「仕事と私用で使っている自家用車のガソリン代はどこまで経費にできるんだろう?」
「仕事と私用のガソリン代が混ざってしまうが、税務署に否認されてしまうのでは?」
独立して個人事業主になったばかりの方が事業とプライベートで車を共用している場合、このような不安をお持ちになることも多いのではないでしょうか。
結論からいいますと、事業に使用している車が事業専用車の場合は、使用したガソリン代は全額経費として計上できます。事業に使用している車を事業とプライベートで共用している場合は、事業で使用した分のガソリン代だけが経費として計上できます。ガソリン代を経費として計上する際に重要なのは、そのガソリン代が事業で使ったものであることが証明できることです。
この記事では、ガソリン代を経費として計上できる範囲やその計算方法、勘定科目の決め方や仕訳例、ガソリン代を経費にする際の注意点、ガソリン代以外にも経費にできる車に関する費用まで解説していきます。ぜひ、ご一読ください。
目次
1.個人事業主が事業で使ったガソリン代は経費にできる
事業で使用した分のガソリン代は経費として計上することができます。ガソリン代を経費として計上するには、そのガソリン代が事業で使ったものであることを証明できることが重要です。
まずは、事業に使用している車が事業専用車の場合と事業とプライベートで共用している場合をそれぞれ見ていきましょう。
1-1.事業専用車であれば全額経費にできる
事業に使用している車が事業専用車の場合は、使用したガソリン代を全額経費として計上することができます。
事業専用車のガソリン代を全額経費計上するには、事業専用車が業務のためだけに使用されていて、プライベートでは使っていないことが証明できるようにする必要があります。具体的には、以下のような方法で事業専用車であることを証明します。
・運転日誌や走行記録などで、すべての使用が業務目的であることを証明できるようにしておく
・ガソリン代のレシートや領収書を保管し、税務調査時にはいつでも提示できるようにしておく
・私用車を別に所有し、プライベートな用事はすべて私用車を利用する
1-2.事業とプライベートで共用している場合は家事按分する
事業に使用している車を事業とプライベートで共用している場合は、使用したガソリン代を事業用とプライベート用に振り分け、事業で使用した分のガソリン代を経費として計上できます。
この、事業(業務)とプライベート(家事)の両方で使用している費用や資産を、事業に使用した割合に応じて経費として計上することを家事按分と言います。詳しい計算方法については次の章で見ていきます。
事業とプライベートで共用している車のガソリン代を家事按分して経費計上するには、事業に使用した割合の根拠が証明できるようにする必要があります。具体的には、以下のような方法で事業に使用した割合を証明します。
・運転日誌や走行記録、業務記録などを保管してしておく
・ガソリン代のレシートや領収書を保管し、税務調査時にはいつでも提示できるようにしておく
・家事按分の計算過程を記録してしておく
2.ガソリン代を家事按分する計算方法
ここからは、具体的な家事按分の計算方法について見ていきます。ガソリン代を家事按分する場合は、走行距離もしくは使用日数で家事按分するのが一般的です。
2-1.走行距離で家事按分を計算する
事業で利用した車の走行距離の全走行距離に対する按分率を求め、事業で使用した分のガソリン代を算出します。
走行距離での家事按分の計算例
1ヶ月の総走行距離500kmのうち、事業での利用が300kmでガソリン代の総額が12,000円の場合、按分計算は以下のようになります。
事業での利用の割合:300km ÷ 500km = 0.6(60%)
経費計上する金額:12,000円 × 0.6 = 7,200円
この月のガソリン代は7,200円を経費として計上できます。
2-2.使用日数で家事按分を計算する
事業で利用した車の日数の全日数に対する按分率を求め、事業で使用した分のガソリン代を算出します。
使用日数での家事按分の計算例
1ヶ月の全日数30日のうち、事業での利用が20日、ガソリン代総額が月15,000円の場合、按分計算はは以下のようになります。
事業での利用の割合:20日 ÷ 30日 = 0.666…(約66%)
経費計上する金額:15,000円 × 0.66= 9,900円
この月のガソリン代は9,900円を経費として計上できます。
3.ガソリン代を経費にする場合に使える勘定科目等
ガソリン代に使える勘定科目はいくつかあります。ガソリン代が移動のための付随的な経費ではなく、売上を生み出すために不可欠な費用の場合には売上原価として処理する場合もあります。それぞれ見ていきましょう。
3-1.車両費
車両費は、自動車の保守や使用に関わる費用など車両全般に関する費用を計上する際に使う勘定科目です。ガソリン代以外にも、車検費用、修理費用、車両保険費用などが車両費で処理できます。
3-2.旅費交通費
旅費交通費は、出張や営業活動で移動する時に生じた旅費や交通費を計上する際に使う勘定科目です。ガソリン代以外にも、駐車場代、高速代などが旅費交通費で処理できます。
3-3.消耗品費
消耗品費は、日常的に使用し短期間で使い切る物品や、取得価額が少額の備品を購入した際に使う勘定科目です。ガソリン代以外にも、コピー用紙、文房具、電池、洗剤などが消耗品費で処理できます。
3-4.燃料費
