな時にかかる? | 相続財産の売買契約書などの書類を作成したとき 被相続人の債務を引き継ぐ契約書を作成したときなど |
| 支払い期限 | – |
| 納付先 | 税務署(郵便局などで収入印紙を購入して納付) |
| 関連リンク | ■国税庁 印紙税額の一覧表 |
印紙税は、相続した財産について、主に以下のような契約書を作成する際にかかる税金です。
- 不動産を売却するための契約書
相続した土地や建物を売却すると決めて、買主と交わす「不動産売買契約書」には印紙が必要です。 被相続人の債務を引き継ぐ契約書
亡くなった方の債務を引き継ぐ際、債権者と新しく契約を結び直す場合には印紙が必要になることがあります。
印紙税は、契約書に記載された金額に応じて税額が決まります。郵便局などで収入印紙を購入し、書類に貼り付けて消印(割印)をすることで納税したことになります。
10.よくあるQ&A
本章では遺産相続にまつわる税金についてのよくある質問にわかりやすく回答します。
10-1.親の銀行口座が凍結されても、税金は払わないといけませんか?
A.はい、払わなければなりません。
銀行口座が凍結されても、税金の納期限は待ってくれません。
なお、凍結されてしまっても、「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」を利用して、一定額までなら口座から葬儀代や納税資金を引き出すことが可能です。詳細は下記をご覧ください。
■全国銀行協会 遺産分割前の 相続預金の払戻し制度
10-2.相続放棄をすれば、親の滞納していた税金も払わなくて済みますか?
A.はい、基本的には支払う必要はありません。ただし「死亡保険金の受け取り」には注意が必要です。
相続放棄をすると、プラスの財産だけでなく、税金の滞納分を含むマイナスの財産(借金)も一切引き継ぎません。ただし、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要ですから、検討する場合には早めに専門家に相談しましょう。
なお、相続放棄を検討中の人が、被相続人の税金を支払ってしまった場合、相続を承認する意思があるものとみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があるので注意が必要です。
また、亡くなった方の死亡保険金の受取人に指定されている場合、相続放棄をしていても保険金を受け取ること自体は可能ですが、受け取った保険金の額が大きく「相続税」が発生する場合には、相続放棄をしていても相続税を支払う義務があります。
詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続放棄とは|選択すべきケース、自分で手続きを行う時の流れを解説
■辻・本郷相続ガイド 相続放棄をした人が死亡保険金の受取人になっている場合
10-3.相続で財産をもらうと、自分の「年収」が増えたことになって、所得税や住民税が高くなりますか?
A.いいえ、高くなることはありません。
遺産を受け取っても、それは「所得(働いて得たお金など)」とはみなされません。あくまで「相続」という枠組みで扱われるため、翌年の所得税や住民税、さらには健康保険料にも影響しません。これらは相続税(または贈与税)の対象であって、あなたの「年収」にはカウントされません。
11.まとめ
遺産相続時にかかる税金といえば相続税ですが、他にも、場合によってさまざまな税金が発生します。
相続の手続きは多岐にわたりますが、まずすべきことは、「亡くなった方の財産をすべて洗い出すこと」です。早めに全体像を把握することが、ご自身に必要な手続き・税金の把握につながります。
特に相続税申告は、相続が発生して10ヶ月以内に税務署へ申告する必要があります。
ご自身では難しいと感じたら早めに専門家に相談されることをおすすめします。
本記事が、遺産相続にまつわる税金についての不安解消の一助となれば幸いです。
■辻・本郷相続ガイド 相続税対策23選|節税のためにできることを税理士が解説、死亡後の手続き|死亡当日から1年後までの行動リスト

