
「相続税の延納をしたいけれど、担保は必要なのだろうか」
「延納の担保として認められるためには、どんな条件があるのだろう」
「担保提供の際はどのような書類が必要なのだろうか」
本記事をご覧の皆様はそのような疑問をお持ちではないでしょうか。
相続税は、原則として「一括・現金」で納めるルールです。
しかし、一度に支払うことが難しい場合には、例外として分割払いが認められる「延納(えんのう)」という制度があります。
100万円を超える延納を利用するためには、原則として税務署に「担保(たんぽ)」を出さなければなりません。
担保は何でも良いわけではなく、以下3つの要件をクリアする必要があります。
| 要件① | 担保として提供できる財産の種類であること |
|---|---|
| 要件② | 担保として不適格な事由がないこと |
| 要件③ | 必要担保額を充足していること |
本記事では、3つの要件や必要書類についてわかりやすく解説します。
本記事が、相続税の延納や担保選定についてのお悩み解決の一助となれば幸いです。
■国税庁 No.4211 相続税の延納、相続税贈与税の延納の手引(p.9)
■辻・本郷相続ガイド 相続税は延納できる?4つの要件や申請方法を相続専門税理士が解説
1.相続税の延納には担保の提供が必要
相続税の延納には担保の提供が必要です。
国税庁が定めた延納の4つの要件の3つ目には下記のように記載されています。
(3) 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
■国税庁 No.4211 相続税の延納
延納税額とは、納めるべき相続税額から手元資金で一括納付できる金額を差し引いて計算された税額のことです。利子税とは、税金を分割払い(延納)する期間に応じて、利息のように本来の税金に上乗せして支払う税金のことです。
延納の際は、それらの額に相当する担保を提供しなければいけません。
必要担保額の計算については、2-3-1.必要担保額の計算方法で解説します。
【例外】100万円以下、かつ、3年以下の場合は担保不要
以下の要件を両方とも満たす場合は、特例として担保の提供は不要です。
- 延納する税額が100万円以下
- 延納する期間が3年以下
2.延納担保の選定|3つの要件
相続税の延納が許可されるためには、延納担保となる財産が次の3つの要件をすべて備えていることが必要です。
| 【要件①】 | 担保として提供できる財産の種類であること |
|---|---|
| 【要件②】 | 担保として不適格な事由がないこと |
| 【要件③】 | 必要担保額を充足していること |
次章以降で詳しく見ていきましょう。
2-1.【要件①】担保として提供できる財産の種類であること
1つ目の要件は担保として提供できる財産の種類であることです。
税務署へ出す担保は、個人の判断でどんな財産でも自由に選べるわけではありません。
万が一のときに国がスムーズにお金に換えられるよう、対象となる財産が細かく決められています。
具体的には下の表の財産です。
この中から可能な限り処分が容易であって、かつ、価額の変動のおそれが少ないものを選択します。
| 1 | 国債及び地方債 |
|---|---|
| 2※ | 社債(特別の法律により設立された法人が発行する債券を含む。) |
| 3 | 土地 |
| 4 | 建物、立木及び登記・登録される船舶、飛行機、回転翼航空機、自動車、建設機械で、保険に附したもの |
| 5 | 鉄道財団、工場財団、鉱業財団、軌道財団、運河財団、漁業財団、港湾運送事業財団、道路交通事業財団及び観光施設財団 |
| 6 | 税務署長等が確実と認める保証人の保証 |
※2の有価証券のうち、取引相場のない株式については、①相続等により取得した財産のほとんどが取引相場のない株式で、かつ、当該株式以外に延納担保として提供すべき適当な財産がないと認められる場合又は②取引相場のない株式以外に財産はあるが、その財産が他の債務の担保となっており、延納担保として提供するのが適当ではないと認められる場合に限り、担保として提供することができます。
※第三者の所有する財産も担保として提供することができる
第三者の所有する財産も担保として提供することができます。
例えば、妻が相続税を延納するために、夫名義の土地を担保に差し出すことも認められます。
ただし、その場合は所有者本人が同意している証明として「承諾書」や印鑑証明書などを提出する必要があります。
2-2.【要件②】担保として不適格な事由がないこと
2つ目の要件は担保として不適格な事由がないことです。
さきほど紹介した「担保にできる財産」であっても、その財産自体にトラブルや問題がある場合は担保として認められません。
次に掲げるようなものは担保として不適格とされます。
| 1 | 法令上担保権の設定又は処分が禁止されているもの |
|---|---|
| 2 | 違法建築、土地の違法利用のため建物除去命令等がされているもの |
| 3 | 共同相続人間で所有権を争っている場合など、係争中のもの |
| 4 | 売却できる見込みのないもの |
| 5 | 共有財産の持分(共有者全員が持分全部を提供する場合を除く。) |
| 6 | 担保に係る国税の附帯税を含む全額を担保としていないもの |
| 7 | 第三者又は法定代理人等の同意が必要な場合に、その同意が得られないもの |
| 8 | 外国株式 |
2-3.【要件③】必要担保額を充足していること
3つ目の要件は必要担保額を充足していることです。
必要担保額の計算方法、担保の見積価額について確認していきましょう。
2-3-1.必要担保額の計算方法
