それって特例なの?〜 特例という名の甘い罠 〜

皆さんは「税制の特例」というと、どのようなイメージをお持ちででしょうか?おそらくたいていの方は、税金が安くなることをイメージしているかと思います。しかしそうならないケースもあるので、注意が必要です。

1.事業用の買換え特例

これは貸付用など事業で使っている不動産を売却して売却益がでたときに、一定の期間内に代わりの事業用不動産を買換えると売却益に対する課税を繰り延べることができる制度です。

例えば、取得費が1,000万円の不動産を1億円で売却すると9,000万円の売却益がでます。仮に100%繰延の場合、9,000万円に対する税金(個人の場合20%の1,800万円)を売却した年度においては払う必要がありません。ここまでは、なんとなく特例のように感じます。

しかし、その後買換えた不動産の減価償却費に差が生じます。

耐用年数を20年の定額法と仮定します。

 特例適用なし:取得価額 1億円 ÷ 20年 = 500万円 (減価償却費)
 特例適用あり:取得費  (1億円 − 9,000万円) ÷ 20年 = 50万円 (減価償却費)

仮にその方の所得が高く、所得税住民税の税率が43%とすると、
 (500万円-50万円) × 43% = 193.5万円
となり、減価償却費の差額分だけ毎年多く税金を払うことになります。

そうすると個人の場合の長期譲渡の場合は、所得税住民税は20%のため、譲渡した時に20%の税金を払った方が有利になります。これが課税の繰り延べというものです。

2.特定の基準所得金額の課税の特例

「?」と思う方もいると思います。「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」とか「ミニマムタックス課税」と聞くと、ピンとくる方もいると思います。

そうなんです、一定の所得を超える方に追加で所得税の課税されるこの制度も、正式名称は「特例」という名前がついています。

令和5年度税制改正で登場し、令和7年分以後の所得税から対象となり、令和9年分以後の所得税からさらに強化されます。

 令和 7年〜8年分:特別控除 3億3,000万円 税率 22.5%
 令和 9年分以降  :特別控除 1億6,500万円 税率 30%

すべての所得が株式や不動産などの分離課税の方で、所得が10億円(復興特別所得税なし)と仮定します。

・ミニマムタックスなし:10億円 × 15% = 1億5,000万円
・令和 7・8年分      :(10億円 − 3億3,000万円) × 22.5% = 1億5,075万円 (追加75万円)
・令和 9年分      :(10億円 − 1億6,500万円) × 30% = 2億5,050万円 (追加1億50万円)

会計事務所職員が「特例で1億円追加になりますよ!」と笑顔で説明したと仮定します。
お客様から返ってくる答えは当然「バカもん!」です。

 

担当:税理士 山口 拓也

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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