燃料費は、動力源となる燃料そのものを購入した際に使う勘定科目です。ガソリン以外にも、灯油・軽油・重油などが燃料費で処理できます。
3-5.売上原価
売上原価は、商品やサービスを提供するために直接必要となった費用です。ガソリン代は、事業内容によっては商品やサービスを販売したり会社を管理するための間接的な費用である販売費や一般管理費(車両費、旅費交通費、消耗品費、燃料費)ではなく、売上原価になる場合があります。
具体的には、タクシー業や運転代行などのようにガソリン代が移動のための付随的な経費ではなく、売上を生み出すために不可欠な費用である場合は売上原価に該当するため、売上原価に仕入れやその他新たに設定した原価科目等で勘定科目を設定するようにします。
4.どの勘定科目を選べばいいか
では、いくつかあるガソリン代の勘定科目の中からどの勘定科目を選べばよいのでしょうか。その判断基準について見ていきましょう。
4-1.ガソリン代の勘定科目を決める判断基準
ガソリン代の勘定科目は、車の使用頻度や保有台数、業務目的や会計処理の方針に応じて変わります。それぞれの勘定科目で処理するメリットデメリットを理解し、ご自身に合うものを選択しましょう。
| 勘定科目 | メリット | デメリット | こんな方におすすめ |
| 車両費 | 車関連費用として車両維持費が一元管理できる | ガソリン代だけの費用はわかりにくい | ・車の使用頻度が高い ・車関連の支出が多い ・車に関する費用をまとめて管理したい |
| 旅費交通費 | 移動に関する費用として一元管理できる | ガソリン代だけの費用がわかりにくい | ・出張や移動が多い ・移動にかかる経費をまとめて管理したい |
| 消耗品費 | 他の消耗品の費用と一緒に管理できる | ガソリン代だけの費用がわかりにくい | ・車の使用頻度が低く、年間のガソリン代が少ない |
| 燃料費 | ガソリン代の費用が明確になる | 勘定科目が増え管理が煩雑になる場合がある | ・事業専用車の台数が多い ・ガソリン代を独立させて明確に管理したい |
4-2.勘定科目は一度決めたら継続して使用する
勘定科目は一度決めたら毎期継続して使用することが原則です。期間によって会計処理の方法を変えてしまうと、財務諸表の期間比較ができなくなったり、税務調査の際には意図的な利益操作と疑われる可能性があるためです。
ただし、事業内容や実態が変わったなど合理的な理由があれば勘定科目を変更することも可能です。その際には、会計期間の頭から変更するようにします。
5.支払い方法によるガソリン代の仕訳例
では実際にガソリン代を仕訳してみましょう。
5-1.ガソリン代を現金で支払った場合
ガソリンスタンドでガソリン代5,000円を現金で支払った場合の仕訳例です。ここでは勘定科目は車両費を使用します。
| 借方 | 貸方 | ||
| 車両費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
5-2.ガソリン代をクレジットやETCカードで支払った場合
ガソリンスタンドで5,000円をクレジットカードで支払った場合の仕訳例です。ここでは勘定科目は旅費交通費を使用します。
ガソリン代をクレジットカードやETCカードで支払う場合には、現金で支払う場合と仕訳方法が異なり、クレジットカードやETCカードの決済時と引き落とし時で会計処理が2回になります。ガソリン代5,000円を①クレジットカードで決済した時に未払金を計上し、②口座から引き落された時点で未払金を消し込みます。
①クレジッカード決済時
| 借方 | 貸方 | ||
| 旅費交通費 | 5,000 | 未払金 | 5,000 |
②クレジットカード代口座引き落とし時
| 借方 | 貸方 | ||
| 未払金 | 5,000 | 普通預金 | 5,000 |
6.個人事業主がガソリン代を経費にする際の注意点
ここからは、個人事業主がガソリン代を経費にする際に特に注意すべきポイントを解説します。
6-1.ガソリンを使用するか軽油を使用するかによって税務上の扱いが異なる
ガソリンと軽油はかかる税金の種類が異なるため、税務上の扱いにも違いがあり、経費として計上する際にはガソリン代と軽油代を別々に処理する必要があります。
ガソリンは(本体価格+石油税+ガソリン税)×消費税なのに対し、軽油は(本体価格+石油税)×消費税で、軽油引取税には消費税がかかりません。そのため、誤って軽油引取税分まで課税仕入として処理してしまうと、仕入税額控除額が多くなり、消費税の納税額が本来より少なくなってしまいます。この点が税務調査では厳しくチェックされます。
| 消費税がかかる | 消費税がかからない | |
| ガソリン | 石油税(石油石炭税、温暖化対策税) ガソリン税(揮発油税、地方揮発油税) | – |
| 軽油 | 石油税(石油石炭税、温暖化対策税) | 軽油引取税 |
では実際に、軽油を購入した際の仕訳例を見ておきます。
ガソリンスタンドで軽油を40ℓ(130円/ℓ)給油して、7,004円を現金で支払った場合の仕訳例です。軽油本体価格5,200円、消費税520円、軽油取引税1,284円だったとします。ここでは勘定科目は車両費を使用します。
| 借方 | 貸方 | ||
| 車両費 | 5,200 | 現金 | 7,004 |
| 仮払消費税 | 520 | ||
| 租税公課 | 1,284 | ||