担保にする財産の価値は、これから分割で支払う税金の額よりも大きくなければなりません。
具体的には、以下の計算式を満たす必要があります。
担保財産の見積価額 > 延納税額 + (第1回目の分納期間にかかる利子税の額×3)※
※第1回目の分納期間が1年に満たないときは1年として計算した額
利子税は将来変動する可能性があるため、税務署はあらかじめ少し余裕を持った担保の価値を求めてくるのです。
延納税額の計算、利子税についての詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続税は延納できる?4つの要件や申請方法を相続専門税理士が解説
1-1.【金額】「金銭納付を困難とする金額」が上限、1-3.【利子税】利子税がかかる
2-3-2.担保の見積価額は担保の種類によって決まっている
担保の見積価額は担保の種類によって決まっています。
担保として差し出す財産の価値(見積価額)は、いま市場で売れる価格がそのまま認められるわけではありません。将来の値下がりリスクなどを考えて、財産の種類ごとに独自のルールが決められています。
具体的には、担保の種類に応じて以下の通りです。
| 国債 | 原則として、券面金額 |
|---|---|
| 有価証券 | 地方債、社債及び株式その他の有価証券については、評価の8割以内において担保提供期間中に予想される価額変動を考慮した金額 |
| 土地 | 時価の8割以内において適当と認める金額(建物がある場合、借地権等相当額が減額される場合があります。) |
| 建物・立木及び 各種財団 | 時価の7割以内において担保提供期間中に予想される価額の減耗等を考慮した金額 |
保証人の保証 | 延納税額が不履行(滞納)となった場合に、保証人から徴収(保証人の財産を滞納処分の例により換価することによる弁済を含む。)することができると見込まれる金額 |
3.延納担保の提供に必要な書類
担保提供に必要な書類について解説します。
相続税の延納申請をするためには、延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に、申告期限までに提出しなければいけません。
申告期限は、相続税の納付期限である、「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。
物納申請書など、担保提供関連書類以外の必要書類については、下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続税を延納するための必要書類
3-1.担保ごとの必要書類
それぞれの担保には、担保にできないものや注意点があります。また、手続きもそれぞれ異なります。
申請の際は必ず、「国税庁 相続税贈与税の延納の手引 担保提供手続き等の一覧表」の該当の担保の欄をご確認下さい。
また、延納担保財産の提出書類を確認するための書面「担保提供関係書類チェックリスト」を使用し、必要書類の作成漏れがないように注意しましょう。
3-2.担保提供関係書類は提出期限を延長することができる
担保提供関係書類は提出期限を延長することができます。
延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3か月を限度として、最長6か月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。
なお、最終の提出期限までに書類の提出ができなかった場合には、その延納申請は却下されることになりますから注意が必要です。
また、提出期限を延長することができるのは、あくまでも、担保提供関係書類のみです。
相続税物納申請書や、物納財産目録等は対象ではありません。
延納申請、特に、担保関係書類の準備には時間がかかるため、早めに動き出すことが大切です。
4. 相続税の延納担保に関するよくあるQ&A
相続税の延納担保に関するよくあるQ&Aについて解説します。
Q1. 自分以外の名義(家族など)の土地を担保にすることはできますか?
A. はい、第三者が所有する財産でも担保として提供できます。
ただし、その場合は財産の所有者本人が署名・捺印した「承諾書」や印鑑証明書などを合わせて提出する必要があります。
Q2. すでに銀行の抵当権(ローンなど)がついている建物は担保になりますか?
A. 原則として担保として認められません(不適格となります)。
すでに他の抵当権がついている財産は、税務署が確実に税金を回収できる保証がないため、「処分が容易であること」などの要件を満たさないと判断される可能性が高いです。
Q3. 担保の必要書類が期限までに集まらない場合はどうすればいいですか?
A. 届出を出すことで、担保書類の提出期限を最長6か月まで延長できます。
「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を税務署へ提出すれば、1回につき3か月、最長で6か月まで猶予が認められます。ただし、延納申請書そのものの提出期限(相続税の申告期限)は延長できないため注意してください。
5.まとめ
本記事では、相続税の延納における担保選定の3つの要件と必要書類について解説してきました。
延納の担保選定や、関係書類の収集には思った以上に時間がかかる可能性があります。
期限直前に焦らないよう、できるだけ早めに準備を始めましょう。
もし、「どの財産を選べばいいか分からない」「手続きが難しい」と感じたら、一人で悩まずに相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
本記事が、相続税の延納や担保選定を検討されている皆様の一助となれば幸いです。

