「株式会社ってどんな会社だろう?」
株式を発行している会社であることはわかっていても、その仕組みは案外知られていないものです。
本記事では、できるだけわかりやすく、簡単に株式会社のしくみについて解説しました。
そのしくみがわかれば、もっと会社や経営が「おもしろい!」と感じるはずです。
目次
1.株式会社とは?
株式会社は、株式を発行することでお金を集め、仕事をしている会社です。
会社を経営するためには、たくさんのお金が必要です。
新しい仕事を始めるために100万円が必要だったとしましょう。一人では10万円しか出せなくても、10万円を出せる人が10人集まれば、100万円になります。
株式会社は、たくさんの株式を発行して、大人数の人に買ってもらうことで、よりたくさんのお金を集めることができるしくみを持った会社です。
株式会社から、株式を買った人を株主といいます。
株式会社は、集めたお金を使ってお客様に商品を作って売ったり、サービスを提供して、お金をもうけています。
2.株式会社のしくみ
株式会社のしくみをくわしくみていきましょう。
株主は、株主総会で話し合い、株式会社の大切なことや会社の意志を決めます。
株主総会で決まったことを受け、具体的な株式会社の仕事内容や経営のやりかたを決めるのが経営者である取締役会です。それに従い、株式会社では仕事を行い、利益を得ます。
株主は、株式会社が仕事でかせいだお金から、配当として利益を受け取ることができます。
3.株式会社の2つの特徴
株式会社には、大きな特徴が2つあります。
- 会社を所有している人と経営している人がいる
- 株式は、売ったり買ったりできる
3-1.会社を所有している人と経営している人がいる
株式会社には、会社を所有する株主と、会社を経営する取締役が存在します。
株式会社を所有しているのは、株式を買うことで会社が仕事をするお金を出した、株主です。
その株主から選ばれた取締役が株式会社の経営をしています。
なお、株主が取締役になることもできるため、株式会社の所有者も経営も同じ人が行うことも可能です。
3-2.株式を売ったり買ったりできる
株式会社が発行した株式は、売ったり買ったりすることができます。
株式を売ると、株式を持っていた人は株主ではなくなり、新たに株式を買った人が株主となります。
大きな会社になると、株式専用の市場でたくさんの人が自由に株式を売ったり買ったりできるように登録します。株式専用の市場で株式を売り買いできるようにするのが株式上場です。
株式上場をすることで、誰でも株式を買うことができるようになるため、よりたくさんのお金を集められるようになります。
4.株式会社は誰が経営してるの?
会社を経営しているのは、株主から選ばれた取締役です。
株式会社では、1人以上の取締役を決めることが必要です。大きな会社や株式上場している会社では、取締役会という3人以上のグループをつくり、話し合って経営する決まりになっています。そのうち会社を代表する取締役が代表取締役です。
取締役が1人しかいない株式会社では、取締役=代表取締役になります。
会社経営する人は、社長じゃないの?
社長は、この会社のトップという「仕事や立場をわかりやすくした呼び名」です。
会社法という会社をつくるための法律では、取締役が会社を経営することが決まっています。法律上は、社長という地位はないのです。
5.経営者の会議は何を決めるの?(取締役会)
取締役会では、お金の使い方や会社のルール、どんな仕事をするかなど、会社にとって大事なことを具体的に決めます。
たとえば、以下のような内容です。
- 誰が会社の代表になるか(代表取締役の決定)
- 新しい商品や新しいお店をつくるか
- 仕事のためにお金を借りるか
- 新しく部署をつくるか
もし、経営者が一人で株式会社の大切なことを決めてしまうと、会社の仕事のやり方がバラバラになってしまったり、株主や他の取締役が納得できない決定をしてしまうかもしれません。
何人かの取締役が集まって大切なことを決めれば、決めた内容をチェックすることができます。そうすることで、みんなが納得できる決定ができるようになります。
6.株主は何ができるの?(株主総会)
株主総会は、株式会社がしっかり仕事をしているか確認したり、大事なことを決める会議です。
多くの場合、株主のほか、取締役などの経営をする人も参加します。
たとえば、株主総会では、次の内容が行われます。
- 株式会社の成績(業績)を確認する
- 株式会社を誰が経営するかを決める(取締役の決定)
- 株主がもらえる配当を決める
- 会社のルールを変えるか決める
- 会社を解散するか決める
たとえば、株式会社の成績が悪く、もうけが少なかった場合、株主がもらえる配当が少なくなります。そこで、「これまでとは、違う人に経営してもらって、会社の成績を上げてもらおう!」ということが決まります。
ただし、株主はそれぞれ同じ権利を持っているわけではありません。株式会社が発行した株式の中で、たくさんの株式を持っている人が大きな権利を持ちます。
- 議決の例
100株を発行している株式会社があるとしましょう。
株主総会の議題は、「Aさんを取締役にするかどうか」です。
60株を持っている人がAさんを取締役にすることに賛成しています。しかし、30株を持っている人と10株を持っている人が反対しています。
多数決であれば賛成1人対反対2人なので、「反対」意見が通るはずです。しかし、株主総会では、持っている株を合せた数で決まります。
賛成が60株、反対が40株(30株+10株)になるので、賛成意見が通り、Aさんは取締役になることができるのです。
7.株式会社をつくる4つのメリット
株式会社をつくって仕事をすることで、4つのメリットがあります。
- 信用してもらえる
- 会社が使うお金を集めやすい
- 会社が失敗しても、自分が出したお金以上は出さなくて済む
- 税金が安くなる