仕訳例では軽油引取税の勘定科目は租税公課を使用していますが、本体価格の勘定科目を車両費(課税)、軽油取引税の勘定科目を車両費(不課税)のように車両費に含めて処理することもできます。重要なのは軽油本体は消費税課税、軽油引取税は消費税不課税として計算することです。
6-2.レシートや領収書がインボイス制度に対応しているか確認する
インボイス制度のもとで消費税の仕入税額控除を受けるには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。ガソリンスタンドのような不特定多数の顧客に販売を行う事業者の場合は、詳細な宛名を省略した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」が認められています。
ガソリン代に仕入税額控除を適用するためには、受け取ったレシートに以下の記載があるかを確認し、必ず保存しておく必要があります。
|
税込1万円未満の課税仕入れには少額特例(令和11年9月30日まで)
税込1万円未満の課税仕入れでは、インボイス(適格請求書)の保存がなくても、「①課税入れの相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地、②課税仕入れを行った年月日、③課税仕入れにかかる資産又は役務の内容、④課税仕入れに係る支払対価の額、⑤帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。
6-3.レシートや領収書はしっかり保管する
ガソリン代を経費として計上するには、そのガソリン代が事業で使ったものであることを証明できることが重要です。ガソリン代を経費として計上する場合、支払いをした事実や利用日時を証明する最も重要な証拠となるレシートや領収書は必ず保管しておきます。また個人事業主の場合、原則として青色申告の場合は確定申告期限から7年間、白色申告の場合は5年間の保管義務があります。
万が一レシートや領収書をもらえなかった場合や紛失してしまった場合には、支払先・支払日・金額・ガソリン代である旨の記録を残しておくようにします。
7.ガソリン代以外にも車に関する費用は経費にできる
ガソリン代以外にも、事業で車を使用する際には様々な費用が発生します。ここでは、経費にできる主な車関連の費用について解説します。
7-1.事業用の車の取得費用
事業に使用する車の購入費用は経費計上が可能です。事業専用車の場合は全額、事業とプライベートで共用する場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
ただし、車両は時間の経過とともに価値が減少する資産であるため、一度に全額を経費にするのではなく、耐用年数に応じて減価償却し、数年間に分けて経費計上します。
7-2.リース代
事業に使用する車のリース代は経費計上が可能です。事業専用車の場合は全額、事業とプライベートで共用する場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
カーリースは所有権がリース会社にあるため、購入する場合と異なり減価償却の必要はありません。
7-3.税金
事業に使用する車にかかる税金は経費計上が可能です。事業専用車の場合は全額、事業とプライベートで共用する場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
経費に計上できる車の税金は以下の3つです。
| 自動車税(軽自動車税)種別割 | 車の所有者に課される地方税 |
| 自動車税環境性能割 | 車を取得した時に課される地方税 |
| 自動車重量税 | 車の重量や経過年数に応じて課される国税 |
7-4.車検代
事業に使用する車の車検代は経費計上が可能です。事業専用車の場合は全額、事業とプライベートで共用する場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
7-5.保険料
事業に使用する車の自動車保険料は経費計上が可能です。自賠責保険と任意保険、どちらも対象となります。事業専用車の場合は全額、事業とプライベートで共用する場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
7-6.駐車場代
事業で使用した駐車場代は経費計上が可能です。事業で使用した駐車場代とプライベートで使用した駐車場代が混在する場合は、駐車場を使用した日数や時間に応じて家事按分し、事業で使った分のみ経費として計上できます。事業で使用したことを証明できるよう、使用した目的や行き先なども記録しておくようにします。
また、自宅兼事務所で事業を行い自宅の駐車場代を経費に計上する場合、事業専用車の場合は全額経費計上できますが、プライベートと兼用の車の場合は家事按分し事業で使った分のみ経費として計上できます。
8.まとめ
ここまで、個人事業主がガソリン代を経費として計上できる範囲や計算方法、勘定科目の決め方や仕訳例、ガソリン代を経費にする際の注意点、ガソリン代以外にも経費にできる車に関する費用まで解説してきました。
個人事業主のガソリン代を経費計上する際は、車を事業とプライベートで共用している場合には家事按分すること、ガソリン代が事業で使ったものであることを証明できることが重要です。家事按分の計算過程は記録を残し、事業で使用した事実や利用日時を証明するレシートや領収書は必ず保管するようにして、正しい税務処理を行うことを心がけましょう。