7-1.信用してもらえる
株式会社にすることで、以下のような理由から、みんなから信用されやすくなります。
・たくさんの決まりを守っている
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株式会社には、法律で守らなければいけない決まりがたくさんあります。さらに決算公告(けっさんこうこく)という経営状況の情報を公開したり、株主からチェックを受けるなど、悪いことをしたり、経営者が勝手にお金を使ったりできないしくみになっています。
そのため、株式会社は信用してもらいやすいのです。
7-2.会社が使うお金を集めやすい
株式会社にすることで、仕事に使うお金を集めやすくなります。
7-2-1.①株式を売る方法
株式会社がお金を集める方法のひとつは、株式を発行してお金を集める方法です。
株式会社をつくるときも株式を発行していますが、新しい仕事をはじめるなど、後からお金が必要になったときも株式を発行することがあります。これを増資(ぞうし)といいます。
増資をすることで、より多くのお金を集めることができます。
7-2-2.②お金を借りる方法
もうひとつのお金を集める方法が、お金を借りる方法です。
銀行などの金融機関から、お金を借りることを融資(ゆうし)といいます。
銀行は、誰にでもお金を貸してくれるわけではありません。貸したお金を返してくれるか、お金を何に使うか、ちゃんとした会社なのか、きびしく審査されます。
たくさんの決まりをしっかり守り、いろいろな人の目からチェックをされている株式会社は、信頼されやすいため、融資を受けやすいのです。
7-3.会社が失敗しても、自分が出したお金以上は出さなくてすむ
もし、株式会社が倒産してしまっても、会社の所有者である株主は、出したお金以上の責任をとる必要がありません。
会社がたくさんの負債(借金)を背負い倒産してしまった場合、所有者は、お金を返すことが必要です。しかし、株式会社の場合、株主が持っている株式の価値は、ゼロになりますが、それ以上のお金を返す必要はありません。このような限られた範囲で会社の責任を負うことを有限責任(ゆうげんせきにん)といいます。
7-4.税金が安くなる
たくさんお金を稼いだ場合、会社にしたほうが税金が安くなります。
お金を稼いだら、税金を払わなければいけません。
「会社」がお金を稼ぐと法人税、「会社にせずに個人」でお金を稼いだ場合は、所得税を納めます。
法人税は、たくさん稼いでも税金が2段階しか上がらない比例課税制度なのに対し、所得税は稼げば稼ぐほど税金が上がっていく累進課税制度になっています。
4,000万円を稼いだ場合を比べてみると、個人で仕事をしている人は、稼いだお金の45%も税金として支払わなければいけないのに対し、会社にすることで、23.2%の税金すむのです。
8.株式会社のデメリット
株式会社には、メリットばかりでなく、デメリットもあります。
- 株式会社をつくるためにお金がかかる
- 役員をできる期間が決まっている
- もうかっていなくても、払わなければいけない税金がある
8-1.株式会社をつくるためにお金がかかる
株式会社は、会社をつくるときのお金がかかります。
会社にせずに個人で仕事をしていれば、会社をつくるためのお金は必要ありません。同じ会社である合同会社と比べても、株式会社をつくるには、倍ぐらいのお金がかかります。
株式会社は、守らなければいけない決まりや手続きが多いため、お金がたくさんかかってしまうのです。
8-2.役員をできる期間が決まっている
株式会社の役員は、長くても10年という期間が決まっています。
取締役などの役員ができる期間は、長くても10年と決まっています。その期間を終えたあと、再び役員をする場合は、手続きをし直さなければいけません。その場合は、「登記」という手続きを行い、登録免許税という税金を納める必要があります。
8-3.もうかっていなくても、払わなければいけない税金がある
もうけがなかったとしても、会社は、法人住民税の支払いが必要です。
ほとんどの税金は、もうかったお金に対して負担します。しかし、法人住民税だけは、もうかっていなくても支払うことが決まっています。最低7万円の税金を納めなければいけません。
9.株式会社と合同会社、合資会社、合名会社はなにがちがうの?
会社法という決まりによって、株式会社を含め、4種類の会社をつくることができます。
その違いをまとめました。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
出資者 | 株主 | 社員 | 社員 | 社員 |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任と 無限責任 | 無限責任 |
代表者 | 代表取締役 | 代表社員 | 代表社員 | 代表社員 |
社会的な信用・ 認知度 | 高い | やや低い | 低い | 低い |
意思決定 | 株主総会 | 社員の過半数 | 社員の過半数 | 社員の過半数 |
利益の分け方 | 株式の所有割合による | 自由に配分 | 自由に配分 | 自由に配分 |
お金を集める方法 | 多い | 普通 | 普通 | 普通 |
※無限社員=会社に対して無限に責任を負う社員のこと。会社が負債を負って倒産し場合は、負債を返す責任を負う。
株式会社は、仕事の使うお金を集めやすいほか、信用度が高く、出資者の責任が有限であることから、大きな会社をつくる場合にメリットが大きいことがわかります。
10.まとめ
株式会社について、ポイントを押さえ、できるだけわかりやすく解説しました。
株式会社を設立するのは大変ですが、メリットが大きい会社形態です。日本にある会社のうち、株式会社が9割以上を占める理由もおわかりいただけたかと思います。
本記事で、より起業や会社運営にご興味をお持ちいただければ幸いです。